2026/01/29

【総務省家計調査×フードサービス協会データから見る】 なぜ今、低価格外食が選ばれているのか?

低価格業態が伸びる理由とは?

2025年外食市場データから読む飲食店経営のヒント

2025年の外食市場を見ると、ファストフードやファミリーレストランといった低価格業態が、他の業態以上に売上を伸ばす傾向が続いています。これは単純に「客単価が上がったから」というだけではなく、消費者の節約志向が強まる中で価値のある選択肢として結果が出ていることを意味しています。本稿では、総務省の家計調査や日本フードサービス協会の月次売上データを読み解きながら、今の外食市場で低価格業態が伸びる背景と、そこから得られる経営のヒントをご紹介します。

外食売上は堅調、伸びるのは低価格業態?

2025年の外食市場は総じて堅調な推移を見せています。例えば2025年10月の外食産業全体の売上は、前年同月比で7.3%増加しました。その中でもファストフードは7.7%、ファミリーレストランは6.7%と、低価格帯業態の伸びが目立っています。喫茶店なども含めて、比較的カジュアルに利用できる業態の売上増が全体を押し上げている状況です。また、5月度のデータでは外食全体が前年比10.8%増という大幅なプラスとなり、ファストフードが11.8%増、ファミリーレストランが10.4%増と、低価格業態が外食需要全体の回復を牽引していることが分かります。

こうした結果は、今年1〜2月、3月、4月といった各月でも傾向として一貫して出ています。外食全体の売上が前年を上回り続けるなか、なかでも手軽さや価格訴求力のある業態ほどパフォーマンスが良いという構造です。

節約志向でも外食が選ばれ続ける理由とは?

この背景には、家計支出の変化があります。総務省の家計調査を見ると、2025年の外食支出額は前年同月比で増加傾向にあり、10月では1世帯当たり約1万6千円と前年比で5.0%増となりました。これは外食が家計の中で依然として重要な位置を占めていることを示しています。

しかし、同じ家計調査では、 「他の主食的外食(いわゆる外食の主食部分)」は前年同月比で1.5%減少していることも示されており、消費者が支出を捻出する際に節約志向の影響があることを示唆しています。jp.gdfreak.com
支出全体が増えているとは言え、物価高騰で家計の実質的な負担感は強く、消費者は支出先を慎重に選ぶ傾向が強まっています。その結果、
「コストパフォーマンスが高い外食」や「低価格でも満足度が高い選択肢」が支持されやすくなっています。

伸びる低価格業態の特徴とは?

こうした消費者行動の変化は、いくつかのデータから裏付けられます。

まず、 ファストフード業態が全体売上を牽引している理由として、価格訴求と手軽さの両方が評価されていることが挙げられます。インバウンド需要の影響や客単価上昇が全体売上を押し上げる一方で、節約志向の消費者は割安感のある商品、効率的な食事体験(例:ランチセット、タイムサービス等)を求めています。

また、 ファミリーレストランの堅調さは「選べる価格帯」と「ファミリー層のニーズ」に支えられていることがうかがえます。単価が上がる中でも、セットメニューや複数人で楽しめる構成を打ち出すことで、節約志向の高い家族層にも支持されているのです。

低価格業態が選ばれる背景は?

総務省の家計調査は、外食支出が増える一方で他の支出を削る動きも同時に進んでいることを示しています。これは、「外食はしたいが支出は抑えたい」という消費者心理が強まっていることを意味します。支出を完全に切り詰めるのではなく、楽しさや利便性を維持したまま支出の最適化を目指す行動が見られるのです。

こうした消費者行動は、ファストフードや低価格ファミリーレストランにとって大きな追い風となっています。消費者は「外食機会を犠牲にする」のではなく、「支出を見直しつつ外食体験の価値を維持する」ことを選択しており、その結果として低価格業態の存在感が相対的に高まっていると考えられます。

低価格業態だからこその戦略とは?

総務省の家計調査や日本フードサービス協会の月次売上データが示しているのは、消費者が外食を我慢しているのではなく、外食に求める条件そのものが変わったという事実です。物価上昇が続く中で、消費者はこれまで以上に支出に慎重になっています。しかし同時に、「納得できる外食」であれば選び続けている。その受け皿になっているのが、低価格業態です。

まず強調すべきポイントは、低価格業態の成長は「安さ」だけが理由ではないという点です。
価格訴求だけに頼る店は、必ず価格比較にさらされ、やがて限界を迎えます。一方で伸びている店は、価格に加えて「この内容なら納得できる」「この値段でここまでしてくれる」という価値の理由を明確に示しています。提供スピード、量や満足感、分かりやすいメニュー構成、失敗しにくさ。これらが揃うことで、同じ価格帯でも体感価値は大きく変わります。重要なのは「いくらか」ではなく、「なぜこの価格なのかが伝わっているか」です。低価格業態ほど、この説明力が経営力の差になります。

低価格業態で体感価値を高めている要素

  • 1. 提供スピード
     【例:◯分以内提供/事前調理比率◯%/セルフ注文導入など】により、
     【待ち時間の短縮/回転率向上/短時間利用ニーズ】を満たしている。

  • 2. 量や満足感
     【例:主食+副菜のセット/大盛無料/ボリューム訴求メニュー】によって、
     「この価格でここまで」という【満腹感・納得感】を生み出している。

  • 3. 分かりやすいメニュー構成
     【例:看板商品◯点に集約/写真中心/価格帯別に整理】することで、
     初来店客でも【迷わず選べる/注文ストレスが少ない】状態を作っている。

  • 4. 失敗しにくさ
     【例:定番メニュー固定/味や量のブレが少ない/価格と内容の一貫性】により、
     「頼んで後悔しにくい」という【心理的安心感】を提供している。

 

次に見逃せないのが、顧客ニーズをどこまで具体的に捉えられているかという点です。
ファストフードやファミリーレストランが支持されているのは、万人受けを狙っているからではありません。「早く済ませたい」「考えずに選びたい」「日常的に使いたい」という利用シーンがはっきりしているからです。低価格業態の強さは、価格ではなく使われ方が明確なことにあります。平日のランチ、仕事帰り、休日の家族利用、テイクアウト需要。時間帯や目的ごとに役割を分けて設計できている店ほど、無理な集客をせずに売上を積み上げています。すべての客を取りに行かないことこそが、低価格業態の安定につながる戦略です。

そして最も重要なのは、節約志向を「一時的な不況」ではなく「前提条件」として経営できているかという視点です。
実質賃金の伸び悩みや生活コストの上昇を考えれば、消費者の慎重な支出姿勢は今後も続くと見るのが自然です。「いずれ戻る」という期待に経営を委ねるのは、リスクが高すぎます。今必要なのは、値上げを前提にしなくても回る構造を作ること、そして値上げを行う場合でも「仕方なく」ではなく「理由が分かる」形で伝えることです。
低価格業態にとっての競争力は、価格の低さではなく、価格に対する安心感にあります。

 

市場データが示しているのは、低価格業態が厳しい立場に置かれているということではありません。むしろ、現在の消費者心理と最も噛み合っている業態であるという事実です。安さに頼る経営から、使いやすさ、分かりやすさ、納得感を積み上げる経営へ。この転換ができた店舗ほど、これからの外食市場でも安定した経営を続けていくでしょう。
低価格業態だからこそ、戦略が問われる時代に入っています。

まとめ

2025年の外食市場データを見ると、低価格業態が相対的に強い理由は、消費者の節約志向と外食支出の増加という双方向のトレンドが重なっているからです。
家計支出は物価高の影響を受けつつも外食を楽しみたいという需要を維持しており、その中で「価値ある低価格の選択肢」が支持され続けています。

こうした消費者動向を理解し、価格と価値の両面を最適化したサービスを提供することが、これからの飲食店経営にとっての重要な戦略となるでしょう。

柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。
柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。