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36協定をわかりやすく解説!時間外労働の上限と特別条項のポイント

作成者: 織田 夏海|Oct 21, 2025 12:32:40 AM

企業運営において、従業員の労働時間管理は避けて通れない課題です。しかし、「36協定」を正しく理解し運用している企業はどれほどあるでしょうか?


特に、36協定は日本国内で労働従事する外国人にも適用される点や特別条項付き36協定の運用条件や注意点、残業時間の上限規制を知らないままでいると、思わぬ法的リスクに直面する可能性があります。

 

   •「残業時間の上限を守るために、どのように36協定を締結すればよいのか?」
 
   •「特別条項付き36協定の活用条件は?」
 
   •「違反した場合の具体的な罰則やリスクを知りたい。」
 
 

本記事では、このようなお悩みをお持ちの方に向けて、36協定の基本内容、特別条項の適用条件、残業時間管理の方法、未払い残業代対策などを解説します。

 

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36協定とは?基本内容をわかりやすく解説

36協定(正式名称:「時間外及び休日労働に関する協定」)は、労働基準法第36条に基づく労使協定です。この協定を締結することで、企業は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働や法定休日の労働を課すことが合法的に可能となります。

 

36協定を締結せずに時間外労働を命じる行為は違法であり、企業は行政指導や罰則の対象となります。

 

36協定の目的と意義

企業が従業員に時間外労働や休日労働を課す際には、必ず「36協定」を締結する必要があります。この協定は単なる法的要件にとどまらず、企業の運営における柔軟性を高め、労働者の権利を保護するための重要な役割を果たします。それでは、36協定の目的と意義について詳しく見ていきましょう。

 

1. 時間外労働の合法化

36協定は、企業が法定労働時間を超えて従業員に労働を命じる場合の法的根拠となります。

 

  • • 柔軟な運営を可能に 

例えば、繁忙期や予期せぬ緊急対応が必要な場合でも、36協定を締結していれば、一定の範囲内で時間外労働を合法的に課すことができます。

 

  • • 違反リスクの回避 

36協定が未締結の場合、法定労働時間を超える労働を命じること自体が違法となり、企業は罰則や社会的信用の低下といったリスクに直面します。

  1. 2. 労働者の健康と生活の保護

法定労働時間を超える労働には上限が設定されています。36協定はその範囲内での労働を可能とする一方で、過度な労働を防ぎ、労働者の健康を守る仕組みでもあります。

 

  • • 法定上限の遵守 

法定労働時間を超える労働には、月45時間、年360時間の上限が設定されています。この範囲内での時間外労働を可能とする一方で、これを超える労働を防止することで、労働者の健康を守ります。

 

  • • 健康管理の促進 

長時間労働は、疲労の蓄積や健康障害を引き起こす原因となります。36協定の存在は、企業が従業員の健康を考慮し、無理のない労働環境の提供を促します。例えば、健康診断や面談指導を行うことで、労働者の安全と健康を確保する動きが強まります。

 

3. 法令遵守と企業の信頼性向上

労働基準監督署に届け出ることで、企業が労働基準法を遵守している証明になります。法令違反のリスクを減らし、企業の社会的信用を維持できます。

 

  • • 社会的信用の維持 

適切に法令を遵守している企業は、従業員や取引先、さらには社会全体から信頼を得ることができます。一方で、法令違反が発覚すれば、社会的信用を失い、事業の継続に支障をきたす可能性もあります。

 

  • • 法的リスクの低減

 36協定を締結し、適切に運用することで、企業は法的リスクを未然に防ぐことができます。例えば、未払い残業代の発生や労働時間超過による罰則リスクを減らすことができます。

 

36協定の適用範囲

36協定は、すべての労働者に適用される基本的なルールです。この「すべての労働者」には、日本人だけでなく、外国人労働者も含まれています。日本国内で働くすべての労働者に対して、法定労働時間を超える労働を合法化するために必要な労使協定が求められるのです。

 

すべての労働者が対象

36協定は、労働基準法第36条に基づくものであり、国籍を問わず、日本国内で就労するすべての労働者に適用されます。

 

  • • 対象労働者の例

    •           ・日本人労働者:フルタイムやパートタイム、契約社員などの形態に関係なく、すべての労働者が対象です。

    •           ・ 外国人技能実習生:技能実習制度の下で働く外国人労働者も同様に適用対象となります。

    •           ・ 特定技能ビザで働く労働者:特定技能制度の枠組みで日本で働く外国人も対象です。

    •          ・ その他の在留資格を持つ労働者:技術・人文知識・国際業務や配偶者ビザで働く場合も同様に対象となります。

    •  
  • • 例外がない理由
 

労働基準法は、日本国内で就労するすべての労働者に平等に適用されます。国籍や在留資格にかかわら

ず、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を合法化するためには、36協定が必須です。

 
 
 

外国人労働者への適用例

外国人労働者に対する36協定の適用は、日本人労働者と同様に厳格です。以下に具体的な適用例を挙げます。

 

外国人技能実習生の場合

労働時間管理の重要性 

技能実習生を受け入れる企業では、労働時間や残業の管理が極めて重要です。適切な36協定を締結せず、技能実習生に時間外労働を命じた場合、違法行為とみなされ、監督機関から厳しい指導や処分を受ける可能性があります。

 

技能実習制度の信頼性確保 

適切な労働時間管理は、技能実習制度そのものの信頼性を維持するためにも欠かせません。違法行為が発覚した場合、企業は技能実習生の受け入れ資格を失うリスクを負います。

 

特定技能ビザで働く労働者の場合

特定技能従業員の労働条件 

特定技能従業員は、多くの場合、飲食業や介護、建設などの人手不足が深刻な業界で働いています。これらの業界では繁忙期や夜勤が発生しやすいため、適切な36協定の締結が不可欠です。

 

違法な労働時間管理のリスク

特定技能従業員が長時間労働を強いられた場合、法的な問題に加え、国際的な批判を招く可能性があります。このため、企業は適切な労働環境を整える義務があります。

 


36協定が必要な理由とは?

36協定は、企業が法定労働時間を超える労働や休日労働を課す際に、法令を遵守しながら従業員の健康を守るための重要な仕組みです。これを締結しない場合、企業には法的罰則やリスクが発生します。

 

1. 法定労働時間を超える労働の正当化

労働基準法では、法定労働時間として以下が定められています。

  • ・ 1日8時間

  • ・ 1週40時間

これを超える労働を課すには、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必須です。これがない場合、企業が従業員に時間外労働や休日労働を命じることは違法行為となります。

 

例えば、繁忙期に1日10時間の勤務を従業員に求めた場合でも、36協定が未締結であれば、たとえ労働者の合意があったとしても違法です。この場合、企業は労働基準監督署から是正指導を受けるだけでなく、罰則の対象となります。

 

そもそも時間外労働に対する規制について大企業は2019年4月から適用されていました。中小企業については影響度を考慮され1年間の猶予を与えられ2020年4月から適用となっています。

 

また、以下の特例事業に関しては条件を満たした場合、1週間44時間の労働時間制が認められています。

  • 特例事業

① 商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業)

② 映画・演劇業(映画の映写、演劇、その他興業の事業)

③ 保険衛生業( 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業)

④ 接客娯楽業( 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園、遊園地、その他の接客娯楽業)

  • 条件

常時10人未満の労働者を使用すること

週44時間の労働時間制が認められたとしても1日あたり8時間の労働時間とする原則が変わるわけではありません。

したがって上記のような特例事業の場合は週6日勤務での管理となることが多いです。

 

小規模の飲食事業者の場合は常時10人未満の労働者を使用していることもあることから、結果的に1週間44時間の労働時間制を採用されている場合が多いです。

 

2. 労働基準監督署への届け出義務

36協定は、労働基準監督署への届け出が必要です。この手続きを経て初めて協定が有効となり、企業は法的に時間外労働や休日労働を課すことが認められます。届け出がない場合、協定は無効となり、以下のリスクが発生します。

 

届け出が必要な理由

・労働基準法第36条に基づき、時間外労働や休日労働は労働基準監督署の監督下で管理されます。

・監督署への届け出は、企業が法令を遵守している証明となります。

 

届け出のない場合のリスク

  • ・未届け出の協定で時間外労働を命じた場合、企業は違法行為を行ったと見なされ、労働基準監督署から指導を受けます。

  • ・労働災害が発生した場合、企業の責任が重くなる可能性があります。

 

3. 違反時の罰則とリスク

36協定を締結せず、法定労働時間を超える労働を課した場合、企業には法的罰則やリスクが発生します。

 

法的罰則

労働基準法第119条に基づき、違反企業には以下の罰則が科される可能性があります。

  • ・ 6か月以下の懲役

  • ・ 30万円以下の罰金

  •  

これは、36協定が未締結の場合や協定内容を超える労働を命じた場合に適用されます。

 

企業イメージの悪化

重大な法令違反が発覚した場合、労働基準監督署から企業名が公表される可能性があります。これにより、以下のような影響が考えられます。

  • ・ 顧客や取引先からの信頼の喪失

  • ・ 採用活動への悪影響

  • ・ 従業員の士気低下

  •  

従業員からの訴訟リスク

長時間労働が原因で健康を害した従業員が、企業に対して未払い残業代請求や損害賠償を求めるケースが増えています。

・ 未払い残業代請求:労働者は過去3年間(2024年4月以降は3年間)まで遡って請求可能です。

・ 過労死や健康被害:過重労働が原因で労働災害が発生した場合、企業は重大な責任を問われる可能性があります。


例として、過去には長時間労働が原因で発生した過労死が労災認定され、企業が数千万円規模の賠償を命じられたケースもあります。

 

特別条項付き36協定の適用と注意点

通常の36協定では、時間外労働の上限は月45時間、年360時間に設定されています。しかし、業務の繁忙期や突発的な対応が必要な場合、「特別条項付き36協定」を締結することで、条件付きでこれらの上限を超える時間外労働が認められます。

 

特別条項付き36協定の定義と適用条件

特別条項付き36協定とは、通常の時間外労働の上限を超える労働を特例的に許可する制度です。ただし、無制限ではなく、以下の具体的な条件が課されています。

 

1. 月100時間未満

特別条項を適用する場合でも、1か月あたりの時間外労働は100時間未満でなければなりません。この上限には休日労働も含まれます。

 

2. 複数月平均80時間以内

2~6か月間の平均時間外労働は80時間以内である必要があります。この平均には、休日労働の時間も含まれます。

 

3. 年間720時間以内

年間の時間外労働の合計は720時間以内に制限されています。これにより、長期的な過剰労働を防ぎ、労働者の健康を守る仕組みが確立されています。

 

例外が認められる状況

繁忙期や予期せぬ業務増加など、臨時的な特別事情がある場合に限られます。ただし、これらの事情が恒常的である場合、特別条項を利用することは認められません。

 

特別条項運用時の注意点

特別条項付き36協定を運用する際には、企業として以下の点を注意する必要があります。

 

1. 労働者の健康管理

時間外労働が長時間に及ぶ場合、従業員の健康管理が重要です。具体的な対応策として以下が挙げられます。

  • ・ 面談指導
                  1か月の時間外労働が80時間を超えた従業員に対して、医師による面談指導を実施する必要があります。
  •  
  • ・ 定期健康診断
                  長時間労働が常態化している従業員に対し、健康診断を実施し、結果をもとに健康状態を評価します。
  •  
  • ・ 作業負荷の軽減
                  長時間労働を課している場合、労働者の負担を軽減する措置を講じることが求められます。

 

2. 労使間の合意

  • 特別条項を適用する際には、労使間で明確な合意を得る必要があります。

  • ・労働者代表の選任

  •                  労働者の過半数を代表する者を選任し、その代表者と書面で協定を結びます。

  •  
  • ・条項の具体的な記載

  •                  ・協定書には、以下の内容を明確に記載する必要があります。

  •                  ・時間外労働が必要な理由(例:繁忙期の対応、突発的な業務)

  •                  ・適用される期間と労働時間の上限

  •                  ・労働者への対応策(健康診断や面談指導の実施)

  •  
  • ・ 労働者への周知

  • 特別条項の内容を従業員に明確に説明し、理解を得ることが求められます。

 

3. 労働時間の記録と管理

労働基準監督署の監査に備え、正確な勤怠記録を保持することが重要です。

・勤怠管理システムの活用

             システムを導入することで、労働時間の記録を自動化し、リアルタイムでの把握が可能となります。

 

・時間外労働のモニタリング

             時間外労働が上限を超えそうな場合、システムによるアラートを設定することで、事前に対応ができます。

 

・記録の保存

             労働基準法では、労働時間の記録を3年間保存することが義務付けられています(2024年4月以降)。

 

まとめ

36協定の適切な運用は、企業の法令遵守を確保し、従業員の健康を守るための基盤です。労務管理システムの活用、従業員教育の徹底、特別条項の適切な運用を通じて、健全な労働環境を構築しましょう。


労働基準法は、国籍を問わずすべての労働者に適用されます。外国人技能実習生や特定技能従業員を雇用する企業も、36協定や時間外労働のルールを遵守する必要があります。

 

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