2025年11月の外食市場は売上こそ好調に推移しているものの、その中身を見ると「客数の回復」ではなく「客単価の上昇」によって支えられている構造であることが分かります。消費者は価格そのものではなく、その価格に見合う理由や体験価値を厳しく見極めるようになっており、値引きやインバウンド需要に頼った経営は安定性を欠きやすくなっています。今後の飲食店経営では、市場全体の好調さに安心するのではなく、自店がどの利用シーンで選ばれているのか、価格に対する納得感をどのように伝えられているのかを改めて見直すことが重要です。客単価をどう設計し、どの顧客に価値を届けるのかを明確にできた店舗こそが、変化する外食市場の中でも持続的な成長を実現していくでしょう。
外食市場は回復基調を維持し、売上データだけを見れば「好調」が続いています。
しかし、その中身を詳しく見ていくと、業態や立地によって明暗が分かれ、経営の難易度はむしろ高まっています。
本記事では、2024年12月から直近の2025年11月のデータから読み取れる外食市場の構造変化と、飲食店経営者が取るべき視点を整理します。
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2025年1月に社団法人日本フードサービス協会が発表した外食売上高は、前年同月比7.7%増と38カ月連続のプラスとなった。年末年始の長期連休による国内旅行者の増加や、過去最高を記録した訪日外国人客の増加が、外食需要を押し上げた。客単価は4.1%増と、食材費や人件費の高騰を背景とした値上げが影響していると考えられる。
業態別では、ファストフードが8.1%増と好調。特に麺類は18.1%増と大幅な伸びを示し、新年を祝うキャンペーンなどが人気を集めた。喫茶は9.8%増で、コーヒー豆の値上げによる客単価の上昇に加え、年末年始の長期滞在需要の増加が影響したと考えられる。ファミリーレストランは7.2%増、パブ・居酒屋は4.7%増、ディナーレストランは5.0%増と、各業態とも堅調な伸びを見せている。
外食業界は、インバウンド需要の増加や国内旅行者の回復により、今後も堅調な成長が見込まれる。しかし、物価高騰による消費者の節約志向も強まっており、低価格帯のメニューやキャンペーンを展開するなど、顧客ニーズに対応した戦略が求められる。こうした市場動向を踏まえ、競争の激しい外食業界で勝ち残るための戦略を練ることが重要となる。
こうした売上回復基調の中で、飲食店経営者が今後意識すべきなのは、「客数頼み」から「単価と回転率をどう設計するか」への視点転換だ。インバウンド需要や旅行需要が戻る一方で、国内客の節約志向は確実に強まっており、高単価路線と低価格路線の“二極化”が進みつつある。今後は、すべての客層を広く狙うのではなく、自店がどちらのポジションを取るのかを明確にすることが重要になる。
具体的には、ファストフードや喫茶の好調さが示すように、「短時間・手頃・分かりやすい価値」を提供できる業態は引き続き強い。一方で、インバウンドや記念日需要を取り込める店舗では、価格よりも体験価値を重視したメニュー設計やストーリー性のある商品づくりが支持されやすくなるだろう。期間限定メニューやイベント連動型の企画、SNSで拡散されやすい商品開発なども、売上を伸ばす有効な手段となる。
また、人手不足とコスト高が続く中では、「売上が伸びても利益が残らない」構造に陥らないための経営管理が不可欠だ。客単価アップに頼るだけでなく、原価率・人件費率を意識したメニュー構成や、繁忙期と閑散期に応じた柔軟なオペレーション設計が、今後の飲食店経営の安定性を左右する。市場環境が追い風にある今こそ、足元の数字を見直し、次の成長に備えた戦略を描けるかどうかが、数年後の明暗を分けることになるだろう。
外食市場は、年末年始の国内旅行需要とインバウンド需要の拡大を背景に、38カ月連続でプラス成長を記録した。ファストフードや喫茶を中心に各業態が堅調に推移する一方、物価高による消費者の節約志向も強まっている。こうした環境下で飲食店経営者には、自店の価格ポジションを明確にし、単価・回転率・コスト管理を意識した戦略的な経営が求められる。追い風の今こそ、短期的な売上だけでなく、中長期的な利益体質づくりに取り組むことが重要だ。
一般社団法人日本フードサービス協会が、2025年3月の外食産業市場動向調査を発表した。前年同月比107.0%と全体では堅調な伸びを記録した。歓送迎会や春休みといった行楽・イベント需要に加え、訪日外国人観光客(インバウンド)の回復が、都市部を中心に外食需要を押し上げた形だ。特に観光地立地のレストランや定食業態では、外国人の「複数人・高単価注文」による効果が明確に表れている。
一方で、その成長が業態全体に均等に及んだわけではない。業態ごとの売上推移を見ると、数字の裏には明らかな“二極化”が潜んでおり、構造的な違いが浮かび上がってくる。
中でも出遅れが目立つのがパブ・居酒屋業態だ。売上は前年同月比100.8%とほぼ横ばい。外食全体の伸びと比べると、その低調ぶりが際立つ。居酒屋が抱える最大の課題は、かつて業績を支えていた法人需要の復活が極めて限定的なことにある。
2024年3月は、コロナ禍を経て初めて大規模な送別会・歓迎会が戻ってきた年だった。だが今年は、個人や小グループでの利用が中心となり、前年のような法人予約の波は見られなかった。加えて、月初の降雪によって予約キャンセルが相次ぎ、週末の売上機会を逸した店舗も多い。
客数は前年比99.0%とマイナスに転じた。注目すべきは、「2次会」「3次会」といった回遊型消費が減少している点だ。勤務後の立ち寄りや同僚との長時間滞在が減り、居酒屋が担ってきた“夜の集客力”が徐々に失われつつある。
代わりに台頭しているのが、「0次会」や「軽く一杯」需要。18時〜20時の早い時間帯を中心に、サクッと飲んで帰るスタイルが浸透しつつあり、酒類の注文数も1人あたり1杯~2杯とコンパクトにまとまる傾向が強い。
この流れに対し、都内の一部居酒屋チェーンでは「ハッピーアワー」の拡大や、「1,000円ちょい飲みセット」などのパッケージ提供で早時間帯の集客を強化している事例もある。だが、単価や滞在時間の短縮が前提となるこれらのモデルは、売上と利益のバランスを保つ難しさを伴う。
客単価は前年比101.8%と微増にとどまった。他業態が3~7ポイントの単価上昇を記録する中で、この伸び率は控えめだ。背景には、居酒屋特有の「価格感覚の厳しさ」がある。
たとえば、メニューの定番である唐揚げ、ポテト、串焼きなどは価格帯の上限がある程度“消費者に共有”されており、大胆な値上げが難しいという事情もある。
また、居酒屋のピーク帯だった21時以降の来店数が全体的に鈍化している。営業時間の短縮、深夜帯の人手不足、終電前に帰宅するスタイルの浸透など、いくつもの要因が重なり、「夜遅くまで長く滞在してもらう」モデルの賞味期限が近づいている。
他方、客単価の上昇が売上に直結している業態もある。代表格が喫茶(前年比108.2%)と和風ファストフード(110.8%)だ。
喫茶業態では、気温差の大きい3月にもかかわらず、ドリンク+スイーツのセット需要が伸び、価格改定による単価アップも売上を押し上げた。和風ファストフードは、一部企業での異物混入報道による客足の鈍化が見られたものの、高単価商品の展開により、全体の売上は前年を上回った。メニュー構成の柔軟性と、テイクアウト対応力の高さも、外食の中で強いポジションを保つ要因となっている。
これらの動向から見えてくるのは、「値上げが許容される業態」と「そうでない業態」の違いだ。単に価格を上げるのではなく、消費者にとって“納得のいく満足体験”を提供できているかが問われている。
実際、ある喫茶チェーンでは「居心地」「SNS映え」「限定感」の3点を意識した商品・空間づくりで、1人あたりの注文金額が1年前に比べて平均8%伸びたという。飲食業の収益構造は、こうした“感情価値の設計”によって変化し始めている。
売上が伸びているか否かではなく、「どのようにして売上を作っているのか」を業態別に見ていくことが、いま重要になっている。
インバウンド・高単価・時間帯分散・1人客対応──これらのキーワードが、今後の飲食店にとっての“稼げる構造”を形づくっている。
居酒屋に求められるのは、過去のモデルへの回帰ではなく、こうした変化を前提とした新しい業態設計だ。たとえば、「ランチ定食で固定客をつくり、夕方に軽飲みニーズを取る」二毛作モデルや、「酒類より料理で利益を出す」ポジショニングの明確化などがその一例だ。
いま、売上という表層の数字の裏側には、業態そのものの生き残りをかけた“再定義の分岐点”が広がっている。
2025年5月の外食市場は、前年同月比で110.8%と大幅なプラスとなり、42カ月連続で前年実績を上回る結果となった(日本フードサービス協会調べ)。この背景には、5月初旬のゴールデンウィークによるハレ需要と、大阪・関西万博の開催が重なり、外食機会が増加したことがある。
今年のゴールデンウィークは飛び石連休となったものの、むしろ近距離での外出需要が増え、地域密着型の外食店舗では高い集客を記録した。さらに、訪日外国人観光客(インバウンド)需要が引き続き活況を呈し、特に大阪や京都、奈良といった関西圏のターミナル駅や観光地立地の飲食店舗では顕著な売上増が見られた。
加えて、原材料価格や人件費の高騰が続くなか、多くの事業者が価格改定を実施しているが、消費者側でもその背景に対する理解が進み、価格上昇に対する許容度が高まりつつある。これにより、客単価は前年比105.6%と伸びている一方で、来店者数(客数)も104.9%と堅調を維持している点は注目に値する。
【💡ポイント】
✔GW効果と万博需要で売上前年比110.8%
✔客単価5.6%上昇でも客数4.9%増を確保
✔42カ月連続のプラス成長で回復基調が定着
業態別では、ファーストフード(FF)業態が前年比111.8%と市場を牽引した。なかでも洋風カテゴリーでは、人気キャラクターとのコラボレーション商品や、お得な価格設定のランチメニューが奏功し、115.2%と高い伸びを記録した。これは若年層やファミリー層に訴求した商品企画が的中したことを示しており、商品開発とプロモーションの連動が売上増に寄与しているといえる。
一方で、和風ファストフードでは、週替わり定食などバリエーションに富んだメニュー展開が奏功し、109.9%の売上増となった。また、麺類業態では暑さの到来とともに冷たいメニューの需要が伸び、うどんチェーンを中心に無料トッピングの拡充も評価され、111.1%の成長となった。
ファミリーレストラン業態(FR)は全体で110.4%と堅調に推移し、とくに中華(116.3%)や和風(111.4%)のカテゴリーが目立って好調だった。中華では割引キャンペーンやセットメニュー訴求が客数増に直結しており、和風ではとんかつ専門店などが訪日観光客による需要を取り込むことで高成長を実現している。
【💡ポイント】
✔FF111.8%、洋風FFは115.2%と突出
✔中華ファミレス116.3%、和風もインバウンドで111.4%
✔トッピング・冷メニュー・コラボ企画が売上増を後押し
ディナーレストラン業態では、前年比108.0%と堅調な結果となった。
なかでも平日ランチの充実によって昼間の集客が改善されており、加えて、大阪・関西万博に関連する宿泊需要の恩恵を受けたホテル立地の店舗では、インバウンド需要の取り込みが売上増に直結している。
喫茶業態も109.7%と前年を大きく上回る結果に。とくに関西の駅構内や繁華街など、アクセスの良い立地でインバウンドの集客効果が見られ、価格改定による客数減の影響は限定的であった。
一方で、パブ・居酒屋業態は104.8%と他業態に比べて伸び率が低かった。これは、5月前半の天候不順による集客の停滞が影響したと見られるが、月後半にはインバウンドによる利用回復が見られた。日本フードサービス協会の分析では、「客単価が上がっても客数が落ちない傾向が続いている」とされる一方で、「一部では値上げによる離反も目立ってきている」として、事業者間での明暗が分かれてきている様子も示唆されている。
【💡ポイント】
✔ディナーレストラン:平日ランチ拡充+ホテル立地でインバウンド需要直結し前年比108.0%
✔ 喫茶:駅ナカ・繁華街で訪日客を取り込み価格改定の影響を最小化し前年比109.7%
✔ パブ・居酒屋:前半悪天候で停滞も後半インバウンドで回復、値上げ離反で明暗分かれ前年比104.8%
5月の市場動向から見えてきたのは、値上げを含む価格調整と、それを補完する形での“お得感”の演出や柔軟なメニュー構成が売上増の鍵となっている点である。
たとえば、トッピングやサイズ選択、定食形式の導入など、単一商品でもバリエーションを出すことで、限られた食材でも高い満足度を提供できる施策が実を結んでいる。
また、外国人観光客をターゲットにした多言語メニューやキャッシュレス決済の拡充といった“インバウンド対応のインフラ整備”も、飲食店の競争力を高める要素として無視できない。
飲食業界全体として、回復基調にあるとはいえ、原価や人件費の上昇は避けられず、価格調整の舵取りには慎重な判断が求められる。そうした中でも、顧客の体験価値を高める創意工夫が、来店動機の喚起と再訪率の向上に繋がっていることは間違いない。
今後の市場変化に対応するためにも、価格戦略、商品構成、販促施策を三位一体で見直し、自店の立地特性やターゲットに合わせた柔軟な対応が求められる時代となっている。
【💡ポイント】
✔値上げ+“お得感”演出で客離れを抑制
✔トッピング・サイズ展開でリピート動機を創出
✔キャッシュレス・多言語メニューでインバウンドを取り込む
日本フードサービス協会(JF)の発表によると、2025年7月の外食産業の売上は前年同月比 8.7%増 となり、44カ月連続でプラス成長 を続けた。物価や人件費の上昇が続く中でも、外食の需要が根強いことがわかる結果となった。
今年2月も売上は 前年同月比6.0%増 を記録しており、その時点で39カ月連続のプラス成長だった。その後も順調に伸びており、夏の需要拡大も追い風となっている。
売上が伸びた理由としては、値上げによる客単価の上昇、訪日観光客(インバウンド)の増加、チェーン店による新メニューや新しい店舗形態の導入 などが挙げられる。特に観光地や都市部のファミリーレストランやカフェでは、外国人観光客を含めた幅広い客層の利用が目立った。
外食業界は引き続き成長が続いており、今後は物価上昇にどう対応するか、多様なニーズに合わせた商品開発やサービスが各企業のカギになると見られている。
業態別では、ファストフード業態が前年比5.9%増加し、好調な結果を記録した。特に「麺類」が8.4%の増加を示し、手軽に楽しめるメニューに対する需要の高まりが影響したと考えられる。また、価格改定後の客単価の増加が寄与し、売上のプラス成長に繋がった。
ファミリーレストラン業態も引き続き好調で、前年比6.5%の増加を記録した。「中華」カテゴリーでは12.6%増加し、「焼き肉」カテゴリーは価格改定の影響で1.6%減少したが、全体としては成長が続いている。ファミリーレストラン業態の成長は、特にキャンペーンや新メニューの投入によるものとされている。
居酒屋業態は2.7%増加した。物価高の影響で高単価メニューの売れ行きは鈍化したが、低価格メニューに対する需要が高まったことが売上増に繋がった。
外食業界の今後については、引き続き価格改定による客単価の上昇が維持される可能性が高い一方で、消費者の価格に対する感度も高まりつつある。このため、業界としては「お得感」や「コストパフォーマンス」を意識したメニュー開発やプロモーションの重要性が増していくと考えられる。
さらに、デジタル化の進展も外食業界にとって今後の成長に大きな影響を与える要素である。オンライン予約システムやデリバリーサービスの拡充、さらにはデータ分析を活用した個別化されたサービス提供が、消費者満足度の向上と売上増加に繋がるだろう。特に若年層やテレワーク世代の需要に対応したメニューやサービスが、今後の成長を支えるポイントとなる。
総じて、外食業界は消費者の多様化したニーズに柔軟に対応し、価格と価値のバランスを重視した戦略を取ることが、安定的な成長を続けるための鍵となるだろう。
一般社団法人日本フードサービス協会が発表した「2025年8月度 外食産業市場動向調査」によると、外食全体の売上は前年同月比108.4%と、7月に続く好調ぶりを維持した。
お盆の帰省需要に加え、猛暑による冷たいメニューやビール類の売上増が寄与。昨年に比べ台風の影響も少なく、土日数が多い“曜日まわり”も追い風となった。
ファーストフードやファミリーレストランでは、夏休みの行楽・観光需要を取り込みつつ堅調に推移。しかし、物価高の影響も根強く、一部業態では客数の伸び悩みも見られるなど、明暗が分かれた。
長く低迷が続いていたパブ・居酒屋業態は、売上が前年同月比109.1%と大幅に回復した。昨年は大型台風によるキャンセルが相次いだが、今年は天候に恵まれ、猛暑が「冷たいビール需要」を喚起。
客数も106.1%と好調で、売上増加の主因となった。一方で、店舗数の増加はわずか(100.2%)、客単価も102.9%と限定的な上昇にとどまっており、今回は“来店者数の回復”が売上を押し上げた形だ。
背景には、外食回帰の流れに加え、猛暑による「ビールを飲みに行こう」という衝動的な需要の高まり、そして“軽飲み”や“1人飲み”といった新しい利用スタイルの定着があると考えられる。
ファミリーレストラン全体の売上は109.8%と高水準を維持。お盆の帰省・行楽需要を取り込み、「和風」が112.2%、「中華」が110.4%と好調に推移した。
特に「和風」は、昨年のような悪天候による来店減がなく、期間限定メニューが客単価(106.7%)を押し上げた。
一方で、洋風業態は109.6%と堅調ながらも、値上げに慎重な層の取り込みに苦戦した様子もうかがえる。
ファーストフード業態(FF)は前年同月比107.4%。中でも「麺類」が110.0%と最も高い伸びを見せた。猛暑を背景に冷やしメニューやビール販促が好調に推移したことが大きい。
「和風」では期間限定定食メニューが売上108.6%と貢献、「洋風」も定番の夏商品で107.0%と安定した。
一方、持ち帰り米飯・回転寿司は106.0%と伸び悩み。テイクアウト中心では客数(95.8%)が減少し、高単価商品の導入で客単価(110.7%)を補う構図が続いている。
喫茶業態は引き続き売上110.9%と高水準。猛暑下でアイスコーヒーやフルーツパフェ、かき氷系スイーツなどが好調に動き、価格改定による単価上昇(107.4%)がそのまま売上増につながった。
「涼を求めて立ち寄る需要」に加え、SNS映えを意識した限定メニューが若年層の支持を集めており、単なる休憩需要を超えた“体験価値”が定着しつつある。
ディナーレストラン業態は110.8%と堅調。お盆・夏休みシーズンを通じて家族・団体利用が伸び、大阪・関西万博関連の観光需要も一部で追い風となった。
ただし、インバウンド需要の勢いは企業によって温度差があり、都市圏以外では効果が限定的との指摘もある。
今回の調査では、全体の売上が8%超増加する一方で、「値上げを受け入れられる業態」と「価格に敏感な業態」との差が一段と鮮明になった。
喫茶や和風レストランのように、空間や接客を含めた“満足体験”を提供し、価格上昇を「価値の向上」として受け入れてもらえる業態がある一方で、居酒屋やテイクアウト中心の業態では価格競争が激しく、値上げが来客数の減少につながりやすい傾向がある。
特に居酒屋は「気軽さ」や「コスパ」を重視する層が多く、体験価値が高くても“日常利用”の心理的価格帯を超えると離脱が起きやすい点が課題となっている。
外食市場全体は回復基調を維持しているが、その内実は「猛暑特需」「イベント需要」といった一時的要因に支えられている面もある。
9月以降は気温低下と共に季節需要が一巡するため、業態ごとに“安定的に選ばれる理由”の構築が鍵を握る。
居酒屋では「料理軸で利益を出す」「昼・夕方の二毛作モデルへの転換」など、新しい営業構造への対応が急務。
今後の外食市場を左右するのは、単なる売上の大小ではなく、「どのような価値で選ばれているか」という“構造的な強さ”である。
2025年10月の外食産業全体の売上は前年比107.3%と高水準を維持しましたが、その中身は大きく変化しています。客数は100.9%とほぼ横ばいにとどまる一方、客単価は104.0%まで上昇しており、売上成長の主因は来店回数の増加ではなく「1回あたりの支出額の増加」にあります。ただし、消費者の節約志向が弱まったわけではなく、半額施策やキャンペーンが集客に直結している点からも、無条件の値上げが受け入れられている状況ではないことが分かります。現在の外食市場は、「使う店」と「使わない店」がより明確に選別される局面に入っています。
この傾向は業態別の動きからも鮮明です。ファーストフードは107.7%と堅調を維持していますが、その内訳を見ると、割安感で支持を集める業態と、値上げを客単価上昇で正当化できた業態に二極化しています。ファミリーレストランでも同様で、低価格戦略やクーポン施策が奏功した業態が伸びる一方、焼き肉業態は「高単価である理由」が十分に伝わらず前年割れとなりました。居酒屋・パブは回復基調にあるものの、立地や使われ方を整理できている店舗とそうでない店舗で差が広がっています。
一方、喫茶業態やディナーレストランが好調である点は示唆に富んでいます。これらの業態では「高級化」ではなく、「時間を有効に使える」「体験価値がある」といった要素が評価され、客単価の上昇につながっています。もはや「客数が戻れば売上も戻る」という発想は通用しません。これからの外食経営では、価格そのものよりも、なぜその価格なのかを説明できる商品・体験を設計できるかが問われます。節約志向の時代に選ばれる店とは、単に安い店ではなく、「納得できる使い方」を提示できる店だと言えるでしょう。
外食産業全体の売上は堅調に推移しているものの、すべての飲食店が同じように恩恵を受けているわけではありません。特に近年顕著なのが、原材料費・人件費・光熱費の上昇が続く中で、価格転嫁の難易度が高まっているという点です。値上げによって客単価は上がっているものの、その一方で来店頻度が下がったり、追加注文が減少したりするケースも見られます。
また、インバウンド需要の回復が追い風となっている反面、立地や業態によって恩恵に差が出やすいのも現実です。観光地や都心部では高価格帯商品の動きが活発な一方、住宅地立地や日常利用型の店舗では、価格に対する消費者の目がより厳しくなっています。市場全体が成長しているからこそ、「売上は伸びているのに利益が残らない」という構造的な課題に直面している店舗も少なくありません。
こうした環境下で重要になるのは、単なる値上げではなく、利益構造を意識した戦略的な価格・商品設計です。すべての商品を一律に値上げするのではなく、原価上昇の影響を受けやすい商品や、付加価値を伝えやすい商品に絞って価格改定を行い、来店動機となる定番商品やドリンク類は価格を抑えるといったメリハリが求められます。
さらに、客単価を自然に引き上げるためには、「高いから売れない」のではなく、「理由があるから選ばれる」商品づくりが不可欠です。インバウンド客や記念日利用を想定したセットメニュー、限定性のある高付加価値メニュー、体験価値を強調した提案型のメニュー構成などは、価格への抵抗感を下げる有効な手段となります。
加えて、今後は来店後の満足度を高め、リピートにつなげる視点も欠かせません。価格に敏感な時代だからこそ、接客、提供スピード、メニューの分かりやすさといった基本の質が、再来店や口コミ評価に直結します。市場が拡大している今こそ、自店の強みを見直し、限られたチャンスを確実に売上と利益に変えていく経営判断が求められていると言えるでしょう。
2025年10月までの外食市場データから見えてくるのは、業界全体としては売上が伸びている一方で、その成長の果実を得られている店舗は決して均一ではないという現実です。客数の回復に期待する経営は限界を迎え、今や売上を左右するのは「客単価をどう設計できているか」「価格に納得感を持たせられているか」に集約されつつあります。
ファーストフードやファミリーレストランに見られるように、安さを明確に打ち出す店、あるいは値上げの理由をきちんと説明できている店は支持を維持しています。一方で、「高単価=価値が伝わる」という前提に立ったままの業態は、焼き肉業態に象徴されるように、徐々に選ばれにくくなっています。
また、喫茶やディナーレストランの好調が示す通り、消費者は単に安さを求めているのではなく、「その時間をどう過ごせるか」「その価格でどんな体験が得られるか」を重視しています。これは、価格競争だけに陥らない経営の可能性が、まだ十分に残されていることを意味しています。
外食市場が好調な今は、経営を見直す絶好のタイミングです。
値上げをするか否かではなく、どの商品で利益を取り、どの商品で選ばれる店になるのか。その設計ができているかどうかが、2026年以降の明暗を分けるでしょう。市場の追い風を一過性のものに終わらせず、自店の売上と利益に確実につなげられるかどうかが、今まさに問われています。
日本フードサービス協会(JF)が公表した2025年11月度の外食産業市場動向調査によると、外食市場全体の売上は前年同月比108.7%と、10月に続き高い成長率を記録しました。一方で、客数は100.9%とほぼ横ばいにとどまっており、今回の売上拡大は来店客数の回復によるものではなく、客単価の上昇(104.2%)が大きく寄与していることが分かります。
11月は前年と比較して土日祝日数が多い曜日まわりであったことが、ファーストフードやレストラン業態の集客を後押ししました。また、インバウンド需要については、中国からの団体客キャンセルが一部で見られたものの、個人旅行客を中心に全体としては堅調に推移しています。現在の外食市場は、客数増加による売上成長ではなく、1回あたりの支出額をどのように設計できているかが問われる市場構造へと移行していると言えるでしょう。
2025年11月のデータから浮かび上がるのは、「来店回数が増えなくても売上は伸びる」という明確な市場の変化です。消費者の節約志向が弱まったわけではなく、クーポンや値引きキャンペーン、期間限定メニューといった施策が、現在も集客に直結しています。つまり、無条件の値上げが受け入れられている状況ではなく、価格に対する納得感がなければ選ばれない市場であることが、より鮮明になっているのです。
ファーストフード業態全体の売上は108.8%と高水準を維持しています。客数は101.5%、客単価は104.4%と、いずれも前年を上回り、安定した成長が続いています。特に和風ファーストフードは114.1%と大きく伸びており、新メニューの投入や値引きキャンペーンが奏功した結果と言えるでしょう。洋風ファーストフードも108.8%と好調で、期間限定商品やお得感のあるランチ施策が集客につながっています。
一方で、持ち帰り米飯や回転寿司業態では、客数が前年割れとなる99.7%にとどまり、客単価の上昇によって売上を維持する構造が続いています。
ファミリーレストラン全体の売上は109.4%と好調に推移していますが、客数は99.6%と前年を下回る結果となりました。洋風ファミリーレストランは、低価格業態の好調さやメディア露出の効果もあり110.8%と高い伸びを示しています。和風ファミリーレストランでは季節性の高い鍋メニューが支持され108.6%となり、中華ファミリーレストランもクーポン施策やランチ強化により108.5%と堅調です。
一方、焼き肉業態は106.7%と売上は伸びているものの、単価上昇が限定的であり、「高単価である理由」が十分に伝わらない店舗ほど、選ばれにくくなる傾向が続いています。
居酒屋・パブ業態の売上は103.0%と回復基調にありますが、平日の少ない曜日まわりや、忘年会シーズン前という時期的要因も影響し、客数は前年並みにとどまりました。この結果からは、一次会利用なのか、軽飲みなのか、観光利用なのかといった立地や利用シーンを明確にできている店舗と、そうでない店舗との間で、差がさらに拡大していることが読み取れます。
注目すべきなのは、ディナーレストランが109.2%、喫茶業態が109.8%と、いずれも高い伸び率を示している点です。喫茶業態では客数が前年割れとなった一方で、客単価は109.9%と大幅に上昇しています。消費者は単に安い店を求めているのではなく、長く滞在できることや、作業や打ち合わせに使いやすいこと、時間を有効に使えるといった体験価値に対しては、支出を惜しまない姿勢を明確にしています。
近年の外食市場では、「高単価=選ばれる」「値引きをすれば集客できる」「インバウンドがいれば安定する」といった、これまで飲食店経営の前提とされてきた考え方が揺らぎ始めています。
焼き肉や一部の高単価業態では売上を維持しているものの客数が伸び悩み、消費者は価格そのものではなく“その価格を払う理由”を厳しく見るようになっています。また、クーポンや値引きに依存した集客は短期的な効果がある一方で、通常価格での満足度やブランド力を低下させるリスクを孕んでいます。さらに、インバウンド需要も外部環境に左右されやすく、特定の国籍や団体客に依存した経営は売上変動を招きやすい構造です。これらの変化は、価格や集客手法、客層に頼った従来型の経営が限界を迎えていることを示しています。
これからの飲食店経営では、価格や割引、インバウンドといった単一要素に依存せず、「どんな人が、どんな場面で、なぜこの店を選ぶのか」を明確に設計することが重要です。高単価業態では利用シーンや体験価値を言語化し、コースやセットを通じて価格への納得感を高めることが求められます。値引き施策は集客目的に限定し、体験型特典などを活用して通常価格でも満足度の高い構成を整えることが不可欠です。また、インバウンドは“売上の柱”ではなく“上積み”と捉え、観光客向けと日常利用客向けでメニューや価格帯を分けることで、需要変動に強い経営体制を築くことができます。
2025年11月の外食市場は売上こそ好調に推移しているものの、その中身を見ると「客数の回復」ではなく「客単価の上昇」によって支えられている構造であることが分かります。消費者は価格そのものではなく、その価格に見合う理由や体験価値を厳しく見極めるようになっており、値引きやインバウンド需要に頼った経営は安定性を欠きやすくなっています。今後の飲食店経営では、市場全体の好調さに安心するのではなく、自店がどの利用シーンで選ばれているのか、価格に対する納得感をどのように伝えられているのかを改めて見直すことが重要です。客単価をどう設計し、どの顧客に価値を届けるのかを明確にできた店舗こそが、変化する外食市場の中でも持続的な成長を実現していくでしょう。