「飲食店を開いてみたいけど、どれくらいお金がかかるのか分からない…」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、飲食店を開業するうえで必要な費用の全体像をわかりやすく解説します。物件取得費から内装工事、厨房機器、運転資金まで、リアルな金額感を数字で把握できます。
さらに、費用を抑える具体的な工夫や補助金の活用方法もご紹介!「予算が不安で一歩踏み出せない」という方の背中を押せるよう、情報を整理しました。
飲食店を開業するには、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2つが必要です。それぞれ性質が異なるため、資金計画では明確に分けて考えることが大切です。初期費用とは、開業前にかかる一度きりの出費のこと。
たとえば、以下のような項目が該当します。
・物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)
・内装・厨房機器費用
・看板・家具・備品
・開業前の広告宣伝費
これらは店舗の立地や広さ、業態によって金額に幅があります。一方で運転資金とは、開業後、売上が安定するまでに必要な経費です。月ごとの固定費や仕入れ代などをまかなうための“余裕資金”と捉えましょう。代表的な項目としては、以下が挙げられます。
・家賃
・水道光熱費
・人件費
・食材などの仕入れ費用
・継続的な広告宣伝費
特に開業当初は「想定よりも売上が伸びない」「仕入れの量が読めない」といったリスクもあるため、3~6ヶ月分の運転資金を見込んでおくのが理想です。このように、開業には「初期費用」+「運転資金」の合計で考えるのがポイントです。次の項目では、まず初期費用の内訳と相場から詳しく見ていきましょう。
飲食店の初期費用は、物件の取得から店舗設備の準備まで、多岐にわたります。以下では、主な内訳ごとに平均的な費用相場をご紹介します。
まず大きな出費となるのが、店舗の物件取得に関わる費用です。
・保証金(家賃の6~12ヶ月分)
・礼金(家賃の1~2ヶ月分)
・仲介手数料(家賃の1ヶ月分)
立地や物件タイプによって大きく変動しますが、都市部・人気エリアの場合、保証金だけで100万円を超えることも珍しくありません。
次に大きな負担となるのが、店内の内装と厨房機器の導入費用です。
・カウンター・テーブル・壁紙・照明などの内装工事
・ガスコンロ・冷蔵庫・シンク・換気設備などの厨房機器一式
・スケルトン物件(何も設置されていない状態)から作り上げる場合は、500万円近くかかることもあります。
ただし、「居抜き物件」を選べば大幅に圧縮可能です。既存の厨房や設備を活用すれば、内装費を100〜200万円台に抑えることもできます。
意外と見落とされがちなのが、備品やオープン前の宣伝費です。
・テーブル・イス・食器・カトラリー類
・レジ、POSシステム、メニュー表、看板
・チラシ・WEB広告・オープニングキャンペーンなどの告知費用
これらをすべて新品で揃えると100万円を超えることもありますが、中古品や手作りを活用することで、コストを抑えることも可能です。他にも資格・開業手続費用(2.5万~4万円)を含めると、初期費用の合計目安:約500〜1000万円になります。
とはいえ、店舗の広さ・業態・立地によって必要な費用は大きく異なります。
たとえば――
・テイクアウト専門の小型店舗:内装も簡素で済み、500万円以下で開業可能な例も
・イートイン中心のこだわりカフェ:家具や内装にこだわる分、700〜900万円程度が目安
・ディナー営業主体の飲食店:厨房機器が高額になりやすく、1000万円以上になることも
このように、自分の業態と開業スタイルに合った費用計画を立てることが第一歩です。次の章では、開業後に必要となる「運転資金」について詳しく解説していきます。
飲食店の開業は、実は開業資金だけでは不十分です。飲食店にとって、開業後の“お金の流れ”をどう支えるかが経営のカギを握ります。なぜなら、開業から数ヶ月間は固定費や仕入れがかかる一方で、売上が安定しないケースが多いためです。
この経営が波に乗るまでの期間を乗り切るために用意しておきたいのが「運転資金」。
簡単に言えば、「お店を継続するための毎月の出費を補う予備のお金」です。ここでは、飲食店の運転資金にかかる費用の目安と内訳を見ていきましょう。
飲食店の運転資金は、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分を確保しておくのが理想です。ここで、一般的な飲食店にかかる月々の運営費用をシミュレーションしてみましょう。
【飲食店の月次経費の目安】
・家賃:10~50万円(立地・広さにより変動)
・水道光熱費:5~10万円(冷暖房・厨房の使用頻度による)
・人件費:10~30万円(アルバイト1~2名を想定)
・仕入れ費用:10~20万円(食材やドリンクなど)
・広告宣伝費:1~3万円(SNS広告やチラシなど)
これらを合計すると、月あたり約35~110万円の出費になります。
初月から十分な売上があるとは限らないため、この金額を数ヶ月分確保しておく必要があります。
【運転資金の目安(3~6ヶ月)】
・月35万円×3ヶ月=約105万円(最低ライン)
・月50万円×6ヶ月=約300万円(ゆとりを持った設計)
つまり、安全にスタートするには200~300万円の運転資金を見込んでおくのが現実的です。特に開業直後は、「予想より集客が少なかった」「仕入れが読めなかった」など予期せぬ出費が起こりがち。そうしたトラブルにも対応できるよう、運転資金を“防波堤”として確保しておくことが大切です。
ここまでに見てきた「初期費用」と「運転資金」を合わせることで、開業に必要な総額のイメージが見えてきます。以下に、よくあるケースを2パターンに分けてご紹介します。
・物件取得費:80万円(保証金・礼金・仲介料など)
・内装・厨房設備費:150万円(居抜き+必要最低限の設備)
・家具・備品・広告費:50万円
・初期費用合計:約280万円
・運転資金(3ヶ月分):35万円×3=105万円
開業に必要な総費用:約385万円
このように、スモールスタートを意識すれば400万円未満で開業できる可能性もあります。
・物件取得費:150万円(駅近物件)
・内装・厨房機器費:350万円(新規で内装+厨房一式導入)
・家具・備品・広告費:100万円(メニュー表・ウェブ広告など)
・初期費用合計:約600万円
・運転資金(6ヶ月分):50万円×6=300万円
開業に必要な総費用:約900万円
内装や設備にこだわると、費用は一気に跳ね上がります。特に都市部の駅近物件を希望する場合は、物件取得費や家賃が高くなる点にも注意が必要です。
このように、開業費用は「何に、どこまでこだわるか」によって大きく変わります。まずは自身のビジネスモデルを明確にし、そこから逆算して必要な金額をシミュレーションしてみましょう。
次章では、少しでもこの費用を抑えるための工夫や補助金制度について紹介していきます。
ここまでで、飲食店の開業には初期費用と運転資金を合わせて500~1000万円程度が必要になることがわかりました。「そんなにかかるの…?」と、思わず尻込みしてしまった方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。実は、工夫しだいで開業費用は大きく節約することが可能です。この章では、飲食店の開業資金を抑える具体的な方法や、活用できる補助金制度について紹介していきます。
少しでも出費を減らすために、まず意識したいのが「固定費と設備費の見直し」です。以下に、開業費用を抑えるための現実的なアイデアをまとめました。
前テナントの設備や内装をそのまま利用できる「居抜き物件」は、初期費用を大幅に圧縮できます。厨房機器・換気設備・カウンターや照明などがすでに整っていることも多く、内装費を100万円以上節約できるケースもあります。ただし、状態や動線が合っていないと改装費がかさむため、物件選びは慎重に。
新品の厨房機器は高額ですが、中古であれば半額以下で購入できることも。冷蔵庫・製氷機・フライヤーなど、耐久性の高い機器は中古でも十分活躍します。
保証付きの中古専門店を選ぶと安心です。
壁のペイントや棚づくり、黒板メニューの作成など、DIYで対応できる部分は意外と多いものです。費用を抑えられるうえ、自分らしいお店づくりにもつながります。最近ではInstagramやYouTubeでDIYのノウハウを学べる時代。仲間や家族と一緒に、楽しみながら開業準備を進めてみてはいかがでしょうか。
チラシの印刷や地域広告にお金をかけるより、InstagramやX(旧Twitter)、Googleマイビジネスの活用がおすすめです。無料で始められ、うまく運用すればオープン初日から多くの集客を見込めます。特に若年層ターゲットの飲食店では、SNSの影響力は侮れません。
「居抜き物件ならコストが抑えられてお得!」
……たしかにその通りなのですが、注意点もいくつかあります。
使えると思っていた機器が動かない・壊れていると、修理や交換に追加費用が発生します。特に冷蔵庫や換気設備などは、プロの目で動作確認してもらうのがベストです。また、中古機器に保証があるかどうかも重要なポイント。保証なしだと、トラブル時の修理費がかさむ恐れがあります。
以前の店舗と業態が違う場合、カウンターやキッチンの位置が合わないことも。そのまま使えず、結局大規模な改装が必要になるケースもあるため、レイアウトは事前にしっかり確認しましょう。
「前の店舗がすぐ閉店した」「近隣とトラブルがあった」など、居抜きには“訳あり物件”が紛れていることもあります。可能であれば、前の店主に話を聞いたり、近隣住民の口コミを確認したりしておきましょう。居抜きは魅力的な選択肢ですが、リスクもきちんと見極めてから契約することが大切です。
居抜き物件の詳しい解説は次の記事で詳しく取り扱っているのでぜひご参考に!
▶初期費用を抑えて飲食店を開業!“居抜き物件”のメリット・デメリットと失敗しない選び方ガイド
「それでも自己資金だけでは足りない……」
そんなときに頼れるのが、公的な補助金や融資制度です。ここでは、飲食店開業に活用できる主要な支援制度を紹介します。
■ 新規開業・スタートアップ支援資金
【概要】創業前後の事業者に対し、無担保・無保証人での融資を実施。
【融資額】最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)
【金利】1~3%台(変動あり)
【ポイント】自己資金が少なくても申請可能。事業計画書がしっかりしていれば、開業直後でも利用できるのが魅力です。
■ 小規模事業者持続化補助金
【概要】商工会議所の支援を受けながら、チラシ作成・販促活動・設備投資などに使える補助金です。
【補助額】上限50万円~200万円(条件により異なる)
【補助率】2/3以内
【ポイント】開業初期の広告・備品費用に充てられるため、小規模な飲食店にぴったり。計画書の提出や事前相談が必要なため、スケジュールには余裕をもって対応を。
■創業支援補助金
【概要】新たに創業する中小企業や個人事業主に対し、事業立ち上げにかかる費用の一部を国が補助。
【補助額】上限200万円(補助率:2/3以内)
【対象経費】設備費、広告宣伝費、店舗改装費、人件費など
【ポイント】開業準備にかかる費用の多くをカバーでき、自己資金の負担を軽減可能。事業計画の実現性や地域経済への波及効果が重視されます。申請には事前準備とスケジュール管理がカギです。
■ IT導入補助金
【概要】業務効率化のためにPOSレジやモバイルオーダーなどを導入する際に活用できる補助金。
【補助額】最大450万円(ツールや導入費用によって変動)
【補助率】最大2/3
【ポイント】人手不足に悩む飲食店では、省力化ツールの導入が売上と業務効率に直結します。クラウド会計・予約管理システムなども対象になることがあります。
■補助金活用のコツ
・いずれも事前申請が必須。開業後では申請できない場合もあるので要注意。
・支援機関(商工会議所など)に早めに相談し、書類作成のアドバイスを受けること。
・「補助=後払い」のケースも多いので、一時的な資金準備も考えておくこと。
飲食店の開業には、「初期費用」と「運転資金」という2つの大きな出費が発生します。物件取得費・内装・厨房設備・広告費などの初期費用は約500〜1000万円、家賃・人件費・仕入れなどの運転資金は200〜300万円程度が目安となります。
こうした費用の合計を踏まえて、無理のない資金設計を立てることが成功への第一歩です。しかしながら、「費用が高すぎて手が届かない」とあきらめる必要はありません。
・居抜き物件の活用
・中古機器の導入
・DIYやSNS活用でのコストダウン
・補助金や融資制度の賢い活用
といった工夫と情報収集によって、大きく費用を抑えることが可能です。さらに、補助金や創業融資といった制度も活用すれば、自己資金だけでは不安な方でもチャレンジしやすくなります。資金面での不安がある方は、まずは商工会議所や金融機関の創業支援窓口に相談してみるのも一つの手です。
✅ 開業資金の不安をひとつずつクリアにすれば、「自分にもできる」という実感が湧いてきます。
「いつかは自分の店を持ちたい」——その想いを形にするために、まずは費用の全体像を把握し、できるところから動き出してみましょう。
▶ 次は「飲食店経営の流れを初心者向けに解説!飲食店の開業前~経営の流れまで完全ガイド(開業編)」をチェックして、具体的なステップを確認!
物件選びから開業届の提出、オープン準備まで、流れをつかむことで、より現実的に動き出せます。