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飲食店のSNS炎上を防ぐための対策とは?バイトテロ・誹謗中傷から学ぶ5つの教訓

作成者: 豊幡佳乃|Oct 14, 2025 12:00:00 AM

はじめに 

今や飲食店の経営にとって、SNSは欠かせない存在となっています。新規集客やリピーター獲得に役立つ一方で、使い方を誤れば「SNS炎上」という大きなリスクを抱え込むことになります。炎上は一度起きると全国的に拡散され、信用失墜や売上減少、さらには閉店に追い込まれるケースすらあります。

とくに近年は、従業員による「バイトテロ」や不適切な動画投稿が後を絶たず、飲食店経営者にとっては避けて通れない課題になっています。本記事では、過去の炎上事例を振り返りながら、法律面の知識と具体的な対策を踏まえて「炎上しない飲食店づくり」のポイントを解説します。

なぜ飲食店はSNS炎上しやすいの?

飲食店はサービス業の中でもとくに「SNS炎上」のリスクが高い業態です。理由は大きく3つあります。

1つ目は、飲食店が「食」という人々の生活に密着しているため、不快な出来事が起こると共感的に拡散されやすい点です。たとえば、料理の不衛生な扱いや接客でのトラブルは、利用経験のある人が多いため「自分ごと」として共有されやすくなります。

2つ目は、アルバイトやパートが多く働く環境のため、教育やモラル意識の差から「バイトテロ」が発生しやすいことです。バイトテロとは、従業員が店内で不適切な行為を行い、その様子を自らSNSに投稿して炎上を招く行為を指します。過去には、食材を粗末に扱ったり、厨房でふざける姿を動画に上げるなどの事例がありました。一見「悪ふざけ」でも、飲食店にとっては信用を大きく失う致命的な問題となります。

3つ目は、飲食店が日常的にSNSで情報を発信しているため、クレームや批判が拡散するスピードが非常に早いことです。とくにX(旧Twitter)やInstagramなどは拡散力が強く、数時間で全国に情報が広がるケースもあります。

つまり、飲食店は「顧客との距離が近い業態」であるからこそ、SNS炎上のリスクに常にさらされているのです。

過去の飲食店のSNS炎上事例から何を学ぶ?

飲食店で起きたSNS炎上は、一見すると「個別の事件」に思えます。ですが、共通する原因や背景を整理すると、今後の炎上防止に役立つ重要な教訓が見えてきます。

ここでは、実際に大きな話題となった5つの炎上事例を取り上げ、それぞれから飲食店が学ぶべきポイントを解説します。

某ピザ店従業員の不適切動画事件

2009年、某ピザ店の従業員が調理中に鼻をほじるなどの不衛生な行為を動画で投稿し、大炎上しました。この動画は数百万回再生され、企業の信用を大きく傷つけました。結果的に従業員は解雇され、事件が起こった店舗は営業停止に。会社は謝罪と対応に追われることになりました。

教訓:従業員のSNS利用に関するルールが整備されていないと、企業全体が損害を受ける。

某ファミレスのホイップクリーム炎上

2023年、某ファミレスの店舗で従業員がホイップクリームを口に含んで吐き出す様子をSNSに投稿し、炎上しました。動画は拡散され、店舗は一時閉鎖。運営会社は謝罪文を発表しました。

教訓:アルバイトスタッフへの教育不足が、直接的に炎上につながる。

焼肉店での毒霧パフォーマンス炎上

ある焼肉店では、スタッフが液体窒素を使った演出を行い、客席で「毒霧を吐き出すように見える動画」が拡散されました。安全面や衛生面への不安から批判が殺到し、SNS炎上に発展しました。

教訓:パフォーマンスや演出も「見られ方」を意識しなければ炎上の火種になる。

某回転寿司のバイトテロ事件

2019年、某回転寿司の従業員が仕入れた魚をゴミ箱に捨て、その後拾って調理場に戻す様子をSNSに投稿し、大炎上しました。株価が一時的に急落するなど、企業全体に深刻な影響が及びました。

教訓:一部の従業員の軽率な行動が、会社全体の経営リスクにつながる。

某焼肉チェーンの嘔吐未対応炎上

2024年、某焼肉チェーンで客席に嘔吐があったにもかかわらず、スタッフが清掃を行わず営業を続けた様子がSNSに投稿され、炎上しました。衛生管理への不信感から、多くの批判が寄せられました。

教訓:緊急時の対応マニュアルを整備していないと、炎上リスクが一気に高まる。

飲食店のSNS炎上を防ぐために店長・経営者ができることは?

飲食店でSNS炎上を完全に防ぐことは難しいですが、日頃の取り組みでリスクを大幅に下げることは可能です。
「うちは大丈夫」と思っているお店ほど、従業員のちょっとした悪ふざけや、お客様の投稿ひとつで一気に炎上することがあります。
店長や経営者が主体的に仕組みを整えることで、「予防」と「迅速な対応」の両方を実現できるのです。

SNS炎上を防ぐためのスタッフ教育のポイント

飲食店におけるSNS炎上の多くは「従業員のモラル不足」から発生します。
特に問題となるのが「バイトテロ」です。これは、アルバイトやパート従業員が不衛生・不適切な行為を行い、その様子をSNSに投稿したり、第三者が拡散したりすることで炎上に発展する現象です。

上に挙げたように、飲食店チェーンのくら寿司ではアルバイトが仕込み中の魚をゴミ箱に落とし、その後拾って調理に使おうとする動画が拡散し、大炎上しました。
こうした行為は食品衛生法第6条(販売禁止食品)に抵触する可能性が高く、場合によっては刑事処分や営業停止の対象となります。バイトの軽率な行為が、企業全体のブランドと売上を一瞬で失わせるリスクがあるのです。

そのため、

  • 衛生教育(手洗い・異物混入防止・食材管理)

  • SNS利用ルール(勤務中の撮影禁止、内部情報の投稿禁止)

  • モラル研修(接客態度、言葉遣い、ハラスメント防止)

などを定期的に行うことが大切です。
新人研修だけで終わらせず、半年ごとや年に一度の確認を制度化することで、意識を継続的に高められます。

飲食店での炎上防止のSNSルールと労働契約の作り方

教育だけでなく、「ルール化」も必要です。
就業規則や雇用契約書に、SNSでの不適切な投稿を禁止する条項を明記し、違反した場合の懲戒処分や解雇規定を整備しておきましょう。

労働契約法第7条は「就業規則の内容は労働契約の内容とみなす」と定めています。(出典:厚生労働省)

つまり、就業規則に「SNSでの不適切な行為は禁止」と明文化しておけば、法律上も従業員に守らせることが可能です。

ただし、解雇などの重い処分をするには「客観的に見て理由があること」と「社会的に妥当だといえること」が必要です(労働契約法第15条)。
そのためにも、あらかじめペナルティを明確に定めて従業員に伝えておくことで、トラブルが起きたときにスムーズに対応できる体制を整えられます。

トラブル発生時のSNS対応方法

それでも炎上が起きてしまう場合があります。このとき最悪なのは「放置」や「隠蔽」です。事実確認を怠ると、憶測が広まり炎上はさらに拡大します。

基本的な対応の流れは以下のとおりです。

  1. 事実確認(従業員や関係者から状況を聞き取り、事実を整理する)

  2. 初動対応(問題が確認できれば速やかに謝罪・改善策を発表する)

  3. 公式声明(SNS公式アカウントで誠実な文面を投稿し、隠さない姿勢を示す)

  4. 再発防止策の提示(教育や管理体制の強化を発表し、安心感を与える)

過去に「しゃぶ葉」では、従業員がホイップクリームを口に直接押し出す動画が拡散し炎上しました。
運営会社は速やかに謝罪文を公表し、従業員の処分や再発防止策を発表したことで、一定の鎮静化につながりました。

誠実でスピード感のある対応が「信頼回復のカギ」なのです。

法律から見るSNS炎上のリスクとは?

アルバイトやパートの不適切行為は、ただの個人の問題では済みません。
店長や経営者が法律上の責任を負う場合があります。

従業員の行動で経営者も責任を問われる(民法715条)

民法715条では、使用者が従業員の不法行為によって他人に損害を与えた場合、経営者も賠償責任を負う可能性があります。(出典:e-Gov)
つまり、バイトが厨房で不衛生な行為をしてSNSに投稿された場合、店長や経営者が損害賠償を求められることもあるのです。

食品衛生法違反で営業停止もあり(食品衛生法第6条)

バイトテロの中には、食品衛生法に違反する行為も含まれます。
たとえば、くら寿司の仕込み魚事件のように、不衛生な食品を扱う行為は第6条に抵触する可能性があり、保健所から営業停止や改善命令が出る場合もあります。(出典:厚生労働省)

 

従業員の行動が企業に損害を与える場合、企業は加害者として責任を問われることがあります。

一方で、虚偽の事実がSNSで拡散された場合は、企業は被害者として名誉毀損(刑法230条)や業務妨害(刑法233条)を理由に、法的手段で対応することが可能です。

企業の信用損失も法律上のリスクとなります。SNSでの拡散が風評被害を生み、会社全体の信用を傷つけることがあるため、経営者は損害賠償請求や法的対応を検討することが重要です。

炎上時も慌てない!飲食店のリスクマネジメント

炎上が起きたときに被害を最小限に抑えるには、日頃からの備えと外部の力を活用したリスク管理が欠かせません。ここでは、店舗の信頼を守るために取り入れやすい実務的な対策をご紹介します。

SNS公式アカウントの上手な運用

自店の公式アカウントを活用して正しい情報を発信することは、誤情報や憶測による拡散を防ぐ有効な手段です。たとえば、営業時間や臨時休業、メニュー変更などを定期的に更新するだけでも、来店客やフォロワーの誤解を避けられます。
また、写真や動画を交えたポジティブな情報発信は、店舗の雰囲気やサービスの質を自然にアピールすることにもつながります。SNS運用を単なる宣伝手段としてではなく、「信頼を築く場」として活用することが炎上防止の鍵です。

クレーム対応の透明性

クレームが発生した際は、店舗内だけで解決するのではなく、SNSでも迅速で誠実な対応を見せることが重要です。具体的には、謝罪や対応状況の説明を簡潔に投稿するだけでも、他の利用者への安心感につながります。
「クレームを隠すのではなく、誠意をもって対処している」ことを見せることで、SNS上での過剰な批判や誤解を防ぐことができます。透明性のある対応は、店舗の信頼度向上にも直結します。

リスクヘッジのための保険や顧問弁護士活用

近年は、SNSでの拡散や口コミによる風評被害に備えた「風評被害保険」が登場しています。

この保険は、従業員の不適切な投稿や悪意のある口コミによって、店舗の評判や売上に損害が出た場合に補償を受けられるものです。
加入は、損保ジャパンや東京海上日動、三井住友海上などの保険会社を通じて可能です。多くは法人向けの総合保険や賠償責任保険の特約として提供されており、店舗の規模や業種に合わせて補償内容や保険料を調整できます。
保険料や補償範囲は会社ごとに異なるため、複数社から見積もりを取り、代理店に相談して条件を確認することが大切です。

あらかじめ保険で備えておくことで、万が一の炎上時も安心して対応できる体制を整えられます。

また、顧問弁護士を活用すれば、炎上時の法的対応や投稿削除、声明文作成などを迅速に行うことが可能です。保険と専門家の支援体制を組み合わせることで、日常業務に集中できる環境を作れます。

まとめ|バイトテロを防ぎ、飲食店を守るSNSリスク管理

飲食店におけるSNS炎上は、もはや「他人事」ではありません。従業員の軽率な行動やクレーム対応の遅れが、企業全体を揺るがす大問題に発展します。

炎上リスクを未然に防ぐためには、法律知識を身につけ、従業員教育とルール整備を徹底することが欠かせません。

一方で、SNSを正しく使えばファンを増やし、ブランドを育てる強力な武器となります。炎上を恐れるだけでなく、攻めのSNS活用で「選ばれる飲食店」をつくりましょう。