飲食店経営者の間で、いま特に検索されているキーワードがあります。
「人手不足」「人件費」「利益が出ない」
「人件費を抑えても儲からない…」
そう感じている方も多いでしょう。しかし、データを分析すると、利益が出ない本当の原因は別にあります。
本記事では、データをもとに、なぜ“人が足りない店”ほど利益が出にくいのかを解説。最後に、安定的に人材を確保し、利益を確保するためのシフト設計の考え方まで整理します。
飲食業の人手不足は、景気の波や一時的な採用難といった問題ではなく、業界構造そのものに起因しています。公的データを見れば、その深刻さがはっきりと分かります。
厚生労働省「一般職業紹介状況」によれば、日本全国の有効求人倍率は1倍を上回る水準で推移していますが、これは全産業で「求人1件につき1人以上の求職者がいる」ことを示す指標です。一般的に1倍を超えるほど「採用が難しい」環境とされています。
しかし同統計を見ると、宿泊業・飲食サービス業では求人が大きく減少傾向にあり、他業界と比べても採用環境が厳しいことを示しています。2025年の統計では、宿泊・飲食サービス業の新規求人数が前年から約14%減少しており、同業界内でも求人の減少幅が目立っています。
要するに、飲食店側から見ると有効求人倍率は1倍台でも求人数自体が大きく減っていると言う状況です。これは単に倍率が高いだけではなく、「応募自体が減っている」という深刻さを示しています。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や最低賃金の推移を見ると、飲食業の平均時給は年々上昇しています。しかし、賃金を上げても必ず応募が増えるわけではありません。
背景には以下の要因があります:
・最低賃金の継続的引き上げ
・物流・小売・介護など他業界との人材獲得競争の激化
・深夜帯や週末シフトを敬遠する労働者の増加
結果、多くの店舗では 「人件費は上がるが、人は増えない」 状態が常態化しています。
飲食業の人手不足を理解するには、次の3点を押さえることが重要です。
・飲食業は慢性的に求人超過の状態
・労働力の供給が構造的に不足している
・賃金引き上げだけでは問題は解決しない
この構造の中で、人が足りないまま営業を続けると、たとえ人件費を抑えても 売上・客単価・利益率が同時に悪化 するリスクがあります。つまり、人手不足は 「募集方法や努力不足の問題」ではなく、業界全体の前提条件の変化 だと捉える必要があります。この前提を理解しないまま現場に無理を強いると、後で説明する「客単価低下のメカニズム」や「ピーク集中型営業の問題」を理解することもできません。
人手不足の状態で営業を続けると、最初に影響を受けるのは 売上そのものではなく、客単価と利益率 です。
・提供スピードの低下
注文が通るまで時間がかかる
ドリンクや料理の提供が遅れる
・追加注文の機会損失
客は無意識に「もう追加で頼まなくていいか」と判断
本来、利益を生みやすい ドリンクのおかわり・デザート・締めの一品 が注文されない
結果として…
追加注文が減る
デザート・締め商品が出ない
忙しいのに客単価が伸びない
・クレームはほとんど出ない
・売上も一見すると大きく減らない
しかし 取れるはずだった利益だけが静かに失われていく
ここで一度、現場の状態をチェックしてみてください。
■ 繁忙時間帯、ホールが常にギリギリで回っている
■ ドリンクの提供が遅れがちだと言われたことがある
■ 追加注文やおすすめがほとんどできていない
■ ピーク後、スタッフが疲弊して回転率が落ちる
■ 忙しい割に、思ったほど利益が残っていない
3つ以上当てはまる場合、
人件費以前に「人が足りないことで利益を逃している」可能性が高いです。
日本の多くの飲食店では、来店が特定の時間帯に集中する「ピーク集中型営業」が一般的です。
この構造は一見効率的に見えますが、人手不足の現場では売上以上に利益を逃す原因になっています。
ランチタイム:11:00〜14:00
ディナータイム:18:00〜21:00
「飲食店予約レポート2024」によると、ディナーの来店予約は全体の約60〜70%を占める傾向があり、ピーク外の時間帯では稼働率が低いことが確認されています。この偏りが、人手不足×ピーク集中の構造的課題を生んでいます。
・ピーク時に人手が不足する
特定時間に来客が集中するため、スタッフが対応しきれず、オペレーションが乱れます。
・提供スピードと接客品質の低下
注文・料理提供・会計のサイクルが滞り、回転率が落ちるだけでなく、ドリンク追加やデザートの提案もできなくなります。
・利益機会の損失
売上は立っているように見えても、客単価が伸びず利益率が低下しているケースが多くあります。
・忙しいピーク時間にスタッフが足りない → 提供スピード低下
・ドリンク追加や締めの一品など、利益率の高い商品の販売機会を逃す
・ピーク外の時間帯は来店が少ないため、全体の売上・利益が伸びにくい
この結果、「忙しいのに利益が残らない」状態が発生します。
ピークが19〜20時に集中している店舗では、その2時間のためだけに人を厚く配置することになります。
しかし、その前後の時間帯は人が余り、結果として人件費が“売上に変わらない時間”が発生します。
一方、来店を意図的に分散できる店舗では、同じ人数でも売上化できる時間が長くなります。
ここが決定的な違いです。
① 早い時間を“得”にする設計
→ ピーク前に席を埋めることで、19時台の混雑を緩和。
② 遅い時間を使い分ける設計
→ ディナー後の空白時間を収益化。
③ 時間帯別の売り方を変える
→ 「同じメニューを一日中売る」から脱却する。
④ シフトを“ピーク前提”から再設計する
分散ができると、現場に余力が生まれます。
結果として、客単価と回転率の両方が改善します。
人件費率は多少上がっても、粗利総額が伸びるため営業利益が残る構造になるのです。重要なのは、人件費を削ることではなく、人件費が“売上を生む時間”を増やせているか。分散型営業とは、コスト削減型の発想ではなく、売上変換効率を高める設計思想です。
人手不足を放置して営業を続けると、経営はじわじわと、しかし確実に追い詰められます。最初に現れるのは売上の急落ではなく、「忙しいのに利益が残らない」状態の固定化です。
現場は常に余裕がなく、スタッフは疲弊し、離職が連鎖的に進みます。欠員が出るたびに採用と教育を繰り返すものの、コストだけが積み重なり、シフトは埋まらず、負担はさらに増大します。
この状態に陥ると、経営の選択肢は急激に制限されます。値上げを試みてもサービス品質が追いつかず断念。集客キャンペーンを仕掛けても、現場が回しきれず踏み切れない。
結果として、経営はこうなるのです:
・何もしなくても、利益は圧迫され続ける
・何か行動を起こそうとしても、手が出せない
人手不足は単なる「現場の問題」ではなく、利益改善の余地そのものを奪う経営リスクです。放置すれば、気づいたときにはほとんど選択肢が残っていない――この現実は決して他人事ではありません。
ここまで見てきたデータが示すのは、人手不足は一時的な採用難ではなく、飲食店の利益構造そのものに関わる深刻な問題であるということです。
単にシフトを埋めるだけでは、現場は疲弊し、追加注文や客単価向上の機会を逃し続けます。その結果、売上は立っているように見えても、利益が残らない構造が固定化してしまうのです。
だからこそ、経営者が今最優先で考えるべきは、「安定してシフトに入れる人材を確保する仕組み」です。
具体的には以下のポイントが重要です:
1. 長期的に働ける人材の採用・育成
2. 繁忙時間帯を任せられる戦力の確保
3. 欠員が出ても現場が回る予備戦力の設計
4. 採用・教育コストを利益に変える運用フローの構築
この仕組みを整えることができれば、ピーク集中による利益ロスを抑え、客単価・回転率・利益率を最大化する営業体制を作ることができます。言い換えれば、人手不足を「固定コストの悩み」ではなく、利益を生む経営戦略の一部に変えることができるかどうかが、飲食店経営の分かれ道になるのです。
飲食店経営において、人手不足は単なる「人件費の問題」ではなく、利益構造そのものに関わる課題です。人が足りない店舗ほど、追加注文やデザート、締めの一品といった利益率の高い販売機会を失い、客単価が下がりやすくなります。また、ピーク集中型の営業では現場に余力がなく、提供スピードや接客品質が低下し、利益を取り逃すリスクが高まります。こうした状況を改善するためには、安定してシフトに入れる人材を確保し、繁忙時間帯の戦力を維持することが重要です。
その選択肢の一つとして、特定技能人材の受け入れがあります。長期的に働ける人材を配置することで、現場の負担を抑え、利益を最大化する営業体制を支えることができます。弊社では、この特定技能人材の受け入れサポートも提供しており、安定した人材確保の仕組みづくりを支援できます。シフト設計は単なる労務管理ではなく、経営戦略そのものであり、利益を守る最大のリスクヘッジとなります。