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飲食店のキャンセル料100%請求は違法?支払い義務と法律の正しいルールを解説!

作成者: 豊幡佳乃|Oct 31, 2025 10:02:41 AM

 

 

 

はじめに

飲食店を経営していると、予約のキャンセルや無断キャンセルは避けて通れない悩みですよね。
特に団体予約やコース料理では、仕入れや仕込み、人件費が事前にかかっているため、キャンセルはそのまま損害になります。

そんなとき役立つのがキャンセル料です。ただし、請求するには損害証明や契約時に提示する定型約款を押さえておくことが大切です。
「どのくらい請求できるのか」「法律上どこまで認められるのか」を知らずに設定すると、かえってトラブルになることもあります。

この記事では、民法や消費者契約法をもとに、無断キャンセルへの対応やキャンセル料の適切な設定方法を、数字や具体例も交えてわかりやすく解説します。

飲食店でキャンセル料を請求できる条件とは?

飲食店がキャンセル料を請求するためには、まず予約が契約として成立していることが必須条件です。
予約成立とは、単に日時や人数を伝えるだけでなく、飲食店側がそれを受け入れたという意思表示があることを意味します。

 

飲食店での予約成立のポイント、ちゃんと把握してる?

  • 約成立にはいくつか押さえるべきポイントがあります。
  • ・利用日時や人数、利用内容が明確であること
    お客様がいつ、何名で、どんな内容の利用を希望しているかをはっきり伝える必要があります。

  • ・店側が予約を受諾していること
    電話やメール、あるいはネット予約システムなど、どの方法でもかまいませんが、飲食店側が予約を承認した時点で契約が成立します。

この契約は、口頭でのやり取りであっても法律上は有効です。
したがって、お客様が予約後に一方的にキャンセルした場合、飲食店は民法第415条という規定で、「約束を守らなった側は、相手に与えた損害を賠償しなければならない」と定められています。

 

具体例で理解するキャンセル料請求

  • ケース1:1人5,000円のコース料理を10名で予約し、前日にキャンセルされた場合
    → 食材の仕入れや仕込み作業が既に済んでいれば、5万円分の損害が発生します。

  • ケース2:忙しい金曜日の夜に20名の団体予約が当日キャンセルになった場合
    → 他の予約を断っていた場合は機会損失が発生し、さらに食材の廃棄やスタッフの人件費もかかるため、損害額はさらに大きくなります。

特に宴会シーズンや週末のピークタイムは、キャンセルが発生しても代わりの予約が入りにくく、損害が大きくなりやすい点に注意が必要です。

飲食店のキャンセル料100%は違法?

キャンセル料はどのくらい請求するのが妥当?
そして、そのルールをどうやってお客様に伝えればトラブルを防げるのでしょうか?

 

飲食店の実務で多いキャンセル料設定、押さえてる?

飲食店では、損害発生のタイミングに合わせた段階式のキャンセル料がよく使われます。
  • 当日キャンセル:予約金額の100%

  • 前日キャンセル:50〜80%

  • 2〜3日前キャンセル:30〜50%

これは損害の発生タイミングに合わせて設定されており、日が近づくほど実損額が増えるため、比例して金額を上げます。

例えば、2日前なら未発注食材があるため損害額は少なめですが、当日は仕込み・食材・スタッフ確保が終わっているため全額請求が合理的といえます。

 

飲食店でキャンセル料を請求するなら、事前の明示を確実に行おう!

キャンセル料は、事前に明示して初めて有効になります。
口頭で「当日は100%いただきます」と伝えても、後から「聞いていない」と言われれば請求は難しくなります。

有効な明示方法の例

  • ・予約確認メールやSMSに記載

  • ・店舗HPやSNSの予約ページに明記

  • ・紙のメニューやレジ横ポスターで掲示

  • ・ネット予約フォームの近くに「キャンセルポリシー」リンクを設置

こうした証拠があれば、後日のトラブル防止に有効です。

飲食店のキャンセル料ってなぜ回収が難しい?理由と対策は?

キャンセル料のトラブル、実は意外とよくあるんです。
どんな点に注意すれば、ムダなトラブルやリスクを避けられるのか、ここでしっかり確認してみましょう。

キャンセル料が高すぎると認められない理由とは?

消費者契約法第9条では、消費者に一方的に不利益な契約条項は無効と定められています。
ランチ単価3,000円の予約に対して当日キャンセル料を1万円請求すると、過大請求として返金命令の可能性があります。

法律上は「実際の損害額を超えない範囲」でしか請求できません。
損害額を明確に算定できる根拠が重要です。

 

飲食店でキャンセル料の支払い義務を主張するには「損害証明」が必要?

裁判や行政の場では、飲食店側が損害額の証拠を提出する必要があります。
有効な証拠例

  • ・食材仕入れ伝票

  • ・仕込み時間の記録(人件費算出用)

  • ・予約台帳やネット予約履歴

  • ・他の予約を断った記録

これらが揃っていれば、金額の妥当性を示しやすくなります。

 

飲食業界でよくあるキャンセル料回収の課題とは?

キャンセル料は事前に請求できるルールを決めていても、実際に回収するのは簡単ではありません。特に無断キャンセルの場合はなおさらです。無断キャンセルの詳細については、次の章で詳しく解説します。

回収が難しい主な理由は以下の通りです。

  1. ・連絡先が不正確または架空

    • 電話番号がつながらない、メールが無効など、そもそも連絡が取れないケースが多い。

    • 特にネット予約で本人確認をしていない場合、架空情報での予約も発生します。

  2. ・少額債権の回収コストが高い

    • キャンセル料が数千円〜数万円の場合、法的手続きを取ると費用や時間が請求額を上回ることも。

    • 内容証明郵便や少額訴訟は手間と費用がかかり、回収効率が悪い。

  3. ・事後請求は強制できない

    • 事前にカード情報や前金を押さえていないと、支払いを拒否された場合に任意の支払いを待つしかない。

    • 「払わない」顧客を法的に動かすには裁判所の力を借りる必要があり、時間がかかる。

  4. ・顧客との関係性や評判リスク

    • SNSや口コミでの悪評を恐れ、泣き寝入りを選ぶ店舗も多い。

    • 地域密着型店舗では、強硬な請求が逆効果になることも。


回収率を上げる方法として、近年では以下の対策が増えています。

  • ・ネット予約時にクレジットカード情報を取得(事前決済型)

  • ・団体予約は事前に一部前金を受け取る

  • ・リマインドメールを前日に自動送信

無断キャンセル(No-Show)とは?

無断キャンセルとは、お客様が予約をしたにも関わらず、事前の連絡やキャンセルの申し出なしに来店しないことを指します。
つまり、「キャンセルの意思表示がなく、予約時間に現れない」状態のことです。

飲食店にとっては、準備済みの食材やスタッフの手配が無駄になるだけでなく、他のお客様の予約を断っている場合は機会損失にもつながるため、大きな問題となります。

飲食店で無断キャンセルかどうか、どう判断する?

無断キャンセルかどうかを判断する際には、以下のポイントを確認します。

  • 予約日時にお客様が来店しなかったこと
    予約の日時になっても、連絡なく来店がない場合は無断キャンセルと判断されます。

  • どのくらいの遅刻まで許容するか?
    一般的には、予約時間から15分〜30分程度の遅刻までは許容する場合が多いです。
    この間に来店すれば、通常のキャンセル扱いにはなりません。

  • それ以上の遅刻は無断キャンセルとみなすことも
    ただし、30分を超えて連絡がなく来店がない場合は、無断キャンセルと判断する店舗が多いです。
    遅刻が長引く場合は、事前に電話やメッセージで連絡をもらうように案内しておくことが大切です。キ

  • キャンセルの連絡や変更依頼がないこと
    電話やメール、メッセージなどでキャンセルや日時変更の申し出がなかったかどうかを確認します。

  • 予約管理記録の確認
    予約台帳やネット予約システムの履歴をチェックし、来店履歴がないことを確認します。

もし、連絡があった場合は「通常のキャンセル」として扱い、連絡がなければ「無断キャンセル」とみなします。

法律に沿ったキャンセル料の設定方法って何?

キャンセル料のルール、法律に合ってるか心配じゃないですか?
トラブルになる前に、正しい設定のポイントを一緒に確認しておきましょう。

 

法律の『定型約款』って何?キャンセルトラブルを防ぐカギとは

飲食店のキャンセル料を決めるときには、法律の「定型約款(ていけいやっかん)」という仕組みを利用するのがおすすめです。

これは、たくさんの人と同じルールで契約するときに使う決まりごとで、
「予約するときにあらかじめキャンセル料についてのルールを伝えて、同意してもらう」ことで、あとから「そんな話は聞いてない」と言われにくくする仕組みです。

定型約款は、特別な書式や専門的な契約書を用意する必要はなく、普段の予約確認書や利用規約の中に含めて作成できます。

たとえば、キャンセル料のルールを「キャンセルは●日前から●%の料金がかかります」といった形で、わかりやすく書いておきます。

ポイントは、誰が見ても納得できるように簡潔にまとめることと、お客様に「このルールに同意した」という証拠を残すことです。

例えば、ネット予約のときに「キャンセルポリシーに同意する」チェックボックスに✔を入れてもらうのが一般的です。
電話や店頭予約なら、予約票にキャンセル料の説明を書いて、お客様にサインや印鑑をもらうのも効果的です。

このように、証拠として残る形で「お客様が了承している」ことをはっきりさせておくと、キャンセル料を請求するときにトラブルになりにくいです。

 

キャンセル料の金額は、飲食店としてちゃんと理由を説明しよう

キャンセル料は「なんとなく決める」のではなく、
「なぜこの金額なのか」をはっきり伝えることが大切です。

たとえば、こんな感じで分けて説明します。

  • 食材のムダになった分(例:予約分の食材を仕入れていたため、その廃棄費用が約40%)

  • スタッフの人件費(例:仕込みや準備にかかった時間分で約10%)

  • 他のお客さんを断ったことで失った売上(例:代わりの予約が取れず約50%の機会損失)

こうやって数字を示すと、お客様も納得しやすくなりますし、あとから「不当に高い」と言われにくくなります。

また、これらの根拠となる伝票や記録をちゃんと保管しておくことも重要です。
例えば、仕入れの伝票やスタッフの勤務表、予約の履歴などを保存しておけば、キャンセル料の正当性を説明するときに役立ちます。

 

法律で決まっていることも覚えておこう

法律では、消費者に不当に不利になるルールは無効とされています。
つまり、キャンセル料があまりに高すぎると「その金額は認められないよ」と判断されることもあるんです。

だからこそ、しっかりと「実際にかかった損害」を元にキャンセル料を決めることが大切です。
これが守られていれば、無用なトラブルを防げますし、安心して経営ができます。


まとめ|飲食店のキャンセル料と支払い義務の考え方|違法トラブルを防ぐ経営のコツ

法律に基づいた明確なキャンセルポリシーを整備することで、飲食店は不当なキャンセルや無用なトラブルからしっかりと自らを守ることができます。

こうした「守り」の基盤ができて初めて、経営の安定を確保し、予約管理やサービスの向上に集中できるようになります。その結果、新しいメニュー開発やイベント企画、オンライン予約システムの導入など、積極的な「攻め」の経営戦略にも安心して挑戦できるのです。

これにより売上や顧客満足度が向上し、地域で選ばれる飲食店としての地位を確立できます。将来の拡大やブランド強化も視野に入れ、より高い目標に向かって積極的に経営を展開していきましょう。