「串カツ田中」がリブランディングを実践、「脱・串カツ田中」宣言が進展する

 

「串カツ田中」のリブランディングの狙いを語る、代表取締役会長兼社長の貫啓二氏

この記事からわかること
  • 老舗風・大衆居酒屋のイメージから、ロゴ・内装をシンプルかつ居心地の良い空間へと一新する初のリブランディング 
  • 「100円無限ハイボール」や体験型「もしとんシリーズ」など、ドリンク値下げと新メニュー導入による若者・ちょい飲み層の獲得 
  • 単一ブランド依存からの脱却(「脱・串カツ田中」)を掲げ、PISOLAの子会社化や社名変更(ユニシアHD)で1000店舗・グローバル展開を見据える成長戦略 

株式会社ユニシアホールディングス(本社/東京都品川区、代表取締役会長兼社長/貫啓二。以下、ユニシアHD)では、9月4日に「串カツ田中」事業初のリブランディングを発表した。これは、ロゴや店舗の内外装を刷新して、ファミリーや女性客、若者客が入りやすい空間とする。また、一部ドリンクの価格引き下げや、新メニューを導入することによって、利用動機の拡大を図っている。これらの内容を紹介して、ユニシアHDの方向性をまとめておきたい。アイキャッチの人物が、同社代表取締役会長兼社長の貫啓二氏である。

創業当初からファミリー、女性客に愛される

「串カツ田中」が誕生したのは2008年12月のこと、東京都世田谷区の住宅街の中にオープン。リーマンショックの真っただ中でのスタートであった。店名の「田中」の由来は、パートナーの田中洋江(ひろえ)氏の父がしたためていた串カツのソースのレシピを見つけ出し、それをメニューの根幹としたことから。当時を振り返って貫氏は、「住宅街立地であったことから、リピーターを大切にすることが重要だ」と考えていたという。このようなことが、「串カツ田中」の強さの源泉であろう。

串カツ田中ー総省s2

2008年12月にオープンした「串カツ田中」の1号店。ここから、私鉄沿線の住宅街に展開していく

「串カツ」とは、大阪のソウルフードであり、東京では個性が際立ったメニューであった。「串カツ田中」の場合、“お祭り”のような雰囲気を醸し出し、親しみやすい大衆居酒屋をアピールした。そして、串カツは単品価格が安いこともあって、子ども客からの人気が高まり、ファミリー層が増えていった。また、フレンドリーで清潔感があったことから、女性客が定着するようになった。このような顧客層をバックボーンに、私鉄沿線の住宅街から、都心のターミナルへと店舗展開を進めていった。

 

串カツ田中HD(当時/ユニシアHDへの社名変更は、2026年3月)の2025年11月期決算は、210憶9100万円(対前期比25.1%増)、経常利益12億3600万円(同46.1%増)、同期末の店舗数は、総店舗数が357、うち「串カツ田中」が344となっている。同期における同ブランドの出店数は、直営14、FC5(退店は、直営8,FC5)。これについては、「不採算店舗を撤退し、経営資源を成長分野へ集中させることで、将来への企業価値向上を目指す」(同社資料)としている。

 

この度の「串カツ田中」のリブランディングの狙いは、このようなことだ。

「現在、住宅街立地を中心に確固とした基盤を築く一方で、多様化する外食ニーズに伴って女性をはじめとする幅広い広い層のお客様が、より利用しやすい店舗空間をつくる。長時間の滞在でも、居心地がよく快適に過ごすことができる。ブランド全体の視覚的・空間的な洗練度を向上させて、さらなる進化の可能性があると捉えている」という(同社広報)

 

そこで、この度のリブランディングでは、「これまでの親しみやすさはそのままに、店舗外観・内観デザインおよびブランドロゴを一新」、「性別や年齢を問わず、多くのお客様に「いつ行っても心地よい時間を提供できる店舗へと進化する」と、うたっている。

串カツ田中ー以前s3

リブランディング実施前の店舗外観。看板は老舗感をイメージさせた

ロゴ、店舗デザインを一新し、新メニューも導入

このリブランディングでは、このようなことが行われた。

まず、「た」の字をデザイン化したキャッチをつくった。店名のロゴは、シンプルな直線と曲線の書体で「串カツ田中」と記した。以前は、筆文字によって「名物串カツ 田中 大阪伝統の味」と、老舗感があり説明的なものであったが、今回は広く万人に受け入れられるような形となった。

串カツ田中-外観s4

リブランディングしたロゴの看板(パーす、以下同)。シンプルで万人に受けるイメージ

串カツ田中ー店内s5

リブランディングした店内。落ち着いた内装で座り心地の良い椅子を採用

店内の内装は、これまで屋台のような雰囲気であったが、それを落ち着いたトーンでまとめて、椅子はパイプ椅子から座り心地のよいものに変更する。新店舗は、すべてこのタイプで出店し、店舗のリニューアルは、直営店から優先的に行って、10年くらいかけて全店を転換する予定だ。

GFMaintenance

今回のリブランディングの一環で新メニューも導入している。大まかには以下の5点。

①1杯100円で楽しめる「無限ハイボール」の導入

このハイボールは「トリス」を使用して1杯100円(税込、以下同/110円)。

②「チンチロ」対象の一部ドリンクの値下げ

定番のサワー・酎ハイ(対象商品)を、従来の450円(495円)から290円(319円)へ値下げ。

⓷ 名物串が「無限マシマシニンニクホルモン串」1本50円(55円)へ

1本50円(55円)の「無限ニンニクホルモン串」が。パンチの効いた「マシマシ仕様」に。

④ 自分で作る「レバニラ炒め」の開発(もしとんシリーズ)

*「もしとんシリーズ」とは、「もしも、やきとんメニューを田中がやってみたら」というラインアップ)

・小(1~2人前)600円(680円)

・大(3~4人前)1000円(1100円)

「無限マシマシニンニクホルモン串」の特性タレを使用。卓上でジュージューと焼き上げる体験型スタミナメニュー。

⑤ 豚ホルモンの新・串カツ4種が登場(もしとんシリーズ)

・豚ホルモン串/シロ(大腸)、ヒモ(小腸)、ハツ(心臓)、ガツ(胃):各種150円(165円)

串カツ田中ーメニューs6

新メニューでは、ドリンクを低価格にして、豚のホルモンのラインアップ

「新しい挑戦」に取り組み「企業価値」を向上させる

これらのリブランディングによって、「串カツ田中」の顧客層や利用動機を拡大、出店場所の開拓を図っていく、としている。こうして、同チェーンが創業当初から特徴としてきた、顧客にファミリーや女性客が多いことに加えて、Z世代をはじめとした若者客、ちょい飲みといった一人客の需要獲得も図る。出店場所はこれまでの路面店に加え、大都市圏での空中階や大箱への出店も想定している。これらによって「現状の約350店舗を500店舗、1000店舗を狙っていく」と貫氏は語る。

 

さて、「串カツ田中」では新たに「タグライン」(理念や世界観を端的に表現したメッセージ)と「ステートメント」(声明、主張の類)をつくり上げた。

 

「タグライン」は、

「今日も、田中で。」

 

「ステートメント」は、

「今日は田中にしよう。」

そう言ってもらえることが、私たちの誇りです。

串カツ田中は、そう呼ばれ続ける店でありたい。

 

さて、ユニシアHD(当時、串カツ田中HD)では、2025年9月に行った「脱・串カツ田中」宣言以来、著しい勢いで企業の新しい方向性に邁進している。同時に、“ロードサイドの革命児”と目されている株式会社ピソラの完全子会社化を発表した(当時、「PISOLA」を約60店舗展開)。

串カツ田中ー脱s7

「脱・串カツ田中」宣言は、事業領域を拡大していく想いを込めている

このとき、貫氏はこのように語っていた。

「これは、『串カツ田中』を捨てる、ということではありません。『当社が進む道』ということです。当社は今後1000店舗体制に向けて、事業領域を拡大して、さらにグローバルに出ていくことを目標にしています。そのためには現状維持ではなく、サービスや質を磨き上げ、プロフェッショナルな人材育成を推進して、『串カツ田中』を変革していかないといけない。『串カツ田中』に次ぐ新しい挑戦、新しい価値を創造して、企業価値の向上を目指していかないと。ピソラの完全子会社化もそのためです」

串カツ田中ーピソラ1s8

「串カツ田中」とは真逆のコンセプトである「ピソラ」をグループ化した

この間、「串カツ田中」では、低価格の定番メニューを導入しで、既存店の売上120%を達成。一方で、インバウンド向けや、さまざまな専門店の開発を進めて行った。

そして2026年3月、社名を「串カツ田中」から「ユニシアHD」に変更した。

 

これらの過程の中で、貫氏は常々このように語っていた。「ゼロイチで取り組んでいく」と。このような社風の中では、人材が育ち、それぞれが同社の新しい領域を切り拓いていくことであろう。「脱・串カツ田中」宣言の大望がどのように進展していくのか。この歩みは、外食に限らず、多くの産業界に刺激をもたらすことであろう。

 

 

 

千葉 哲幸
千葉哲幸(ちば てつゆき) 外食ジャーナリスト 『月刊食堂』(柴田書店)編集長と、そのライバル誌の『飲食店経営』編集長(商業界、 当時)を歴任するなど、外食産業記者歴40年。2014年7月よりフリーランス。外食産業の 歴史を語り、最新の動向をレポートする。取材、執筆、書籍プロデュース、セミナー活動 を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)。 ■メール:chibatetsuyuki@gmail.com
千葉 哲幸
千葉哲幸(ちば てつゆき) 外食ジャーナリスト 『月刊食堂』(柴田書店)編集長と、そのライバル誌の『飲食店経営』編集長(商業界、 当時)を歴任するなど、外食産業記者歴40年。2014年7月よりフリーランス。外食産業の 歴史を語り、最新の動向をレポートする。取材、執筆、書籍プロデュース、セミナー活動 を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)。 ■メール:chibatetsuyuki@gmail.com

店舗情報

店舗名 / 会社名

店名・社名

業態

串カツ

最寄駅

千代田線 赤坂駅

アクセス

徒歩3分

住所

〒107-0052
東京都港区赤坂3丁目15-10

営業時間

定休日

なし

電話番号

03-6277-6694