東南アジア最大の人口約3億人を抱えるインドネシア。
2024年のGDP成長率は約5%、平均年齢は30歳未満。若年層が多く、消費意欲に満ちた“アジア最後の巨大新興市場”として注目されています。
約9割がイスラム教徒であるため、飲食業ではハラール対応が必須条件です。
食材や調理法だけでなく、店舗運営・デザインまで宗教的配慮が求められます。
一方で、都市化や中間層の増加により「ハラールでもおしゃれ」「宗教を超えて楽しめる食体験」へのニーズが高まり、制約の中で創造が生まれる市場へと進化しています。
インドネシアのフードサービス市場は2024年時点で約450億ドル規模、2033年には1,200億ドル超まで拡大が見込まれています(年平均成長率約11.6%)。オンラインデリバリーも急拡大しており、Gojek・GrabFoodが主導する市場は2025年に約98億ドルに達する見通しです。
都市部の中間層・若年層が消費の中心で、Z世代のSNS利用率は東南アジアでもトップクラス。
「写真映え」や「体験性」を重視する傾向が強く、トレンド発信はInstagramやTikTokから広がります。
嗜好は「濃い・甘い・スパイシー」です。
・ハラールは“参入許可証”であり、取得しておくことで差別化にもなる
調理工程や安全性の透明化が信頼につながる。
・“現地語+英語+日本語”の三層発信
多言語発信がブランドストーリーの浸透を加速。
・味覚のローカライズを恐れない
辛味・甘味のバランス調整でローカル層を取り込み、日本らしさを残す。
・スタッフ教育がブランドの生命線
接客品質とオペレーション精度が“日本ブランドの信頼”を支える。
・まずはジャカルタから旗艦店を
成功事例を起点に、地方都市へ段階的に展開するのが効果的。
法人設立:投資省(BKPM)管轄のPT PMAとして設立
外国資本で飲食店を出す場合は、原則として**PT PMA(外資系有限責任会社)**として設立します。投資・ライセンス関連はBKPM(投資省)/OSSシステムを通じて申請し、その後、税務登録や営業許可、衛生・防火関連の許認可を取得して営業開始となります。
外資比率:多くの飲食業は100%外資も可能(ただし投資額要件あり)
インドネシアでは「ポジティブ投資リスト」により業種ごとの外資規制が定められており、外食業は多くのケースで100%外資も認められる一方、PT PMAとして一定以上の投資額・資本金(数億ルピア規模)が求められます。業種コード(KBLI)と出店エリアによって条件が変わるため、事前に現地専門家を通じて最新要件を確認するのが安全です。
法人税:原則22%(中小・小規模企業向け優遇制度あり)
インドネシアの法人税率は**標準22%**ですが、売上規模などの条件を満たす中小企業には、売上に対して0.5%の最終税を適用できる制度など、いくつかの優遇策があります。どの制度が利用できるかは資本金・年間売上規模によって変わるため、出店前に現地会計事務所と税務シミュレーションを行うことが望ましいです。
ハラール認証:BPJPHが所管、MUI等が実務審査
世界最大級のムスリム人口を背景に、インドネシアでは**BPJPH(ハラール製品保証機関)**がハラール制度を所管し、MUIなどの認証機関が現場審査を行います。会社情報、メニュー・原材料リスト、仕入先証明、調理・洗浄・保管などのSOPを整え、BPJPHを通じて申請するのが一般的です。食品・飲料分野は段階的にハラール認証が義務化されており、中長期的に取得を前提とした店舗設計が必要になります。
雇用規制:RPTKA承認 → 就労許可 → KITAS取得が基本フロー
インドネシアも「ローカル人材優先」が原則で、外国人雇用には職種・人数に関する制限があります。会社側はまず**RPTKA(外国人雇用計画)**の承認を取り、その後、就労許可(IMTA等)と一時滞在許可(KITAS)を取得する流れです。日本人シェフやマネージャーなどは専門職として申請し、ホールスタッフ等は基本的に現地採用とするケースが一般的です。
宗教・多様性・若者文化が交差するインドネシアでは、「食」が共通言語。
ハラール対応、ローカル適応、そして“日本らしい誠実さ”を兼ね備えることが、ブランド成功の鍵です。
制約の中にこそチャンスがある――それが、今のインドネシア市場です。