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小麦価格が4.0%引き下げ、5期連続の値下げで飲食業界のコストに影響|最新動向

作成者: 織田 夏海|Mar 13, 2025 6:54:07 AM

物価高や原材料高が続く中で、飲食店経営者にとって「原価動向」は依然として大きな関心事です。そうした中、政府が発表した輸入小麦価格の5期連続値下げは、久しぶりに聞こえてきた“コスト緩和”のニュースと言えるでしょう。

ただし、小麦価格の下落がそのまま利益改善につながるとは限りません。本記事では、2025年4月期から2025年10月期まで続く小麦価格の下落背景を整理するとともに、飲食店経営者がこの動きをどのように経営戦略へ活かすべきかを考えていきます。

各期のデータはこちらから

2025年4月期

2025年10月期

2025年4月期

4期連続の値下げ、小麦価格の下落続く

農林水産省は2025年3月12日、政府が輸入して製粉会社に売り渡す小麦(主要5銘柄)の2025年4月期(4〜9月)の平均価格を、前期(2024年10月期)と比較して4.6%引き下げ、1トン当たり6万3570円とすることを発表した。値下げは4期連続となり、2023年10月以降、政府の売り渡し価格は下落傾向が続いている。今回の値下げの背景には、米国やカナダといった主要産地での豊作があり、国際相場の安定が影響している。特に、北米の主要産地では昨年から安定した天候が続き、生産量が増加したことで供給が安定し、価格の下落を後押しした。

 

2025年10月期

小麦価格はさらに下落、5期連続の値下げへ

農林水産省は、2025年10月期(10〜2026年3月)の輸入小麦政府売渡価格(主要5銘柄平均)を1トン当たり61,010円とし、前期比で約4.0%引き下げると発表した。これにより、政府の小麦売渡価格は5期連続の値下げとなり、2023年秋以降続いていた下落傾向がさらに強まっている。

今回の価格改定の背景には、米国・カナダなど主要生産国での安定した天候と豊作による供給増があり、国際的な小麦相場が落ち着いていることが挙げられる。これにより、製粉会社向けの原料コストも低下し、業務用小麦粉価格にも段階的に反映され始めている。

ただし、飲食店にとっては、小麦価格の下落がすぐに仕入れ価格やメニュー原価に大きく反映されるわけではない点には注意が必要だ。エネルギー費や人件費は依然として高止まりしており、原材料全体で見るとコスト環境が急激に改善する状況ではない。それでも、麺類、パン、揚げ物など小麦使用比率の高い業態にとっては、今後の利益率改善や価格戦略を見直すきっかけとなる可能性があり、インバウンド需要の回復と組み合わせることで、収益構造を再設計する余地が広がっている。

 

国際相場の変動と円相場の影響は?

日本の小麦供給は8割以上を輸入に頼っており、政府が一括輸入し、民間業者に売り渡す仕組みになっている。売り渡し価格は国際相場や為替レートを基に、4月と10月の年2回改定される。小麦の国際価格は、2022年のウクライナ侵攻を受けて急騰し、一時は歴史的な高値を記録した。しかし、その後は代替産地の生産拡大や物流の安定化が進み、徐々に下落。現在は侵攻前の水準に戻りつつある。また、日本円の為替相場も小麦価格に影響を与える要因の一つだ。2024年には円安が続いていたものの、大幅な価格変動にはつながらなかった。

輸入小麦の政府売渡価格の推移(2020年4月~2025年4月期)

小麦価格引き下げが飲食店経営に与える影響と今後の対応策

小麦の売り渡し価格が引き下げられることにより、飲食業界に一定の影響が予想される。特に、パンや麺類、ピザなどを主力とする業態では、原材料コストの軽減が期待されるものの、農水省は小売価格への影響は限定的であるとの見方を示している。

外食業界が直面している価格高騰の中で、原材料のわずかな変動は短期的な経営判断に影響を与えるものの、長期的な経営戦略には「価格戦略」「メニュー開発」「集客施策」などの要素と組み合わせた対応が重要である。特に、このタイミングで「価格据え置き」を選択し、付加価値の提供や集客戦略に注力する動きが出る可能性がある。たとえば、食べ放題やセットメニューを強化することで、収益性を改善し、顧客満足度を高める方法が考えられる。今後、飲食店経営者は、小麦価格の変動を単なるコスト削減の手段として捉えるのではなく、ビジネス戦略の一環としてどのように活用するかが重要な課題となるであろう。

 

飲食店経営者が今、意識すべきポイントとは

今回の小麦価格の下落は、飲食店経営者にとって「すぐに原価が下がる朗報」というよりも、中期的な経営判断を見直すためのシグナルと捉えるべきだろう。エネルギー費や人件費の高止まりが続く中で、原材料の一部でも価格が安定・下落していることは、利益構造を再設計する貴重なタイミングである。特に麺類やパン、揚げ物など小麦使用比率の高い業態では、メニュー構成や原価率を改めて見直し、「値下げ」ではなく「価格据え置き+付加価値強化」に舵を切る選択肢が現実的だ。

また、インバウンド需要の回復や客数の持ち直しと組み合わせることで、単なるコスト削減に終わらない戦略が描ける。例えば、セットメニューや期間限定商品の開発、ボリューム感や体験価値を訴求したメニュー設計などは、価格を上げずに満足度と客単価を高める有効な手段となるだろう。小麦価格の変動を“追い風”として活かせるかどうかは、経営者が数字を冷静に捉え、戦略に落とし込めるかにかかっている。

 

まとめ

政府売渡小麦価格は2025年10月期まで5期連続で引き下げられ、国際相場の安定を背景に下落基調が続いている。一方で、飲食店を取り巻くコスト環境は依然として厳しく、価格引き下げ効果は限定的だ。だからこそ、今回の小麦価格下落を「値下げ材料」として消費するのではなく、利益構造やメニュー戦略を見直す契機として活用できるかが重要となる。原価・価格・集客を一体で考える視点が、今後の飲食店経営の持続性を左右していくだろう。

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