飲食店を開業・改装するときに、多くの店長さんや経営者さんが悩むのが「飲食店のトイレは何個必要なのか?」という問題です。
トイレの数や設備は、店の印象やお客様の快適さに関わるだけでなく、法律や条例によって一定の基準が定められている設備でもあります。
基準をよく知らないまま設計を進めてしまうと、保健所や建築確認の段階で指摘を受け、追加工事やレイアウト変更が必要になることもあります。
特に中小規模の飲食店では、「小さい店だから大丈夫だろう」「前の店舗も同じ設備だったから問題ないはず」と判断してしまい、後からトラブルになるケースも少なくありません。
本記事では、中小規模の飲食店の店長さん・経営者さん向けに、飲食店トイレの数や設備について、建築基準法・自治体条例・実務上の注意点を踏まえながら、法律が苦手な方でも理解しやすい言葉で、具体的に解説していきます。
これから開業を予定している方はもちろん、改装や店舗拡張を考えている方も、ぜひ設計前の確認に役立ててください。
飲食店のトイレの数は、「何席あるか」「どんな用途の建物か」によって変わります。
すべての飲食店が同じ基準というわけではなく、店舗の規模や建物の使われ方によって判断されます。
そのため、他店の事例だけを参考にすると、基準を満たさないリスクがあります。
まずは、法律がどのような考え方で基準を定めているのかを理解することが大切です。
飲食店のトイレは、利用者の衛生と安全を守るために欠かせない設備です。特に飲食店は、不特定多数の人が短時間で入れ替わり利用する場所です。
そのため、建築基準法や自治体条例では、一定規模以上の建物について、トイレの設置を義務づけ、最低限守るべき基準を定めています。
単に「トイレがあればいい」というものではなく、利用人数に応じた数や、清掃・管理しやすい構造が求められます。
建築基準法では、建物を安全かつ衛生的に使うため、用途に応じた設備を整えることが求められています。
飲食店のトイレも、その一環として考えられています。
具体的に「どんな建物に、どの程度の設備が必要か」は、建築基準法施行令や、用途ごとの技術基準によって判断されます。
特に、多くの人が出入りする建物かどうかが重要なポイントです。
飲食店は、不特定多数のお客さんが利用する施設のため、建築基準法上は「多数の者が利用する用途」として扱われます。
そのため、規模や用途に応じて、十分なトイレ設備を設けることが前提になります。
飲食店のトイレの数は、店舗の床面積だけで決まるものではありません。
実務では、「何人が同時に利用する可能性があるか」という視点が重視されます。
とくに客席数は、利用者数を判断するための重要な基準となり、トイレの個数や構成を考える際の出発点になります。
客席数が少ない小規模な飲食店であっても、原則としてトイレの設置は必要と考えられています。
建築基準法上、飲食店は不特定多数が利用する用途にあたるため、最低でも1か所以上の便所を設けることが前提になります。
「客席が少ないから」「テイクアウトが中心だから」と自己判断すると、確認申請や保健所の審査で指摘を受けることがあります。
実際の営業形態も踏まえつつ、行政の判断を確認することが重要です。
客席数が多くなると、男女別トイレの設置が求められるケースが増えます。
建築基準法施行令では、利用者が多数となる建築物について、男女別に便所を設けることが望ましいとされています。
具体的な人数基準は、各自治体の建築条例で細かく定められていることが多いため、事前確認が欠かせません。
飲食店のトイレ設備は、建築基準法だけで決まるものではありません。
実務では、自治体が定める条例や運用基準の影響を強く受けます。
そのため、同じ広さ・同じ客席数の飲食店であっても、出店する地域が違うだけで、求められる設備内容が変わることがあります。
特に都市部や人通りの多いエリアでは、想定される利用者数が多くなるため、国の基準よりも厳しいルールが設けられていることが少なくありません。
建築基準法は、全国共通で守るべき最低限の基準を定めた法律です。
あくまで「これだけは必要」というラインを示しているにすぎません。
一方、自治体は地域の実情に合わせて、条例によって基準を上乗せすることができます。
都市部や観光地では、来店客が集中しやすいため、トイレ不足による混雑や衛生トラブルを防ぐ目的で、より厳しい設備基準が設けられています。
そのため、建築基準法だけを前提に設計を進めると、後から「条例に適合していない」と指摘され、設計変更や工事のやり直しが必要になることもあります。
たとえば東京都では、建築安全条例により、一定規模以上の飲食店に対して、男女別トイレや多目的トイレの設置を求めるケースがあります。大阪府や横浜市などでも、床面積や客席数に応じたトイレ数の基準が設けられています。必ず出店予定地の条例を確認しましょう。
近年、飲食店でも高齢者や障害のある方が安心して利用できる環境づくりが重視されています。
その中でも、トイレ設備は利用のしやすさを左右する重要なポイントです。
店舗の規模や立地によっては、多目的トイレの設置が検討対象になるケースも増えています。
高齢者や障害者が円滑に移動し、建物を利用できるようにするため、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が定められています。
この法律では、一定規模以上の建築物について、出入口や通路、トイレなどにバリアフリー対応を求めています。
飲食店も対象となる場合があり、規模や用途によっては、多目的トイレの設置が「義務」または「努力義務」とされることがあります。
どこからが義務になるかは、床面積や自治体の条例、建物全体の用途によって異なるため、新規開業や大規模改装の際には、事前に行政へ確認することが重要です。
小規模な飲食店では、法律上、多目的トイレの設置義務が生じないケースも多くあります。
しかし、義務がないからといって、何も配慮しなくてよいわけではありません。
たとえば、
手すりの設置や段差の解消、
扉の開閉をしやすくするだけでも、
利用しやすさは大きく改善します。
こうした配慮は、高齢のお客様やベビーカー利用者にも喜ばれます。
また、トイレの使いにくさは、クレームや低評価につながることもあります。
可能な範囲で対応しておくことが、トラブル防止や店舗評価の向上につながります。
飲食店のトイレ設備は、「法律は守っているつもり」でも、思い込みや勘違いのまま設計を進めてしまい、後から修正が必要になるケースが少なくありません。
とくに新規開業や改装時は、設計段階での判断ミスが、工事のやり直しや追加費用につながることもあります。
ここでは、飲食店でよくある注意点を確認しておきましょう。
原則として、飲食店では客用トイレと従業員用トイレを兼用すること自体は可能とされています。
小規模店舗では、1か所のトイレを共用するケースも珍しくありません。
ただし、保健所の指導内容や自治体条例によっては、従業員専用トイレの設置を求められる場合があります。
とくに従業員数が多い店舗や、調理場の規模が大きい飲食店では、別設置が望ましいと判断されることもあります。
設計後に指摘を受けると、レイアウト変更が難しくなるため、事前に保健所へ相談しておくと安心です。
トイレの位置や動線についても、注意すべきルールがあります。
基本的に、トイレへ行く際に調理場の中を通らなければならない配置は認められていません。
これは、食品衛生法の考え方に基づくもので、衛生管理上の重要なポイントとされています。
トイレ利用による汚染リスクを避けるため、調理エリアと明確に分けた動線が必要です。
客席から直接アクセスできる位置に設けることが、実務上も安全な設計といえるでしょう。
[ ] 用途地域の確認:出店場所の用途地域で飲食店が制限されていないか?
[ ] 自治体条例の確認:東京都や大阪府など、その地域独自の「上乗せ基準」はないか?(例:男女別の義務化人数など)
[ ] 保健所の事前相談:設計図面ができる前に、トイレの位置や手洗い器の仕様を保健所に相談したか?
[ ] バリアフリー対応の要否:床面積が条例の基準(例:500㎡以上など)を超えていないか?
[ ] 動線の確認:客席からトイレに行く際、厨房を横切る構造になっていないか?
[ ] 手洗い設備の仕様:トイレ内に「流水式」の手洗い器(タンク上ではないもの)が設置されているか?
[ ] 換気・防虫対策:窓への網戸設置や換気扇が計画されているか?
飲食店のトイレ設備は、つい後回しにされがちですが、法律や条例に基づいて慎重に考えるべき重要なポイントです。
建築基準法だけでなく、自治体条例や保健所の基準まで確認しておかないと、開業直前や工事後に修正を求められることもあります。
客席数や店舗規模に合わない設計は、時間やコストのロスにつながる可能性があります。
一方で、設計段階から正しく確認し、専門家や行政と連携しながら進めたトイレ設備は、安心して長く営業できる店舗づくりにつながります。
利用しやすいトイレは、お客様の満足度を高め、店舗全体の印象にも良い影響を与えます。
迷ったときは自己判断せず、建築士や保健所に早めに相談することが大切です。
法律を正しく押さえたトイレ設備は、開業後のトラブルを防ぎ、選ばれ続ける飲食店への土台になります。