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SNS広告、法律違反になるって本当?飲食店が知らずに違反しやすい広告表現とは

作成者: 豊幡佳乃|Oct 31, 2025 10:44:05 AM

はじめに

最近では、SNS広告を活用して集客する飲食店が急増しています。写真や動画で料理の魅力を発信すれば、大きな反響が得られるからです。

しかし、その「宣伝」や「紹介」が、実は景品表示法や食品表示法などの法律に違反する違法行為となることもあるのをご存じですか?特に「事実よりも良く見せる」誇大広告は注意が必要です。

広告には細かく決められたルールがあり、知らずに違反してしまうと行政からの指導や罰金、さらには営業停止処分を受ける可能性もあります。

たとえば、表示に問題があった場合、「広告を直しなさい」といった命令を受けるだけでなく、1000万円の売上があれば、その3%にあたる30万円を支払うケースもあります。

売上が大きいほど支払う金額も増えるため、経営に大きな負担となります。
たった一つのSNS投稿が、大きな損失につながることもあるのです。

この記事では、SNS広告にひそむ見落としがちな落とし穴や、飲食店が知っておくべき景品表示法の基本的なルールについて、やさしく丁寧に解説します。法律の知識がない方でも安心して読める内容なので、ぜひ最後までご覧ください。

飲食店のSNS広告、どこまでが法律違反?どこまでがセーフ?

「バズらせたい!」その気持ちが、思わぬ違反につながることも。

 

誇大広告ってなに?どんな表示がアウトなの?

「絶対痩せる!」「日本一のコスパ」「医師も推薦!」

これらの表現、一見するとよくあるキャッチコピーですが、実は法律違反になるおそれがあるって知っていましたか?

とくに以下のような表現は注意が必要です:

  • 「絶対」「100%」などの保証を連想させる言葉

    → 根拠のない効果の断言はNGです。

  • 「医師も推薦」「専門家監修」

    → 本当に医師が推薦しているのか?事実に基づかないと虚偽表示になります。

  • 「日本一」「地域No.1」

    → 客観的なデータ(公的調査など)がない限り、使わない方が安全です。

これらはすべて、景品表示法という法律で禁止されている「優良誤認表示」に当たる可能性があります。

このルールについては、次の章(2-1)で詳しく解説します。

消費者を誤解させるような表現は、たとえ悪意がなくても、「知らなかった」では済まされない重大なリスクにつながるのです。

 

比較広告やランキングって使っちゃだめ?

「他店より安い!」「○○エリアで第1位!」などの比較やランキング系の広告も、リスクがあります。

ポイントは「客観的な根拠があるかどうか」。

たとえば:

  • ・独自の調査で1位と謳っているが、調査対象が不明
  •  
  • ・「他店より安い」と言いつつ、価格比較の根拠がない

こうした表示は「本当よりもすごく見せてしまう」ような内容として問題になります。

 景品表示法の中で定められている「優良誤認表示」「有利誤認表示」に該当するおそれがあります。

詳細は次の章(2-1)でご紹介します。

 

写真や動画でも誤認表示になる?

「映える」写真をSNSに投稿することは、集客にとって有効です。

でも、写真や動画の演出が過剰すぎると「誇大広告」になります。

たとえば:

  • ・写真は豪華な盛り付けでも、実物は具材が少ない

  • ・湯気や照明などを過剰に加工し、本来の見た目と異なる

  • ・有名人やインフルエンサーに広告と明示せず投稿してもらう(=ステマ)

これらはすべて、消費者の期待を裏切る表示となり、法的リスクがあります。

広告の法律、飲食店が守るべきはどれ?

「法律とか難しそう…」と感じるかもしれませんが、飲食店にも関係するルールがきちんとあります。

景品表示法ってどんな法律?どんな時に違反になるの?

景品表示法は、商品やサービスの表示(広告)がウソだったり、誤解を招いたりしないように定められた法律です。

主な目的は、消費者が正しい情報をもとに選べるようにすること。

飲食店のメニュー表記やSNS投稿も例外ではなく、違反があれば行政処分や課徴金(違反で得た売上げの一部を払う罰金のようなもの)が科されることも…。

金額は売上の最大3%になるケースもあり、注意が必要です。

 

飲食店の広告でも、次の3つの表示が問題となります:

  • 有利誤認(景品表示法第5条第2項):本当よりも「お得」と思わせる表示

    例:実際は通常価格なのに「半額」と表示

  • 優良誤認(景品表示法第5条第1項):本当よりも「高品質」と思わせる表示

    例:普通の牛肉を「A5ランク」と表示

  • 誇大広告:実際よりも良く見せる過剰表現

  •  

【実例】健康食品メーカー「はははらぼ」の広告違反と課徴金

健康食品を販売する「はははらぼ」は、「絶対に痩せる」「〇〇ランキング1位」などの広告表現が問題となり、景品表示法違反(優良誤認)で課徴金1,086万円を科されました。

これは、広告内容が実際の効果や事実と異なるために消費者を誤認させる行為として、法律で重く罰せられた典型例です。

飲食店でも同様に、「絶対に痩せる」「地域No.1」などの根拠のない誇大広告は同じく違反となり、課徴金や営業停止のリスクがあります。

広告表現は慎重に、必ず根拠を持った内容で発信しましょう。

 これであなたも違反者に?飲食店が知らずにやりがちなSNS広告の落とし穴

「広告じゃないから大丈夫でしょ?」その油断が命取りになることも。

 

 InstagramやLINE公式の投稿も広告になるの?

SNSの投稿は、ただの情報発信に見えても、法律上は**「広告」**とみなされることがあります。

つまり、自社の商品やサービスを紹介する投稿は、景品表示法などの広告規制の対象になるのです。

とくに、次のような投稿は注意が必要です:

  • ・自社の商品やメニューを紹介し「おすすめ」と伝える投稿

  • ・キャンペーンや割引情報の告知

  • ・「#ダイエットに効く」など効果を伝えるハッシュタグを使った投稿

何気なく使った言葉や表現が法律違反になることもあり、知らずに法律を破ってしまわないよう、日頃から慎重な運用が求められます。

 

「お客様の声」やレビュー掲載でも法律に違反することがあるの?

お客様の声やレビューも、実は法律上は広告の一部とみなされます。

そのため、次のような行為は法律違反になるリスクが高いので特に注意してください:

  • 実在しない人物の口コミを作る(虚偽表示)

  • 他人のSNS投稿を許可なく転載すること

  • 効果を過剰に強調した体験談(例:「1週間で‑5kg!」)

SNS投稿や口コミは、使い方を間違えるとトラブルにつながりやすいため、正しい運用を心がけましょう。

 

 広告に関する法律に違反したらどうなる?罰則や処分のリアル

「バレなきゃOK」は通用しません。違反は意外なところから発覚します。

 間違った広告で罰金や営業ストップになることも

景品表示法食品表示法に違反すると、飲食店でも以下のような処分を受ける可能性があります。

「国産100%」や「カロリー半分」などの表示が事実と異なれば、景品表示法の「優良誤認表示」に該当するだけでなく、食品表示法で定められた表示義務にも違反することになります。

・措置命令(行政指導)(景品表示法第7条に基づく)
違反があった場合、まず出されるのがこの「措置命令」です。具体的には、問題となった広告を修正したり、SNSや店内ポスター、HPなどから削除したりすることが求められます。また、「◯月◯日までに修正・報告せよ」といった期限付きで命令されることがほとんどです。これを怠ると次の段階へ進みます。

・課徴金(売上に応じた罰金)(景品表示法第8条に基づく)
措置命令だけでは済まない場合、売上に基づいた金銭的ペナルティとして「課徴金」が科されることがあります。
違反表示により得た売上の3%が基本ですが、悪質な場合はこれに加算されることも。
たとえば、SNS上で「無添加」と表示していたメニューが実は添加物入りだった場合、景品表示法違反に加え食品表示法違反にもなり、来店客数に基づいた売上から計算され、数十万円から数百万円単位の請求となるケースも実際にあります。

・営業停止処分・営業許可の取り消し
さらに悪質と判断された場合や、過去にも違反歴がある場合には、営業停止処分に至ることもあります。たとえば、

  • 度重なる不当表示を改善しなかった

  • 偽装や誤表示が意図的だった

  • 行政からの是正指導に従わなかったなどの場合、数日~数週間の営業停止、最悪の場合は営業許可自体の取り消しが行われることもあります。

・社会的信用の失墜も無視できない
法律上の処分だけでなく、SNSや口コミサイトで「ウソの広告をしている店」「誤表示で客を騙している」などと書かれた場合、店の評判は大きく傷つきます。一度落ちた信頼を取り戻すのは容易ではありません。炎上によって閉店まで追い込まれる可能性もあります。

 

 バレたら終わり?広告違反はどうやって見つかるの?

意外と多いのが、「SNSでバズったこと」が違反発覚のきっかけになるパターンです。

流れとしては:

  1. SNSで拡散 →

  2. 一部ユーザーが「これ誇大じゃない?」と通報 →

  3. 消費者庁が実施調査や聞き取りを行う

 

※実施調査の主な内容

広告の内容確認
問題となったSNS投稿や広告文、店頭表示を集め、使われている表現を詳しく調べます。写真や動画もチェックされます。

根拠資料の提出要求
表示している効果や品質について、事業者に証明できる資料の提出を求めます。例えば「国産牛」とあれば、仕入れ先の証明などが該当します。

聞き取り調査(ヒアリング)
担当者に広告作成の背景や内容の裏付けを説明してもらい、表現の意図や管理体制も確認します。

市場調査や消費者の声の収集
場合によっては消費者へのアンケートや市場調査をして、表示が誤解を生んでいないかを検証します。

 

じゃあ、どうすれば広告違反を防げるの?

「やらない」のではなく、「正しくやる」ことが、これからのSNS集客の鍵です。違反を恐れて何もしないよりも、ルールを理解して安心・安全に発信しましょう。

 

 誇大表現・主観表現は控えめに

「絶対」「完全」「保証」など断定的な言葉はできるだけ避けることが大切です。代わりに、

  • ・「〇〇風」「〇〇にこだわりました」など曖昧さを残す

  • ・「店主のおすすめ」「利用者の声から人気」など主観的な表現に寄せる

  • ・効果ではなく、「使われている素材」や「作り方」に焦点を当てる

たとえば「国産牛を使用しています」という場合は、原材料の仕入れ先や割合の説明があればより信頼されます。

また、数字を使う場合も根拠が必要です。「地域No.1」「売上○○件突破」などは調査方法や期間を明示しないと問題になることがあります。

 

 チェックリストで事前に確認しよう

投稿前に以下のような点を確認しておきましょう:

  • ・表示内容に根拠はあるか?データや証明があるか。

  • ・消費者を誤解させる表現になっていないか?

  • 他店やレビューを使う場合、許可を得ているか?

可能であれば、広告に詳しい行政書士や弁護士など専門家に相談するのもひとつの手です。

少しの確認が、大きなトラブルを防ぎます。

おわりに|飲食店のSNS広告で“違反しない”ためのポイントと対策

広告の法律違反は、「知らなかった」では済まされません。

とくにSNSの投稿は手軽に発信できる反面、法律の目が厳しくなっている今、少しの不注意が大きなトラブルにつながる恐れがあります。日々の運用で使う言葉や表現には、常に慎重さが求められるのです。

ですが、ルールを守ればSNSは最高の集客ツールになります。

正しい表現で安心して情報を発信できれば、お店の魅力はしっかり伝わり、ファンも増え、売上アップにもつながります。むしろ法律を理解して活用することで、他店と差をつける「攻めのSNS運用」が可能になるのです。

今こそ、あなたのお店の広告表現を見直し、法律違反のリスクをゼロにしましょう。

そうすれば、安心してSNSを武器にした集客活動を進められ、信頼される人気店への道がぐっと近づきます。

一歩ずつ、正しい広告運用で未来を切り開いていきましょう。