特定技能「外食」停止で採用は限界へ|人手不足を解決する“2号育成”という経営判断
はじめに|“採用で解決する時代”は終わった
特定技能「外食業」の新規受入れ停止により、飲食店の採用環境は大きく変化しました。これまで当たり前だった海外からの人材確保は実質的に機能しなくなり、現在は国内にいる特定技能人材の転職市場に依存せざるを得ない状況となっています。
しかし、この変化を受けてもなお、「どうやって採用するか」に意識を向け続けている企業は少なくありません。もちろん採用は重要ですが、今の市場環境においてそれだけで人手不足を解決しようとするのは限界があります。なぜなら、採用難が構造的に起きている以上、外から補充し続けるモデル自体が成立しにくくなっているからです。
今、飲食店経営において本当に問われているのは、「どれだけ採れるか」ではなく、「今いる人材をどれだけ活かし、長く働いてもらえるか」という視点への転換です。
特定技能「5年の壁」がもたらす経営リスク
特定技能1号には通算5年という在留期限があります。この制度自体は広く知られていますが、その経営インパクトまで正しく認識できている企業は多くありません。

現場の実態として、入社してすぐに戦力になるケースは稀であり、教育や実務経験を通じて一人前になるまでには一定の時間がかかります。ようやく現場を任せられるようになり、店舗の中心として活躍し始めた頃には、残りの在留期間は限られています。その結果、企業は最もパフォーマンスが高いタイミングで人材を失うことになります。
これは単なる人手不足ではなく、教育コストや機会損失を含めた「見えにくい損失」を継続的に生み出す構造です。特定技能 外食の制度を活用している限り、この問題は避けて通れません。
解決策は「特定技能2号」への移行にある
この構造的な課題に対する現実的な解決策は、特定技能2号への移行です。特定技能2号を取得することで在留期間の更新制限がなくなり、長期的な雇用が可能になります。
制度面で注目されがちなのは家族帯同ですが、実際の現場でより本質的なのは、「日本で働き続けられる」という状態そのものにあります。特定技能1号で働く人材の中で、来日時点から「できるだけ長く日本で働きたい」と考えている人は多くいます。しかし、5年という期限がある以上、その意思があっても制度によって将来が制限されてしまうのが現実です。
そのため、現場では「どうせ5年で帰らなければならない」という前提が無意識のうちに働き、本人のモチベーションやキャリア意識にも影響を与えます。どれだけ仕事に慣れ、責任あるポジションを任されるようになっても、先が見えない状態では、本当の意味での定着や主体性は生まれにくいのです。
一方で、特定技能2号という選択肢が明確になることで、この前提が大きく変わります。2号は単なる資格の上位互換ではなく、「この先も日本で働き続けられるかどうか」を分ける分岐点です。実際に、現場では「2号を取りたい」「長く働きたい」と考えている人材は多く、キャリアの延長線上に2号を位置づけているケースも少なくありません。
ここで重要なのは、企業がこの意欲を見過ごさないことです。2号への道筋を示さず、従来通りの運用を続けている企業では、「いずれ辞める前提」の関係性から抜け出せません。その結果、せっかく育てた人材が、より将来性のある企業へと流出していく構造が生まれます。
逆に、2号への移行を前提に人材を育てている企業では、「この会社で働き続ける理由」が明確になります。本人のキャリア志向と企業側の人材戦略が一致することで、単なる雇用関係ではなく、長期的な戦力としての関係が成立します。
企業視点で見れば、これは「数年で離職する前提の人材」を「長期的に活躍する前提の人材」へと転換する意思決定です。同時に、採用難の時代において外部に依存しない人材確保の手段でもあります。
つまり、特定技能 外食における最大の課題である人材流出は、制度の問題として受け入れるものではなく、2号への移行を前提とした設計によってコントロールできるものへと変わります。ここに踏み込めるかどうかが、これからの飲食店経営における分岐点になります。
「2号育成」はコストではなく投資である
多くの飲食店経営者が迷うポイントは、「どこまで企業が関与すべきか」という点です。試験対策や教育に時間や費用をかけることに対して、負担感を覚えるのは自然なことです。特に、日々の営業で手一杯の現場においては、「そこまで手が回らない」というのが本音でしょう。
しかし、ここで考えるべきは短期的な負担ではなく、何もしなかった場合に確実に発生する損失です。
仮に、現場の中心として育った特定技能人材が離職した場合、単純な人員不足にとどまらず、新たな採用コスト、教育にかかる時間、既存スタッフへの負担増、オペレーションの乱れによるサービス品質の低下など、複数の損失が同時に発生します。さらに、育成にかけた時間やノウハウが外部に流出することも意味します。
重要なのは、これらの損失が偶発的なものではなく、特定技能1号の制度上、「何もしなければ必ず起こる」ものであるという点です。つまり、2号に移行させないという判断は、コストを抑えることではなく、将来的な損失を受け入れるという意思決定にほかなりません。
一方で、特定技能2号への育成にかかる支援は、長期的に働き続ける人材を確保するための投資です。仮に一定の時間や費用をかけたとしても、その人材が5年ではなく10年、20年と働き続けると考えれば、得られるリターンは非常に大きなものになります。

さらに、長期雇用が前提となることで、単なる作業者としてではなく、教育係やリーダー、店長候補としての役割を担ってもらうことも可能になります。この段階に至れば、その人材は代替可能な労働力ではなく、店舗の利益を継続的に生み出す存在へと変わります。
だからこそ、2号育成は福利厚生でも善意でもなく、経営を安定させるための合理的な投資判断であるといえます。
合否を分けるのは「企業の関わり方」
特定技能2号の試験は、決して不可能なものではありません。しかし、合格率を左右するのは本人の能力だけではなく、置かれている環境にも大きく依存します。
現場が忙しく勉強時間が確保できない、試験情報が十分に共有されていない、適切な教材が分からないといった状況では、本来合格できるはずの人材でも結果を出すことが難しくなります。こうした背景から、企業側のサポート体制が結果に直結するケースは少なくありません。
特定技能 外食の現場では、単に試験を受けさせるのではなく、「合格まで伴走する」という姿勢が求められています。この関わり方の違いが、結果として人材の定着率や企業への信頼度に大きな差を生みます。
「どこまで手伝うべきか」で差がつく

では、企業はどこまで関与すべきなのでしょうか。
結論から言えば、「試験は本人の実力」と突き放す企業は、これから確実に人材を失っていきます。
特定技能2号の取得は、確かに最終的には本人が試験に合格する必要があります。しかし、その過程において企業がどれだけ関与するかによって、合格率も、その後の定着率も大きく変わります。
例えば、試験日程や制度の情報を共有するだけでも、受験のハードルは下がりますし、シフト調整によって勉強時間を確保するだけでも結果は変わります。さらに、教材の提供や受験費用の補助などを行うことで、「会社が応援してくれている」という実感を持たせることができます。
ここで重要なのは、支援の“内容”だけではありません。「どこまで自分のことを考えてくれているか」が伝わるかどうかです。
また、2号合格後の設計も欠かせません。例えば、合格後に一定期間勤務した場合の昇給やお祝い金の支給、役職への登用など、「合格した先に何があるのか」を明確にしておくことで、その会社で働き続ける理由が生まれます。
こうした仕組みがある企業では、単なる雇用関係を超えて、「この会社は自分の人生を考えてくれている」という強い信頼関係が生まれます。
結果として、他社からの条件提示があったとしても簡単には転職しなくなり、長期的な戦力として定着していきます。
外部リソースを活用した効率的な育成?
とはいえ、日々の店舗運営の中で教育体制をゼロから構築するのは簡単ではありません。そのような場合には、外部の教育サービスを活用することも有効な選択肢となります。
例えば、弊社サービスであるGF Academyのように飲食業に特化した教育サービスでは、日本語教育に加えて特定技能2号試験に対応した学習支援を提供しています。こうした仕組みを活用することで、現場の負担を抑えながら、効率的に人材育成を進めることが可能になります。
企業がすべてを抱え込むのではなく、外部の力を取り入れながら育成環境を整えることも、これからの時代における重要な戦略の一つです。
まとめ|「育てる企業」だけが生き残る
特定技能「外食業」の新規受入れ停止は、飲食店にとって大きな転換点となりました。これまでのように採用で人手不足を補う時代は終わり、今後は人材をいかに育て、定着させるかが経営の鍵となります。
特定技能2号への移行は、その中核となる施策です。単なる制度対応ではなく、人材を長期的な戦力へと変える経営戦略として捉えることが求められます。
今いる人材にどこまで向き合えるか。その姿勢が、これからの飲食店経営における競争力を大きく左右していくでしょう。