2026/03/09

客数横ばいでも売上107.3%成長、鍵は「客単価」と価格の納得感【外食産業市場動向調査2025年10月】

 

客数は伸びない、それでも売上が伸びる市場構造へ

2025年10月の外食産業全体の売上は前年比107.3%と高水準を維持しましたが、その中身は大きく変化しています。客数は100.9%とほぼ横ばいにとどまる一方、客単価は104.0%まで上昇しており、売上成長の主因は来店回数の増加ではなく「1回あたりの支出額の増加」にあります。ただし、消費者の節約志向が弱まったわけではなく、半額施策やキャンペーンが集客に直結している点からも、無条件の値上げが受け入れられている状況ではないことが分かります。現在の外食市場は、「使う店」と「使わない店」がより明確に選別される局面に入っています。

伸びる業態と失速する業態、その差は「価格の納得感」

この傾向は業態別の動きからも鮮明です。ファーストフードは107.7%と堅調を維持していますが、その内訳を見ると、割安感で支持を集める業態と、値上げを客単価上昇で正当化できた業態に二極化しています。ファミリーレストランでも同様で、低価格戦略やクーポン施策が奏功した業態が伸びる一方、焼き肉業態は「高単価である理由」が十分に伝わらず前年割れとなりました。居酒屋・パブは回復基調にあるものの、立地や使われ方を整理できている店舗とそうでない店舗で差が広がっています。

選ばれる店になるために求められる経営視点

一方、喫茶業態やディナーレストランが好調である点は示唆に富んでいます。これらの業態では「高級化」ではなく、「時間を有効に使える」「体験価値がある」といった要素が評価され、客単価の上昇につながっています。もはや「客数が戻れば売上も戻る」という発想は通用しません。これからの外食経営では、価格そのものよりも、なぜその価格なのかを説明できる商品・体験を設計できるかが問われます。節約志向の時代に選ばれる店とは、単に安い店ではなく、「納得できる使い方」を提示できる店だと言えるでしょう。

外食市場が好調な今だからこそ見えてくる課題は?

外食産業全体の売上は堅調に推移しているものの、すべての飲食店が同じように恩恵を受けているわけではありません。特に近年顕著なのが、原材料費・人件費・光熱費の上昇が続く中で、価格転嫁の難易度が高まっているという点です。値上げによって客単価は上がっているものの、その一方で来店頻度が下がったり、追加注文が減少したりするケースも見られます。

また、インバウンド需要の回復が追い風となっている反面、立地や業態によって恩恵に差が出やすいのも現実です。観光地や都心部では高価格帯商品の動きが活発な一方、住宅地立地や日常利用型の店舗では、価格に対する消費者の目がより厳しくなっています。市場全体が成長しているからこそ、「売上は伸びているのに利益が残らない」という構造的な課題に直面している店舗も少なくありません。

課題を乗り越えるために飲食店経営者が取るべき対策

こうした環境下で重要になるのは、単なる値上げではなく、利益構造を意識した戦略的な価格・商品設計です。すべての商品を一律に値上げするのではなく、原価上昇の影響を受けやすい商品や、付加価値を伝えやすい商品に絞って価格改定を行い、来店動機となる定番商品やドリンク類は価格を抑えるといったメリハリが求められます。

さらに、客単価を自然に引き上げるためには、「高いから売れない」のではなく、「理由があるから選ばれる」商品づくりが不可欠です。インバウンド客や記念日利用を想定したセットメニュー、限定性のある高付加価値メニュー、体験価値を強調した提案型のメニュー構成などは、価格への抵抗感を下げる有効な手段となります。

加えて、今後は来店後の満足度を高め、リピートにつなげる視点も欠かせません。価格に敏感な時代だからこそ、接客、提供スピード、メニューの分かりやすさといった基本の質が、再来店や口コミ評価に直結します。市場が拡大している今こそ、自店の強みを見直し、限られたチャンスを確実に売上と利益に変えていく経営判断が求められていると言えるでしょう。

2025年10月:まとめ「市場が好調」な今こそ、経営の質が問われている

2025年10月までの外食市場データから見えてくるのは、業界全体としては売上が伸びている一方で、その成長の果実を得られている店舗は決して均一ではないという現実です。客数の回復に期待する経営は限界を迎え、今や売上を左右するのは「客単価をどう設計できているか」「価格に納得感を持たせられているか」に集約されつつあります。

ファーストフードやファミリーレストランに見られるように、安さを明確に打ち出す店、あるいは値上げの理由をきちんと説明できている店は支持を維持しています。一方で、「高単価=価値が伝わる」という前提に立ったままの業態は、焼き肉業態に象徴されるように、徐々に選ばれにくくなっています。

また、喫茶やディナーレストランの好調が示す通り、消費者は単に安さを求めているのではなく、「その時間をどう過ごせるか」「その価格でどんな体験が得られるか」を重視しています。これは、価格競争だけに陥らない経営の可能性が、まだ十分に残されていることを意味しています。

外食市場が好調な今は、経営を見直す絶好のタイミングです。
値上げをするか否かではなく、どの商品で利益を取り、どの商品で選ばれる店になるのか。その設計ができているかどうかが、2026年以降の明暗を分けるでしょう。市場の追い風を一過性のものに終わらせず、自店の売上と利益に確実につなげられるかどうかが、今まさに問われています。

柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。
柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。