2026年1月23日、総務省より2025年12月分および2025年平均の消費者物価指数(CPI)が公表されました。
2025年通年の総合指数は前年比3.0%上昇。12月単体では前年同月比2.1%と、数字の上では伸びが鈍化したように見えます。しかし、その内訳を解剖すると、飲食店経営者にとって「一息つける」状況など微塵もないことが分かります。むしろ、2025年に積み上がったコスト増が、2026年の経営基盤を根底から揺さぶろうとしています。
2025年の1年間を通じて、飲食店を最も苦しめたのは間違いなく「食料品」の記録的な高騰です。
2025年平均で、生鮮食品を除く食料は前年比6.8%上昇。10月・11月の7%台からはわずかに軟化したものの、依然として異常な高水準です。 特に深刻なのは、日本の食生活の根幹である「米」です。
10月時点での「39.6%上昇」を大幅に上回る、年間を通じた壊滅的なコスト増が浮き彫りになりました。米を主食とする定食、丼もの、寿司などの業態において、原価率の計算はもはや2024年以前の常識が通用しないフェーズに入っています。
一方で、外食全体の2025年平均上昇率は4.0%に留まっています。 食料(6.8%増)や穀類(21.9%増)の爆発的な上昇に対し、販売価格への転嫁が半分程度しか進んでいないという「利益の持ち出し」状態が1年を通じて常態化してしまいました。2026年は、この「削られた利益」をどう取り戻すかが生存条件となります。
食材費に目を奪われがちですが、店舗運営を支えるインフラコストも深刻です。
電気代は、補助金の有無に左右されながらも、通年で見れば確実に経営を圧迫しています。また、予約管理やSNS集客に不可欠な通信コストの上昇も、じわじわと利益を削る要因となっています。「節約」という精神論ではなく、構造的な「省エネ投資」や「オペレーションのデジタル化」による人件費抑制が、もはや避けては通れない投資であることを示しています。
最新のデータが突きつけているのは、「コスト高は一時的な波ではなく、新しい土台(ニューノーマル)になった」という事実です。消費者物価指数(CPI)は、食料・エネルギーともに高止まりが常態化し、仕入れ原価が“元に戻る前提”での経営判断はもはや成り立ちません。
2026年、飲食店経営者は以下の2点において、これまで以上のスピード感で決断を下す必要があります。
米価が前年比で1.6倍以上になった今、米を「サービス」や「安価な主食」として提供し続けるモデルは限界を迎えています。CPIが示しているのは、穀類価格の上昇が一過性ではなく、構造的なコスト上昇であるという現実です。
これらを組み合わせた「攻めのメニューミックス」が不可欠です。“売れているメニュー”ではなく、“利益を残すメニュー”を基準にした構成転換が、2026年の明暗を分けます。
12月のデータで、宿泊料が前年比で高止まり(年平均6.8%増)しているように、消費者は「価値があるもの」への支出を止めてはいません。CPI上も、サービス価格は下がらず、価格と価値の関係がよりシビアに選別される局面に入っています。外食の4.0%という値上げ幅は、食材・エネルギーのコスト増を鑑みれば、まだ「甘い」と言わざるを得ません。
顧客の顔色を伺う「守りの価格設定」から、自店のブランドとスタッフの生活を守るための「適正な価格設定」へ。
2026年上半期中に価格改定を先送りせず決断できるかどうかが、年末に“耐えられる店”か“削られる店”かを分ける分岐点になります。
2025年、私たちはかつてないほどのコスト増に直面しました。 米価67%増、電気代5%増。この数字を前にして、「いつか下がるだろう」という期待は経営のリスクでしかありません。
2025年のデータが証明したのは、「過去のやり方の延長線上には、赤字しかない」という冷徹な現実です。 2026年、私たちはこの高いコスト構造を前提とした「新しい飲食店経営」を再構築しなければなりません。それは苦しいプロセスですが、適正な価格転嫁と徹底的な効率化を成し遂げた店舗だけが、次なる成長のステージへと進むことができるのです。