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売上108.7%の好調も客数は横ばい、“客単価主導型”へ変わる市場構造【外食産業市場動向調査2025年11月】

作成者: 柴田彩|Mar 12, 2026 1:40:44 AM

2025年11月の外食市場は好調|売上108.7%の背景は?

日本フードサービス協会(JF)が公表した2025年11月度の外食産業市場動向調査によると、外食市場全体の売上は前年同月比108.7%と、10月に続き高い成長率を記録しました。一方で、客数は100.9%とほぼ横ばいにとどまっており、今回の売上拡大は来店客数の回復によるものではなく、客単価の上昇(104.2%)が大きく寄与していることが分かります。

11月は前年と比較して土日祝日数が多い曜日まわりであったことが、ファーストフードやレストラン業態の集客を後押ししました。また、インバウンド需要については、中国からの団体客キャンセルが一部で見られたものの、個人旅行客を中心に全体としては堅調に推移しています。現在の外食市場は、客数増加による売上成長ではなく、1回あたりの支出額をどのように設計できているかが問われる市場構造へと移行していると言えるでしょう。

客数は伸びない、それでも売上が伸びている理由は?

2025年11月のデータから浮かび上がるのは、「来店回数が増えなくても売上は伸びる」という明確な市場の変化です。消費者の節約志向が弱まったわけではなく、クーポンや値引きキャンペーン、期間限定メニューといった施策が、現在も集客に直結しています。つまり、無条件の値上げが受け入れられている状況ではなく、価格に対する納得感がなければ選ばれない市場であることが、より鮮明になっているのです。

【業態別分析】伸びる外食・伸び悩む外食の違い

ファーストフード(FF)|低価格×付加価値で堅調成長

ファーストフード業態全体の売上は108.8%と高水準を維持しています。客数は101.5%、客単価は104.4%と、いずれも前年を上回り、安定した成長が続いています。特に和風ファーストフードは114.1%と大きく伸びており、新メニューの投入や値引きキャンペーンが奏功した結果と言えるでしょう。洋風ファーストフードも108.8%と好調で、期間限定商品やお得感のあるランチ施策が集客につながっています。

一方で、持ち帰り米飯や回転寿司業態では、客数が前年割れとなる99.7%にとどまり、客単価の上昇によって売上を維持する構造が続いています。

ファミリーレストラン(FR)|売上好調でも客数は課題

ファミリーレストラン全体の売上は109.4%と好調に推移していますが、客数は99.6%と前年を下回る結果となりました。洋風ファミリーレストランは、低価格業態の好調さやメディア露出の効果もあり110.8%と高い伸びを示しています。和風ファミリーレストランでは季節性の高い鍋メニューが支持され108.6%となり、中華ファミリーレストランもクーポン施策やランチ強化により108.5%と堅調です。

一方、焼き肉業態は106.7%と売上は伸びているものの、単価上昇が限定的であり、「高単価である理由」が十分に伝わらない店舗ほど、選ばれにくくなる傾向が続いています。

居酒屋・パブ|回復基調だが伸びは限定的

居酒屋・パブ業態の売上は103.0%と回復基調にありますが、平日の少ない曜日まわりや、忘年会シーズン前という時期的要因も影響し、客数は前年並みにとどまりました。この結果からは、一次会利用なのか、軽飲みなのか、観光利用なのかといった立地や利用シーンを明確にできている店舗と、そうでない店舗との間で、差がさらに拡大していることが読み取れます。

ディナーレストラン・喫茶が示す「価格の納得感」

注目すべきなのは、ディナーレストランが109.2%、喫茶業態が109.8%と、いずれも高い伸び率を示している点です。喫茶業態では客数が前年割れとなった一方で、客単価は109.9%と大幅に上昇しています。消費者は単に安い店を求めているのではなく、長く滞在できることや、作業や打ち合わせに使いやすいこと、時間を有効に使えるといった体験価値に対しては、支出を惜しまない姿勢を明確にしています。

2025年11月の最新データからわかる飲食店経営の課題とは?

近年の外食市場では、「高単価=選ばれる」「値引きをすれば集客できる」「インバウンドがいれば安定する」といった、これまで飲食店経営の前提とされてきた考え方が揺らぎ始めています。

焼き肉や一部の高単価業態では売上を維持しているものの客数が伸び悩み、消費者は価格そのものではなく“その価格を払う理由”を厳しく見るようになっています。また、クーポンや値引きに依存した集客は短期的な効果がある一方で、通常価格での満足度やブランド力を低下させるリスクを孕んでいます。さらに、インバウンド需要も外部環境に左右されやすく、特定の国籍や団体客に依存した経営は売上変動を招きやすい構造です。これらの変化は、価格や集客手法、客層に頼った従来型の経営が限界を迎えていることを示しています。

飲食店経営者が今できる対策は?

これからの飲食店経営では、価格や割引、インバウンドといった単一要素に依存せず、「どんな人が、どんな場面で、なぜこの店を選ぶのか」を明確に設計することが重要です。高単価業態では利用シーンや体験価値を言語化し、コースやセットを通じて価格への納得感を高めることが求められます。値引き施策は集客目的に限定し、体験型特典などを活用して通常価格でも満足度の高い構成を整えることが不可欠です。また、インバウンドは“売上の柱”ではなく“上積み”と捉え、観光客向けと日常利用客向けでメニューや価格帯を分けることで、需要変動に強い経営体制を築くことができます。

 

2025年11月:まとめ

2025年11月の外食市場は売上こそ好調に推移しているものの、その中身を見ると「客数の回復」ではなく「客単価の上昇」によって支えられている構造であることが分かります。消費者は価格そのものではなく、その価格に見合う理由や体験価値を厳しく見極めるようになっており、値引きやインバウンド需要に頼った経営は安定性を欠きやすくなっています。今後の飲食店経営では、市場全体の好調さに安心するのではなく、自店がどの利用シーンで選ばれているのか、価格に対する納得感をどのように伝えられているのかを改めて見直すことが重要です。客単価をどう設計し、どの顧客に価値を届けるのかを明確にできた店舗こそが、変化する外食市場の中でも持続的な成長を実現していくでしょう。