飲食店開業で見落とせない「ダクト工事」とは?費用・種類・注意点を徹底解説

飲食店を開業する際、意外と見落とされがちなのが「ダクト工事」です。厨房から出る煙やにおい、熱気を店外に排出するために欠かせない設備であり、設計ミスやコスト軽視が後々のトラブルにつながることも。
特に最近では、飲食店からの「におい」に対する近隣住民からの苦情が増加傾向にあります(環境省『臭気対策マニュアル』より)。その背景には、においに対する意識の高まりと、都市型の生活環境の変化があります。
本記事では、飲食店開業時に知っておくべきダクト工事の基礎知識から費用、注意点、におい対策までを徹底解説します。
1. 飲食店にダクト工事が必要な理由
厨房で調理を始めると、油煙、熱気、においが大量に発生します。これを適切に排出できなければ、客席まで空気が悪くなり、スタッフの作業環境も悪化します。
また、においや煙が建物の内外にこもると、壁や天井の汚れや劣化、火災リスク、さらには悪臭苦情の原因になります。
近年では、焼肉、ラーメン、焼き鳥など「調理臭」をめぐる苦情が特に多くなっています。環境省の調査でも、においの発生源として焼肉店が1位、ラーメン店が3位に挙げられています。
2. ダクトの種類と役割
排気・換気に使われるダクトは、主に以下のような種類があります。
- ・排気ダクト:厨房で発生した煙やにおいを外に排出
- ・給気ダクト:屋外の新鮮な空気を店内に取り込む
- ・換気ダクト:空気を循環させて空気の質を整える
- ・排煙ダクト:火災時に煙を効率的に排出する非常用設備
- ・集塵ダクト:粉塵や微粒子を扱う業種向け(飲食では例外)
排気方法には「直出し」と「屋上出し」があり、臭気トラブルを避けるには、屋上出しの方が有効です。
3. ダクト工事の費用相場と高額になる理由
工事内容 | 目安費用(税込) |
---|---|
換気扇設置 | 3〜10万円程度 |
壁出し排気工事 | 20〜80万円程度 |
屋上までのダクト工事 | 100〜300万円(足場費含む) |
4. 工事の流れと確認すべきポイント
- ✅現地調査・ヒアリング
- ✅見積もり取得(相見積もりが推奨)
- ✅設置工事
- ✅試運転・最終確認
快適な店づくりには、風量計算も不可欠です。厨房機器の熱量に基づき、必要な換気量を正確に算出することで、過不足のない換気が実現できます。
5. 居抜き物件はダクト費用を抑えられる?
ダクト工事のコストを下げるには、居抜き物件の活用が有効です。既存のダクト設備がそのまま使える場合、清掃と軽微な調整だけで済みます。
ただし注意点も多く、
- 故障・目詰まり・油の蓄積がある場合は再利用不可
- 元の業態と異なる場合、排気量が足りないことも
- 清掃・フィルター交換を怠ると吸引力が低下する
こうした点を、契約前に必ず内見でチェックしましょう。
6. 近隣トラブルを防ぐ臭気対策とは?
環境省のマニュアルでは、におい対策を以下の3ステップで進めることが推奨されています。
ステップ①:においを元から断つ
- 使用食材や仕込みの工程を見直す
- 清掃・グリストラップの定期洗浄
- においの強い工程は時間帯を工夫
ステップ②:できるだけ薄める
- 排気口の高さ・向きを変える
- 周囲の建物との距離を取る
- 屋上出しで風に乗せて拡散させる
ステップ③:装置で取り除く
- 脱臭装置(活性炭、オゾン、プラズマなど)を導入
- 油煙が多い場合は、油煙除去装置+脱臭装置の組み合わせが効果的
とくに焼肉・焼き鳥・ラーメンなどは、ダクト火災やにおいトラブルのリスクが高いため、電気集塵機+活性炭フィルターなどの本格的な対策が必要とされています。
7. ダクト工事で失敗しないためのチェックリスト
✅ 風量計算を行っているか
✅ 飲食店施工の実績がある業者か
✅ 相見積もりを取って比較したか
✅ 設備の保証・アフターサポートがあるか
✅ 居抜き物件の場合、再利用できるか確認したか
✅ 清掃・脱臭装置のメンテナンス体制は整っているか
まとめ
飲食店にとって「空気」は目に見えませんが、店舗運営における快適さ・安全性・顧客満足に直結する極めて重要なポイントです。
ダクト工事は初期費用が高くなりがちですが、においや空調トラブルが発生してからでは遅すぎます。
長く愛される店づくりのためにも、計画段階からにおい対策を意識したダクト設計を心がけましょう