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飲食店の原状回復はどこまで必要?知らなきゃ損する費用と負担範囲の考え方を完全解説

作成者: 佐野 美涼|Jul 7, 2026 1:00:00 AM

 

「退去時に何百万円もかかると言われて驚いた」「どこまで直す義務があるのかわからない」

飲食店の退店・撤退を検討するとき、多くのオーナーが直面するのが原状回復の問題です。住居の賃貸と違い、飲食店舗の原状回復は借主の負担範囲が広く、想定外の費用が発生しやすい領域です。

この記事では、「どこまで戻す義務があるか」「費用はいくらかかるか」「居抜きで退去できるケースとできないケース」「退去前にやっておくべき確認」を、FAQ形式でまとめました。退店を検討している方の事前準備として活用してください。

 

そもそも、飲食店の原状回復義務はどこまで?

 

住居と飲食店舗では、ルールがまったく違う

住居の賃貸では、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が参考基準として機能しており、経年劣化や通常使用による損耗は貸主負担が原則とされています。

しかし飲食店などの事業用物件では、このガイドラインの直接適用はなく、「通常損耗も含めて借主がすべて負担する」という特約が契約に盛り込まれているのが一般的です(国土交通省ガイドライン・マネーフォワード解説より)。つまり、「普通に使っていただけなのに」という理屈は、飲食店舗では基本的に通じません。

 

原状回復の範囲は「契約書」が最優先

「どこまで戻す必要があるか」は、最終的に賃貸借契約書と特約の内容で決まります。「スケルトン返し(内装・設備をすべて撤去した躯体だけの状態に戻す)」を求めているのか、「入居時の状態に戻す(居抜き返却可)」なのかは、契約書に明記されています。

退去の検討を始めたら、まず賃貸借契約書の「原状回復条項」と「特約事項」を確認することが第一歩です。

 

確認項目

契約書のどこを見るか

ポイント

返却状態の指定

原状回復条項・特約

スケルトン返し/居抜き返却 どちらが求められているか

工事業者の指定

原状回復条項・特約

貸主指定業者のみか、自由に選べるか

費用負担の範囲

特約事項

通常損耗・経年劣化も借主負担か

退去予告期間

解約条項

3ヶ月前・6ヶ月前など。超えると違約金発生の場合も

原状回復の完了期限

解約条項

退去日までに完了するのか、退去後に猶予があるか

費用はどのくらいかかる?坪数別・業態別の相場

 

飲食店の原状回復は「重飲食かどうか」で大きく変わる

 飲食店の原状回復費用は、業態・坪数・使用年数・物件の構造・契約内容・造作譲渡の有無によって大きく異なります。以下の金額はあくまで目安であり、同じ業態・同じ坪数でも条件次第で大きく変わります。必ず複数の業者から見積もりを取った上で判断してください。

特に油煙・臭い・水を多く使う「重飲食」(焼肉・ラーメン・中華・居酒屋等)は、ダクト・排水・床の劣化が激しく、費用が高くなりやすいです。

 

業態

坪単価の目安

20坪の場合

備考

軽飲食(カフェ・テイクアウト等)

坪5万円前後

約100万円

油汚れ・臭いが少なく比較的安め

一般飲食(レストラン・居酒屋等)

坪7〜15万円

140〜300万円

厨房設備・ダクト撤去が必要

重飲食(焼肉・中華・ラーメン等)

坪10〜20万円以上

200〜400万円以上

ダクト・床・排水の特殊清掃が必要

大規模店舗(50坪超)

個別見積もりが必須

数百〜1,000万円超も

空中階・搬出経路の複雑さで変動大

 

上記はあくまで目安です。「小規模店舗でも100万円に達することは珍しくない」(飲食店ドットコム)とされており、使用年数が長い・個室が多い・空中階で搬出経路が複雑・ダクトが延長されているといった条件が重なると、費用はさらに上がります。

 

費用を押し上げやすい条件

  • ダクトが延長・改造されている(撤去・復旧に追加費用)
  • グリストラップが設置されている(専門業者による解体・処理が必要)
  • 空中階・地下・搬出経路が狭い(廃材の搬出コストが上がる)
  • 夜間のみ工事可能な物件(割増料金が発生)
  • 使用年数が長い(油染み・臭いが深く浸透している)

居抜きでの退去はできる?スケルトン返しとの違いと選び方

「スケルトン返し」と「居抜き売却」何が違う?

 

スケルトン返し

居抜き売却

内容

内装・設備をすべて撤去し、躯体だけの状態で返す

内装・設備をそのままの状態で次のテナントに引き継ぐ

借主の費用負担

解体・撤去・廃棄費用が全額発生

工事費用がほぼ不要。造作譲渡料を受け取れる場合も

退去日まで営業

工事期間中は営業できない

退去直前まで営業継続が可能

貸主の同意

不要(契約通りに戻すだけ)

必要(貸主との合意が前提)

次テナントへの影響

なし

設備・内装の状態が引き継がれる

 

契約書に「スケルトン返し」と明記されていても、貸主との交渉次第で居抜き売却に切り替えられるケースがあります。次のテナントがすでに決まっている・貸主がリフォームコストを省きたいという状況では、居抜き売却の合意が得やすくなります。


退去前に確認しておきたいチェックリスト

退去の準備は、遅くとも退去希望日の6ヶ月前から動き始めるのが理想です。予告期間の不足・原状回復工事の遅延・業者手配の遅れが重なると、違約金や追加家賃が発生するリスクがあります。

 

時期

やること

ポイント

退去6ヶ月前〜

賃貸借契約書の原状回復条項・退去予告期間を確認

予告期間を過ぎると違約金が発生するケースあり

退去6ヶ月前〜

居抜き売却の可否を確認

早めの打診ほど交渉の余地が広がる

退去4〜5ヶ月前

複数の原状回復業者から見積もりを取る

指定業者がある場合は確認が先。相場を把握した上で交渉

退去3〜4ヶ月前

厨房機器・什器の処分方法を決める

買取・譲渡・廃棄それぞれの費用・手続きを確認

退去1〜2ヶ月前

原状回復工事の着工・完了スケジュールを確定

退去日までに完了するよう逆算してスケジュールを組む

退去前

入居時と現状の写真を比較し、追加費用の根拠を確認

貸主との費用交渉に使える記録を残す

 

入居時の写真・記録が退去時の交渉力になる

入居時に物件の状態を写真・動画・書面で記録しておくと、退去時に「最初からあった傷や汚れ」を証明する材料になります。記録がないまま退去すると、すべての損耗が借主の過失として費用請求される可能性があります。これから開業する店舗はもちろん、すでに営業中の店舗も、現在の状態を記録しておくだけでも将来の交渉に役立ちます。

原状回復でよくあるトラブルと防ぎ方

トラブル① 退去直前に見積もりを取ったら想定外の金額だった

原状回復の費用を退去直前まで確認していなかったため、資金が足りずに撤退スケジュールが崩れるケースがあります。特に「スケルトン返し」が契約で求められている場合、小規模店舗でも数百万円規模になることは珍しくありません。退去6ヶ月前には見積もりを取り、資金計画に組み込んでおくことが必須です。

 

トラブル② 貸主指定の業者に言われるまま発注して高額になった

指定業者がある場合でも、見積もり内容(作業範囲・単価)の明細を確認することは可能です。相場感を把握した上で「この項目は必要か」を確認するだけで、費用を圧縮できるケースがあります。見積もりを黙って承認するのではなく、内訳の説明を求めることが大切です。

 

トラブル③ 居抜き売却を検討したが、打診が遅すぎた

居抜き売却の打診を退去12ヶ月前にしたところ、次テナントの手配が間に合わず結局スケルトン工事になったというケースがあります。居抜き売却を検討するなら、退去の半年以上前に動き始めるのが現実的なスケジュールです。

 

原状回復の費用・範囲・段取りに悩んでいる場合は、飲食店の退店・清掃事情に詳しい専門家に早めに相談するのが一番の時間短縮になります。

よくある質問

 

敷金は原状回復費用に充当されますか?

はい、原状回復費用は敷金から差し引かれるのが一般的です。ただし飲食店舗では敷金を上回る原状回復費用が発生するケースも多く、その差額は別途現金で支払う必要があります。敷金だけで賄えると思っていたら追加請求が来た、というトラブルは頻出です。退去前に見積もりを取り、敷金で不足する分を事前に準備しておきましょう。

 

経年劣化による傷みは借主が直す必要がありますか?

住居の場合は経年劣化は貸主負担が原則ですが、飲食店舗では「通常損耗・経年劣化も借主負担」とする特約が一般的です。ただし、特約に明記されていない場合や、損耗が借主の過失によるものでないことが証明できる場合は、交渉の余地があります。入居時の状態記録が、この判断に大きく影響します。

 

退去予告期間を守らないとどうなりますか?

契約書に定められた予告期間(多くは36ヶ月)を守らないと、不足期間分の家賃相当額が違約金として請求されるケースがあります。たとえば「6ヶ月前予告」の物件を3ヶ月前に伝えた場合、3ヶ月分の家賃が請求される可能性があります。退去の意思が固まった段階で、まず契約書の予告期間を確認することが最優先です。

 

居抜き売却すれば原状回復義務はなくなりますか?

なくなるわけではありません。居抜き売却は貸主の同意を得た上で「次のテナントに内装・設備をそのまま引き継ぐ」形式であり、原状回復義務が免除されるかどうかは貸主との合意内容によります。居抜き売却が成立しても、一部の修繕(設備の不具合修理など)を求められるケースもあります。合意内容は必ず書面で確認してください。

 

厨房機器はそのまま置いていっていいですか?

原則として、借主が持ち込んだ厨房機器・什器は借主が撤去・処分する義務があります。「置いていく」ことを貸主が了承した場合や、居抜き売却で次テナントに引き継ぐ場合は例外です。無断で置いていくと、処分費用を請求されることがあります。厨房機器の扱いは退去交渉の中で明確にしておきましょう。

 

原状回復工事の業者は自分で選べますか?

契約書に「貸主指定業者のみ」と明記されていない限り、自分で業者を選ぶことができます。ただし指定業者条項がある場合は、その業者以外での施工を認めないケースが多いです。自分で業者を選べる場合は、複数社から見積もりを取り、作業範囲と金額を比較することで費用を抑えやすくなります。

 

GF Maintenanceでは、原状回復清掃・スケルトン工事前の厨房・排水・臭い対策まで対応しています。「原状回復の範囲を少しでも減らしたい」「退去前に清掃だけ依頼したい」という相談も受け付けています。退去前の負担を少しでも減らしたい方はまずは相談してみることをお勧めします。

まとめ|退去前に知っておくだけで、費用も交渉力も変わる

飲食店の原状回復は、住居の賃貸と同じ感覚で考えていると想定外の費用に直面します。事業用物件は「通常損耗も借主負担」が原則で、スケルトン返しを求められるケースでは坪10万円以上の費用になることも珍しくありません。

 

費用を最小化するためにできることは、主に3つです。

  • 退去6ヶ月前に契約書を確認し、予告期間・返却条件・指定業者の有無を把握する
  • 居抜き売却の可能性を早めに貸主に打診する(打診が早いほど交渉の余地が広がる)
  • 複数業者から見積もりを取り、相場感を持った上で費用交渉に臨む

 

「退去を検討し始めた段階」で動き出すことが、費用・時間・交渉力のすべてで有利です。退去の意思が固まる前から、契約書の確認と専門家への相談を始めておくことをおすすめします。

退去まであまり時間がない方でも、この記事を参考にできる事から始めていきましょう。