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ホルモン焼の名店に新代表が加わり、鮮魚の新業態に挑戦する

作成者: 千葉 哲幸|Apr 2, 2026 5:00:00 AM

3月5日、東京・高田馬場駅近くのビル地下1階に「魚群 GYOGUN」という鮮魚をメインにした居酒屋がオープンした。経営は株式会社木々家(はやしや、本社/東京都豊島区、代表/林田博之・小島有史)。「木々家」は、2008年東京・池袋にホルモン焼の居酒屋を創業し、以来、商品力が高いことから多くのファンに愛されて、ドミナント展開している。鮮魚業態へのチャレンジは初である。

 

二人代表で「木々家再建プロジェクト」を推進

同社が新業態をオープンした背景には、同社二人代代表の一人、小島有史氏(32歳)の存在がある。小島氏は1993年8月生まれ、神奈川県出身。新卒で入社した会社で、もつ焼きの修業を経験。その3カ月後に同社直営のもつ焼き店の運営を任された。

 

このとき、後に代表取締役社長に就任する「木々家」を参考にして、同社代表の林田博之氏と懇意となった。その後、小島氏は別の業界に就く。このとき、コロナ禍にあって木々家の窮状を知ることになり、小島氏は林田氏より、同社に関わることを依頼された。そして小島氏は直接コミットする道を選び、同社の株式を取得、代表取締役社長に就任。林田氏と二人代表となり、改革を推進した。

その「木々家再建プロジェクト」は、このように進められた。

まず、同社には外部のコンサルタントが異様に多かった。この方々全員に辞めてもらった。

次に、お店が9店舗あったものを、池袋だけの5店舗に絞った。

そして、アルバイト中心の店舗運営を止めた。そもそも代表の林田氏が、アルバイト中心にした要因とは、幹部を育成することに疲弊してからであった。そこで、小島氏が「チームづくりは私に任せてください」と、人材を集めていき、新しいチームをつくっていった。

 

この中で、採用要件を「スキル採用」から「ポテンシャル採用」へ移行した。

同社ではそれまで、「スキル採用」を行っていた。これはお店の即戦力となったが、一方で技術に対する自信があることから、組織文化を壊すというデメリットもあった。

そこで、即戦力ではなく、木々家のカルチャーに合う人材であれば、「未経験者」でもよいという採用方針に切り替えた。

以前、喫茶店が営業していたスペースをオープンキッチンの居酒屋リニューアル(21坪、46席)

さらに、宮崎にあるジャパン物産株式会社をM&Aによって子会社化した。ここでは食肉加工を行っていて、ホルモンの串打ちを行っている

そこで、ここで串打ちしたものをお店に届けることによって、従業員はお客様に喜んでいただくという「接客に専念する」体制をつくった。こうして、同社では従業員も増えていき、いまでは120人が在籍している。会社も利益体質になった。

 

同社の「二人代表」の役割は、林田氏が、会社を存続させるためにお金の流れをつくること。小島氏は、会社における「リーダーシップ」であり、未来のかじ取りを担っている。

 

持続可能な漁業や地域の未来に目を向ける

小島氏にとって、今回の新業態がひらめいた背景に、小島氏の原体験が存在する。

小島氏は、北海道の紋別に、現地の漁師さんの招きで鮭釣りに行った。そして、漁師さんが導いてくれたスポットで釣りをはじめた。しかしながら、一向に釣れない。

 

その後、漁師さん同士が連絡を取り合って、スポットを少しずらすことになった。すると、ここでは重りを付けた糸を垂らすだけで、マサバがどんどん釣れて。30分間で160匹釣れたという。

 

小島氏はこの経験から、「海の環境は激しく変化していて、循環している」ということを学んだという。そして「このギャップを埋めるようなことをしたい」と、考えるようになった。


魚種にこだわらずに、その日に取れた鮮魚でメニューを組み立てるというスタンス

このような経験をした後に、株式会社ミナデイン代表の大久保伸隆氏(41歳)と出会った。

大久保氏は、株式会社エー・ピーホールディングスの副社長を務めた人物で、「塚田農場」をはじめとした店舗展開を推進してきた。2018年6月に現在の会社を設立して、飲食店の展開とコンサルティングを行っている。

 

大久保氏が日ごろ唱えていることは、「まちに個性を。」ということ。前職では、一つのブランドを100店舗つくることの大切さを学び、いまは「毎回1店舗目をつくる。それを100回行なう」という考え方をとっている。小島氏は、この考え方に共鳴しているという。

 

木々家の経営理念は、「相手よし、自分よし、社会よし」である。そこで新業態では、漁師さんと料理、人と海、いまと未来をつなぐ。このような感覚で、食材の背景やストーリーを大切にしながら、長く地域に愛される店舗をつくるという発想を抱いている。

 

仕入れには山口県萩大島の漁師さんの集団である「船団丸」をはじめとして、漁業の現場で新たな取組に挑戦している生産者たちのネットワークを活用していく。

提供するメニューは、あらかじめ魚種を限定しないで、その日に水揚げされた魚と向き合いながら調理を行う。こうして、「持続可能な漁業や地域の未来に目を向けるきっかけをつくっていきたい」と、小島氏は語る。


「漁港直送!魚群盛り」2人前、1580円(税込、以下同)。その日に獲れた魚を、食感が伝わりやすい「ぶつ切り」で提供する

お店が持つエネルギーを接客に集中させる

今後の店舗展開は、直営に加えて加盟店も募っていく方針。加盟店は地方で飲食業を営んでいて、「地元愛のある人が望ましい」(大久保氏)としている。加盟金が高く、ロイヤルティも何%という具合に、杓子定規なビジネスモデルではなく、地域社会にアジャストした感覚で、「『人の群れが海を守る』という流れを浸透させていきたい」(小島氏)としている。

 

小島氏は、このように語る。

「私が、木々家で取り組んで経験したことは、『人が集まってくる環境』ということです。『魚群』が取り組んでいることは、食材を画一化しない、職人を置かない、ということです。そこで重視していることは、これらを省いている分のエネルギーを、接客に傾けるということ。ここから店とお客様との関係性は密接になっていきます」

 

「魚を捌く技術を店のスタッフの全員が持っている必要があるのか、というそうではない。誰かがその技術を持っていればいいことです。飲食店の中での仕事の仕方は『順番』であっていい。まず、ホールをやって、そこでお客様にもっとちゃんとお伝えしたいと思うようになり、キッチンを覚えたいと。このような形で人材は磨かれて行きます」

 

「ですから『魚群』のスキームとは、店を一気に多店舗展開することを前提に考えてはいません。基本的に『海』とは常に動いている。このような形で、これからの『協業』の形しかり、店と人材、お客様との関係性の中に『循環』をつくっていくことを命題としています」

 

ホルモン焼の名店「木々家」にとって、新業態の鮮魚の取組は始まったばかりである。同社の経営者に小島氏が加わり、さらに柔軟な発想で飲食業を切り拓く大久保氏がアドバイザーとなることによって、木々家の業容は大きく変化していくことであろう。

「押し寿司」各980円。ご飯と鮮魚を押し寿司の「型」に入れてつくることで、形状やクオリティの均一化を図っている