脱退一時金の請求は、大きく分けて2つの段階(ステップ)からなる手続きです。まず、日本年金機構に「脱退一時金請求書」を提出して全体の約80%を受け取り、次に日本の税務署に対して手続きを行い、源泉徴収された残りの約20%の所得税を還付(返金)してもらいます。
これは、日本で6ヶ月以上年金保険料(厚生年金または国民年金)を支払った外国人労働者が、帰国後に受け取ることができる正当な権利です。このプロセスはすべて仲介業者を使わずに自分で行うことが可能であり、代行手数料を完全に節約することができます。
1. 脱退一時金の定義と受給要件
脱退一時金とは、日本の公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)に加入していた外国人が、日本に住所を有しなくなった(帰国した)場合に、それまで支払った保険料の一部を国から返還してもらえる制度です。
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1.1. 支給対象となる4つの必須条件
日本年金機構から脱退一時金を受給するためには、いかなる例外もなく、以下の4つの条件をすべて満たしている必要があります。
- 日本国籍を有していないこと
- 公的年金制度(厚生年金または国民年金)の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること
- 日本国内に住所を有していないこと: 帰国前に市区町村役場で「住民票の転出届(海外転出)」を提出し、住民登録を抹消している必要があります。
- 年金の受給権(老齢年金など)を満たしていないこと、かつ日本国内の年金資格を喪失した日から「2年以内」に請求すること: 2年を過ぎると時効となり、受給権が完全に消滅します。
1.2. 対象となる主な在留資格
- 技能実習(1号、2号、3号)
- 特定技能(1号、2号)
- 技術・人文知識・国際業務(いわゆるエンジニア、正社員オフィスワーク等)
2. 第1段階(1回目):日本年金機構への請求(80%の受給)
最初のステップは、日本年金機構に必要書類を郵送し、所得税が差し引かれる前の金額から約80%(正確には源泉徴収率20.42%を引いた残り)を、ベトナムの本人名義の銀行口座へ送金してもらう手続きです。
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2.1. 必要な5つの提出書類
一度の申請で不備なく受理されるよう、以下の書類を正確に準備してください。
- 脱退一時金請求書: 日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。パスポートの表記通りに、アルファベットの大文字で記入します。特に「受け取り銀行口座の情報」は一字のミスもないよう注意してください。
- 基礎年金番号を証明する書類: 「年金手帳(原本)」または「基礎年金番号通知書(原本)」。※日本の年金手帳制度は2022年4月に廃止され、それ以降は「基礎年金番号通知書」が交付されています。どちらの原本でも受付可能です。
- パスポートのコピー: 「顔写真・個人情報のページ」および「日本の空港で押された出国印(上陸許可取消印やみなし再入国許可での出国スタンプなど)があるページ」のコピー。
- 在留カードのコピー: 出国時に空港の入国審査官によって穴を開けられた(無効化された)在留カードの「表・裏の両面」のコピー。
- 銀行口座の証明書(英文): ベトナムの銀行の発行印(赤いスタンプ等)があるもの。口座名義(パスポートと同じ表記)、口座番号、銀行名、支店名、銀行住所、およびSWIFTコード(BICコード)が英語で明記されている必要があります。※一部の農業系銀行などは国際送金のトラブルが多いため、大手商業銀行の口座を推奨します。
📬 書類の送付先(郵送):
〒168-8505 東京都杉並区高井戸西 3丁目5番24号
日本年金機構(外国業務グループ)
2.2. 審査期間と入金の流れ
- 審査にかかる期間: 書類が年金機構に到着してから、通常3ヶ月〜4ヶ月を要します。
- 支給決定通知書の受領: 審査が承認されると、ベトナムの自宅住所に「脱退一時金支給決定通知書」というハガキ(または書類)が届きます。この通知書の原本は、次の「2回目の所得税還付手続き」で必ず使用するため、絶対に紛失しないでください。
- 海外送金: 通知書の到着から1〜2週間後、指定したベトナムの銀行口座に米ドルやユーロなどで、送金日のレート換算で入金されます。
3. 第2段階(2回目):税務署への還付申告(20%の所得税の取り戻し)
1回目の手続きで支給された金額は、一律で20.42%の所得税が源泉徴収(差し引き)されています。この2回目の手続きは、その「引かれた税金」を取り戻すための退職所得の選択課税による還付申告(確定申告)です。
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帰国後にベトナムから自分で手続きを行う方法
この所得税の還付金は、日本の税務署から海外の銀行口座へ直接送金してもらうことができません。そのため、日本国内に居住している「納税管理人(のうぜいかんりにん)」を立てる必要があります。
- ステップ1:納税管理人の選定
日本に合法的かつ現在も住んでいる友人、親族、元同僚などに依頼します。特別な資格(税理士など)は不要で、税務署との窓口になってくれる信頼できる人であれば誰でもなれます。 - ステップ2:必要書類を日本の管理人へ郵送
1回目の手続き完了後にベトナムへ届いた「脱退一時金支給決定通知書(原本)」と、あらかじめサインした「納税管理人届出書」を、日本にいる管理人へ国際郵便で送ります。 - ステップ3:管轄税務署への還付申告
管理人が、あなたが「日本で最後に住んでいた住所(または会社があった場所)」を管轄する税務署へ行き、確定申告書(還付申告書)を提出します。 - ステップ4:管理人の口座へ入金・ベトナムへの送金
税務署の審査(約1ヶ月〜2ヶ月)が完了すると、管理人が指定した日本の銀行口座に税金(約20%分)が振り込まれます。その後、管理人からあなたのベトナムの口座へ送金(海外送金、または海外送金アプリ等を利用)してもらいます。
4. 自力での申請と代行業者(行政書士・税理士)の比較
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評価項目 |
自分で(納税管理人を友人に頼んで)行う |
専門の代行サービスを利用する |
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費用・手数料 |
0円(郵便送料や送金実費のみ)。 |
還付金(20%分)の中から**10%〜20%**の手数料が発生。 |
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メリット |
本来もらえる金額を**100%**手元に残せる。 |
日本に頼める人がいなくても、業者が納税管理人を引き受けてくれる。 |
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リスク・デメリット |
書類の記入ミスがあると日本から書類が返送され、数ヶ月のタイムロスになる。 |
悪質な無資格の仲介業者(ブローカー)に依頼すると、お金を持ち逃げされるリスクがある。 |
5. 最新の法改正:計算対象期間が最大5年(60ヶ月)に拡大
近年の重要な法改正として、2021年4月より脱退一時金の支給上限年数が引き上げられました。
- 旧制度(2021年3月まで): 何年働いて保険料を納めても、計算上限は「最大3年(36ヶ月)」でした。
- 新制度(2021年4月以降): 計算の上限期間が「最大5年(60ヶ月)」まで拡大されました。
💡 労働者へのメリット: この法改正は、技能実習3号や特定技能1号などで日本に3年以上、最大5年間滞在して真面目に保険料を納めていた労働者に直接的な恩恵を与えます。以前であれば4年、5年と長く働くほど年金の掛け捨て部分(損をする分)が多くなっていましたが、現在は5年分(60ヶ月分)がフルで計算されて返ってくるため、受け取れる総額が旧制度に比べて大幅に増加しています。
脱退一時金の手続きは、1回目(80%)であれば必要書類を揃えて郵送するだけなので、誰でも簡単に自分で行うことができます。2回目(20%)についても、日本に信頼できる親戚や友人がいれば、余計な手数料を支払うことなく満額を取り戻せます。もし日本に代理人を頼める人がいない場合に限り、日本の正規の「行政書士」や「税理士」が運営する信頼できる事務所へ依頼することを検討してください。
現在、書類の記入方法について具体的に知りたい箇所や、ご自身がいくらくらい年金を受け取れるかの計算方法(目安)など、さらに詳しく知りたい情報はありますか?

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