SDGs達成に向けて飲食業界ができること-目標14.海の豊かさを守ろう-

現在、地球温暖化や海洋汚染など地球上には、さまざまな環境問題が生じています。特にプラスチックによる海洋汚染は深刻で、買い物用のプラスチック袋だけでなく、コンビニやスーパーでお弁当などを購入すると無料でもらえるスプーンやフォークも有料化が検討されているほどです。

この海洋汚染に関しては、貧困や気候変動など国際的に取り組む必要のある課題について定めたSDGs(持続可能な開発目標)でも目標が定められています。食材に直接関わることであるため、飲食業界とも非常に関係性の高い目標です。今回は「目標14.海の豊かさを守ろう」について、飲食店ができることを考えていきます。

目次

「目標14.海の豊かさを守ろう」とは

目標14は「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」というテーマのもとに、「2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」など計10個の指標が定められています。

 

日本は島国であることから、古来より魚介をよく食し、和食の決め手である出汁としても使用するなど、計り知れないほど海洋資源の恩恵を受けています。日本人にとって手を伸ばせばそこにあると言える海の資源が、有限であることを意識する機会はほとんどないでしょう。しかし今、海は悲鳴をあげています。環境省の調査によると、日本に野生として生息する海洋資源のうち56種が絶滅危惧種として認定されているのです(出典:環境省「環境省版海洋生物レッドリストの公表について」2017年)。

 

乱獲や海洋汚染による海洋資源の枯渇

どうして、それらの海洋生物が絶滅の危険性に冒されるようになったのでしょうか。

 

実は、健康志向などの理由から世界中で魚介類の人気が高まり、増大し続ける需要に追い付こうと海産物を乱獲している現状があります。FAO(国際連合食糧農業機関)の2018年の発表によると、世界の海洋水産資源の33%は過剰な乱獲状態にあります(2015年時点)。1974年はこの比率が10%であったため、約30年間で20%以上も増加したことになります

 

私たちが普段食べているのは、通常、成魚と呼ばれる成長した魚です。魚が育つには産卵、孵化、仔魚、稚魚、幼魚、若魚、成魚という過程が必要であり、すぐに漁獲できるわけではありません。しかし、近年は拡大する需要に合わせて、成魚まで成長する前に漁獲してしまうため、産卵数が少なくなるなどの生産サイクルに悪影響を及ぼしています。このまま対策をせずに漁獲を続けていると、いつか枯渇してしまいます。

 

海洋資源を守るために、日本国内では漁獲量や時期など区域ごとに規制を定めています。国際的にも沿岸国の権利が及ばない海域に関しては、水産資源を管理するための国際条約を多国間で結び、条約に基づき設置された国際機関によって漁獲量などのルールが定められています。にもかかわらず、違法・無報告・無規制漁業などが続いているのが現状です。

 

また、海洋汚染も海洋資源に悪影響を与える大きな原因として挙げられます。プラスチックごみは、魚介類が餌と間違えて飲みこんでしまう他、プランクトンといった食物連鎖の下位生物への影響なども確認されていることから、海洋生態系全体にとっての有害性が危惧されています。

2050年には海洋中のプラスチックが魚の量を上回るとも言われており、海洋汚染を改善する必要があります(出典:東京都環境局「プラスチック削減プログラム~プラスチックの持続可能な利用に向けて~」2019年)。プラスチックごみ削減のために、テイクアウト容器をプラスチックからバイオ素材のものに変更するなど、飲食店からも取り組めることは多々あります。

 

飲食店ができるプラスチック削減のための取り組みについて詳しくはこちら→SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標12.つくる責任つかう責任-

 

海洋の酸性化も海産物に悪影響を与えている要因の一つです。酸性化は、私たち人類が生活を便利にするためや、経済発展のために排出し続ける大量の二酸化炭素を海洋が吸収することにより起きています。二酸化炭素排出量を削減することは、海洋資源を守るという意味でも重要です。飲食店でもラスチック廃棄量削減や、地産地消を心掛けることで二酸化炭素排出の削減に寄与できます。

 

地産地消と二酸化炭素の関係性に関して詳しくはこちら→SDGs達成に向けて飲食業界ができることー目標13.気候変動に具体的な対策をー

 

私たちの生活において欠かせない海産物を守っていくために、飲食業界でも海洋汚染を防ぐ取り組みを積極的に取り入れたいですね。

MSC、ASC認証食品の使用で海を守る

海洋資源を守るために飲食店ができることは、プラスチック廃棄量や二酸化炭素排出量の削減だけではありません。日本ではまだ認知度の低いサステナブルシーフードを利用することが、環境への取り組みにつながります。

サステナブルシーフードとは、海洋資源を枯渇させず今後も食べ続けられるように、漁獲量の規制や環境への影響などに配慮して獲られた水産物のことです。例えば、資源を使い果たしてしまわないよう過剰な漁獲を避けている、各地域や国際的な海洋ルールを順守している、漁業が生態系や環境に与える影響が最小限であるなどにあてはまるものになります。天然と養殖があり、サステナブルシーフードとそれ以外を区別するために前者はMSC認証、後者はASC認証(※)を取得します。

両認証は、漁獲・養殖を行う企業や組合などごとに審査され、認証されると魚介を流通させる際に認証ラベルを表示することが許可されます。そのため、サステナブルシーフードか否かは、すぐに分かります。

(※)MSC認証漁業あるいはASC認証養殖場で生産された水産物を認証のものとして取り扱うためには、MSC/ASCのCoC認証の取得が必要。CoC認証とは、サプライチェーンにおいて認証水産物と非認証水産物が混ざることを防ぐとともに、認証水産物のトレーサビリティを確保することを目的とするもの。

 

現在日本国内でもクロマグロ漁やかきの養殖など、認証を受けた海産物が増加しつつあり、スーパーなどで見かけたことがあるでしょう。

認証された海産物を使用すれば、飲食店からも海洋資源保護にアプローチできます。日本国内でも徐々にサステナブルシーフードの認証を取得する企業や組合などが増えていますが、未だ数は少なく、コスト面といった観点からも今すぐ認証商品に変更することは簡単なことではないでしょう。

とはいえ、海洋資源の保護はすぐにでも始めるべき取り組みです。まずは、現在使用している食材が認証を取得しているかを確認し、そうでない場合は、仕入れ業者に取り扱いの有無やコストについて問い合わせるなど、導入に向けて行動できるといいですね。

古来、人類は海洋資源の恩恵を多分に受けてきました。しかし、現在は私たちの生活や経済活動により世界中で大きな負担を海に与えています。将来にわたり海洋資源を守るために、世界有数の魚大国である日本は率先して保護活動に取り組むべきです。今回紹介したプラスチックごみや二酸化炭素排出量の削減、サステナブルシーフードの利用などで、飲食店から海産物の保全に尽力しましょう。

 

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