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米価格145%時代の飲食店経営|利益を守る原価戦略と仕入れ対応【米価格2026年1月】

作成者: 柴田彩|Mar 4, 2026 9:32:40 AM

米価格145%時代、飲食店の利益はどうなる

長く続いた米価格の高騰は、多くの飲食店にとって“静かな利益圧迫”となってきました。日々の仕入れの中で徐々に原価率を押し上げ、気づけば月次利益を確実に削っている。そんな状況が続いています。

今回分析するのは、農林水産省が公表した令和8年1月(速報)時点の令和7年産米の相対取引価格データです 。これは出荷業者と卸売業者の間で実際に成立した業務用取引価格を集計したもので、飲食店の仕入れ価格に直結する重要な指標です。

最新のデータを見ると、確かに価格上昇の勢い自体は落ち着きつつあるものの、水準は依然として歴史的な高止まり状態にあることがわかります。

全銘柄の平均相対取引価格は60kgあたり35,465円。前年同月比で145%という水準です。これは単なる“高め”ではありません。前年と比べて約45%高い価格が常態化しているという意味です。

60kgで約1万円の差。5kg換算でおよそ800円強の上昇になります。

例えば、月に300kgの米を使用する定食業態であれば、単純計算で月5万円前後の原価増になります。年間では60万円規模です。売上が同じでも、利益だけが確実に削られていく構造です。

「落ち着いた」の正体は、価格ではなく数量の減少

今回のデータで注目すべきなのは、価格だけではありません。数量の動きです。

多くの銘柄で、取引数量が前年を大きく下回っています。全銘柄合計でも前年比38%という水準です。つまり、市場全体で“買い控え”が進んでいる可能性が高いのです。価格が高いままなのに数量が減る。これは何を意味するか。

飲食店側が
・銘柄を見直している
・ブレンドに切り替えている
・使用量を減らしている
・メニュー構成を変えている

といった行動を取っていると考えるのが自然です。

言い換えれば、「高くても買う」フェーズは終わり、「高いなら選ぶ」フェーズに入ったということです。

価格帯は“新しい基準”に移行している

主要銘柄を見ると、多くが35,000円〜40,000円帯に集中しています。かつての2万円台後半という水準は、もはや例外的な存在です。

これは一時的なショックではなく、価格レンジそのものが引き上がった可能性を示しています。

飲食店経営において最も危険なのは、「そのうち元に戻る」という前提で価格設計を続けることです。もしこの水準が新しい常態だとすれば、原価率の設計を根本から見直す必要があります。

今後は急落よりも“緩やかな調整”

数量が減少していることは、価格を押し下げる圧力になります。しかし同時に、生産コストや物流費も上昇しており、かつての価格帯に一気に戻る可能性は低いと考えられます。

今後想定されるのは、急落ではなく“高値安定からの緩やかな調整”です。

つまり、

・大幅値下げは期待しにくい
・しかし上昇トレンドは終わりつつある

という局面です。

35,000円時代の米価格にどう対応するか

飲食店が今すぐ取るべき現実的な行動とは?

① 原価率は“感覚”ではなく“再設計”する

米価格が60kgあたり35,000円前後で安定しつつある今、以前の感覚で原価を管理していては利益が削られます。
例えば、1杯200gのご飯を提供している店では、60kgで約300杯分。以前の25,000円時代と比べると、1杯あたり30円の差が生じます。

  • ・1日200食なら6,000円
  • ・月25日営業なら15万円
  • ・年間では180万円

「なんとなく吸収できている」と思っているその分が、実は利益から消えているのです。
対応策としては、

  • ご飯の提供量の微調整(200g→180gでも体感差はほぼなし)
  • おかわり無料の条件付き・時間帯限定への見直し
  • セット価格の再構築

単なる値上げではなく、“利益設計の再構築”が求められています。

② 米の銘柄は“こだわり”ではなく“戦略”で選ぶ

「うちはコシヒカリ」というこだわりだけで選んでいる店ほど、見直しが必要です。
お客様は本当に銘柄で来店しているのか、それとも全体の満足度で来店しているのかを考えましょう。

  • ランチ業態 → 安定価格重視+ブレンド米
  • 夜の高単価(5,000円以上) → ブランド米維持
  • 丼・カレー業態 → 粒感や水分の安定性重視

ブレンド米は妥協ではなく、原価を守りながら品質を保つ経営の技術です。「なんとなく続けている銘柄」が最も危険です。

③ 米使用量を“日次管理”に引き上げる

「1日どれくらい米を使っているか分からない」という状態は意外と多く見られます。しかし、米は今や主食ではなく“主要コスト”です。

毎日、炊飯量と廃棄量を記録し、ロス率を数値で把握することが必要です。曜日別の消費量を分析して、炊飯回数を調整すれば、ロス率5%の改善でも年間数十万円の利益改善につながります。
管理していない=利益を放置している、と言っても過言ではありません。

④ 価格転嫁を“恐れない設計”へ

値上げが怖いという経営者は多いですが、10円の原価増を放置するより、30円の価格調整で利益を守る方が長期的に安全です。

ポイントは単純な値上げではなく、利益設計の見直しです。

  • ・ご飯大盛りを有料化
  • ・定食構成の見直し
  • ・トッピング戦略の導入

価格を上げるのではなく、利益構造そのものを設計し直す発想が必要です。

 

今こそ“戦略商品”として米を扱う

今回の価格水準は落ち着きつつあるものの、高値が続く状況は変わりません。

  • ・急落は期待できない
  • ・無対策は利益を確実に削る

・米はもはや“主食”ではなく、戦略商品です。
今、設計を変えられるかどうかが、来年の利益を決めます。

まとめ

が示しているのは、「価格は依然高いが、市場は転換点にある」という事実です。

米価格は元に戻るかどうかを待つ段階ではありません。この価格帯を前提に、どう利益を守るかを考える段階に入っています。飲食店経営は今、受け身ではなく再設計のフェーズです。

価格に振り回されるのではなく、価格を前提に戦略を組み直す。
それが、これからの安定経営を左右します。