2章 敬語の使い方|信頼される言葉づかい

はじめに
1:02

はじめに

敬語は、お客様との信頼関係をつくる大切な接客スキルです。
ちょっとした言い方の違いが、お客様の安心感や満足度につながり、お店全体の印象を左右します。

正しい敬語は、「日本語が上手い」と感じてもらえるポイントでもあり、会話をスムーズに進めるうえでも役立ちます。

このページでは、丁寧語・尊敬語・謙譲語の基本と、それぞれの使い方のコツを紹介します。
接客の現場で、相手や場面に合わせた自然な伝え方ができるようになります。

1. 敬語の基本を知る
3:48

1. 敬語の基本を知る

1-1. 敬語とは何か

敬語とは、相手に敬意や配慮をこめて話す言葉づかいです。
相手との関係や立場、場面に応じて言葉を選ぶことで、やりとりがスムーズになります。

たとえば、「ちょっと待ってください」と「少々お待ちいただけますか」では、同じ意味でも印象が大きく違います。
こうした言葉の選び方が、相手の信頼や安心につながります。

敬語は、単なる言葉のルールではなく、「相手を大切にする気持ち」を表す日本語のしくみです。
使い方ひとつで、相手との関係性や場の雰囲気まで変えることができます。

1-2. 飲食店で敬語が大切な理由

飲食店では、ただ料理を運ぶだけでなく、言葉を使って「サービス」も提供しています。
お客様との会話は短くても、その一言一言が店全体の印象を左右します。

たとえば、注文時に「何にしますか?」ではなく、「ご注文はお決まりでしょうか?」と聞くと、同じ内容でも丁寧さや気配りが伝わります。

こうした敬語の使い方は、短い会話の中で「おもてなしのこころ」を伝え、接客の質を高める“目に見えないサービス”です。

1-3. 丁寧語・尊敬語・謙譲語の違い

敬語は、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3つに分けられます。
それぞれの使い方を知ることで、場面に合わせた自然な会話ができるようになります。

尊敬語は相手の行動を高める表現で、「お客様が召し上がります」のように使います。
謙譲語は自分の行動をへりくだって表すもので、「料理をお持ちいたします」のように使います。

種類 役割 例
丁寧語 話し方を丁寧にする 「です」「ます」「お」「ご」「ございます」など
尊敬語 相手の行動を高める 「いらっしゃる」「召し上がる」「ご覧になる」など
謙譲語 自分の行動をへりくだる 「伺う」「申す」「差し上げる」など
2. 丁寧語
2:43

2. 丁寧語

2-1. 丁寧な話し方

丁寧語は、言葉をやわらかくし、相手に礼儀を伝える基本の表現です。
語尾を「〜です」「〜ます」「〜ございます」に変えたり、言葉の前に「お」や「ご」をつけたりします。

たとえば、お客様に「お水でございます」「ご注文はお決まりですか」と伝えると、接客に落ち着きと信頼感が生まれます。

また、同僚に「お皿を洗ってください」「ご案内お願いします」と伝えると、仲間同士でも気持ちよく動ける雰囲気が生まれます。

2-2. 「です・ます」をつける

語尾を「〜です」「〜ます」「〜ございます」にするだけで、礼儀正しくなります。
短い返事や説明でも、語尾を変えるだけで接客らしい話し方になります。

語尾 例文
〜です 「ただいま満席です。」
〜ます 「お席へご案内します。」
〜ございます 「メニューでございます。」

2-3. 「お・ご」をつける

言葉の前に「お」や「ご」をつけることで、表現がやわらかくなります。
これは単なる飾りではなく、お客様に対する敬意を伝えるサインになります。

接頭語 使い方
お 主に和語やモノにつける。
例:お水、お皿、お席、お会計、お電話
ご 主に漢語や行動につける。
例:ご飯、ご案内、ご注文、ご説明、ご利用
(なし) カタカナの言葉には基本的につけない。
例:ビール、サラダ
3. 尊敬語
1:43

3. 尊敬語

3-1. 相手を立てる話し方

尊敬語は、お客様や目上の人の相手を立てる表現です。
同じ意味の動作でも、尊敬語にすると丁寧さや配慮が伝わります。

尊敬語は、自分や同僚には使わず、お客様や上司などの目上の人にだけ使います。
たとえば、「食べる」ではなく「召し上がる」、「見る」ではなく「ご覧になる」と言います。

3-2. 相手の動作をアップする

尊敬語は、相手の行動を別の言葉に変えて使います。
「あなたは大切な存在です」という気持ちを言葉づかいで示すことができます。

元の動詞 尊敬語・例文
食べる・飲む 召し上がる
「こちらのお料理を召し上がりますか。」
する なさる
「お飲み物は何をなさいますか。」
見る ご覧になる
「こちらのメニューをご覧ください。」
言う おっしゃる
「お名前をおっしゃっていただけますか。」
来る いらっしゃる
「こちらへいらっしゃいましたら、お席へご案内します。」
4. 謙譲語
2:11

4. 謙譲語

4-1. 自分をへりくだる話し方

謙譲語は、自分や自分側の行動を低く表現し、相手を立てる敬語です。
自分の行動をへりくだって伝えることで、相手への敬意を表します。

謙譲語は、お客様や上司など、目上の人に対して自分の行動を話すときに使います。
たとえば、「行く」ではなく「伺う」、「する」ではなく「いたす」と言います。

こうした自分を下げる表現は、敬語以外にも見られる日本語の特徴です。
たとえば、自己紹介で「至らない点もありますが、よろしくお願いします」と添えると、相手を立てる姿勢を示すことができます。

4-2. 自分の動作をダウンする

謙譲語は、自分の行動を別の言葉に置きかえて使います。
「私はあなたを尊重しています」という気持ちを、言葉づかいで示すことができます。

元の動詞 謙譲語・例文
行く 伺う・参る
「ただいまお伺いいたします。」
する いたす
「ご案内いたします。」
言う 申す
「〇〇店の〇〇と申します。」
聞く 伺う
「ご注文をお伺いいたします。」
もらう 頂戴する
「〇〇円、頂戴いたします。」
5. よくある間違いと使い分け
3:46

5. よくある間違いと使い分け

5-1. よく使われる間違った表現

丁寧な言葉づかいを意識するあまり、かえって不自然になったり、文法的に誤ったりする表現があります。

これらは「バイト敬語」や「マニュアル敬語」とも呼ばれ、意図せず相手に違和感を与えることがあります。

間違いやすい表現 使用例
〜になります ✕ 「ご注文の〇〇になります。」
〇 「ご注文の〇〇でございます。」
〜のほう ✕ 「ご注文のほうお伺いいたします。」
〇 「ご注文をお伺いいたします。」
よろしかった
でしょうか
✕ 「以上でよろしかったでしょうか。」
〇 「以上でよろしいでしょうか。」
〜から
お預かりします
✕ 「1万円からお預かりします。」
〇 「1万円、お預かりいたします。」

5-2. 意味が変わる敬語

敬語の中には、1つの言葉で複数の動作を表す表現があります。
意味を混同しないよう、どの動作に当てはまるか意識して使います。

敬語 意味と例文
いらっしゃる
(尊敬語)
行く:「駅へはこの道をいらっしゃいますと便利です。」
来る:「お客様がいらっしゃいました。」
いる:「奥のテーブル席にいらっしゃいます。」
伺う
(謙譲語)
行く:「ただいま、お席へ伺います。」
聞く:「ご注文を伺います。」
参る
(謙譲語)
行く:「すぐに厨房へ確認に参ります。」
来る:「ただいま参りました。」

5-3. お店に合わせた敬語

敬語は正しく使うだけでなく、その場に合わせた表現を選ぶことが大切です。
たとえば、高級レストランと居酒屋では、求められる接客スタイルが異なります。

お店の種類 接客スタイル
高級店 落ち着いた声でかしこまった言葉を使う
例:「こちら本日のおすすめでございます。」
居酒屋 明るく元気な声でカジュアルな言葉を使う
例:「今日のおすすめですよ!」


丁寧すぎるとよそよそしく、逆にくだけすぎると失礼に感じられることもあります。
「お店らしさ」と「お客様との距離感」のバランスを意識することが、心地よい接客につながります。

おわりに
0:44

VOICEVOX:春日部つむぎ

おわりに

このページでは、丁寧語・尊敬語・謙譲語の基本から、お店に合わせた表現の選び方までを学びました。
正しい敬語は、単なるマナーではなく「お客様との信頼関係を築く道具」です。

現場では、正確さだけでなく雰囲気や距離感に合った言葉を選ぶことが重要です。
今日学んだ表現を、ぜひ日々の接客で実践し、あなたらしい自然な敬語を身につけてください。

小テスト

Q1

次の文の中で正しい敬語表現はどれですか。

Q2

「行く」の謙譲語として正しいものはどれですか。

Q3

高級レストランでのおすすめメニューの伝え方として最も適切なのはどれですか。

Q4

「いらっしゃる」が使える動作の組み合わせとして正しいものはどれですか。

Q5

居酒屋での接客において、敬語表現として不自然なのはどれですか。