「飲食店を始めたいけど、物件の探し方がわからない」。そんな悩みを持つ方は少なくありません。
飲食店の開業準備において、多くの方が最初に「どんな物件があるか?」と探し始めてしまいがちです。しかし、これが失敗の大きな原因となります。なぜなら、物件はあくまでコンセプトを実現するための「手段」にすぎないからです。
成功する飲食店オーナーは、まず「何を」「誰に」「どのように」提供するかという事業の土台を固めます。
これは「事業計画書」を作成することで明確になってきます。
物件探しを始める前のこの段階こそが、あなたの開業が成功するか否かの9割を決めるといっても過言ではありません。このステップを飛ばして物件を決めてしまうと、「コンセプトに合わない内装になってしまった」「ターゲット顧客が来ない立地だった」など、後から取り返しのつかない問題に直面します。
実際、物件選びは開業後の売上や運営に直結する重要なステップです。
とくに飲食業界未経験者にとっては、専門用語の多さや情報の断片性が大きなハードルになります。
この記事では、出店を目指すあなたが「今日から動き出せる」よう、飲食店開業の物件探しステップをプロの視点でわかりやすく整理し、ご紹介します。
物件探しを始める前の最重要ミッション、それが「事業計画書」の作成です。
「物件探し」と「事業計画書」は一見無関係に思えますが、実は密接に結びついています。なぜなら、事業計画書は単なる融資のための書類ではないからです。
これは、あなたの事業が「その物件で、本当に成功できるのか」を客観的に証明する、成功のための設計図なのです。
そして、この設計図がしっかりしていれば、金融機関からの融資を勝ち取りやすくなるだけでなく、物件オーナーや仲介業者との信頼関係構築にも有利になります。
事業計画書には、以下の2つの決定的な役割があります。
・融資審査のパスポート:金融機関は、あなたの「熱意」ではなく、計画の「実現可能性」を見て融資を決定します。緻密な事業計画書は、返済能力と収益性を証明する唯一の根拠です。
・物件選定の「ものさし」:目標売上から逆算し、家賃の許容派にや必要な隻数を明確にすることで「この物件にいくらまで出せるか」という判断基準が定まります。これにより、感情的な勢いで高額な物件を契約を失敗を防ぎます。
物件選びを成功させるには、初期費用とランニングコストを現実的に把握することが不可欠です。
| 資金項目 | 計画の具体的なポイント | 失敗回避のための重要ヒント | 必要予算の目安 | 資金調達方法 |
| 初期費用 | 物件取得費(保証金、礼金、仲介手数料など)+内装工事費+設備費 | 居抜き物件の場合でも、必ず老朽化した設備交換費用を見込んでおく。特に厨房機器の寿命を確認。 | 300万円~500万円 | 日本政策金融公庫/自己資金 |
| 運転資金 | 家賃、人件費、食材費など、開業後3~6ヶ月間の赤字を補填する費用 | 売上が安定するまでの期間を現実的に想定し、計画に盛り込むことで、オープン直後の資金ショートを防ぐ。 | 150万円~200万円 | 銀行融資/補助金・助成金 |
| 家賃予算 | 売上予測の10%以内を目指し、最大でも20%に抑える。 | この比率を超えると、利益が出にくい「家賃倒れ」のリスクが高まるため、物件選定の最重要指標とする。 | 売上予測の10% | 事業計画書に明記 |
| 予備費 | 想定外の支出や、集客が遅れた場合の追加広告費 | 計画の総費用の10%〜20%を「使わない資金」として確保し、精神的な余裕を持つ。 | 50万円~100万円 | 自己資金/家族からの借入 |
| 内外装費 | 集客に直結するデザインと機能性のバランス | 見栄えだけでなく、メンテナンスのしやすさや、将来的な改装の自由度を考慮して業者を選定する。 | 100万円~250万円 | デザイン費の相場を調査 |
| 広告宣伝費 | 開業前のSNS、チラシ、Webサイト制作費用 | オープン時だけでなく、3ヶ月、6ヶ月後の再プロモーション費用も計画に含める。 | 30万円~50万円 | マーケティング予算として計上 |
あなたの事業計画書には、「出店エリア選定」に直結する具体的な情報が必要です。
・ターゲット顧客の定義:誰に、どんな目的で来店してほしいか(例:近隣オフィスワーカーのランチ利用)
・客単価と回転率のシミュレーション:ターゲットとコンセプトに基づき、その立地で必要な売上を達成するための具体的な客単価と回転率を設定します。
この計画があるからこそ、「この物件は賃料が高すぎる」「このエリアではターゲットの来店が見込めない」といった論理的な判断が可能になります。
飲食店の物件を探す際、次に大切なのが「どこに出すか」、つまり出店エリアの選定です。
エリア選びを間違えると、どんなにおいしい料理でもお客様が集まらない…なんてこともなりかねません。
以下の3つの視点から、ターゲットと相性の良い場所を絞り込んでいきましょう。
毎日通うことになるので、通勤時間が無理のない範囲かを考えましょう。
開業後に「遠くてしんどい…」となると、長続きしづらくなります。
通行人の「数」だけでなく、「誰が通っているか」がポイント。ターゲット層が通る時間帯や動線も観察しましょう。たとえば、朝の時間帯に会社員向けの朝食を提供したい場合は、オフィス街や駅近エリア、子連れ主婦向けのカフェを開きたい場合は、住宅街やベビーカーでも入りやすい商店街が候補になります。
出店エリアの候補を探しながら、同時進行で事業計画書の作成も進めておきましょう。
融資申請の際には必ず必要になりますし、事業内容を整理することで、「このエリアで本当に勝負できるか?」の判断材料にもなります。
飲食店の物件探しでは、立地タイプを知っておくことも重要です。
自分のコンセプトに合った立地タイプを選びましょう。
| 立地タイプ | メリット | デメリット | 向いている業態 |
| 駅前 | 集客力が高い | 家賃が高い、競争が激しい | カフェ、テイクアウト店 |
| 繁華街 | 夜間も賑やか | 騒音・治安・高家賃 | バル、バー、スイーツ専門店 |
| オフィス街 | ランチ需要大 | 夜間や週末は閑散 | 弁当、ランチ定食、ヘルシー店 |
| 商店街 | 地域密着 | 通行料に波あり | 昔ながらの食堂、惣菜店 |
| 住宅街 | 安定した来客 | 人数が限られる | ベーカリー、ファミレス |
| ロードサイド | 車でのアクセスが良い | 騒音・競合多い | 焼肉、ドライブスルー型店舗 |
飲食店の物件探し方で見落としがちなのが、現地での観察です。物件情報だけではっ見えない「生きた情報」をつかみましょう。
具体的には以下をチェックしましょう。
・時間帯ごとの人の流れ(朝・昼・夜):あなたの営業時間に合わせた人の動きを把握。飲食店の物件探し方でよく出てくるのが「居抜き物件」と「スケルトン物件」の違い。どちらを選ぶかで初期費用・工期・自由度が変わります。
前に入っていたお店の設備(厨房機器や内装、テーブルなど)がそのまま残っている物件のこと。初期費用やお店づくりの手間を大幅に抑えたい人におすすめです。ただし、居抜き物件の設備が壊れている場合、基本的に現状渡しのため借主(あなた)の負担で修理することが多いため注意が必要です。
何もない「空っぽ」の状態からスタートする物件のこと。ゼロから自由に内装や設備を作れるので、自分の理想のお店を形にしやすいです。ただし、内装工事にお金と時間がかかります。
【居抜き物件&スケルトン物件 比較表】
| メリット | デメリット | |
| 居抜き | 初期費用が安い | 自由にレイアウト設計できる / 自分の理想に近づけやすい |
| スケルトン | 前の店の動線が合わないことがある / 設備が古い可能性がある | 内装工事費が高くなりがち / 開業までに時間がかかる |
※物件によっては造作譲渡費用がかかる場合も。自分の予算とコンセプトに応じて選びましょう。
飲食店の物件を見に行くとき、「とりあえず見に行けばいい」と思っていませんか?
実は、ただ写真や間取り図を見て訪れるだけでは不十分。内見をムダにしないためには、事前の準備がとても重要です。ここでは、失敗しないためにやっておきたい2つの準備ポイントをご紹介します。
内見の前には、必ず現地を自分の足で歩いてみましょう。
周辺の人通りや車の流れ、物件の見え方(通行人からの視認性)をチェックします。特に、近くにどんな競合店があるか、駅や学校などの集客施設があるかを観察することが大切です。これらはすべて、出店後の集客力に直結します。
物件の「本当の顔」は、曜日や時間帯によって大きく変わります。
できれば平日昼間の内見を設定し、日当たりや周辺の交通量を確認しましょう。また、複数の物件を比較検討するためにも、事前に不動産サイトや地元の業者を活用して候補をリストアップしておくのがおすすめです。
内見に不安がある場合や厨房設備がある物件を検討している場合は、飲食店に詳しい専門家に同行してもらいましょう。特に排気や排水の状況は、素人では見落としがちなポイント。飲食店専門の内装業者などにチェックしてもらえれば、より安心して物件選びができます。
いざ内見となっても、「どこをチェックすればいいの?」と不安になる方も多いはず。限られた時間で見落としを防ぐために、以下のポイントを事前に把握しておきましょう。
調理に必要な厨房機器が残っているか、自分の業態で使えるかどうかを確認しましょう。
油煙や熱気をしっかり逃がせるかは重要。ダクトの場所や劣化具合もチェックします。
老朽化やカビ、シミなど、衛生面に問題がないか丁寧に見ておきましょう。
お店の裏口や通路が、食材や備品の搬入に適しているかも重要です。
十分なスペースがあり、衛生的に管理できるかを確認してください。
周辺の環境も要チェック。騒がしい施設や悪臭の原因が近くにないか見ておきましょう。
使用する厨房機器が問題なく動かせるだけの電気・ガス設備が整っているかを確認します。
水漏れや排水トラブルがないか、水道の圧力や排水の流れも見ておきましょう。
近隣に同じジャンルの飲食店が密集していないか、あるいはトラブルになりそうな店舗がないかも調べておきましょう。
来店客やスタッフの利便性を高めるためにも、駐車スペースや駐輪場の有無は確認を。
その物件が以前、どんなお店だったのか、そしてなぜ閉店したのかを聞いておくのも大切です。
たとえば「売上が伸びなかった」「通行量が思ったより少なかった」など、閉店の理由には開業後のヒントやリスクの種が隠れていることも。仲介業者にさりげなく尋ねてみると良いでしょう。
※内見中に気になったポイントは、必ず写真に撮ったりメモを取っておきましょう。
飲食店の契約では専門用語が多く登場しますが、飲食業界初心者にとっては分かりにくいことも多いです。
そこで、契約時によく使われる用語をわかりやすく解説します。
※不明点は必ず不動産会社や行政書士に確認をしましょう。特に保証金の償却率や退去時の原状回復義務は、初期投資とランニングコストに大きく影響するため、要注意です。
物件契約をスムーズに進めるために押さえておきたい、全体の流れを5つのステップでわかりやすく解説します。初めての方でも迷わず進められるよう、ポイントを押さえて進めましょう。
「この物件で進めたい」と決めたら申込書を提出します。ただし、申込書だけでは仮押さえにならず、手付金の支払いが必要です。手付金が着金して初めて次の審査に進めます。
貸主が信用情報や事業計画を確認し、「貸して大丈夫か」を判断します。審査に通れば契約へ進みます。
賃料や保証金、造作譲渡、看板の設置可否などをしっかり確認しましょう。不明点は専門家に相談してください。
契約書に署名・捺印し、初期費用を支払うと正式に契約が成立します。
※物件契約は保証会社を利用すれば保証人なしでできる場合が多いですが、利用料がかかるため事前に確認が必要であり、会社によって契約条件は異なるため、例えば非上場企業や個人事業主が主契約者の場合は保証人と保証会社の両方が求められることもあります。
契約開始日に鍵を受け取り、店舗が使えるようになります。引き渡し時は傷や不具合を写真や書面で記録しておくと安心です。申込後はキャンセルが難しいため、すべての条件を確認してから進めましょう。
飲食店の物件探しで悩んだら、以下のような無料サポート機関を活用しましょう。
特に、飲食店の特殊なニーズに応えられる専門窓口の活用が、成功への近道です。
プロのアドバイスをもらうことで、不安や迷いが解消され、優良物件に巡り合う確率が高まります。
飲食店の出店には、物件選びが何より重要ですが、情報が多くて迷ってしまうことも多いはずです。
そんなときは、飲食店専門の物件プラットフォーム【e店舗】を活用しましょう。
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物件探し方に迷ったら、ぜひ【e店舗】で理想の店舗探しをスムーズに進めてください。
飲食店の物件探しに悩む方へ。
本記事では、出店エリアの選び方から契約までのプロセスを網羅的に解説しました。初心者でも、「やるべきこと」を一つずつ整理して進めれば、着実に理想の店舗に近づけます。はじめは誰でも不安です。でも、一人で抱え込まず、専門の相談先や支援機関を活用しながら前に進んでいきましょう。