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“高くても選ばれる”仕掛けづくり|飲食店のメニュー戦略で客単価を上げる方法とは?

作成者: 柴田彩|Oct 31, 2025 10:27:23 AM

はじめに:値上げが怖い…それでも単価は上げられる?

物価や人件費の上昇が止まらない中、「そろそろ価格を見直さないと利益が残らない」と感じている飲食店経営者は多いのではないでしょうか。
しかし、いざ値上げに踏み切ろうとすると「お客様が離れてしまうのでは…」という不安が頭をよぎります。

 

実際、飲食業界は“価格に敏感な業界”と言われます。
隣の店がランチを100円安くするだけで客足が流れてしまう。
そんな経験をした方もいるかもしれません。

 

けれども、現実には価格を上げてもファンを増やし、安定した売上を保っているお店も存在します。
それらに共通するのが、「高くても選ばれる理由を作っている」という点です。

この記事では、そんな“選ばれるお店”が実践しているメニュー設計・見せ方・価値づくりの考え方を、実例とともに解説します。

1. 「高い」と「価値がある」はまったく違う?

まず覚えておきたいのは、「高い=悪い」ではないということ。
多くの人は“価格”を気にしているようで、実際には“価格に見合う価値があるかどうか”を判断しています。

たとえば同じ¥1,200のランチでも――

  • ・写真映えしてSNSに載せたくなるような盛り付け

  • ・「地元農家の野菜を使用」といったストーリー性

  • ・スタッフの笑顔と気遣いで居心地の良さを感じる

 

このような体験が伴うと、「この価格なら納得」「むしろお得」と感じてもらえるのです。

つまり、お客様が払うのは“価格”ではなく“納得感”
メニューや空間、接客を通して「このお店だからこの値段でいい」と思わせる仕掛けを作ることが、単価アップの第一歩です。

2. “高くても選ばれる”メニュー設計の3原則とは?

① コンセプトを明確にする

まずは「このお店にしかない理由」を打ち出すことから始めましょう。
どんなに味が良くても、他店と同じ土俵に立ってしまえば“価格競争”に巻き込まれます。

たとえば:

  • 「発酵バターと地元小麦の専門ベーカリー」

  • 「旬の食材を主役にした週替わりコース」

  • 「農家直送の野菜を使ったヘルシー定食」

このように、一言で伝わるコンセプトを持つと、「このお店にはこの理由で行く」という選ばれる動機が生まれます。
価格ではなく“世界観”で勝負できるお店になるのです。

② 価値の伝え方を変える

次に重要なのは「伝え方」です。
どれだけ良い素材や技術を使っていても、それが伝わらなければ“ただの高い料理”で終わってしまいます。

たとえば、

「ステーキ定食 ¥1,800」
と書かれているよりも、「黒毛和牛を塊で焼き上げ、旨味を閉じ込めたステーキ ¥1,800」
と書かれている方が、明らかに印象が違いますよね。

同じ価格でも、“体験”を感じさせる言葉を添えることで、お客様の心理的ハードルが下がります。
これは「フレーミング効果」と呼ばれる心理法則で、「どう伝えるか」で価格の感じ方が変わるのです。

③ メニュー構成に「上質ライン」を設ける

すべてを値上げするのではなく、まずは「プレミアム枠」を設けるのがおすすめです。
たとえば:

  • 通常メニューに+αの素材を加えた上位モデル

  • 限定5食の特別メニュー

  • 「シェフおすすめ3品コース」など選ばれる導線づくり

お客様の心理には「せっかくだから少しいい方を選びたい」という“松竹梅効果”があります。
一番高いものがあることで、真ん中の価格帯が自然に選ばれるのです。
この構成を意識するだけで、平均客単価は約10〜20%上がることもあります。

3. “価格”ではなく“物語”で選ばれるお店に

人は「高いもの」を選ぶのではなく、「意味のあるもの」を選びます。
つまり、単価アップを成功させる鍵は、“物語”を持つことです。

たとえば:

  • 「このカレーのトマトは、契約農家から朝採れ直送」

  • 「ソースは季節ごとに変わる限定仕立て」

  • 「シェフが○○で修行した味を再現」

お客様はこうした背景を知ると、“価格ではなく体験”でその料理を判断します。
SNSでシェアされやすくなり、口コミ効果も期待できます。

実際に、「この食材を使っているからこの値段」という根拠があると、

お客様はむしろ高い方を信頼する傾向があります。
“安い=不安、高い=安心”という心理を味方につけましょう。

4. 店舗体験との一貫性が「納得感」を生む

「味は美味しいけど、店の雰囲気が雑」
「料理は上品なのに、接客が軽い」
――こうした“体験のズレ”があると、お客様は無意識に「この価格は高い」と感じてしまいます。

だからこそ、価格に見合う体験をトータルで設計することが大切です。

たとえば:

  • 器やカトラリーの統一感

  • 音楽・照明・香りなど五感に訴える空間演出

  • スタッフの一言コメントで“料理の背景”を伝える

こうした積み重ねが「このお店ならこの値段で当然」という納得感を作ります。
料理・空間・接客の一貫性=価格の説得力です。

5. “お客様目線”で見直す3つのチェックポイント

単価アップを検討する際は、次の3点をチェックしてみましょう。

視点 質問 改善のヒント
メニュー 価格の理由を説明できるか? 食材・生産者・調理工程をストーリー化
接客 料理の価値を言葉で伝えているか? 「このソースは…」など一言トークを用意
空間 世界観と価格が一致しているか? 照明・BGM・器のトーンを統一

見せ方を変えるだけでも、印象は大きく変わります。
コストをかけずに「価値を伝える工夫」から始めてみましょう。

6. 成功しているお店に共通する3つのポイントは?

  1. 1. 価格を上げる前に価値を伝えている
     値上げではなく「なぜこの価格なのか」という納得を先に提供しています。

  2. 2. 物語性と限定性で差別化している
     季節・地域・数量など“今だけ”の要素を設けることで、特別感を演出しています。

  3. 3. 店全体で体験価値を作っている
     メニュー・空間・接客すべてが一貫し、ブランドとしての信頼を築いています。

これらが揃うと、お客様は「価格」ではなく「満足感」で判断します。
結果、リピート率が上がり、安定的な売上を実現できるのです。

7. 実例:単価アップに成功した店舗の工夫とは?

① 地元カフェ:素材×ストーリーで+300円アップ

スイーツを“地元いちご農家とのコラボ”として打ち出したところ、客単価が約300円上昇。
「生産者の顔が見える安心感」でリピーターが増加しました。

② 居酒屋:プレミアムセット導入で15%UP

通常メニューに加え「職人おすすめ3品セット(+¥800)」を新設。
“せっかく来たなら”の心理を刺激し、4割以上の顧客が選択。

③ 和食店:体験コースでブランド価値を確立

料理長が直接説明する「五感で味わうコース」を導入。
単価が¥1,000アップしたにもかかわらず、予約率は1.3倍に上昇。

まとめ:“高い”ではなく“満足”を売る

価格競争に巻き込まれず、長く愛されるお店になるために大切なのは、
「値段」ではなく「理由」を作ることです。

お客様が「少し高いけど、また来たい」と思える仕掛けを――
料理、空間、接客のすべてで作り込むこと。
それが“高くても選ばれる”お店の共通点です。

単なる値上げではなく、価値を育てる価格設計へ。
今日から少しずつ、自分のお店の「納得の理由」を見直してみましょう。