料理に添えられた装飾用の葉が原因とみられる食中毒が発生し、保健当局が飲食店に向けて注意を呼びかけている。使用されたのは有毒植物として知られるアジサイの葉で、客が料理と一緒に口にしたことで、吐き気やおう吐などの症状を訴えたという。
アジサイの葉を原因とする食中毒事例は過去にも報告されており、2000年代後半には複数の自治体で類似のケースが相次いだ。現在では珍しいが、知識不足や装飾目的での誤用が、再発の一因となっている可能性がある。
飲食店における装飾や演出は、料理の印象を高める上で重要な要素だが、それらが口に入った場合のリスクまで想定されていないことが多い。一見食べられそうに見える葉や花でも、実際には有毒成分を含む植物が少なくない。加えて、提供時に「食べられません」という案内がなければ、客はそれを料理の一部と誤認することもある。
食品衛生法の観点からも、客に提供されるものすべては“提供物”としての安全性が求められる。つまり、たとえ“飾り”であっても、健康被害が発生すれば、飲食店側がその責任を問われる可能性がある。
以下は、料理の添え物・装飾で使用されやすいが、食中毒や健康被害を引き起こすリスクがある有毒植物の例である。
※上記はあくまで一例であり、その他にも有毒性を持つ植物は多数存在する。野草や自家採取素材の利用には特に注意が必要。
一方で、安全に利用できる装飾素材も多数存在する。以下は、一般的に可食・装飾利用が認められている素材の一例である。
・しその葉(大葉)
・パセリ
・エディブルフラワー(ビオラ、ナスタチウムなど)
・レモングラス、ローズマリー等のハーブ類
・柿の葉(加工済み・乾燥済み)
・南天の葉(食品加工用として認可されたもののみ)
ただし、これらも「食用として育てられたもの」であることが前提であり、観賞用や園芸品の流用は避けるべきである。
また、客が誤って口にしないよう、口頭で「装飾用で食べられません」と伝える、あるいはメニューやPOPに明示することも重要な対策となる。
飲食店としては、以下の観点からの見直しが求められる。
・仕入れ・使用素材の安全性チェックと記録管理
・従業員への装飾用植物に関する衛生教育
・「食べられるかどうか」についての店内ルールの整備
・事故発生時の連絡・対応フローのマニュアル化
「装飾だから大丈夫」「昔から使っているから問題ない」という認識が事故につながるケースもある。美しい盛り付けと安全な提供の両立が、これからの飲食店にはより一層求められている。