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【特定技能 外食 停止後】の採用戦略|飲食店の外国人採用はどう変わる?

作成者: 柴田彩|May 6, 2026 3:30:00 AM

はじめに|その採用方法、もう通用しません

2026年4月、特定技能「外食業」における新規受け入れは、事実上の停止という大きな転換点を迎えました。

これまで多くの飲食店は、海外から人材を呼び寄せ、現場で育てながら戦力化するモデルに依存してきました。多少日本語が拙くても、多少現場経験がなくても、「これから育てればいい」という前提が成り立っていたからです。しかし今回の制度変更により、その前提は完全に崩れました。

今後は、新たに人材を“連れてくる”ことができません。

つまり、採用の主戦場は海外から国内へと移り、すでに日本で働いている特定技能人材の“転職市場”が、唯一かつ最大の供給源となります。この変化は単なる採用チャネルの変更ではなく、「採用の考え方そのもの」を根本から変えるものです。

これからの採用は、「人手不足だからとりあえず採る」という発想では成り立ちません。選ばれる企業だけが人材を確保できる時代が、いよいよ現実になりました。

 

これからは“即戦力の奪い合い”になる

制度変更の本質を一言で言えば、「青田買いの終焉」です。

これまでは、将来性や人柄を重視し、時間をかけて育成する前提の採用が主流でした。しかし今後は、すでに他店で経験を積んだ人材を対象とした、いわゆる“中途採用型”の市場へと完全に移行します。

この変化が意味するのは、採用のハードルが上がるということだけではありません。評価基準そのものが変わるという点にあります。これまでのように「日本語が話せるか」「明るいか」といった要素だけでは不十分であり、「現場で何ができるのか」「どのレベルまで任せられるのか」といった、より具体的で実務的な判断が求められるようになります。

言い換えれば、これからの採用は「教育前提」ではなく「成果前提」です。この認識の切り替えができない企業は、どれだけ求人を出しても人が集まらないという状況に陥っていきます。

なぜここまで変わるのか|“人材の価値”が逆転する

今回の制度変更によって最も大きく変わるのは、人材の価値構造です。

新規入国が止まるということは、市場に新しい供給が入ってこないことを意味します。その結果、すでに国内にいる特定技能人材の希少性が一気に高まります。特に、数年の実務経験を持ち、日本の接客スタイルやオペレーションに慣れている人材は、これまで以上に高く評価されるようになります。

さらに重要なのは、彼らの“選択肢”が増えることです。これまでは「働ける場所が限られていた側」だった外国人材が、今後は「職場を選ぶ側」へと立場を変えていきます。つまり、企業側が選ぶのではなく、選ばれるかどうかが問われる構造に変わるのです。

この構造変化に気づかず、従来と同じ条件や面接内容で採用を続けてしまうと、「なぜか良い人材が来ない」「採用してもすぐ辞める」という状態から抜け出せなくなります。

面接を変えない企業から、確実に負けていく

採用戦略の中でも、特に見直しが必要なのが面接です。

従来の外国人採用では、日本語力や人柄を中心に判断するケースが多く見られました。もちろんそれ自体が無意味になるわけではありませんが、それだけで採用を決めることは、これからの市場では大きなリスクになります。

なぜなら、今後の採用対象は“未経験者”ではなく“経験者”だからです。経験者である以上、「これまで何をしてきたのか」「どのように働いていたのか」を具体的に確認しなければ、本当の意味での戦力かどうかは見抜けません。

例えば、「前の職場でどのポジションを担当していたのか」を聞くだけでも、その人の役割や責任範囲が見えてきます。さらに一歩踏み込んで、「1日の仕事の流れを説明してもらう」と、業務理解の深さや、現場での立ち回り方がよりリアルに浮かび上がります。

ここで曖昧な回答しか返ってこない場合、その人は“補助的な作業しかしてこなかった可能性”があります。一方で、具体的に説明できる人材は、すでに一定の実務経験を積んでいると判断できます。

また、忙しい時間帯にどのように動いていたかを聞くことで、その人が指示待ちなのか、自ら考えて動けるタイプなのかも見えてきます。この違いは、実際の現場において極めて大きな差になります。

実際の面接では、以下のような質問を投げかけることで、経験の“中身”まで具体的に把握することができます。

①「前の職場で担当していたポジションと、任されていた業務内容を具体的に教えてください」

単なる肩書きではなく、どこまで任されていたのかを確認することで、即戦力としてのレベル感が見えてきます。

②「1日の仕事の流れを、出勤から退勤まで順番に説明してください」

この質問では、業務理解の深さや優先順位の付け方、現場での動き方がそのまま表れます。具体的に話せる人ほど、実務経験がしっかりしています。

③「一番忙しい時間帯には、どのような動きをしていましたか」

指示を待つタイプなのか、自分で判断して動けるタイプなのかがはっきり分かれます。現場での再現性を見極めるうえで非常に重要な質問です。

④「クレームやトラブルがあったとき、どのように対応しましたか」

接客業において避けられない場面での対応力を見ることで、日本的なサービスへの理解度や柔軟性、ストレス耐性まで確認することができます。

⑤「なぜ前の職場を辞めようと思ったのですか」

一見シンプルですが、ここにはその人の価値観や不満のポイントが強く表れます。同じ理由が自社でも起き得る場合、早期離職のリスクを事前に察知することができます。

外国人採用だからこそ見ておくべき“見えないリスク”

外国人採用というと、「特別な対応が必要」と考えがちですが、本質的には日本人の中途採用と共通する部分も多くあります。どちらにおいても重要なのは、スキルや経験だけでなく、「この人が現場で安定して働き続けられるかどうか」を見極めることです。

ただし、外国人採用の場合は、その判断において日本人採用にはない“見えにくいリスク”が存在する点に注意が必要です。

たとえば在留資格や期限です。日本人であれば当然気にする必要のない項目ですが、外国人の場合は在留期限や更新状況によって、そもそも働き続けられるかどうかが左右されます。採用後に「更新できない」「期限が迫っている」といった問題が発覚すると、戦力化したタイミングで離脱するリスクもあります。

また、特定技能2号への意欲も重要な判断材料になります。これは単なる制度の話ではなく、「この先も日本で働き続けたいという意思があるかどうか」を見るポイントです。ここが曖昧な場合、短期的な就労で終わる可能性も高くなります。

さらに、日本人採用と共通して見落とされがちなのが、生活面の安定です。住居や人間関係、金銭面の不安といった要素は、日本人であっても離職の原因になりますが、外国人の場合はそれがより顕在化しやすい傾向があります。特に、言語や文化の違いがある環境では、小さな不安が大きなストレスにつながりやすく、結果として早期離職に直結するケースも少なくありません。

つまり、外国人採用で重要なのは「特別なことをする」ことではなく、日本人採用と同じように本質を見る力に加えて、“制度”と“生活”という2つの視点を補うことです。

ここまで踏み込んで初めて、その人が本当に長く活躍できる人材かどうかを立体的に判断できるようになります。

新しい採用スタンダード|「とりあえず採用」からの脱却

これからの採用で最も重要なのは、「人手を埋めるための採用」から脱却し、“戦力を見極め、活かし、定着させる採用”へ転換することです。これまでのように「足りないから採る」という発想では、もはや人材は集まりません。今後は、その人が何ができるかだけでなく、「どのレベルまで任せられるのか」「別の環境でも再現できるのか」まで見極める視点が不可欠になります。

同時に、採用時点で「この人は長く働くか」を見抜くことも極めて重要です。転職理由や将来の希望、特定技能2号への意欲などを通じて、その人の定着可能性を判断できなければ、採用と離職を繰り返す悪循環に陥ります。これからは「採用できたか」ではなく、「活躍し続ける人材を採れているか」が問われる時代です。

「選ばれる店」になるための採用設計

さらに重要なのは、企業側が“選ばれる前提”で採用を設計することです。今後は企業が人材を選ぶだけでなく、人材から選ばれるかどうかが採用の成否を分けます。給与やシフトといった条件面はもちろん、「この店で働くとどう成長できるのか」「将来どんなキャリアが描けるのか」まで具体的に伝えられるかが決定的な差になります。

特に、特定技能2号への支援やキャリアパスが明確な企業は、それだけで強い採用力を持ちます。つまり、これからの採用は「見極める力」だけでなく、“惹きつける力”と“定着させる設計”まで含めて初めて成立するものです。「とりあえず採用」が通用しない時代において、採用は単なる人事業務ではなく、経営そのものへと変わっています。この視点を持てるかどうかが、“採用できる店”と“できない店”を分ける決定的な分岐点になります。

まとめ|“採用できる店”と“できない店”の差は広がる

特定技能「外食業」の停止は、単なる制度変更ではありません。これは、飲食業界における採用のルールそのものを書き換える出来事です。

これまでのように、誰でも採用できる時代は終わりました。これからは、選ばれる企業だけが人材を確保できる時代です。そしてその差は、時間とともにさらに広がっていきます。

今このタイミングで採用戦略を見直せるかどうかが、1年後、3年後の店舗運営を大きく左右します。目の前の人手不足に対処するだけでなく、その先を見据えた採用設計へと踏み出すことが、これからの飲食店経営において不可欠になります。