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特定技能33万人時代の到来|2026年、飲食店が直面する“人材構造の転換”と2つの経営決断【2025年6月】

作成者: 柴田彩|Mar 10, 2026 12:36:51 AM
  • 外食業は3.6万人へ拡大、飲食店が知るべき採用トレンド

    日本の外食産業では慢性的な人手不足が続く中、外国人材の活用が急速に進んでいます。
    特に2019年に始まった特定技能制度は、飲食店にとって重要な人材確保の手段になっています。

    出入国在留管理庁が公表している「特定技能在留外国人数」の統計によると、2025年6月時点の特定技能外国人は33万6,196人となっています。

    制度開始からわずか数年で急速に拡大しており、日本の労働市場において重要な人材供給制度へと成長していることが分かります。

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    本記事では、最新データをもとに

    • ・特定技能外国人の全体動向
    • ・外食業の位置づけ
    • ・外国人採用のトレンド

    を飲食店経営者向けに解説します。

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  • 特定技能外国人は33万人に拡大

    特定技能外国人の在留人数は、この1年で急速に増加しています。

    時期 人数
    2024年6月 251,747人
    2024年12月 284,466人
    2025年6月 336,196人

     

2024年6月から2025年6月までの1年間で、約8万4千人増加しました。
半年ごとに見ても増加幅は拡大しており、2024年12月から2025年6月までのわずか6か月でも約5万人以上増えています。

特定技能制度は2019年に始まった制度ですが、制度開始当初は数万人規模にとどまっていました。しかし現在では30万人を超え、日本の労働市場において重要な人材供給制度へと成長しています。

 

この急増の背景には、いくつかの要因があります。

まず大きいのが、日本国内の人手不足の深刻化です。
特に飲食業、介護、建設、製造業などの現場では、日本人労働者の確保が年々難しくなっています。少子高齢化により労働人口が減少する中で、外国人材の受け入れは企業にとって現実的な選択肢となっています。

次に、観光需要の回復も影響しています。
コロナ禍で落ち込んでいたインバウンド需要が回復し、飲食店や宿泊業では人手不足が再び深刻化しました。特に外食業ではホール・キッチンともに人材確保が難しく、外国人採用を進める企業が増えています。

さらに、外国人採用の仕組みが整ってきたことも大きな要因です。
特定技能制度の運用が進む中で、登録支援機関や送り出し機関などの支援体制が整備され、企業が外国人を採用しやすい環境が整ってきました。

こうした背景から、特定技能外国人の人数は今後も増加する可能性が高く、外食業を含む多くの業界で外国人材の活用がさらに進むと考えられます。



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    外食業の特定技能外国人は36,281人

    特定技能外国人の分野別人数を見ると、外食業は次の規模となっています。

    分野 人数
    飲食料品製造 84,892
    介護 54,916
    工業製品製造 51,473
    建設 44,160
    農業 35,454
    外食業

    36,281

外食業は36,281人(10.8%)で、主要分野の一つとなっています。

飲食料品製造や介護に比べるとやや少ないものの、接客業としては大きな受け入れ分野です。

また、外食業の外国人は短期間で大きく増加しています。

 

外食業は直近半年で8,417人増加

分野別の増加数を見ると、外食業でも特定技能外国人が大きく増えていることが分かります。

直近の増加数は次の通りです。

期間 外食業増加数
2024年6月 → 2024年12月 約7,456人
2024年12月 → 2025年6月 約8,417人

直近半年だけでも8,000人以上が増加しており、外食業は特定技能制度の中でも増加ペースが速い分野の一つです。

年間ベースで見ると、約1万5千人規模の増加ペースで外国人材が外食業に流入している計算になります。

この背景には、外食業界特有の人材不足があります。

① 外食業の慢性的な人手不足

外食業界では長年、人手不足が課題となっています。
特に地方店舗や深夜営業の店舗では、日本人スタッフの確保が難しいケースも増えています。

そのため、近年は外国人材を戦力として採用する企業が増えています。

② インバウンド需要の回復

コロナ禍で落ち込んでいた観光需要が回復し、飲食店の来客数は再び増加しています。
観光地だけでなく都市部の飲食店でも外国人観光客の来店が増え、店舗運営に必要な人員数も増加しています。

その結果、特定技能外国人の採用を進める企業が増えています。

③ 日本人アルバイト不足

もう一つ大きな要因が、日本人アルバイトの減少です。

少子化の影響で学生アルバイトの数は年々減少しており、さらにコロナ以降は働き方の多様化も進みました。
その結果、従来は学生アルバイトで回していたホールやキッチンの人材を確保することが難しくなっています。

その代替として、長期的に働ける外国人材の需要が高まっているのが現在の状況です。

外食業では「外国人戦力化」が進んでいる

こうした背景から、外食業では外国人スタッフを単なる補助人材ではなく、店舗運営を支える戦力として採用する動きが広がっています。

特に特定技能制度は

  • ・フルタイム勤務が可能
  • ・日本語能力試験や技能試験をクリアした人材

という特徴があるため、外食企業にとっては安定した労働力として活用しやすい制度となっています。

 

特定技能外国人の国籍はベトナムが中心?

特定技能外国人の国籍を見ると、特定の国に集中していることが分かります。

最も多いのはベトナムで約14万8千人(44.2%)と、全体のほぼ半数を占めています。
続いてインドネシアが約6万9千人(20.7%)
ミャンマーが約3万5千人(10.6%)、フィリピンが約3万2千人(9.7%)となっています。

この結果から、特定技能制度ではベトナム人材が中心的な役割を担っていることが分かります。

一方で最近は、インドネシアやミャンマー出身の人材も増加傾向にあり、今後は東南アジア全体からの人材流入が広がる可能性があります。

外国人材は都市部だけでなく全国に広がっている

特定技能外国人が多い地域を見ると、愛知県・東京都・大阪府・埼玉県・千葉県などの都市部が上位に並びます。

ただし、特定技能外国人の約44%はこれらの主要地域以外に分布しています。
つまり外国人材は都市部だけでなく、地方の産業や中小企業にも広く受け入れられているという状況です。

飲食業でも同様で、外国人採用は都市部の大型店舗だけでなく、地方の飲食店でも一般的な採用手段になりつつあります。

外食業の試験合格者は12万人以上

外食業の特定技能試験も年々受験者が増えています。

これまでの累計では、約17万8千人が試験を受験し、約12万人が合格しています。

つまり、すでに12万人以上が外食業で働く資格を持っていることになります。

この数字から見ても、今後も外食業への就労を希望する外国人材は増える可能性が高く、外食業界にとって重要な人材供給源になっていると言えるでしょう。

 

飲食店経営者が今取るべき対応

今回のデータから見えるのは、外国人採用は一時的な対策ではなく、今後の外食業の標準的な採用手段になる可能性が高いということです。特定技能外国人はこの1年で約8万人増加し、外食業でも半年で8,000人以上増えています。
つまり、これからの店舗運営では「外国人を採用するかどうか」ではなく「どう活用するか」が経営の重要なポイントになります。

飲食店経営者が今から準備しておくべきポイントは主に3つあります。

① 外国人採用を前提にした店舗運営に変える

これまで多くの飲食店では、日本人アルバイト中心の人員構成で店舗を運営してきました。
しかし少子化の影響で学生アルバイトは減少しており、日本人だけで店舗を回すことが難しくなりつつあります。

そのため、今後は外国人スタッフがいることを前提にした店舗運営に変えていく必要があります。

例えば現場では、次のような整備が重要になります。

  • ・外国人スタッフを前提にしたシフト設計
  • ・多言語マニュアルの整備
  • ・言語に依存しないオペレーション
  •  

特に効果的なのが、写真マニュアルや図解マニュアルの導入です。
文字中心のマニュアルではなく、見れば理解できる仕組みを作ることで、日本人スタッフ・外国人スタッフのどちらにも分かりやすい店舗運営が可能になります。

 

② 教育コストを下げる仕組みを作る

外国人採用で多くの店舗が感じる課題が、教育に時間がかかることです。

飲食店では覚える内容が多く、接客・レジ・メニュー・厨房オペレーションなど、短期間で習得する必要があります。
そのため重要なのが、教育を「人」に依存させず「仕組み」にすることです。

教育効率を上げる方法として、次のような仕組みがあります。

  • ・写真マニュアル
  • ・動画マニュアル
  • ・翻訳アプリ
  • ・QRコードマニュアル

特に効果が高いのが動画マニュアルです。
作業手順を動画で見せることで、言語の壁を大きく減らすことができ、教育時間を短縮できます。

結果として、新人スタッフが戦力になるまでの時間を大幅に短縮することができます。

 

③ 長期雇用を前提にした制度を作る

外国人材は、短期アルバイトではなく長期戦力として活用できる人材です。

特定技能制度では特定技能1号(最長5年)があり、さらに制度が進めば特定技能2号として長期就労することも可能になります。
つまり、外国人スタッフの中には数年間同じ店舗で働く人材も出てきます。

そのため重要になるのが、長く働いてもらうための仕組み作りです。

例えば、次のような制度が定着率を高めます。

  • ・外国人リーダー制度
  • ・昇給ルールの明確化
  • ・評価制度
  • ・日本語学習支援

特に効果が高いのが外国人リーダーの育成です。
リーダーが育つと、新人教育・シフト管理・現場フォローを任せることができ、店舗運営が大きく安定します。

外国人活用が店舗経営の差になる時代

外食業では今後も人手不足が続くと考えられています。
その中で重要になるのは、外国人を採用できるかではなく、うまく活用できるかです。

教育体制・マニュアル整備・長期雇用の仕組みを整えた店舗は、安定した人材確保ができる可能性が高くなります。

今回のデータを見る限り、外国人採用はすでに外食業の重要な人材戦略になりつつあると言えるでしょう。

まとめ

今回のデータを見ると、特定技能外国人はこの1年で大きく増加しており、外食業でも外国人材の存在感が急速に高まっていることが分かります。

外食業の特定技能外国人はすでに3万6千人規模となり、半年ごとに数千人単位で増加しています。
さらに外食業の技能試験には多くの受験者が集まっており、今後も外国人材の供給は続く可能性が高い状況です。

こうした状況の中で重要になるのは、外国人を採用できるかではなく、どう活用するかです。

教育体制やマニュアル整備、長期雇用を前提とした仕組みを整えることで、外国人材は飲食店にとって大きな戦力になります。

人手不足が続く外食業において、外国人採用は今後の店舗運営を支える重要な人材戦略の一つと言えるでしょう。