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2021/06/03
農家とのつながりを強めて食品ロス削減「八百屋×カフェ 和合堂」【SDGs×飲食業界】
プラスチックごみ削減を目的に、販売する飲料をすべてペットボトルからアルミ缶に変更すると発表する企業があるなど、ごみを減らすことへの意識は徐々に高くなっている印象を受けます。アルミ缶を採用する理由は国内リサイクル率が98%であるため、ゴミ削減につながるそうです。
東京都港区ではごみ排出量の削減促進を目的に、「ごみ減量優良エコショップ」の認定を行っています。この認定を受けたのが、「八百屋×カフェ 和合堂」(運営/株式会社Connect Farm、代表取締役/清水飛鳥氏)です。
同店では日本各地の農家さんと深い関係性を構築し、廃棄となりそうな食材を仕入れるなど、食品ロス削減の取り組みを積極的に行っています。食品ロス削減は、貧困や飢餓、環境問題など地球規模で解決するべき課題について定められた国際目標のSDGs達成にも寄与する重要な取り組みです。今回は同店の取り組みに関して、創業メンバーでもある取締役の吉田浩美氏にお話をお伺いしました。
―「八百屋×カフェ 和合堂」をオープンしたきっかけを教えてください。
弊社代表の清水が学生時代に観光学を学んでいたことから日本の各地方に興味を持ち、47都道府県をテーマにした飲み会を開いていました。飲み会はレンタルスペースで行っていたのですが、毎回テーマとなる都道府県を1カ所決めて、ご当地グルメを手作りしたり、地酒を用意したりして楽しんでいました。
このようなイベントを通して、日本中にすてきな食材がたくさんあることを知り、清水は当時から実際によく地方の農家さんを訪れていました。一方で、地方にはおいしい食材がたくさんあるのに、その知名度はまだまだ高くないことを意識するようになり、発信の場を設けたいとも考えていました。
発信の場として八百屋の出店を検討したのですが、食材を実際に味わい、おいしさを実感してもらいたいということ、食べた方の反応を目の前で見られることから、野菜などの販売と料理やドリンクを提供するカフェにしました。
―カフェではどのようなものを提供しているのですか?
産地直送の新鮮な野菜とフルーツの販売のほか、それらを使用したスムージーを含むドリンク類、おにぎりセットやスープなどを提供しています。現在は、清水が学生時代から交流を続けている農家さんや、彼らにご紹介いただいた生産者さんより食材を仕入れています。
清水は各地方のおいしい食材をもっと広めていきたいという思いが強く、自身で実際に食べてみて感動した野菜を中心に、農家さんに現在困っていることなどをお伺いしながら、その課題点をクリアできるように発注やお手伝いを行っています。
―例えば、どのような課題があるのでしょうか?
農家さんからは、お客様が食べた反応を知りたい、販路を拡大したいなどの声をよくいただきます。
当店で食事や購入されたお客様の意見をフィードバックし、それぞれの生産者さんのつくる野菜の認知度を広めるために店舗やSNSで魅力を発信するといった課題解決のお手伝いをしています。
具体的には、農家さんと消費者の方をつなげファンになってもらうために、仕入れ先の生産者さんの情報をポップにして店内に掲示しています。実際にお食事したお客様からは、「この農家さんの野菜がおいしい!」などの声も上がっています。
2021年1月に発令された緊急事態宣言前は、農家さんを呼んでイベントなども開催していました。
―どのようなイベントを開催されたのですか?
月に1回ほど農家さんをお呼びし、野菜を育てるコツやおいしく食べる調理法などをお話しいただいていました。
お客様と一緒に農家さんを訪ねて、農業の体験を行う機会も設けています。生産者さんの課題の中でも人手不足は大きな問題となっているため、定期的に体験イベントを開催して大勢でお手伝いをしに行っています。お客様の中には、農業に興味がある方や、週末は自然の中で過ごしたいと考える方が多いようで人気です。
実際に農作業を体験していただくことで、よりその食材について知ってもらえたり、魅力が伝わったりすると思います。
―生産者さんの課題解決にさまざまな方法でアプローチしているのですね。ほかにも生産者さんの課題解決のために取り組んでいることはありますか?
はい、生産者さんは販路拡大や人手不足などのほかに、食品ロスという大きな課題を抱えています。不ぞろいであったり、傷がついていたり、豊作や卸量の減少であったり、さまざまな要因からせっかく野菜や果物をつくっても廃棄となってしまうケースがあります。
現在お付き合いのある農家さんは、自然農法や減農薬で食材を育てている方が多く、農薬を使用した食材よりも足が早いため、廃棄になりやすい傾向にあるのだと思います。特に最近は、飲食店などに直接卸していた生産者さんが、コロナ禍で注文数の大幅な減少、または卸し先の閉店により苦境に立っていることも多いです。
食品ロスについて詳しくはこちら⇒SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標12.つくる責任つかう責任-
―廃棄食品は常に出るわけではないと思います。どのような形で仕入れる商品を決めているのでしょうか?
現在、関東や九州など約20軒ほどの農家さんから食材を仕入れているのですが、基本的には清水が週に2回実際に現地を訪れています。対面で農家さんと話をして、その時余剰になりそうな食材や困っていることなどを聞いてくるのです。現場で実際に食材を見せてもらい注文するか、後日仕入れています。
当社では、「Connect Farm」の社名の通り、農家さんとのつながりを非常に大切にしています。直接農家さんを訪ね、畑を見せていただかないと分からないことが多々あるため、対面でお話することにもこだわっています。各地のおいしいものを広めたいという清水のビジョンに共感して、懇意にしてくださっている生産者の方も多くいらっしゃいます。
意外と知られていませんが、農家さんの性格が食材の味に表れるのです。例えば、優しくて温かな性格の方が育てた野菜は角がないふくらみのある味、情熱的で威勢のいい農家さんは素材の味が引き立つはっきりとした味になる傾向にあります。だからこそ、直接お会いして人柄をよく理解し、仕入れる際の参考にしています。
また、2021年4月からは農家さんの支援を行っている「チバベジ」という団体と提携し、そちらから入荷した野菜も提供しています。野菜はその生育過程で、日光の当たり具合や土壌に含まれる栄養素といった様々な要因により、品質に問題がないものの色や形に変化をきたす場合があります。同団体ではそれらの野菜を個性と捉え、フードロス削減につなげる取り組みを行っています。当社と通じる部分が多く、協力し合って活動を広めています。
―廃棄対象食材の仕入れはSDGs達成にも貢献しますが、関連を意識されているのでしょうか?
先ほどお話したように廃棄対象の食材を扱うようになったきっかけは、農家の方の困りごとを解決したいという思いからでしたが、このような話をしていたところ、出店前にある方から食品ロスとSDGsの関係について聞く機会がありました。そこからSDGsを認識し、現在では生産者さんの課題解決以外の取り組みも行っています。
―どのような取り組みをされているのですか?
地域の子ども食堂に、月に1回ほど産直野菜を無償提供しています。お子さんにおいしく食べていただいているようですが、それ以上に運営の方や親御さんから安心できる産直野菜であると好評です。
また、今後は食育などにも注力していきたいと考えています。子どもたちのみならず、高齢者の方向けの食育講座も思案中です。血圧が低い・高いとき、風邪を引いたときなど、その日の体調に合わせて取るべき栄養素の多い食材をお伝えするという具合です。
現在、地元の区民館の方と企画を進めており、2021年夏頃までには実施したいと考えています。
―どうして「食育」に取り組もうとお考えになったのでしょうか?
私自身、食事が健康に与える影響を強く感じたことが一因です。毎日の食事を健康的なものにしたところ、9キロも体重が落ちたのです。身をもって食事の大切さを感じ、伝えていく必要性を意識しました。
「心と身体の再生」をテーマとしてカフェをオープンするのだから、食事と健康の関係性を知っておく必要があると感じ、そして何より食べることが大好きであったため自分自身で実験を行いました。
お店でも貧血気味の方には改善効果が期待できる野菜を使うなど、お客様の体調に合わせた食材のスムージーをおすすめしています。何度もご来店いただくお客様には、その日の食材の中からより良い体調をサポートする組み合わせのスムージーを提供することもあります。
農家の方はもちろんですが、お客様ともコミュニケーションを大切にしていきたいです。お客様が当店で食事することで健康になったり、離れた土地のおいしい食材を知ったりできるとすてきですよね。今後もカフェで単に野菜やお料理を提供するのではなく、生産者と消費者を結びつける活動などを通じて、人と人がつながる場所にしていきたいと思います。
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