飲食店を経営していると、「原価率」「客単価」「利益率」などの言葉をよく耳にします。
しかし、
「数字が苦手でよく分からない」
「計算と聞くだけで避けたくなる」という店長さん・経営者さんも少なくありません。
“安心してください!”
飲食店経営に必要な数字は、中学レベルの算数で十分です。
本記事では、算数が苦手な飲食店経営者さんでも理解できるように、原価率と客単価の基本ルールを、専門用語を使わず、実務目線で解説します。
飲食店経営で数字を避けてしまうと、知らないうちに損をしているケースが多くあります。
なぜなら、
数字は「経営の結果」を教えてくれるサインだからです。
原価率や客単価を把握していないと、忙しいのにお金が残らない、値上げしても利益が増えない、といった状態に陥りやすくなります。
数字を見ずに経営していると、判断基準が感覚だけになります。
例えば、
「今日はお客さんが多かった」
「このメニューは人気がある気がする」
といった印象だけで判断してしまいます。
しかし実際には、売れていても原価率が高すぎて利益が出ていない、ということも珍しくありません。
数字は、店長さんを責めるものではありません。
「どこを直せば楽になるか」
「どこを変えれば利益が出るか」
を教えてくれる、経営のヒントです。
最低限の数字だけ押さえれば、飲食店経営はぐっと楽になります。
飲食店経営で、最初に理解しておきたい数字が原価率です。
原価率とは、「売上に対して、食材費がどれくらいか」を表す数字です。
計算はとてもシンプルです。
原価率(%)= 食材原価 ÷ 売上 × 100
例えば、
売上が10万円で、食材費が3万円の場合、原価率は30%になります。
難しい計算は一切ありません。
一般的に、飲食店の原価率は 30%前後 が一つの目安と言われます。
これは、売上のうち約3割が食材費、残りの7割で人件費や家賃、光熱費、利益をまかなう、という考え方に基づいています。
ただし、
この30%という数字は、すべての飲食店に当てはまる「正解」ではありません。
例えば、
原価の高い食材を使う業態や、ランチ中心で単価が低い飲食店では、原価率が30%を超えることも珍しくありません。
一方で、
ドリンク比率が高い店舗や、回転率の高い飲食店では、原価率が25%前後に収まるケースもあります。
大切なのは、「他店と比べて高いか低いか」を気にすることではなく、自店の原価率がどのくらいなのかを把握することです。
まずは、今月の売上と食材費をざっくり計算し、「だいたい何%くらいか」を知るだけで十分です。
そこから少しずつ、高くなりやすいメニューや、利益が出にくい部分を見直していくことが、無理のない飲食店経営につながります。
原価率が高くなりすぎると、どれだけ売ってもお金が残りません。
これは、材料費が利益を圧迫している状態です。
「値上げしたいけど、お客さんが離れそうで怖い」そう感じる飲食店店長さんは少なくありません。
特に常連さんが多いお店ほど、
価格を変えることに強い抵抗を感じやすいものです。
ですが実務では、
値上げできない原因が原価率の高さにあるケースがよくあります。
原価率が高いままでは、来店が多くても利益は残りにくく、「忙しいのにお金が増えない」状態になりがちです。
ここで大切なのは、感情と数字を分けて考えることです。
原価率を確認すると、
・原価率が40%を超えているメニュー
・仕入れ価格が上がったままの料理
・量が多すぎて利益が出ていない一品
といった、見直すべきメニューが見えてきます。
この場合、
一律値上げではなく、
・価格を少し調整する
・量や盛り付けを見直す
・仕入れ先を変更する
といった対応で改善できることも多いです。
原価率は、値上げを決めるための数字ではなく、どこを直せばいいかを教えてくれる数字です。
数字を見て整理すれば、無理のない判断ができるようになります。
原価率と並んで、飲食店経営で必ず押さえておきたい数字が客単価です。
客単価とは、「お客さん一人あたりが、平均でいくら使っているか」を表す数字です。
売上が同じでも、客単価が高いか低いかで、経営の安定度は大きく変わります。
「忙しいのにお金が残らない」と感じているお店は、客単価に原因があるケースも少なくありません。
客単価の計算方法は、とてもシンプルです。
客単価 = 売上 ÷ 客数
例えば、
1日の売上が5万円で、来店したお客さんが50人の場合、客単価は1,000円になります。
この数字を、1日・1週間・1か月単位で見ることで、売上の傾向がつかみやすくなります。
客単価を把握すると、「売上をどう伸ばすか」の考え方が整理されます。
例えば、
・客数を増やす必要があるのか
・一人あたりの注文数を増やすべきか
・セットや追加注文を考えるべきか
といった判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
さらに、「自店の客単価は低いのか、高いのか」という基準も見えてきます。
一般的な目安としては、
・ランチ中心の飲食店:800〜1,200円前後
・ディナー中心の飲食店:3,000〜4,000円前後
・居酒屋業態:2,500〜3,500円前後
が一つの参考ラインになります。
ただし、大切なのは平均値に合わせることではありません。
今の客単価から、まず+100〜200円を目指す
だけでも、月の売上や利益は大きく変わります。
無理に集客を増やさなくても、客単価を少し上げる工夫をすることで、経営が安定しやすくなるのが大きなポイントです。
原価率と客単価は、どちらか一方だけ見ても意味がありません。この2つは、必ずセットで考える必要があります。
原価率は「どれだけコストがかかっているか」、客単価は「一人からいくら売れているか」を示しています。
どちらかが崩れると、売上があっても利益が残りにくくなります。
原価率と客単価は、同時に考えるのが理想ですが、実務では「どこから手をつけるか」が重要になります。
判断のヒントは、今の店舗がどんな状態かです。
例えば、
・客数は多いのに、利益が残らない
・忙しい割に、手元にお金が残らない
この場合は、原価率が高すぎないかを先に確認する必要があります。
なぜなら、
原価率が高い状態では、売上が増えても、その分コストも一緒に増えてしまうからです。
このまま客単価を上げても、増えた売上が材料費に消えてしまい、利益は思ったほど残りません。
まずは原価率を把握し、
「どのメニューが利益を圧迫しているのか」を確認することで、はじめて客単価を上げる判断がしやすくなります。
一方で、
・原価率はそこまで高くない
・売上が伸び悩んでいる
という場合は、客単価を「仕組み」で引き上げる余地があります。
値上げをしなくても、メニュー設計次第で一人あたりの売上は十分に改善できます。
例えば、以下のような小さな工夫だけでも効果があります。
・「あと一品」を自然に誘導する「とりあえず」メニューの強化
→ 客単価 +150円
・ドリンクのメガジョッキやおかわり割引の導入
→ 客単価 +300円
・人気メニューを組み合わせた「松・竹・梅セット」の作成
→ 客単価 +500円
客単価が300円上がるだけでも、
1日50人来店する店舗なら 1日+15,000円、月間で約45万円の売上増 になります。
原価率が同じであれば、その分利益改善に直結します。
大切なのは、
「なんとなく値上げする」「なんとなく量を減らす」ことではなく、数字を見て、先に直すべきポイントを判断することです。
最後に、
算数が苦手な店長さんでもできる、
最低限のルールをまとめます。
飲食店経営では、毎日細かく数字を追う必要はありません。
まずは月に1回、
・原価率
・客単価
この2つだけを確認しましょう。
ポイントは、
「正解かどうか」より「先月と比べてどう変わったか」を見ることです。
例えば、
・原価率が少し上がっていないか
・客単価が下がっていないか
この変化に気づけるだけでも、仕入れやメニューを見直すきっかけになります。
数字を見る時間は、月に10分程度でも十分です。
飲食店経営で数字を見る目的は、正解を出すことではありません。
大切なのは、
「このまま続けて大丈夫か」を判断することです。
例えば、
・原価率が30%台から40%近くに上がっていないか
・客単価がじわじわ下がっていないか
この2点が分かれば、仕入れやメニュー構成を見直す判断ができます。
数字が多少ズレていても、判断が間違わなければ実務上は問題ありません。
原価率が高ければ原価を下げる。
客単価が落ちていれば、セットや追加注文を考える。
数字は、行動を決めるための「きっかけ」として使いましょう
飲食店経営に必要な数字は、決して難しいものではありません。原価率と客単価を知るだけで、売上や利益の見え方は大きく変わります。
算数が苦手でも大丈夫です。まずは「知ること」から始めてみましょう。