「DXって結局、何をすればいいの?」
DXの概念や意義はわかった。でも、いざ「やろう」となると何から手をつけるか迷う——そんな飲食店経営者・店長のみなさんに向けた記事です。前記事「そもそも飲食店のDXって何?」の続編として、今回は「実際に何をするか」に絞って解説します。
結論から言えば、飲食店のDXは「全部いっぺんにやらなくていい」。自店の一番痛い課題に刺さる1つのツールから始めれば十分です。
ツールを先に選ぶのではなく、「今一番困っていること」から逆算することが飲食店DXを失敗させないコツです。
よくある失敗パターンは「とりあえず流行っているツールを入れたけど誰も使わない」。これを防ぐには、導入前に課題を整理することが不可欠です。
→ 注文・会計の自動化(QRオーダー・セルフレジ)
・ホール業務の「注文取り・会計」を削減し、少人数でも回せる体制にする
・ピークタイムのオペレーション負荷を大幅に軽減
・まずはランチ帯や限定席から段階導入し、現場の抵抗を減らす
→ ネット予約システムの導入
・24時間自動で予約受付、電話対応の時間を削減
・取りこぼし防止+営業時間外の予約獲得が可能
・グルメサイト・自社サイト・SNSと連携し導線を一本化
→ POSレジによるデータ可視化
・「曜日×時間帯×客数・客単価」を数値で把握
・感覚ではなくデータで施策判断が可能になる
・早割・遅割などの具体施策に直結
→ LINE公式アカウント・顧客台帳のデジタル化
・来店履歴・好みを蓄積し、再来店のきっかけを設計
・クーポン・来店特典で「次回来店理由」をつくる
・常連化=新規集客コスト削減に直結
→ 勤怠・シフト管理ツールの導入
・シフト作成・勤怠管理を一元化し作業時間を削減
・人件費をリアルタイムで可視化
・売上に対する適正人員配置が可能になる
この中で「今一番しんどい課題」を1つ選ぶ。それがあなたの店のDX第一歩です。
成功している店舗は、思いつきで始めず「順序を守っている」という共通点があります。以下の4ステップで進めると、現場の混乱を最小限に抑えながら効果が出やすくなります。
| STEP 1 課題と目標を言語化する |
| 「なんとなくDXしたい」ではなく、「スタッフの残業を週5時間減らしたい」「月次売上集計にかかる時間を半分にしたい」という数値目標を先に決めます。 目標が明確になれば、どんなツールが必要かが自ずと絞られます。 ✅ 今すぐできること A4一枚で「課題 / 目標 / 解決策候補」を書き出すだけでOK。むずかしく考えなくていいです。 |
| STEP 2 コストゼロ〜低コストのツールから始める |
| いきなり高額なシステムを入れる必要はありません。Googleビジネスプロフィール(無料)の更新、LINE公式アカウント(無料〜)の開設、エアレジ(無料〜)の導入など、まずはお金をかけずにできることからスタートします。 小さく始めて、効果が実感できたら次のステップへ進む。この「試す文化」をつくることがDXを続けるコツです。 ✅ 今すぐできること 「無料ツールを1つ試してみる」を今月の目標にしてみましょう。 |
| STEP 3 スタッフに目的を共有してから導入する |
| ツールを突然現場に投入すると混乱が起きます。「なぜこれを入れるのか」「どう業務が変わるのか」を事前にスタッフ全員に説明し、疑問・不安を聞く場を設けましょう。 DXの失敗原因の多くは技術的な問題ではなく「現場の理解不足」です。スタッフが「自分たちのためのDX」と感じられるかどうかが定着率を左右します。 ✅ 今すぐできること 研修やマニュアルより先に「なぜやるか」の1枚スライドをつくって朝礼で共有してみましょう。 |
| STEP 4 効果を測定して次のツールへ進む |
| 導入した後、「どう変わったか」を数値で確認します。電話の対応回数が減ったか、月次集計の時間が短縮されたか——これを記録することで、次のDX投資の判断材料になります。 PDCAを回すことで、1つのツールの効果を最大化しながら次のステップに進めます。 ✅ 今すぐできること 月1回5分、「今月の変化」をメモするだけで十分です。 |
「本当に効果が出るの?」という疑問を持つ方も多いと思います。実際の事例から出た数値をもとに取り組みを紹介します。
| DXの取り組み |
期待できる効果 |
実際の成果例(事例より) |
| ネット予約の導入 |
電話対応の手間を削減、予約取りこぼし防止 |
電話業務50%削減、予約数3割アップ(トレタ事例) |
| POSレジの導入 |
売上・客数データの自動集計、月次分析が楽に |
集計業務の大幅短縮→販売戦略の時間が生まれた(かまくら藤家事例) |
| QRコードオーダーの導入 |
ホールスタッフの注文対応を削減、ミス防止 |
想定の半数以下のスタッフで運営可能に(also事例) |
| 予約台帳のデジタル化 |
顧客データの蓄積、リピート促進に活用 |
予約管理の変更で売上20%アップ(トレタ事例) |
| キャッシュレス決済対応 |
会計スピードアップ、客単価上昇の傾向あり |
キャッシュレス導入後に客単価が上がった事例(飲食店ドットコム調査) |
| LINE公式アカウント活用 |
既存客への再来店促進、クーポン・情報配信 |
LINE受付開始で売上2倍(ラーメン店・トレタ事例) |
「効果はありそうだけど、結局どのツールを最初に選べばいい?」という疑問を持つ方は多いと思います。以下にツールの例を費用感別に整理しました。
| 費用感 |
ツール例 |
主な用途・特徴 |
| 🆓 無料 |
Googleビジネスプロフィール、LINE公式アカウント(基本)、Instagramビジネスアカウント |
MEO対策・ローカル集客、既存客へのDM配信、ビジュアル集客 |
| 💴 月数百〜数千円 |
エアレジ(無料〜)、Airウェイト、Squareレジ(無料〜) |
POSレジ・売上管理、順番待ち管理、キャッシュレス決済 |
| 💴 月1〜3万円 |
ネット予約システム(トレタ・レストランボードなど)、勤怠管理ツール |
予約・顧客台帳デジタル化、シフト管理のデジタル化 |
| 💴 月3〜10万円〜 |
モバイルオーダーシステム、セルフレジ、在庫管理システム連携 |
QRオーダー・自動集計、会計自動化、在庫・発注管理の自動化 |
多くの専門家が推奨しているのは「まず無料ツールを全部整備してから、有料ツールを検討する」という順番です。Googleビジネスプロフィール・LINE公式・Instagramのビジネスアカウントはいずれもゼロ円で始められます。
別々のシステムをいくつも入れるより、複数の機能を備えた一つのシステムを入れる方がコスト効率が高くなります。最初から管理を一元化できるか確認して選びましょう。
「とりあえず入れてみた」が最も多い失敗パターン。解決策は前述のSTEP1——課題と数値目標を先に言語化することです。
「店長だけ使いこなせて、現場には浸透しない」という状態。ツールの操作説明より、「なぜやるか」の共有を先にすることが大切です。スタッフが「自分たちのためのDX」と感じられるかどうかが定着率を決めます。
「やるならまとめてやろう」は逆効果になりやすい。1つのツールを現場に定着させてから次へ進む「段階導入」が最も安定した成果につながります。
2店舗・3店舗以上展開している場合、各店舗がバラバラにDXを進めると管理コストが倍増します。
「本部が方針を決め、現場が使いやすい形に調整する」という役割分担が多店舗DXの鉄則です。
データを全店で一元管理できれば、「どの店がどの時間帯に売上が落ちているか」「人件費が高い店舗はどこか」がひと目でわかるようになります。これが多店舗展開においてのDX最大の価値です。
飲食店DXの第一歩は、難しいことではありません。今日から始められることは次の3つです。
「全部いっぺんにやらなくていい」「小さく始めて効果を確認する」——この2つを念頭に置いて進めれば、飲食店DXは必ず前に進みます。
まずは小さい一歩から、今回紹介した内容を参考に始めてみましょう。