【物件】特集

飲食店開業の内装工事費用っていくら?内装工事費用の相場や内訳、コスト削減のコツは?

作成者: 柴田彩|Oct 31, 2025 10:36:51 AM

 

飲食店の開業において、内装工事は最も重要かつ費用のかかる要素の一つです。

成功する飲食店を築くために、内装工事費用の相場や内訳、コスト削減のコツについて詳しく解説します。

 

飲食店内装工事費用はどのくらい?

飲食店の開業における内装工事費用は、開業資金全体の中でも特に大きな割合を占めます。日本政策金融公庫の「創業の手引+」によると、飲食店の開業資金のうち、内外装工事の費用は全体の41.7%を占めており、開業資金の50%以上がこの分野に投じられることも珍しくありません。

この高い比率は、飲食店が顧客に快適な空間を提供し、ブランドイメージを構築するために必要不可欠な投資であることを示しています。内装は「お店の顔」として機能し、顧客の第一印象を決定づける重要な要素となるからです。

坪単価による内装工事の費用相場は?

基本的な坪単価相場

飲食店の内装工事において、坪単価は最も一般的な費用計算の基準となります。1坪は約3.3平方メートルに相当し、この単位あたりの工事費用を基に全体の予算を算出します。

2025年最新の坪単価相場:

  • 一般的な飲食店:30万円~80万円/坪
  • 高級レストラン・特別仕様:60万円~100万円/坪
  • カジュアルダイニング:40万円~60万円/坪
  • カフェ・軽飲食:30万円~50万円/坪

物件タイプ別の費用差異

スケルトン物件の場合

スケルトン物件は、コンクリート打ちっぱなしの状態で引き渡される物件です。

この場合、全ての内装工事を一から行う必要があるため、費用は最も高くなります。

  • 坪単価:50万円~100万円
  • 工事期間:1.5~3ヶ月
  • メリット:完全にオリジナルな店舗設計が可能
  • デメリット:高額な初期投資、長い工事期間

居抜き物件の場合

前のテナントが残した設備や内装を活用できる居抜き物件では、大幅にコストを削減できます。

  • 坪単価:15万円~30万円
  • 工事期間:2週間~1ヶ月
  • メリット:低コスト、短期間での開業可能
  • デメリット:デザインの制約、設備の劣化リスク

店舗規模による単価の変動

店舗の規模は坪単価に大きな影響を与えます。一般的に、小規模店舗ほど坪単価が高くなる傾向があります。

5坪以下の小規模店舗

  • 坪単価:60万円~100万円
  • 理由:固定費の分散が困難、効率性の低下

10~20坪の中規模店舗

  • 坪単価:40万円~70万円
  • 理由:バランスの良い効率性とコスト配分

30坪以上の大規模店舗

  • 坪単価:30万円~60万円
  • 理由:スケールメリットによるコスト削減効果

内装工事費用の詳細内訳は?

主要工事項目と費用配分

基礎工事・構造工事(20~25%)

  • 電気工事:配線、分電盤、照明設備
  • 給排水工事:上下水道、ガス配管
  • 空調工事:エアコン、換気扇設備
  • 坪単価:8万円~15万円

内装仕上げ工事(30~35%)

  • 床工事:フローリング、タイル、クッションフロア
  • 壁工事:クロス貼り、塗装、タイル貼り
  • 天井工事:石膏ボード、クロス、塗装
  • 坪単価:12万円~20万円

厨房関連工事(25~30%)

  • 厨房機器設置
  • 排水・排気設備
  • 防火・衛生設備
  • 坪単価:10万円~18万円

什器・備品(15~20%)

  • テーブル・椅子
  • カウンター
  • 収納設備
  • 装飾品
  • 坪単価:6万円~12万円


内装工事費用の地域差と時期による変動

地域による費用差

  • 東京都心部:相場の120~150%
  • 大阪・名古屋等大都市:相場の110~130%
  • 地方都市:相場の90~110%
  • 人口5万人以下の地方:相場の80~100%

時期による費用変動

  • 繁忙期(3~4月、9~11月):相場の110~120%
  • 閑散期(1~2月、6~8月):相場の90~100%
  • 年末年始:相場の120~130%(緊急対応費含む)
  •  

内装工事費用を正確に見積もるためのチェックポイント

現地調査時の確認事項

◻︎既存設備の状況と再利用可能性
  • ◻︎電気容量と追加工事の必要性
  • ◻︎給排水の位置と移設工事の要否
  • ◻︎構造的な制約と特殊工事の必要性
  • ◻︎搬入経路と作業スペースの確保

隠れたコストの把握

  • ◻︎解体・撤去費用:既存内装の撤去
  • ◻︎産業廃棄物処理費:解体材の処分
  • ◻︎養生費:周辺への配慮と保護
  • ◻︎駐車場代:工事車両の駐車費用
  • ◻︎近隣対策費:工事説明と騒音対策

追加工事が発生しやすい項目

◻︎構造補強工事:梁や柱の補強
  • ◻︎防水工事:漏水対策
  • ◻︎害虫駆除:既存建物の衛生対策
  • ◻︎配管移設:レイアウト変更に伴う工事
  • ◻︎電気容量増設:大型機器設置時

レストラン・高級ダイニング

高級感のある内装や特殊な設備が必要となるため、最も費用が高くなる業態です。

  • 坪単価:60万円~100万円
  • 特徴:高品質な材料、特注什器、照明演出
  • 重要な投資項目:音響設備、空調、個室設備

カフェ・喫茶店

居心地の良い空間作りが重要で、デザイン性を重視した内装が求められます。

  • 坪単価:40万円~60万円
  • 特徴:おしゃれな内装、Wi-Fi設備、カジュアルな雰囲気
  • 重要な投資項目:照明デザイン、カウンター設計

ファストフード・テイクアウト店

効率性と回転率を重視した機能的な内装が中心となります。

  • 坪単価:30万円~50万円
  • 特徴:シンプルな内装、効率的な動線
  • 重要な投資項目:厨房効率化、客席の回転率向上

居酒屋・バー

雰囲気作りが売上に直結するため、照明や音響設備への投資が重要です。

  • 坪単価:45万円~70万円
  • 特徴:間接照明、防音対策、アルコール提供設備
  • 重要な投資項目:カウンター、個室、音響設備

内装工事費用を効果的に削減するには?

1. 居抜き物件の活用法

居抜き物件を選択することで、内装工事費用を大幅に削減できます。特に前テナントと同じ業態の場合、厨房設備や配管工事が不要となり、最大で70%のコスト削減が可能です。

居抜き物件選択のポイント:

  • 設備の状態と残存価値の評価
  • 自店舗コンセプトとの適合性
  • 必要な追加工事の見積もり
  • 保証期間と修理責任の確認

2. 工事範囲の段階的実施

開業時に全ての理想を実現しようとせず、段階的に内装を完成させる戦略も有効です。

段階的実施の例:

  • 第1段階:営業に必要な最低限の工事
  • 第2段階:売上が安定してからの追加工事
  • 第3段階:リニューアルを兼ねた最終完成

3. 材料・設備のグレード調整

高額な材料や設備を全面的に使用するのではなく、顧客の目に触れる部分とそうでない部分でメリハリをつけることで、コスト効率を向上させます。

グレード調整の戦略:

  • 客席エリア:高品質な材料とデザイン
  • バックヤード:機能性重視の実用的な仕様
  • 見えない部分:標準グレードでコスト削減

4. 複数業者からの相見積もり

内装工事は業者によって得意分野や価格設定が大きく異なります。最低でも3社以上から見積もりを取得し、価格と品質のバランスを比較検討することが重要です。

見積もり比較のポイント:

  • 工事内容の詳細な内訳
  • 使用材料の品質と仕様
  • 工期と保証内容
  • 追加工事の可能性と費用

5. DIYと専門工事の使い分け

技術的に困難でない部分については、DIYを活用することでコストを削減できます。ただし、電気工事や給排水工事などの専門性の高い分野は必ず専門業者に依頼しましょう。

DIY可能な工事:

  • 塗装工事(一部)
  • 什器の組み立て
  • 装飾品の設置
  • 清掃・仕上げ作業

専門業者必須の工事:

  • 電気工事(資格が必要)
  • 給排水工事
  • ガス工事
  • 構造に関わる工事

資金調達と予算計画

内装工事費用の資金調達方法

自己資金

  • 推奨割合:開業資金の30~40%
  • メリット:金利負担なし、経営の自由度が高い
  • デメリット:資金調達に時間がかかる

金融機関からの融資

  • 日本政策金融公庫:新規開業者向けの融資制度
  • 地方銀行・信用金庫:地域密着型の融資
  • 制度融資:自治体の開業支援制度

リース・レンタル

  • 厨房機器のリース活用
  • 什器備品のレンタル利用
  • 初期費用の分散効果

予算配分の最適化

内装工事費用は開業資金全体の30~40%に収めることが理想的とされています。この範囲内で効果的な配分を行うことで、開業後の運転資金を確保できます。

理想的な開業資金配分:

  • 内装工事費:30~40%
  • 厨房機器・設備:15~20%
  • 運転資金:25~30%
  • その他(保証金、備品等):15~20%

業者選定のポイントと注意事項

優良業者の見極め方

実績と専門性

  • 飲食店内装の施工実績
  • 同業態での経験と知識
  • 施工事例の品質レベル
  • アフターサービスの充実度

提案力とコミュニケーション

  • コンセプトの理解力
  • 予算内での最適な提案
  • 工期の現実性
  • 問題発生時の対応力

資格と保険

  • 建設業許可の有無
  • 必要な技術資格の保有
  • 工事保険の加入状況
  • 保証期間と内容

契約時の注意点

詳細な仕様書の確認

  • 使用材料の品質と数量
  • 工事範囲の明確化
  • 追加工事の条件
  • 完成予定日の確定

支払い条件の確認

  • 着手金の額と支払いタイミング
  • 中間払いの条件
  • 完成後の支払い条件
  • 保証金の取り扱い

内装工事費用の詳細見積もりと予算管理

詳細見積書の読み方と注意点

内装工事の見積書は、項目が多岐にわたり複雑になりがちです。適正な費用かどうかを判断するために、見積書の構成要素を理解することが重要です。

見積書の基本構成:

  • 直接工事費:材料費、労務費、機械経費
  • 共通仮設費:足場、養生、清掃費用
  • 現場管理費:工事監督、品質管理費
  • 一般管理費:本社経費、利益
  • 消費税

材料費と工賃の内訳確認

  • 材料のグレードと数量の妥当性
  • 工賃の単価設定(地域相場との比較)
  • 廃材処理費用の計上
  • 追加工事の条件と単価

工事段階別の支払いスケジュール

内装工事は通常、工事の進捗に応じて分割払いが行われます。資金繰りを考慮した適切な支払いスケジュールを設定することが重要です。

一般的な支払いスケジュール:

  • 契約時:工事費の10~20%(着手金)
  • 中間払い:工事費の30~40%(躯体工事完了時)
  • 中間払い:工事費の30~40%(内装工事完了時)
  • 完成時:工事費の10~20%(検査・引渡し後)

内装材料のグレード別価格比較

床材の詳細価格帯(施工費込み/1㎡あたり)

  • エコノミークラス:3,000円~5,000円
    • クッションフロア、カーペットタイル
  • スタンダードクラス:5,000円~8,000円
    • フロアタイル、ラミネートフローリング
  • プレミアムクラス:8,000円~15,000円
    • 無垢フローリング、天然石タイル
  • ラグジュアリークラス:15,000円~30,000円
    • 高級無垢材、輸入タイル、天然大理石

壁材の詳細価格帯(施工費込み/1㎡あたり)

  • エコノミークラス:2,000円~4,000円
    • 一般的なビニールクロス、水性塗料
  • スタンダードクラス:4,000円~7,000円
    • 機能性クロス、珪藻土塗装
  • プレミアムクラス:7,000円~12,000円
    • 天然素材クロス、左官仕上げ
  • ラグジュアリークラス:12,000円~25,000円
    • 輸入クロス、特殊塗装、タイル貼り

設備工事の詳細費用分析

電気工事の詳細内訳

  • 分電盤工事:15万円~30万円
  • コンセント・スイッチ工事:1箇所3,000円~8,000円
  • 照明器具工事:1台5,000円~20,000円
  • 専用回路工事(エアコン等):1回路15,000円~25,000円
  • LED照明への変更:器具代+工賃で1台8,000円~30,000円

給排水工事の詳細内訳

  • 給水管工事:1m 8,000円~15,000円
  • 排水管工事:1m 10,000円~20,000円
  • 給湯設備工事:30万円~80万円
  • 手洗い設備工事:1箇所15万円~40万円
  • 厨房用給排水工事:50万円~120万円

空調工事の詳細内訳

  • 家庭用エアコン設置:1台8万円~15万円
  • 業務用エアコン設置:1台20万円~50万円
  • ダクト工事:1m 8,000円~15,000円
  • 換気扇設置:1台3万円~10万円
  • 全熱交換器設置:1台15万円~30万円

まとめ

飲食店の内装工事は、単なるコスト要因ではなく、長期的な事業成功のための重要な投資です。適切な予算配分と戦略的な工事計画により、コストを抑えながらも魅力的な店舗空間を実現することが可能です。

成功のためのポイントは、明確なコンセプトの設定、現実的な予算計画、信頼できる業者の選定、そして段階的な完成を目指す柔軟性です。これらの要素を総合的に考慮し、お客様に愛され続ける飲食店の基盤を築いていきましょう。

内装工事は一度完成すれば長期間使用するものです。開業時の初期投資をケチって後々問題が生じるよりも、適切な投資により長期的な成功を目指すことが賢明な経営判断といえるでしょう。