SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標12.つくる責任つかう責任-

地球温暖化や気候変動、海洋汚染など、さまざまな環境問題を抱えている地球。未来においても自然豊かで住みやすい環境の維持や、貧困・飢餓など、国際的に取り組むべき課題に対する国際目標SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されています。国際的に取り組むべき課題なので、もちろん、飲食店にも関係する目標があります。17個定められている目標の中から、今回は「目標12. つくる責任つかう責任」を取り上げます。

 

目次

「目標12.つくる責任つかう責任」とは

目標12は「持続可能な生産消費形態を確保する」というテーマで「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」や「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」など11の指標が定められています。

 

ここにWWF(世界自然保護基金)が2019年7月に発表した衝撃的なデータがあります。現在、人間の活動は地球の自然環境から生み出される資源を多大に消費し続けています。地球が生み出す生産力には限度があるため、1年間に人類が使っていい量の資源は当然限られますが、2019年は7月29日に使い尽くしてしまったということです。つまり、年末の12月31日までに必要な資源は、未来の世代に負担してもらう「借金」となります。この「使い過ぎ」は国や地域によって大きな差があり、日本では5月13日にはすでに使い尽くしています。世界中の人が日本人と同じ生活をすると、1年間に必要な自然資源は地球2.8個分という莫大な量です。私たち日本人は、自然環境を守る取り組みを積極的に行うべきと言えます。

※出典:WWF(世界自然保護基金)『最も早い到来!2019年の「アース・オーバーシュート・デー」は7月29日』

食品ロスやプラスチック使用量の削減で地球を守る

どうすれば地球の自然環境を守れるのか、飲食店ではどのような取り組みを行うべきなのか、考えてみましょう。

 

すぐにでも取り組める食品ロスの削減

前述したとおり、目標12では食品ロスの削減も指標として定められています。この指標は飲食店にとって、非常に密接に関係するものです。なぜなら、以前の記事でも紹介したように、日本国内で出されている食品ロスのうち、約21%の127万トンが外食産業からの廃棄となっているからです(2017年時点。出展:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」2020年)。

フードバンクやフードシェアリングサービスを利用したり、日々の営業の中で少し意識したりすることで削減できる部分が多いにあります。日本全国にある飲食店で取り組めば、大きく減らすことに成功します。現在の飲食店運営から大きく外れることなく、できる取り組みから始めましょう。

食品ロス削減に関して詳しくはこちら→SDGs達成に向けて飲食業界ができること ー目標2.飢餓をゼロにー
フードバンクに関して詳しくはこちら→SDGs達成に向けて飲食業界ができること ー目標1.貧困をなくそうー

 

プラスチック廃棄とその影響

飲食業界からできることは、食品ロス削減だけではありません。環境に害を与えるものとして、世界的に叫ばれているプラスチックごみの削減にも尽力する必要があります。

 

実は、日本の一人当たりのプラスチック廃棄量は、アメリカに次ぐ世界第2位です(2014年時点。出典:国連環境計画「シングルユースプラスチック」2018年)。そんなに多いのかと驚きますが、考えてみると食品の包装や衣類、家電など、日常生活でプラスチックが使われていない製品は、むしろ少ないです。必然としてプラスチックごみは増えることになります。

 

プラスチックごみが深刻な問題とされる理由の一つが、海洋被害です。日本でもニュースなどで、海洋生物がマイクロプラスチックと言われる微小なプラスチックを飲み込んでしまい、それを食べる人間に健康被害が出るのではないかと盛んに報道されています。2050年には海洋中のプラスチックが魚の量を上回るという、恐ろしい予想もされており(出典:東京都環境局「プラスチック削減プログラム~プラスチックの持続可能な利用に向けて~」2019年)、確かにそれだけ増えると健康に影響が出てもおかしくないです。プラスチックごみは、われわれ人間の健康を脅かす可能性があるのです。

 

また、プラスチックは製造過程で大量に二酸化炭素を排出するという問題も抱えています。二酸化炭素は地球温暖化による気候変動や生物多様性の低下など、さまざまな悪影響を地球に与えます。近年頻発する巨大な台風や、体温を超える気温などの異常気象は地球温暖化の影響と考えられています。海と陸の生態系を守るためにもプラスチックごみの削減は急務なのです。

 

飲食店でのプラスチック削減方法

プラスチックごみ削減の取り組みとして、日本でも2020年7月からコンビニやスーパーなどのプラスチック袋が有料化されました。プラスチックごみの削減が期待されましたが、新型コロナウイルスの流行がこれを妨げているという現状があります。

ステイホームによるおうち時間が増えたことで、テイクアウトやデリバリーのニーズが高まり、飲食店ではプラスチック容器や包装を使用する機会が増加したからです。衛生面から使い捨ての食器をご希望される方も増えていると言います。

とはいえ、プラスチックごみを減らすことは世界で早急に対応すべき取り組みです。まずは小さなことから始めましょう。

例えば、ドリンク用のストローは紙製にしたり、テイクアウト・デリバリー商品を提供する際のプラスチック袋は紙袋にしたり、可能な限りプラスチックの使用量を減らすのです。最近は、お弁当の容器でも紙製が増えており、容器を変えることなく電子レンジで温めることができるなど、性能が向上しています。

 

また、地球に優しいプラスチック、「バイオプラスチック」という選択肢もあります。バイオプラスチックは「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」があり、前者は植物などを原料としたものです。焼却処分時に排出される二酸化炭素は、原料となる植物が成長過程で吸収したもので、全体の二酸化炭素量に影響を与えないという特徴を持っています。後者は自然界(地中など)で分解が可能なため、プラスチックごみとして蓄積されない素材です。現在は、両方の特徴を持つプラスチックも開発されています。

 

紙やバイオプラスチックが素材の容器などを増やすことで、飲食店で使うプラスチック製品を減らし、プラスチック廃棄量削減に貢献していきましょう。

人類はプラスチックという便利な素材を生み出しましたが、地球という限られた資源を脅かすようになってしまいました。それは自分たちの首を絞めることになるにもかかわらず、消費し続けています。今、私たちが求められているのは、まさに目標12のように「つくる責任つかう責任」です。日本の飲食業界から食品ロスやプラスチックの使用量を削減することで、母なる地球の自然環境を守る取り組みを広げていきましょう。

【関連記事】

 

SDGs目標達成にむけて飲食業界ができること-目標8.働きがいも経済成長もー
SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標5.ジェンダー平等を実現しよう-