飲食店を開業する際、物件選びや内装工事に目が行きがちですが、見落としてはいけないのが「水道工事」です。厨房では大量の水を使い、排水や衛生管理は営業許可の合否を左右する重要なポイントとなります。特に初めて開業するオーナーにとって「どんな基準があるのか」「費用はどのくらいかかるのか」「DIYで対応できる部分はあるのか」といった疑問は大きなハードルになるでしょう。
この記事では、飲食店営業許可で求められる水回りの基準、水道工事にかかる費用相場、DIYとプロ工事の区分、工事を成功させるための注意点や事例を詳しく解説します。これから飲食店開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
飲食店を営業するためには、各自治体の保健所が管轄する「飲食店営業許可」を取得する必要があります。許可を得るためには厨房設備に一定の基準があり、特に水回りは厳しくチェックされます。
シンクは2槽以上必須
調理用と洗浄用を分けるため、2槽シンク以上が求められます。業態によっては3槽シンクを推奨される場合もあります。
手洗い専用シンクの設置
調理シンクとは別に、手洗い専用のシンクを設けることが義務付けられています。
給湯設備(お湯が出る環境)
食器や調理器具を高温で洗浄できるよう、給湯器が必要です。
グリーストラップの設置
油や残飯を含む排水をそのまま流すと下水が詰まるため、油脂分離槽の設置が求められます。
床排水・防水加工
水がたまらず、衛生的に処理できる排水口や床勾配、防水処理も必須条件です。
これらの基準を満たさなければ、営業許可は下りません。工事の前に必ず保健所と相談し、図面段階で確認してもらうのが鉄則です。
水道工事費用は、物件の状態(スケルトンか居抜きか)、店舗規模、厨房の設計によって大きく変わります。以下は一般的な費用相場です。
配管工事(新設・移設):20〜50万円
シンク設置(2〜3槽):5〜20万円
手洗い器設置:3〜10万円
グリーストラップ設置:10〜30万円
給湯器設置:10〜25万円
排水設備・床工事:10〜40万円
合計すると、小規模店舗で50〜100万円程度、中規模以上では100〜200万円程度が目安です。
前テナントが飲食店であれば、シンクや配管が既に整っているため、20〜50万円程度の追加工事で済むケースもあります。
配管から新設する必要があり、100〜200万円以上かかることも少なくありません。初期費用を抑えたいなら、設備が残る居抜き物件を選ぶのが有利です。
・シンクや棚の設置
・蛇口の取り付けや交換
・簡単な防水処理
・配管の新設や移設
・グリーストラップの設置
・給湯器や排水工事
・保健所基準に関わる部分
「DIYでやって失敗 → 検査に落ちる → やり直し工事で余計にコスト増」という事例は多いため、基幹工事は必ず専門業者に依頼するのが正解です。
工事前に必ず保健所に相談
設計図を持参し、事前確認を受けることで無駄な工事を防げます。
複数業者から見積もりを取る
同じ内容でも業者によって費用差が大きく出ます。必ず2〜3社で比較しましょう。
将来の拡張を見据える
売上が伸びた後に厨房を拡張する場合を考え、余裕ある設計にしておくと安心です。
スケジュール管理が重要
水道工事は内装工事や設備導入と密接に関わるため、開業スケジュール全体に影響します。
既存の配管を活用し、シンクと給湯器を交換するだけで営業許可を取得。工事費は約30万円。
配管新設・3槽シンク・グリーストラップ導入で約180万円。ただし新規設計のため、厨房導線は理想通りになり、長期的に効率的な運営が可能に。
必要最低限のシンクと給湯設備のみで約50万円。メニューを限定することで水回り工事をシンプル化。
飲食店開業において水道工事は、営業許可取得と衛生管理の要です。
・基準を満たす水回り設備(シンク、手洗い器、給湯、グリーストラップ)が必須
・費用相場は50〜200万円、居抜きなら大幅削減も可能
・DIYは一部のみ、基幹部分は必ずプロへ
・保健所相談・複数見積もり・将来設計が成功のカギ
開業資金の中でも大きな割合を占める水道工事だからこそ、正しい知識と準備でコストを最適化しましょう。