シフト当日に、こんなことはありませんか?
「すみません、もう一つのバイトが長引いていて遅れます…」
「今日は別の店のシフトがあるので早上がりでお願いします」
最近の飲食店では、アルバイトの“掛け持ち”は当たり前になりつつあります。人手不足の中で、掛け持ちを前提に採用している店舗も少なくありません。
しかしその一方で、店長や経営者の現場ではこんな不安がつきまといます。
「掛け持ちって、そもそも禁止できるの?」
「他店の勤務時間と合算されて、残業代の支払い義務が発生することはない?」
「社会保険や労災って、どの店が責任を持つの?」
実は、アルバイトの掛け持ち自体は原則として問題ありません。
ただし、労働時間の管理・残業代・社会保険・労災については、知らないと損をするどころか、店舗側がリスクを負う可能性があります。
知らないうちに「法令違反」や「未払い残業」の責任を背負ってしまうケースも現実に起きています。
この記事では、飲食店の店長・経営者が押さえておくべき、アルバイト掛け持ちの基本ルールと、トラブルを防ぐための実務ポイントをわかりやすく解説します。
まず、アルバイトの掛け持ちを認めるべきかを考えましょう。
結論として、法律上は掛け持ちを禁止するのは難しいケースが多いです。
結論から言うと、飲食店アルバイトの掛け持ち自体は法律違反ではありません。
日本の法律では、アルバイトの掛け持ちを全面的に禁止する規定はありません。
労働者は基本的に、複数の職場で働くことができます。
これは、職業選択の自由(憲法22条)が保障されているためです。
そのため、飲食店のアルバイトが他の飲食店やカフェで働いても、法律上は問題ありません。
実際に、昼はカフェ、夜は居酒屋、深夜はバーといった形で、時間帯ごとに飲食店を掛け持ちするアルバイトも珍しくありません。特に学生アルバイトに多い働き方です。
ただし、飲食店の就業規則によっては、アルバイトの掛け持ちを制限することは可能です。
例えば、次のような理由がある場合です。
・競合する飲食店で働く場合
→同じエリアの居酒屋で掛け持ちしている場合、メニューや仕込み方法、原価情報などが他店に漏れるリスクがあ ります。特に個人経営の飲食店では、レシピや仕入れルートが強みになるケースも多く、注意が必要です。
・長時間労働による健康リスクがある場合
・シフト調整に支障が出る場合
このような事情がある場合、掛け持ちを制限することは認められる可能性があります。
そのため、飲食店では完全禁止ではなく申告制にする方法がよく使われます。アルバイトに掛け持ちを申告してもらい、状況に応じて判断する方法です。
アルバイトの掛け持ちを認める場合、店長や経営者が気になるのが社会保険の扱いです。
「掛け持ちアルバイトを雇うと、飲食店の社会保険の扱いは変わるのか?」
このような疑問を持つ経営者は少なくありません。
結論から言うと、掛け持ちアルバイトでも社会保険のルールは基本的に変わりません。
飲食店アルバイトが掛け持ちをしている場合でも、社会保険の加入条件は基本的に変わりません。
社会保険に入るかどうかは、それぞれの勤務先ごとに判断されます。
つまり、アルバイトが掛け持ちをしていても、あなたの飲食店で働く時間や条件をもとに判断します。
一般的には、次のような場合に社会保険の対象になることがあります。
・週30時間以上働いている場合
・継続して働く雇用関係がある場合
また、パートやアルバイトでも次の条件を満たすと社会保険の対象になることがあります。
・週20時間以上働く
・月の給与が8.8万円以上
・2か月以上働く見込みがある
このルールは、飲食店アルバイトが掛け持ちをしている場合でも同じです。つまり、掛け持ちをしているからといって、社会保険に入らなくてよいわけではありません。
ただ、週20時間以上・月収8.8万円以上のルールは、勤務先の従業員数が51人以上の企業(社会保険特定適用事業所)で働く場合に適用されます。ただし、学生アルバイトの方は、この週20時間のルールからは原則として除外されます。
アルバイトの掛け持ちでは、2つの勤務先で社会保険の対象になる場合もあります。
例えば、次のようなケースです。
居酒屋A店 週25時間勤務
カフェB店 週22時間勤務
この場合、両方の職場で社会保険の加入条件を満たす可能性があります。このようなときは「二以上事業所勤務届」という書類を提出します。
これは、複数の会社で働く人の社会保険を調整するための制度です。
保険料は、2つの会社の給与を合計した金額をもとに計算されます。そして、それぞれの会社の給与額に応じて、保険料を分担して支払う仕組みになっています。
ただし、この手続きは基本的にアルバイト本人が行うため、飲食店側の手続きが大きく増えるわけではありません。
アルバイトが掛け持ちをしている場合でも、労災保険は通常どおり適用されます。飲食店のアルバイトでも、仕事中の事故やケガは労災の対象になります。
飲食店では、以下のような事故が実際に発生しています。
・フライヤーでの油はねによる火傷
・包丁作業中の切り傷
・濡れた床での転倒事故
掛け持ちで長時間働いているアルバイトは疲労が蓄積しやすく、こうした事故のリスクが高まる傾向があります。
2020年9月に、労災保険の制度が改正されました。
現在は、複数の職場の賃金を合算して、労災の補償額を計算する仕組みになっています。
例えば次のようなケースです。
居酒屋A店 月7万円
カフェB店 月6万円
この場合、A店で事故が起きたとしても、補償は合計13万円を基準に計算されます。
つまり、飲食店アルバイトが掛け持ちをしていても、補償が不利になることはありません。
労災保険の保険料は、原則として事業主が負担します。(厚生労働省:労働保険リーフレット.indd )
ただし、労災の補償金そのものは、国の労災保険から支払われる仕組みです。
そのため、掛け持ちアルバイトが事故にあった場合でも、他の職場の賃金まで飲食店が支払うわけではありません。
ただし、事故が多い職場では、将来的に労災保険料が上がる可能性があります。
そのため、飲食店では日頃から安全管理を徹底することが重要です。
副業アルバイトを採用するときには、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
これを怠ると、労務トラブルの原因になります。
アルバイトの労働時間は、基本的に「お店ごと」に管理します。 なので、あなたのお店が他のバイト先の勤務時間まで細かく管理する必要はありません。
ただし、法律では「1日8時間・週40時間」を超えて働いていないかどうかは、 掛け持ちのバイトも全部まとめて考える ことになっています。
そのため、掛け持ちしているスタッフがいる場合は、 本人に「他でも働いているか」「どれくらい働いているか」を聞くなどして、 働きすぎにならないように気をつける必要があります。
さらに注意点もあります。
長時間労働による健康リスクです。
例えば次のケースです。
居酒屋 1日8時間
カフェ 1日6時間
この場合、アルバイトは1日14時間働いている状態になります。
疲労によるミスや事故が起きる可能性があります。
そのため面接時には、副業の有無を確認しておくことが重要です。
ここでは、飲食店の店長や経営者からよくある質問をまとめました。
完全に禁止するのは難しいケースが多いです。
労働者には、職業選択の自由(憲法22条)があるためです。
ただし、次のような合理的な理由がある場合は、掛け持ちを制限できる可能性があります。
・競合する飲食店で働く場合
・長時間労働で健康リスクがある場合
・シフト運営に大きな支障が出る場合
そのため、多くの飲食店では「掛け持ちは申告制」にする方法が採用されています。
はい、条件を満たせば加入が必要です。
社会保険は勤務先ごとに加入条件を判断します。
アルバイトが掛け持ちをしていても、次の条件を満たす場合は加入対象になります。
・週20時間以上働く
・月収8.8万円以上
・2か月以上働く見込みがある
そのため、「掛け持ちだから社会保険に入らなくてよい」というわけではありません。
労災保険の保険料は、それぞれの事業主が負担します。
ただし、労災の補償金は国の保険制度から支払われます。また2020年の制度改正により、複数の職場の賃金を合算して補償額を計算する仕組みになりました。
そのため、掛け持ちアルバイトでも補償が不利になることはありません。
掛け持ちアルバイトを採用するときは、事前の確認がとても重要です。
次のポイントをチェックしておくと、労務トラブルを防ぎやすくなります。
これらを採用時に確認しておくことで、後からトラブルになるリスクを減らせます。
特に飲食店では、長時間労働による事故やシフトトラブルが起きやすい傾向があります。事前確認がとても重要です。
アルバイトの掛け持ちは、現在では珍しくない働き方になっています。
飲食店としても、人手不足の中で掛け持ちをしている人材を活用する場面は増えています。
しかし保険制度を理解していないと、思わぬトラブルにつながることがあります。
重要なポイントをまとめます。
・飲食店アルバイトの掛け持ちは基本的に違法ではない
・社会保険は勤務先ごとに加入条件を判断
・労災は掛け持ちの賃金を合算して補償
・採用時には副業状況を確認する
制度を理解すれば、副業アルバイトも安心して雇用することができます。副業アルバイトの制度を理解することは、飲食店の労務トラブルを防ぐ大切なポイントです。正しい知識を持てば、掛け持ちアルバイトを活用して人手不足を解消できます。