2026/01/09
2026年の飲食業界はどうなる?値上げ減速時代に求められる経営戦略
値上げが落ち着く2026年。飲食店経営は本当に楽になるのか
2025年後半、外食業界は「値上げラッシュの終焉」と「次の価格局面」の狭間に立たされていた。
そして2025年12月26日、帝国データバンクが公表した「価格改定動向調査(2025年振り返り・2026年見通し)」は、多くの飲食店経営者にとって一見すると“明るい材料”に映ったかもしれない。
調査によると、2026年に予定されている飲食料品の値上げは1,044品目と、前年見通しから約8割減少する見込みだ。
断続的に続いてきた値上げラッシュが、ようやく一服する可能性が示された形である。
しかし、この数字だけをもって「2026年は安心できる年」と判断するのは危険だ。
むしろ今回の調査は、飲食店経営が次の難しいフェーズに入ったことを示している。
値上げは減っても、コスト圧力は終わらない?
今回の調査で注目すべきは、2026年の値上げ要因の99.7%が原材料高で占められている点だ。
2025年まで顕著だった人件費や物流費といった「サービス由来」の値上げは落ち着きつつある一方で、天候不順や国際市況に左右される「モノ由来」の不安定さは依然として残っている。
つまり2026年は、
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一気に値上げが押し寄せる年ではない
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しかし、特定の食材・分野で突発的なコスト上昇が起こりやすい年
という、読みづらい局面に入る可能性が高い。
酒類・加工食品に集中する値上げが経営を直撃する
2026年の値上げ予定品目を分野別に見ると、「酒類・飲料」と「加工食品」が全体の約9割を占めている。
これは飲食店にとって、極めて重要な意味を持つ。
アルコールやドリンクは、これまで多くの店舗で「利益を支える柱」となってきた。
また、冷凍食品や業務用加工食材は、人手不足を補うために欠かせない存在でもある。
調味料のように全面的な原価上昇が一服する一方で、
利益率に直結する部分がピンポイントで圧迫される——
それが2026年のコスト構造だ。
消費者の値上げ耐性は、すでに限界域に入っている?!
2026年を見据える上で、飲食店経営者が最も直視すべき変化は、消費者の「値上げ許容ライン」が明確に下がってきているという現実だ。
実質賃金の伸び悩みが続く中、値上げ後に販売数量が落ち込むケースや、PB商品・廉価品へと消費が移る動きは、もはや一過性のものではない。外食においても、「多少高くなっても仕方ない」という空気は薄れつつあり、価格に対する視線は確実に厳しくなっている。2025年までは、「原材料が高騰しているのだから値上げはやむを得ない」という説明が、一定程度は受け入れられてきた。
しかし2026年は、同じ論理を繰り返しても、消費者の納得は得られにくくなる可能性が高い。
値上げそのものが、来店頻度の低下や「今日はやめておこう」という判断につながりやすくなっており、
飲食店経営者にとって「値上げする・しない」という二択は、これまで以上にリスクを伴う判断になっている。
2026年、飲食店経営者に求められる発想転換とは?
こうした環境下で求められるのは、
「いくら上げるか」ではなく、「どこで利益を確保し、どこで価格を守るか」を明確に設計する発想だ。
例えば、値上げが避けられない酒類については、単純に価格を上げるのではなく、グラスサイズや提供方法、セット構成を見直すことで、粗利を確保する余地がある。
ハイボールやサワーを単品で売るのではなく、料理と組み合わせたセットにすることで、価格に対する抵抗感を和らげながら利益を取りにいく設計は有効だ。

一方で、来店の決め手となる看板メニューや定番商品については、安易に値上げせず、「この店はここだけは守っている」という安心感を作ることが重要になる。
価格を据え置く代わりに、盛り付けや提供スピード、説明の工夫によって満足度を高めることで、値段以上の価値を感じてもらう余地は十分にある。
原価変動を前提にした「メニューの持ち方」へ
2026年の経営では、原材料価格がいつ、どれだけ動くかを正確に読むことは難しい。
だからこそ、価格変動を前提にしたメニュー構成が現実的な選択になる。
月替わりや季節替わりのメニューを取り入れることで、仕入れ価格が高騰した食材を無理に使い続ける必要がなくなる。
その時々で価格が安定している食材を主役に据えられる設計は、原価リスクの分散につながる。
また、セットやコースを活用し、原価の高い商品と低い商品を組み合わせることで、
単品では赤字になりやすい商品も、全体としては利益を確保しやすくなる。
「一品ごとの原価」ではなく、「一来店あたりの原価と満足度」で考える視点が、より重要になる。
値上げできない時代は「非価格価値」で差がつく?
価格を簡単に上げられない以上、消費者が評価するポイントは、料理の値段そのものから少しずつずれていく。
提供スピード、接客の一言、店内の雰囲気、期間限定感といった非価格要素が、選ばれる理由になりやすくなる。
同じ価格帯でも、「この店は早い」「気持ちよく食事ができる」「来る理由がある」と感じてもらえるかどうかで、来店頻度は大きく変わる。
特別なコストをかけなくても、「今月のおすすめ」「今だけ」という文脈を作るだけで、価格に対する納得感は高められる。
まとめ:「値上げをしないための努力」が競争力になる時代へ
2026年は、派手な値上げ対応よりも、日々の積み重ねによる経営体質の差が結果として表れやすい年になる。
自家製化による調味料コストのコントロールや、PB・業務用規格の再活用は、原価を安定させる現実的な手段だ。
デジタルオーダーや省人化を進めれば、人件費の上昇リスクも抑えられる。
さらに、食材ロスを前提としない仕込み量やオペレーション設計は、利益を守るための基本になる。
値上げが落ち着く「今」だからこそ、原価・価格・価値のバランスを見直し、構造的に強い店舗づくりに取り組めるかどうかが、次の局面での明暗を分ける。