飲食店開業初期の人件費バランス|売上に対して何%が理想?

 

飲食店を開業したばかりのオーナーが最初にぶつかる壁

それが「人件費のバランス」。
スタッフを増やせばサービスの質は上がる一方で、売上が安定しない初期は固定費が重くのしかかります。
この記事では、開業初期に理想とされる人件費率の目安や、人件費を抑えながらも現場を回すコツを具体的に解説します。


1. 飲食店の人件費率とは?

「人件費率」とは、売上に対して人件費が占める割合のこと。
以下の計算式で求められます。

人件費率(%)=(人件費 ÷ 売上高)×100

ここでの「人件費」には、
・スタッフの時給・給与
・社会保険料の事業者負担分
・交通費・まかない・制服などの諸手当
が含まれます。


2. 理想の人件費率は何%が理想?

一般的に飲食業界では、以下が目安とされています。

業態

理想の人件費率

備考

ファストフード・セルフ形式

20〜25%

人件費が低め。効率重視型。

カフェ・軽食店

25〜30%

ワンオペ〜少人数運営が多い。

居酒屋・レストラン

30〜35%

接客人数が多く、変動が大きい。

高級店・コース料理店

35〜40%

人数多・技術者雇用・サービス重視。

 

開業初期の目安としては「売上が安定していない=利益率が読めない」ため、
30%以内に抑えるのが現実的なラインです。


3. FLコストとは?人件費率だけでなく「原価率」とセットで見る

飲食店経営でよく聞く「FLコスト」とは、
Food(原材料費)+Labor(人件費)=FLコストのことです。

FLコスト率=(原価+人件費)÷ 売上高 ×100

理想とされるFLコスト率は 55〜60%以内
例えば、原価率が30%なら人件費率は25〜30%以内に抑える、というバランスが目安です。


具体例:売上と人件費のバランス

項目

A店(理想)

B店(人件費オーバー)

月売上

300万円

300万円

原価

90万円(30%)

90万円(30%)

人件費

75万円(25%)

105万円(35%)

家賃・光熱費など

60万円

60万円

利益

75万円(25%)

45万円(15%)

わずか10%の人件費率の違いで、利益が30万円も減少。
この差が積み重なると、半年後には180万円の資金ギャップになります。


4. 開業初期は「固定費」ではなく「変動費」で回すのが鉄則

開業直後は売上が読めないため、
「固定人件費」より「変動人件費(時給スタッフ)」を中心に組むのがリスク回避の基本です。

人件費構成

メリット

デメリット

正社員中心

品質・安定性が高い

固定費が重い

アルバイト中心

調整がしやすい・コスト低

教育負担・離職リスク

開業初期におすすめ

アルバイト中心+オーナー現場参加型

 

5. 人件費を抑えつつ、現場を回すための工夫

(1)ピーク時間を把握してシフトを最適化

時間帯別の売上データを1〜2週間で記録し、
「1時間あたりの売上に対する人件費」を可視化します。

例:
・11〜13時 → 売上6万円、人件費3,000円 → 人件費率5%
・15〜17時 → 売上2万円、人件費3,000円 → 人件費率15%

 このように“儲からない時間帯”を減らすだけで、
1か月あたり5〜10万円の人件費削減も可能。


(2)マルチタスク型スタッフを育てる

ホールもキッチンも両方できる「兼任型スタッフ」を育成すれば、
少人数でもシフトの穴を埋めやすくなります。
教育コストは最初にかかりますが、長期的には人件費率を下げる効果が大。


(3)SNS・予約アプリで混雑を平準化

InstagramやLINE公式で“混雑時間帯”を告知すると、
来店時間が分散し、ピーク時の人員配置が軽減できます。


(4)オペレーションの「ムダ」を見直す

皿洗い・会計・調理補助など、動線を短くするだけで
1人分の労働時間を減らせます。
▶ 具体策:レジをセルフ化、調理工程を写真マニュアル化、皿の種類を減らす。


6. 人件費削減は「削る」より「効率化」で考える

人件費は単純に削減するだけでは、サービスの質が下がり、
結果的にリピーター減少→売上悪化につながります。
大切なのは「効率化」と「再投資の意識」です。

視点

削減型

効率化型

シフト削減

スタッフを減らす

人数を同じにして作業効率を上げる

教育コスト

教えない

初期教育を体系化して育成時間を短縮

テクノロジー

導入をケチる

POS・モバイルオーダーで労働削減


7. 理想のバランスは?FLコスト55%・人件費30%以内を目標に

まとめると、開業初期の「安全圏」は次の通りです。

指標

理想値

コメント

原価率

25〜30%

高原価商品を出しすぎない

人件費率

25〜30%

開業初期は30%以内をキープ

FLコスト

55〜60%以内

利益確保ライン

これを超える場合は、
・メニューの見直し
・ シフトの削減
・ 売上アップ施策(ランチ導入・SNS集客)
のいずれかで調整を行いましょう。


8. 開業初期に意識したい考え方とは?

  1. 「人件費=投資」として見る
     優秀な人を育てることが、結果的に経営効率を上げる。
  2. 「1人1時間あたりの売上」を定点観測する
      シフト最適化の基準が数値で分かる。
  3. 「利益は削減ではなく、仕組みで生む」
      POS分析や予約管理で効率を高める。

まとめ

開業初期は、売上の波が激しい時期。
だからこそ「人件費をコントロールできるかどうか」が、黒字経営の分かれ道です。
理想は人件費率30%以内・FLコスト55%前後。
短期的には“削減”より“効率化”を、
中長期的には“人材育成”を意識していきましょう。

あなたの店の未来を支えるのは、コストではなく「人」なのです。

柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。
柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。

 

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