「6月下旬になると急にお客さんの財布のひもが緩む」——これを意識的に活かせている飲食店と、何となく売上が上がった気がする程度で終わる飲食店では、年間の利益に大きな差がつきます。
夏ボーナスの支給時期は6月下旬〜7月上旬に集中します。この2〜3週間は、飲食店にとって年間でも数少ない「高単価メニューが自然に受け入れられる時期」です。準備した店舗だけが恩恵を受けます。
2025年の夏ボーナスは、全産業で増加傾向が続いています。帝国データバンクの調査では正社員1人あたりの平均支給額が45.7万円、経団連加盟の大手企業では99万848円と1981年以降の過去最高額を4年連続で更新しています。
「旅行や外食」に使うと答えた人が28.1%という数字は、実は非常に有望な市場規模を示しています。ボーナス支給者の約3割が外食に使う意向を持っているということは、6月下旬〜7月は来店客の「財布の中身が違う」タイミングだということです。
また外食全体のディナー時の平均支出額は「2,000〜3,000円未満」がボリュームゾーンですが(マイボイスコム2025年調査)、ボーナス支給後は「せっかくだから奮発したい」という心理が働き、いつもより高い選択肢を選びやすくなります。
飲食店にとってのボーナス商戦は「新規客を増やすより、既存客の客単価を上げるチャンス」です。普段は選ばれないプレミアムメニューが自然と注文される、1年でも限られた時期です。
ボーナスが出た直後の消費行動には、心理学的な理由があります。「臨時収入はいつものお金と違う財布から出す感覚になる」——これをメンタルアカウンティング(心の財布)と呼びます。普段1,500円のランチを食べている人も、ボーナスが出た月は5,000円のコースをためらわず選べるのです。
この時期に高単価メニューの来店率が上がる背景には、以下の3つの要因があります。
ボーナスで「ご褒美外食」をしたい心理が高まる
ボーナス支給を機に会食・家族外食が増える
裏を返せば、この時期に「いつも通りのメニュー・価格帯」しか提供していない飲食店は、顧客の消費意欲が高まっているのに恩恵を受けられていないということです。
高単価メニューの設計で最も効果的なのは「松竹梅」の3段階コース設計です。飲食店の客単価向上研究でも確認されている通り、人間は3つの選択肢の中から「中間」を選びやすい傾向(ゴルディロックスの原理)があります。
この心理を活かし、「竹プラン」を最も粗利が取れる設計にしておくのが鉄則です。
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🌿 梅プラン |
🎋 竹プラン |
🌸 松プラン |
| 価格帯 |
7,000〜9,000円 |
11,000〜13,000円 |
16,000〜20,000円 |
| ターゲット |
3〜4人グループ・平日利用 |
2〜3人・週末ディナー |
接待・記念日・会食 |
| 狙い |
来店数×回転率 |
★粗利を最大化 (高原価率設定) |
ブランディング& 高単価実績づくり |
| 特典例 |
ウェルカムドリンク1杯 |
ペアリングドリンク付き |
サービス料込・個室確約 |
重要なのは、竹プランを「高原価率」で設計することです。飲食店ドットコムの調査によると、原価率を思い切って60%程度に設定した高原価メニューは、お客様にとって明らかに「お得で美味しい」と感じられるため、注文率も口コミにも繋がりやすくなります。「単価が高いのに高原価」という設計が、ボーナス時期のプレミアム消費心理に刺さります。
普段のメニューより1.5〜2倍の価格帯のコースを「夏のご褒美コース」「ボーナスお疲れ様コース」といったネーミングで6〜7月限定として打ち出します。期間限定性と「ボーナス後の自分へのご褒美」というシーンを重ねることで、来店動機が生まれます。
コース内容には、普段の単品では提供しにくい希少食材・手間のかかる調理法・特別な演出を組み込むことで「なぜこの価格なのか」の納得感が生まれます。
通常のメニューブックとは別に、ボーナス商戦期間だけの「プレミアム差し込みメニュー」を用意します。別紙で提供することで「特別なメニューが今だけある」という特別感が演出でき、価格比較ではなく料理の価値で注文を検討してもらいやすくなります。
花王プロフェッショナルの調査でも、メニューブックのデザインを変えるだけで客単価が上がることが確認されています。差し込みメニューは印刷コストも低く、ボーナス商戦期間だけ差し替えることができます。
「お得な情報をお伝えしてもよろしいですか?本日はボーナス感謝コースとして、通常より1,000円お得にこちらのコースをご案内できます」——このようなスクリプトをスタッフ全員が使えるようにすることで、属人的な「売れる店員の勘」から脱却できます。
ポイントは「高いものを売る」のではなく「よりお得で満足度の高い選択肢を提案する」というスタンスです。お客様側が「親切に教えてもらえた」と感じれば、追加注文のハードルは下がります。
料理とドリンクを同一メニューページに掲載し、「この料理に合うお酒はこちら」と自然に目に入るデザインにするだけで追加注文率が上がります。
特にボーナス時期は「ちょっとだけ贅沢なお酒を飲みたい」という心理が働きます。ハーフボトルのワイン・クラフトビール・高めの日本酒などを「この料理と一緒にどうぞ」と添えることで、飲料収益が大きく変わります。ドリンクは原価率が低いため、追加注文1杯が利益率に与えるインパクトは料理の追加より大きいです。
「本日〇食限定」「週末限定10組」など、数量を制限することで「今逃すと食べられない」という心理が働きます。実際にSNSや予約サイトで「残りわずか」表示が出ると、予約転換率が上がることが多く報告されています。
飲食店ドットコムの調査でも、「1日〇食限定」「◯月末まで」という限定性を明示した告知が、注文を後押しすることが確認されています。
夏ボーナスの支給は6月下旬〜7月上旬に集中しています。ボーナスが入ってから「どこに行こうか」を考え始める人も多いため、告知は6月中旬から始めるのが理想です。ただし告知が早すぎると「まだ先の話」として流されるため、集中して動かす時期は6月10日〜7月10日が狙い目です。
告知が遅れてブームが去った後に提供を開始しても効果は半減します。ボーナス商戦は「仕込みの早さ」が勝負の8割を決めます。
ボーナス商戦は短期間に集中する特性上、複数店舗での対応がバラバラになりやすい時期でもあります。以下の3点を組織的に整えることで、全店一体で恩恵を受けられます。
通常の月は「客数×客単価」で売上目標を立てますが、ボーナス商戦期間は「6月下旬〜7月の客単価を+○○円引き上げる」というKPIを別途設定します。これにより、スタッフが高単価メニューを提案する意義を数値で実感できます。
例えば「1日50組×客単価アップ1,000円=1日+5万円、20日間で+100万円」と計算して可視化すると、現場の動機づけになります。
各店が独自に動くと、品質・価格のばらつきが生まれます。コースの基本仕様(品数・価格帯・サービス内容)は本部が設計し、食材・料理の細部は業態・立地ごとに各店が調整する役割分担が最も機能しやすいです。
ボーナス商戦が終わったら、各店の「客単価の変化」「プレミアムコースの注文率」「SNS告知からの予約数」をまとめ、全店に展開します。うまくいった店舗のノウハウを横展開することで、翌年のボーナス商戦の精度が上がります。
夏ボーナスが支給される6月下旬〜7月上旬は、飲食店にとって1年で最も「高単価メニューが受け入れられやすい」タイミングのひとつです。2025年の大手企業ボーナスは過去最高の99万円超、全産業平均でも45.7万円と増加傾向にあります。
でも、「ボーナス商戦」を意識していない飲食店は、この波に乗れずにいます。今からでも遅くありません。まず取り組むべき最初の一手は以下の3つです。
この3つを6月上旬に動かすだけで、ボーナス商戦の売上は確実に変わります。「なんとなく忙しくなった夏」を「戦略的に売上を上げた夏」に変えましょう。