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さまざまな事業を展開する過程で飲食業の吉祥寺ドミナントにシフトする - e店舗 produced by G-FACTORY

作成者: tetsuyuki_chiba|Aug 19, 2024 12:00:44 PM

 

6月5日、東京・吉祥寺の北口方面に「寿司とおでん コエド」(以下、コエド)がオープンした(16坪30席)。吉祥寺の北口と言えば、ハーモニカ横丁から入った、庶民的でカオスな雰囲気のにぎわいを連想するが、「コエド」があるのは、その向かい側あたり、ヨドバシカメラの裏手である。なんとなく落ち着いた風情がある。

「コエド」を経営するのは有限会社ソフトライン(本社/東京都調布市、代表/馬部博幸)で、アイキャッチの人物が代表の馬部氏である。

 

「寿司とおでん」にSDGsの発想を取り入れる

「コエド」のコンセプトは「日本の魚食文化の促進と復興」である。江戸時代から庶民に親しまれたすしとおでんは、日本のおいしい食を伝えるためには最適なものとして考え出された。このコンセプトに基づくメニュー構成によって、同店は幅広い客層に受け入れられて、さらに若い世代が食文化が受け継いでいくアットホームな店を目指すという。

 

メニューのコンセプトには「SDGs」も掲げられている。魚や野菜は規格外のものを積極的に使用して、「サスティナブルな居酒屋」を目指すということだ。そこで「お通し」(330円/税込、以下同)は規格外の大根による「鶏白湯大根おでん」。このほか、看板メニューとして「鶏白湯おでん3種盛り」660円、「コエド刺身5種盛り」2人前から968円、「寿司おまかせ5貫盛り」1518円、「境港直送!アジフライ」1枚385円となっている。親しみやすいメニューが看板メニューとなって注文しやすい。

「すし」と「おでん」「アジフライ」を軸にして通年親しみやすいメニューで構成している

 

「コエド」の前の店舗はFC加盟店として営業していたが、このたび新しいコンセプトの自社直営店舗に切り替えることを想定した。

 

そこで紹介された人物が株式会社Pay it Foward代表の宮﨑元成氏(33歳)であった。宮﨑氏は外食の若手経営者の勉強会で熱心に活動し、CVS経営(事業を通じて社会課題を解決することを重視)や、従業員満足の分野で実績を積んでいた。

 

Pay it Forwardでは、SDGsの考え方を取り知れた、マグロの本来捨てられてきた部分もメニュー化して食べ尽くす「マグロスタンダード」という業態を開発、また「コエド」のベースとなるプロデュースによって成功を収めていた。

 

馬部氏は、このような経歴を持つ宮﨑氏と交流を重ねて、ソフトラインの飲食事業部として体制を固めつつある「吉祥寺ドミナント」を揺るぎないものにしようと考えて、宮﨑氏に「コエド」のプロデュースを託した。

 

飲食業で「グローバルダイニング」を目指す

馬部氏は1963年7月生まれ、東京都の出身。青春時代から吉祥寺という街が放つサブカルチャーの世界観に憧れ、この街に親しんでいた。馬部氏は社会人となり、一層ダイナミックな飲食業の世界観に憧れるようになった。いつしか「グローバルダイニング」を目指そうと考えるようになった。

 

そして、飲食業で起業するべく資金をつくっていこうと、当時ホームエンターテインメントとして人気を博していたVHSやβマックスの動画のレンタルや販売店のFCに加盟をした。これが1995年1月のこと。ここより飲食の道を模索していった。

 

次に、2002年6月、大阪王将食品(現イートアンドホールディングス)が展開していたラーメン店「よってこや」に加盟。同店のメニューは「京都鶏ガラとんこつラーメン」で、この濃厚な味は若者に人気を博した。新宿南口に構えた12坪20席の店はピーク時に月商2000万円を売り上げて、160店舗ある中で常にベスト3に入っていた。大いに繁盛したが、店が忙しすぎていたことから、この路線とは違う路線で多店化していこうと考えるようになった。

 

ここから、さまざまな事業を展開していった。

2002年7月学習塾「TOPS」に加盟して、教育事業を開始。

2004年3月「東京漫画社」を立ち上げ出版事業を開始。

2013年2月「ハーモニーデイサービス西荻窪」を開設し、介護事業を開始。

2013年4月飲食事業部で、肉バル「ヴァヴェーネ吉祥寺店」をオープン。

2014年6月飲食事業部で、ラーメン店「太陽のトマト麺吉祥寺南口支店」をオープン。

2016年5月飲食事業部で、肉バル「ヴァヴェーネ下北沢店」をオープン。

2017年11月美容室「11cut甲府昭和店」をオープンし、美容事業を開始。

2018年11月飲食事業部で、「吉祥寺肉寿司」をオープン。

2020年2月飲食事業部で、函館の新鮮魚介類を使用した海鮮ダイニング「ELMO」を吉祥寺にオープン。

2020年4月、飲食事業部で、「新時代 吉祥寺南口店」をオープン。

これらの中で、2013年に吉祥寺にオープンした肉バルが、馬部氏が青春時代に過ごした吉祥寺の居心地のよい当時の空気感を覚醒させた。

 

エントランスを入ってすぐにロングカウンタ―とオープンキッチンを構えてライブ感を演出している

ホームページの「理念動画」に込めた想い

これ以降の飲食事業部以外の話題は省略して飲食事業の話題を進めていきたい。

2021年3月上記の肉バルを「立飲ビストロRyo」というカジュアルなフレンチバルとしてリニューアルオープン。2022年6月「焼肉 みゆき苑」を吉祥寺にオープン。2022年12月洋食業態「ELMO+」を笹塚(渋谷区)にオープン。2024年3月「新時代 吉祥寺北口武蔵通り店」をオープン。2024年4月新窯ピザとグリルの「comesta」を吉祥寺にオープン。そして、2018年11月にオープンした「肉寿司」を、この6月に「コエド」にリニューアルオープンした。

 

筆者は、今回同社のことを執筆することに際して、同社が吉祥寺で展開する飲食店を訪ね歩いた。

率直な印象を述べると、従業員はみな商売に熱心である。筆者が店頭で店の中をのぞいていると、扉を開けて「店内の食事が楽しい」ことをアピールしながら、店内に招き入れてくれる。料理説明は丁寧に行なってくれる。若い女性スタッフはおじさん(筆者)にものおじすることなく、堂々とおすすめメニューを語ってくれる。

 

ソフトラインのホームぺージの中で「会社を知る COMPANY」を開くと、7分43秒の「理念動画」が出てくる。ストーリーはソフトラインの店内で展開されるこのような内容になっている。

・大学の同級生が全員就職に内定して、そのお祝いにソフトラインの店で飲食をして盛り上がる。

・取引先でのプレゼンがうまくいかずに落ち込んでいる若手社員を上司がソフトラインのラーメン店で食事をしながら励ます。

・仕事が忙しくて、彼女とのデートで2回目の誕生日をお祝いする食事の席に遅刻して彼女の気分を沈んだものにしてしまう男子。ソフトラインの洋食店でお互い向き合いながら、語り合う。

このようなお客のシーンにあって、ソフトラインのスタッフは陰ひなたになって寄り添って、お客にエールを送っている。思わず泣けてくる動画である。

おそらく、登場人物の中で、それぞれの主人公以外はソフトラインの従業員が演じていることであろう。

「おでん」のタネのバラエティでリピーターの気軽な利用動機をつかんでいる

 

顧客は同社のファンで各店舗を回遊

同社の社是は「わくわくしよう、そして、明日の元気を創る!」。

次に、経営理念は、「人の成長を応援する!」。

さらに、ミッションは、「私たちは、新規事業、権限移譲、環境整備を積極的に行います。そして、採用・教育を強化し、ソフトラインと関わる人たちと共に、地域社会に貢献します」。

そして、ビジョンは、「『想い』×『ニーズ』で、自立自走の人材を育成し、明日の元気を創る」。以上である。

 

このような同社の根幹を支える考え方は、さまざまな事業を手掛けてきた中で、人との関わりがより深い飲食業の中で培われて行き、さらに進んで吉祥寺ドミナントを進めていく上で鮮明となったことであろう。

筆者が同社の店舗を訪ね歩いて感じたことは、各店舗の顧客は同社が展開する飲食店のファンであり、彼らはこれらの店を回遊しているということだ。

これらの店の業種業態は異なっていても、お客を迎えるマインドに同じような思いやりを感じ取っているのであろう。

吉祥寺ドミナントで多様な業種の店舗を構えることによって、同社のファンが回遊する環境をつくっている