HOME

札幌の繁盛店「成吉思汗だるま」が東京2号店を「東京本店」として出店した狙い

作成者: 千葉 哲幸|Sep 4, 2026, 8:07:11 AM

731日、東京・上野御徒町に「成吉思汗だるま 東京本店」がオープンした。「成吉思汗だるま」とは、札幌・すすきので1954年に立ち上がった「ジンギスカン」のお店で、特に札幌の観光客でにぎわうお店となり、札幌市内中心部に6店舗を展開するようになった。

その後、同社の3代目となる金 有燮(kim yusop)氏(代表取締役社長)が、「さらなる繁盛を目指そう」と、東京での展開を決意。20247月、東京・上野御徒町に「御徒町店」をオープンした。そしてその2年後、東京1号店から100mという至近距離に「東京店」をオープンした。アイキャッチの人物が、現代表の金氏である。

2024年7月にオープンした東京1号店「御徒町店」から100mの場所に「東京本店」をオープン

 

 

ファミリーの努力と結束力のストーリー

「成吉思汗だるま」の創業からのストーリーは、創業者から始まるファミリーの努力の積み重ねと結束力の賜物である。創業者は、夫ともに朝鮮半島から日本に渡ってきた金官菊子氏、現代表の祖母である。夫が38歳で亡くなり、当時34歳だった彼女は5人の子供を養うために、札幌市内で屋台を営んだ。

 

その後「肉が売れる」ということで、昭和29年(1954年)に「ジンギスカン」のお店を構えた。「肉が売れる」と言っても、牛肉や豚肉を仕入れることが困難。そこで、当時あまり知られていなかった「羊肉」に着眼。羊肉はラム(1年未満の子羊)が人気であったことから、これも仕入れることが困難。そこで、成羊である「マトン」を売るようにした。マトンは肉の旨みと独特のクセがあるのが特徴で、それにマッチする濃い味わいのタレを開発した。こうして濃厚な味わいのジンギスカンが誕生し、「成吉思汗だるま」はお客を引き付けて繁盛店となった。

 

現代表の金氏は、「このようなマトンと濃厚なタレを組み合わせるということは、一般的な発想ではできないこと。朝鮮人ならではの祖母の想像力の賜物」と語る。

 

店名の「だるま」とは、「七転び八起」という理念を表現するもの。同店の象徴である「達磨大師」のイラストは、現代表の父であり、同社2代目の金和秀氏が中学2年生のときに描いたものとのこと。ファミリーの結束力を感じさせるエピソードである。

従業員のユニホームに掲げられた「成吉思汗だるま」の「達磨大師」

 

 

前述のとおり、同店が東京に出店したのは、現代表が決断した。しかしながら、実行するまでは、大いに悩んだという。

「東京には土地勘がない。羊肉の調達、タレの再現性が可能であろうか。人材は集まるだろうか。札幌の店は観光客でにぎわっているが、東京のお客様は果たしてジンギスカンを食べるだろうか……」といった具合である。

 

そして、羊肉は北海道からチルドで届けて、リスクヘッジのために東京での仕入れ調達の仕組みをつくった。タレも北海道から届けるようにした。

 

そして、20247月にオープン。果たして、お店を一周するほどの行列が出来た。最大5時間30分待ち、客単価4000円で、滞在時間は30分間から40分間。客席の回転は1日平均10回転で、多いときには16回転となった。こうして東京・御徒町の「成吉思汗だるま」は、のシンボリックな繁盛店となった。


東京1号店がオープンした当初は、行列が店舗を1週するほどのウエーティングが出来た

 

 

テーブル席を設けて客層拡大に新たな挑戦

しかしながら、東京の「成吉思汗だるま」は、札幌のお店と決定的な違いがあった。札幌では行列が出来るが、東京では行列はほとんど発生しない。その理由は、「札幌の場合は、観光のお客様が目的来店でいらしているから。東京のお客様は、店内が満席だと別のお店に行くから」(金氏)。このような傾向を見据えて、金氏は「2号店を出店しよう」と考えるようになった。

 

「2号店を出店するなら、1号店の近くに出店しよう」と、東京1号店の近隣を当たった。しかしながら、同店の場合「炭」を使用することから商業施設から敬遠された。なかなか、想いどおりの物件と巡り合うことができなかった。

 

そのようなある日、小さな土地が売りに出ていた。看板が備えられていて、問い合わせ先の電話番号が書かれていた。金氏は早速そこに電話を入れて、その土地を購入。そして「1号店から100m」という至近距離に、東京2号店を構えることが出来た。建物は地下1階、地上3階。店舗は地下1階、1階、2階で1639席。3階は作業室とした。このような構成で、17時から翌5時までの営業体制でのぞむ。1号店のオーバーフローを吸収する上で、2号店は絶好のポジションにあると言える。

「東京本店」は「御徒町店」のオーバーフローを吸収する役割を果たし旗艦店の存在感

 

 

今回の2号店では、ある試みを行った。それは「テーブル席」(地下1階)を設けたこと。金氏はこう語る。

「成吉思汗だるまの客席は、カウンター席で炭の七輪を置いて、お客様が来店されたら、ご注文に応じてお肉をさっと出して、従業員が焼いて差し上げるという形。これは、祖母の代から受け継いできたことです。今回は、ここに『ファミリーにも楽しんでいただこう』と考えました」

このようなチャレンジは、同店の客層や利用動機の拡大をもたらすことになるであろう。

 

そして、店名に「東京本店」と付けた。御徒町に2店舗を構えて、ここから本格的に東京で展開していくという決意が感じられる。

 

■おすすめメニュー(税込価格)

 

成吉思汗(イメージ)

羊肉は北海道からチルドで東京に移送(リスクヘッジで東京にも仕入れルートをつくる)。毎日、開店直前に羊肉を手切れして、クイックに提供できるようにセットしている。タレは、強い旨みとコクのあるマトンに合うように、創業当時にオリジナルでつくられたもの。これらで「成吉思汗だるま」の特徴である濃厚な味を創り出している。

「差所のお野菜」230円、「野菜おかわり」230

 

 

「成吉思汗」1280円)、中「ヒレ肉」数量限定(1690円)、右「上肉」数量限定(1790円)

「成吉思汗」は、モモ、バラ、ウデ、肩ロース、ロースなどさまざまな部位をミックスした「成吉思汗だるま」を代表するメニュー。「ヒレ肉」は、羊肉の中で最も柔らかい希少な部位。「上肉」は、穀物肥育で特別に飼育したマトンの、脂身が多いロースと肩ロースを分厚くカットしたもの。

 

 

上左「韓国のり」286円)、上右「おしんこ」230円)、下左「チャンジャ」330円、下右「ママの手作りキムチ」385円)

「韓国のり」は、パリッとした食感と、ほどよい塩気。「おしんこ」は、昆布の風味がきいたオリジナル品。「チャンジャ」は、真だらの胃袋の塩辛で、キムチと並ぶ、創業当時からの人気メニュー。「ママの手作りキムチ」は、2代目ママの手作りで、酸味のバランスがよく、肉、ビール、ご飯とも相性が良い。