飲食店を開業する際、意外と見落とされがちなのが「ダクト工事」です。厨房から出る煙やにおい、熱気を店外に排出するために欠かせない設備であり、設計ミスやコスト軽視が後々のトラブルにつながることも。
特に最近では、飲食店からの「におい」に対する近隣住民からの苦情が増加傾向にあります(環境省『臭気対策マニュアル』より)。その背景には、においに対する意識の高まりと、都市型の生活環境の変化があります。
本記事では、飲食店開業時に知っておくべきダクト工事の基礎知識から費用、注意点、におい対策までを徹底解説します。
厨房で調理を始めると、油煙、熱気、においが大量に発生します。これを適切に排出できなければ、客席まで空気が悪くなり、スタッフの作業環境も悪化します。
また、においや煙が建物の内外にこもると、壁や天井の汚れや劣化、火災リスク、さらには悪臭苦情の原因になります。
近年では、焼肉、ラーメン、焼き鳥など「調理臭」をめぐる苦情が特に多くなっています。環境省の調査でも、においの発生源として焼肉店が1位、ラーメン店が3位に挙げられています。
排気・換気に使われるダクトは、主に以下のような種類があります。
排気方法には「直出し」と「屋上出し」があり、臭気トラブルを避けるには、屋上出しの方が有効です。
| 工事内容 | 目安費用(税込) |
|---|---|
| 換気扇設置 | 3〜10万円程度 |
| 壁出し排気工事 | 20〜80万円程度 |
| 屋上までのダクト工事 | 100〜300万円(足場費含む) |
快適な店づくりには、風量計算も不可欠です。厨房機器の熱量に基づき、必要な換気量を正確に算出することで、過不足のない換気が実現できます。
ダクト工事のコストを下げるには、居抜き物件の活用が有効です。既存のダクト設備がそのまま使える場合、清掃と軽微な調整だけで済みます。
ただし注意点も多く、
こうした点を、契約前に必ず内見でチェックしましょう。
環境省のマニュアルでは、におい対策を以下の3ステップで進めることが推奨されています。
とくに焼肉・焼き鳥・ラーメンなどは、ダクト火災やにおいトラブルのリスクが高いため、電気集塵機+活性炭フィルターなどの本格的な対策が必要とされています。
✅ 風量計算を行っているか
✅ 飲食店施工の実績がある業者か
✅ 相見積もりを取って比較したか
✅ 設備の保証・アフターサポートがあるか
✅ 居抜き物件の場合、再利用できるか確認したか
✅ 清掃・脱臭装置のメンテナンス体制は整っているか
飲食店にとって「空気」は目に見えませんが、店舗運営における快適さ・安全性・顧客満足に直結する極めて重要なポイントです。
ダクト工事は初期費用が高くなりがちですが、においや空調トラブルが発生してからでは遅すぎます。
長く愛される店づくりのためにも、計画段階からにおい対策を意識したダクト設計を心がけましょう