2026/03/12
売上108.4%で好調も“業態の二極化”が鮮明に―居酒屋復調・喫茶好調の背景を解説【外食産業市場動向調査2025年8月】
全体売上は堅調、お盆と猛暑が追い風に。好調の裏で見える“業態の温度差”とは?
一般社団法人日本フードサービス協会が発表した「2025年8月度 外食産業市場動向調査」によると、外食全体の売上は前年同月比108.4%と、7月に続く好調ぶりを維持した。
お盆の帰省需要に加え、猛暑による冷たいメニューやビール類の売上増が寄与。昨年に比べ台風の影響も少なく、土日数が多い“曜日まわり”も追い風となった。
ファーストフードやファミリーレストランでは、夏休みの行楽・観光需要を取り込みつつ堅調に推移。しかし、物価高の影響も根強く、一部業態では客数の伸び悩みも見られるなど、明暗が分かれた。
居酒屋に復調の兆し、猛暑がビール販売を後押し
長く低迷が続いていたパブ・居酒屋業態は、売上が前年同月比109.1%と大幅に回復した。昨年は大型台風によるキャンセルが相次いだが、今年は天候に恵まれ、猛暑が「冷たいビール需要」を喚起。
客数も106.1%と好調で、売上増加の主因となった。一方で、店舗数の増加はわずか(100.2%)、客単価も102.9%と限定的な上昇にとどまっており、今回は“来店者数の回復”が売上を押し上げた形だ。
背景には、外食回帰の流れに加え、猛暑による「ビールを飲みに行こう」という衝動的な需要の高まり、そして“軽飲み”や“1人飲み”といった新しい利用スタイルの定着があると考えられる。

ファミリーレストランが堅調、和風業態がけん引!
ファミリーレストラン全体の売上は109.8%と高水準を維持。お盆の帰省・行楽需要を取り込み、「和風」が112.2%、「中華」が110.4%と好調に推移した。
特に「和風」は、昨年のような悪天候による来店減がなく、期間限定メニューが客単価(106.7%)を押し上げた。
一方で、洋風業態は109.6%と堅調ながらも、値上げに慎重な層の取り込みに苦戦した様子もうかがえる。
ファーストフードは安定成長、冷メニューと限定商品が奏功
ファーストフード業態(FF)は前年同月比107.4%。中でも「麺類」が110.0%と最も高い伸びを見せた。猛暑を背景に冷やしメニューやビール販促が好調に推移したことが大きい。
「和風」では期間限定定食メニューが売上108.6%と貢献、「洋風」も定番の夏商品で107.0%と安定した。
一方、持ち帰り米飯・回転寿司は106.0%と伸び悩み。テイクアウト中心では客数(95.8%)が減少し、高単価商品の導入で客単価(110.7%)を補う構図が続いている。
喫茶が11%超の好調、物価上昇を上回る“選ばれる価値”とは?

喫茶業態は引き続き売上110.9%と高水準。猛暑下でアイスコーヒーやフルーツパフェ、かき氷系スイーツなどが好調に動き、価格改定による単価上昇(107.4%)がそのまま売上増につながった。
「涼を求めて立ち寄る需要」に加え、SNS映えを意識した限定メニューが若年層の支持を集めており、単なる休憩需要を超えた“体験価値”が定着しつつある。
インバウンドと地域行事が支えたディナーレストラン

ディナーレストラン業態は110.8%と堅調。お盆・夏休みシーズンを通じて家族・団体利用が伸び、大阪・関西万博関連の観光需要も一部で追い風となった。
ただし、インバウンド需要の勢いは企業によって温度差があり、都市圏以外では効果が限定的との指摘もある。
売上好調の背景に見える“二極化”の実態

今回の調査では、全体の売上が8%超増加する一方で、「値上げを受け入れられる業態」と「価格に敏感な業態」との差が一段と鮮明になった。
喫茶や和風レストランのように、空間や接客を含めた“満足体験”を提供し、価格上昇を「価値の向上」として受け入れてもらえる業態がある一方で、居酒屋やテイクアウト中心の業態では価格競争が激しく、値上げが来客数の減少につながりやすい傾向がある。
特に居酒屋は「気軽さ」や「コスパ」を重視する層が多く、体験価値が高くても“日常利用”の心理的価格帯を超えると離脱が起きやすい点が課題となっている。
まとめ|2025年8月 今後の外食市場に求められる構造転換
外食市場全体は回復基調を維持しているが、その内実は「猛暑特需」「イベント需要」といった一時的要因に支えられている面もある。
9月以降は気温低下と共に季節需要が一巡するため、業態ごとに“安定的に選ばれる理由”の構築が鍵を握る。
居酒屋では「料理軸で利益を出す」「昼・夕方の二毛作モデルへの転換」など、新しい営業構造への対応が急務。
今後の外食市場を左右するのは、単なる売上の大小ではなく、「どのような価値で選ばれているか」という“構造的な強さ”である。
