飲食店を開業したいけれど、固定店舗は家賃や内装費など初期費用が大きな負担となります。
そんな中、注目を集めているのが「キッチンカー(移動販売車)」による飲食店開業です。
キッチンカーは比較的低コストで始められるうえ、出店場所を自由に選べるため、リスク分散や新しい働き方として人気が高まっています。
本記事では、キッチンカー開業に必要な初期費用、営業許可や注意点、固定店舗との比較、そしてメリット・デメリットを詳しく解説します。
キッチンカー開業において最大の初期投資となるのが「車両」です。
新車(特注車両):250〜500万円
中古車(改装済み):150〜300万円
中古車(未改装)+改装費用:100〜250万円
料理の種類や規模に応じて必要な設備が変わるため、車両費用は大きく変動します。たとえば、コーヒー販売なら100万円台でスタートできますが、フライヤーや大型調理機器が必要な業態では300万円以上になることもあります。
車両本体以外に、以下の設備が必要です。
・シンク(給排水タンク付き)
・冷蔵庫・冷凍庫
・ガスコンロまたはIH調理器
・発電機
・換気扇
・作業台
これらを揃えるためにかかる費用は 50〜150万円程度 が目安です。
営業許可申請料:1〜2万円
営業用の容器・消耗品:5〜10万円
保険加入(自動車保険+PL保険):年間5〜10万円
合計の初期費用は200〜500万円程度。固定店舗と比べれば格段に安くスタートできます。
キッチンカーで営業するには、固定店舗と同様に「飲食店営業許可」が必要です。ただし、移動販売ならではの注意点があります。
飲食店営業許可(保健所)
保健所に申請し、車両が基準を満たしているか検査を受ける必要があります。
申請手数料は1〜2万円。
食品衛生責任者資格
1日講習(約6時間)で取得可能、費用は1万円前後。
道路使用許可(必要に応じて)
公道で販売する場合は警察署への届出が必要。
出店場所の契約
イベント会場や商業施設では主催者や管理会社との契約が必要。
保健所の管轄が変わる:出店地域が複数県にまたがる場合、それぞれの保健所で許可を取る必要がある。
給排水設備の規定:シンクの数や給水タンクの容量など、車両ごとに基準を満たさなければならない。
出店場所の安定確保:イベント頼みでは売上が安定しないため、定期的に出せる場所を確保する工夫が必要。
固定店舗では500〜1,000万円以上かかることも珍しくありませんが、キッチンカーなら200〜500万円で開業可能。特に低予算で飲食店を始めたい人に向いています。
オフィス街、観光地、イベント会場など、ターゲットに合わせて柔軟に出店場所を変えられます。売上が見込めない場所から撤退することも容易です。
固定店舗は立地に失敗すると致命的ですが、キッチンカーは出店場所を変えることでリスクを軽減できます。コロナ禍のような外部要因にも柔軟に対応可能です。
車体デザインやSNSでの発信により、話題性を作りやすく、口コミや写真で拡散されやすいのも強みです。
天候やイベントの有無によって売上が大きく変動します。固定の出店場所を確保できなければ、安定経営は難しくなります。
限られた車内スペースで調理を行うため、提供できるメニューは限定されがち。効率的なオペレーション設計が必要です。
車両が壊れれば営業そのものができなくなります。メンテナンスや保険は必須です。
地域ごとに規制が異なり、複数の保健所で許可を取る手間がかかる場合があります。
| 項目 | キッチンカー | 固定店舗 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 200〜500万円 | 500〜1,000万円以上 |
| 家賃 | なし(出店料あり) | 毎月発生 |
| 売上の安定性 | 低い | 高い |
| メニュー自由度 | 制限あり | 高い |
| 出店場所 | 自由に選べる | 固定 |
| 撤退リスク | 低い | 高い |
キッチンカーは、低コストで開業できる反面、売上が安定しにくいという課題があります。
一方、固定店舗は安定的に経営できるものの、立地の失敗が致命的なリスクになります。
👉 最近では、**「キッチンカーで実績を積んでから固定店舗を開業する」**という流れも増えており、リスクを分散しながらステップアップできる手段として注目されています。
キッチンカーは200〜500万円程度で開業可能
必要な許可は「飲食店営業許可」「食品衛生責任者資格」が基本
出店場所を自由に選べる一方、売上の安定性や車両トラブルがデメリット
固定店舗と比較して、リスク分散の手段としても有効
飲食店開業と聞くと「店舗を構える」イメージが強いですが、キッチンカーは低コストで自由度が高い開業スタイルです。初めて飲食業に挑戦する方にとって、試験的に事業を始められる魅力的な選択肢といえるでしょう。