2026/03/12
売上106.0%に見る年末需要と「選ばれる店」の条件とは?【外食産業市場動向調査2025年12月】
年末需要で外食市場は堅調|売上106.0%に見る“12月特有の構造”とは?
2025年12月度の外食産業市場動向調査によると、外食市場全体の売上は前年同月比106.0%となり、11月(108.7%)からはやや伸びが鈍化したものの、引き続き堅調な水準を維持しました。
客数は102.4%、客単価は103.5%と、12月は「単価主導」だけでなく「客数回復」も伴った成長であった点が、11月との大きな違いです。12月は年末休暇が長くなった影響で、家族利用が増加したほか、これまで主流だった大規模な法人忘年会に代わり、個人・小グループ中心の忘年会需要が月後半から年末にかけて活発化しました。飲酒業態の客数が回復したことが、全体の来店客数を押し上げた形です。
インバウンド需要については、中国からの団体客減少が一部で見られたものの、全体としては引き続き堅調で、外食市場全体への影響は限定的でした。
12月は「来店理由」がはっきりした月?
- ・年末休暇
- ・家族利用
- ・小規模忘年会
といった利用シーンが明確な需要が重なったことで、客数・単価の双方が伸びています。これは、外食需要が回復したというよりも、「行く理由がある場面では、しっかり外食にお金を使う」という消費行動が、より鮮明になった結果といえるでしょう。
【業態別分析】12月に強かった業態、差が出た業態は?

ファーストフード|年末でも“選ばれる日常食”
ファーストフード業態の売上は105.8%と引き続き堅調でした。
和風は108.2%、洋風も106.4%と、期間限定商品や年末需要を捉えたメニュー施策が奏功しています。一方で、**持ち帰り米飯/回転寿司は101.0%**と伸びが鈍く、特に持ち帰り米飯は客数減が続いています。
年末という特別な時期であっても、「外で食べる理由」が弱い業態は伸びにくく、外食の中でも選別が進んでいることが分かります。
ファミリーレストラン|家族需要で安定成長
ファミリーレストラン全体の売上は105.8%。和風FRは106.7%と、年末を中心にロードサイド店舗で家族客が増加し、客単価上昇と相まって堅調でした。洋風FRも105.6%と、低価格業態の集客力が引き続き強さを見せています。
一方で、FR全体では店舗数が前年を下回っており、「既存店の運営力」がより問われる局面に入っていることも見逃せません。
居酒屋・パブ|年末後半に一気に回復
居酒屋・パブ業態は、月前半こそ伸び悩んだものの、仕事納めが集中した26日前後から年末にかけて客数が回復し、売上は106.3%となりました。大型宴会は引き続き少ないものの、個人・小グループ宴会が完全に定着しており、郊外・繁華街ともに集客が見られました。
ここから読み取れるのは、「忘年会がなくなった」のではなく、忘年会の形が変わったという事実です。
ディナーレストラン・喫茶|“価格を払う理由”がある業態は強い
ディナーレストランは107.6%、喫茶業態は108.2%と、12月も高い伸びを記録しました。喫茶では客数こそ大きく伸びていないものの、客単価は108.4%と大幅に上昇しています。
年末の忙しさの中で、
- ・落ち着いて過ごせる
- ・作業・打ち合わせに使える
- ・時間価値を感じられる
といった体験型の価値に対して、消費者がしっかり対価を支払っている構造が、11月に続いて12月も確認できます。
課題と飲食店経営者が取るべき対策は?
2025年12月の外食市場は売上106.0%と堅調に推移しましたが、すべての店舗が同じように恩恵を受けたわけではありません。客数102.4%、客単価103.5%と双方が伸びる一方で、業態別には明確な差が生じており、「どの需要を取り込めたか」が結果を左右しました。12月に売上を伸ばした業態に共通しているのは、来店理由が明確な利用シーンを捉えていた点です。年末休暇による家族利用や小グループ忘年会、滞在価値を重視した利用では、客数・客単価がともに伸びました。一方、持ち帰り米飯のように「外で食べる必然性」が弱い業態では、年末であっても客数が伸び悩んでいます。
この結果から飲食店経営者が取るべき対策は、12月に自店がどの利用シーンで選ばれたのかを明確にすることです。年末売上の数字だけを見るのではなく、家族利用、宴会、時間消費型などの内訳を整理しなければ、年明け以降に再現性のある施策は打てません。
また、客単価上昇は一律の値上げによるものではなく、ディナーレストランや喫茶のように、価格に対する納得感や体験価値を提示できた業態ほど成果を上げています。居酒屋でも、大型宴会から小グループ・個人利用へと需要が移行しており、席構成やメニュー設計を最適化できたかどうかが明暗を分けました。
12月のデータが示している課題は、「売上が伸びたか」ではなく、その売上がどの需要によって生まれたのかを把握できているかです。年末という特殊な月の成果を構造として整理できた店舗ほど、その後の通常月でも安定した経営につなげていけるでしょう。
まとめ
2025年12月の外食市場は、売上106.0%と引き続き堅調に推移しましたが、その中身は単なる「年末特需」ではありませんでした。客数102.4%、客単価103.5%と、来店理由が明確な場面では、人数も単価も自然に伸びる構造がはっきりと表れています。家族利用や小規模忘年会、時間価値を重視した利用など、「なぜこの時期に、この店を選ぶのか」が明確な業態ほど成果を上げました。
一方で、外食全体が一様に恩恵を受けたわけではなく、持ち帰り米飯など「外で食べる必然性」が弱い業態では伸び悩みも見られました。これは、消費者が支出を増やしたというより、支払う理由を厳しく選別していることを示しています。
11月の「単価主導」、12月の「客数+単価」という違いはあっても、共通しているのは「価格に納得できる体験や利用シーンがなければ選ばれない市場」へ完全に移行しているという点です。年末需要に支えられた結果に安心するのではなく、その需要がなぜ生まれたのかを言語化できるかどうかが、年明け以降の業績を大きく左右することになるでしょう。
