2026/02/23

飲食店のキャッシュレス比率は売上に影響する?経済産業省データから見る経営課題

経済産業省データから読み解く飲食店経営の課題と対策

「キャッシュレス対応」は売上以前の問題になりつつある

「キャッシュレス決済を導入すると売上は本当に伸びるのか」
「決済手数料の負担を考えると、現金の方が良いのではないか」

こうした疑問は、多くの飲食店経営者が一度は感じたことがあるはずです。
しかし近年、この問いの前提自体が変わり始めています。

経済産業省が公表した最新データによると、日本のキャッシュレス決済比率はすでに4割を超え、消費者にとってキャッシュレスは「特別な支払い方法」ではなく「当たり前の選択肢」になっています。
つまり今は、キャッシュレスが売上を伸ばすかどうか以前に、対応していないことで売上機会を失っていないかが問われる段階に入っています。

本記事では、経済産業省の公式レポートを基に、飲食店経営者が知っておくべき現状、そこから見える課題、そして現実的な対策を整理します。

キャッシュレス比率の現状、消費者の支払い行動はすでに変わった?

2024年時点で、日本全体のキャッシュレス決済比率は42.8%に達しました。
これは政府が目標としていた水準を前倒しで達成した数字であり、支払い行動の変化が一過性のものではないことを示しています。

特にクレジットカード決済を中心に、QRコード決済や電子マネーの利用も広がり、消費者の多くは「現金を持たずに外食する」ことに抵抗を感じなくなっています。

一方で、経済産業省の検討会資料では、個人経営・小規模飲食店はキャッシュレス対応が遅れやすい業種として指摘されています。ここに、消費者側の行動変化と、店舗側の対応との間にギャップが生まれています。

データから見える飲食店経営の主な課題とは?

課題① キャッシュレス非対応が「選ばれない理由」になり始めている

消費者調査では、「キャッシュレスが使えない店を避けたことがある」という回答が一定数確認されています。
特に以下の層では、その傾向が顕著です。

  • ・若年層

  • ・ビジネスパーソンのランチ利用

  • ・インバウンド・外国人観光客

料理の質や価格以前に、支払い方法の不便さが来店判断に影響するケースが増えている点は、飲食店にとって無視できません。

課題② 決済手数料が経営判断のブレーキになっている

キャッシュレス導入をためらう最大の要因は、決済手数料の存在です。
売上の2〜3%前後が手数料として差し引かれることに対し、
「利益が圧迫されるのではないか」という不安を抱く経営者は少なくありません。

結果として、

  • ・現金中心の運営を続ける

  • ・導入を先送りする

といった判断につながりやすくなっています。

課題③ キャッシュレスを「導入しただけ」で終わっている

キャッシュレス決済は、支払い手段であると同時に、
売上や顧客行動を把握するためのデータ取得手段でもあります。

しかし実際には、

  • ・データを確認していない

  • ・経営判断に活かしていない

という店舗も多く、導入効果を十分に引き出せていないケースが見られます。

 飲食店が取るべき現実的な対策は?

対策① キャッシュレスを「売上を守るためのインフラ」と捉える

キャッシュレス決済は、必ずしも即座に売上を押し上げる施策ではありません。
しかし、対応していないことで失われる来店機会を防ぐための基本インフラとしては、重要性が高まっています。

まずは、

  • ・クレジットカード

  • ・主要なQRコード決済

といった、利用頻度の高い手段から対応することで、機会損失を最小限に抑えることができます。

対策② 手数料は「コスト」だけでなく「売上機会」とセットで考える

決済手数料だけを見るとマイナスに感じますが、キャッシュレス導入によって、

  • ・追加注文が出やすくなる

  • ・客単価が上がる

  • ・会計時間が短縮され回転率が改善する

といった効果が出るケースもあります。

重要なのは、手数料単体ではなく、売上構造全体で判断することです。

対策③ 決済データを経営改善に活かす

キャッシュレス決済のデータを活用すれば、

  • ・時間帯別の客単価

  • ・メニュー別の売上構成

  • ・曜日ごとの来店傾向

といった分析が可能になります。
これにより、メニュー構成の見直しや人員配置の最適化など、具体的な経営改善につなげることができます。

対策④ 会計体験を含めた「店舗オペレーション」を整える

キャッシュレス対応は、端末を置くだけでは不十分です。

  • ・対応決済の分かりやすい掲示

  • ・スタッフが迷わず対応できる体制

  • ・会計が滞らない導線設計

これらを整えることで、顧客満足度と回転率の両立が実現しやすくなります。

まとめ|キャッシュレス対応は「売上を伸ばす施策」ではなく「売上を守る経営判断」

キャッシュレスは「選択肢」ではなく「前提条件」になりつつある

経済産業省のデータが示す通り、キャッシュレス決済はすでに一部の先進的な店だけの取り組みではなく、外食市場全体の前提条件になりつつあります。支払いの約4割がキャッシュレスで行われている現状において、飲食店経営者が向き合うべき問いは、「導入するかどうか」ではなく「未対応でいることを許容できるのか」という判断です。

キャッシュレス非対応は「静かに売上機会を失うリスク」

キャッシュレスは、導入すれば必ず売上が伸びる万能な施策ではありません。しかし一方で、キャッシュレス非対応は“値上げ以上に静かに客を遠ざける要因”になり始めています。支払い方法の不便さは、料理やサービスと違って改善を期待されにくく、来店前の段階で選択肢から外されやすいからです。これは、努力しても気づきにくい形で売上機会が削られていくリスクを意味します。

手数料は「コスト」ではなく「売上構造への投資」

また、決済手数料は確かに目に見えるコストですが、ここで重要なのは、「手数料を払うかどうか」ではなく「その手数料で何を守り、何を取りに行くのか」という視点です。客単価の上昇、追加注文、会計時間短縮による回転率改善、さらには売上データの可視化など、キャッシュレスは売上構造そのものに影響を与える要素でもあります。手数料単体での損得判断は、経営判断としては不十分になりつつあります。

「全部対応」ではなく「自店に必要な最低ライン」を見極める

そして今、飲食店経営者に求められているのは、「全部入れるか・入れないか」という極端な選択ではなく、「自店の客層・利用シーン・営業時間に照らして、どの決済手段が最低限必要なのか」を見極める判断力です。若年層やランチ利用が多い店と、常連中心・夜営業が主の店とでは、最適な対応レベルは異なります。重要なのは、自店にとっての“守るべき売上ライン”を明確にすることです。

キャッシュレス対応は「競争の土俵に立ち続けるための経営判断」

キャッシュレス対応は、もはや差別化のための武器ではありません。競争の土俵に残り続けるための「経営インフラをどこまで整えるか」という意思決定です。いま取る判断は、売上を増やすかどうか以上に、数年後も選ばれ続ける店でいられるかどうかに直結します。キャッシュレスをどう扱うかは、そのまま経営者としての判断の質が問われるテーマになっていると言えるでしょう。

 

 

柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。
柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。