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中食の成長が示す「外食が今こそ見直すべき視点」とは

コンビニやスーパーの“中食”が急成長する中、「外食の価値」が改めて問われています。
外食は果たして、中食に押されて淘汰されてしまうのか——。答えは、NOです。中食が伸びる今こそ、外食はその本質である「体験価値」や「五感での満足」を武器に進化するチャンス。
この記事では、チェーンストア販売統計データをもとに中食の台頭を整理しながら、外食が見直すべき視点と今すぐ実践できるヒントを分野別に解説します。
中食の急成長が意味することとは?
2024年度(2024年4月~2025年3月)、日本チェーンストア協会に加盟する47社・9479店舗の総販売額は12兆7643億円となり、既存店ベースで前年比1.4%増となりました。(参照:「チェーンストア販売統計」四半期別集計表)
中でも注目すべきは、食品部門が前年比3.5%増と大きく伸びた点です。
この背景にあるのは、節約志向や時短志向の高まりです。食費を抑えたいという思いと、「外で食べる時間や手間は減らしたいが、料理はしたくない」というニーズが交錯し、“手軽さ”と“価格のバランス”を求める消費者心理が中食市場の拡大を支えています。
また、共働き世帯や単身世帯の増加、子育てや介護などで自由な時間が限られる層の増加も、中食の需要を押し上げる要因となっています。
中食の時代にこそ、外食も共に進化していくべき
このように中食が成長を続ける中で、外食は不利な立場に置かれているように見えるかもしれません。しかし、この流れこそ外食が進化するチャンスと捉えるべきです
外食の価値とは、単に「料理を提供すること」ではなく、その場での体験、接客、雰囲気、出来立ての美味しさといった、五感で感じられる“総合的な満足”にあります。こうした価値は中食では再現しきれない部分です。
一方で、「家庭で手軽に楽しみたい」「外には行けないけど美味しいものが食べたい」というニーズに対して、中食的な発想を取り入れることで、外食も新しい価値を創出できるのです。
外食が取り入れたい5つの戦略とは
中食の成長は、単なる脅威ではなく、外食が進化するヒントです。
ここでは、「中食では満たせない価値」を軸に、今すぐ検討できる具体的なアクションを分野別に紹介します。
テイクアウト・デリバリーは「メニュー設計」から見直して強化
定番となりつつあるこれらのサービスは、中食ユーザーとの接点を生む重要なチャネル。店舗の味を自宅で再現することで、中食市場へのアプローチが可能になリます!
・冷めても美味しい設計や「温め直しのひと手間ガイド」を商品につける
・食卓が華やぐような、明るく温かみのある容器デザインを採用する
・家族や自分への“ちょっとしたご褒美”を意識した価格帯・ボリュームにする
中食は「空腹を満たす」ことは得意でも、「記憶に残る味」までは提供できません。
外食が培ってきた“感動”を、家庭でも再現できるよう工夫することが、差別化の鍵になります。
モバイルオーダーで「並ばない・待たない」体験を
中食の成長には、“忙しいから作れない・待てない”という生活者のリアルが背景にあります。だからこそ、外食も“スムーズさ”を価値に変えることで、もう一度選ばれる場になれるのです。
・席でメニューを選んで決済までできる「フルモバイルオーダー」の導入
・会社帰りにスムーズに受け取れる、駅近・時間指定テイクアウト予約
・「今すぐ食べたい」を叶える近隣限定の短時間配達サービス
“手間を省ける”という中食の利点に、「できたて」「接客」「店の雰囲気」を上乗せするのが外食の強み。
時間の効率だけでなく、時間の“質”を高める体験へと昇華できます。
冷凍・冷蔵商品で「お店の味」を自宅に持ち帰ってもらう
家庭での食事も、“選ぶ楽しみ”や“店の味の再現”が加われば、立派なブランド体験になります。
・定期便で“店のファン”と繋がるサブスク型商品を展開し、継続的な接点をつくる
・冷凍・冷蔵でも味を保つ「店舗監修」レシピや仕上げガイドを明記
・パッケージや商品紹介に「店主の想い」や「開発ストーリー」を添える
外食店が作る冷凍食品は、「味の信頼」と「作り手の見える安心感」が最大の武器。実際の店に来店したことのない人とも繋がれる、いわばお店の分身であり、持ち帰れる体験価値となります。
「誰のため?」を再定義し、消費者の生活にフィットさせる
外食が再び支持されるには、「特別な時間」だけでなく、「日常に必要な存在」になることが欠かせません。
顧客一人ひとりの状況に、具体的に寄り添う発想が求められます。
・子育て世帯向けに離乳食・おむつ替えスペース完備の店舗
・高齢者向けに椅子の高さや温度感に配慮した設計
・単身者向けに一人で入りやすい空間設計とメニュー展開
中食が「一律に最適化」されていく中で、外食は人間の多様性に応えるサービスです。
「その人にとっての最適な場所」であることが、リピーター創出のポイントになるでしょう。
外食ならではの「五感体験」をイベントにする
食事は、香り、音、雰囲気など、五感で記憶に残る体験です。
中食では実現できない「ライブ感」や「驚き」を設計することで、店舗は“体験の場”になります。
・お客様の目の前でお料理を仕上げるライブパフォーマンス
・季節限定の「味×演出」イベント
・スタッフとの接客コミュニケーションを活かした“ファンづくり”
外食の真価は、“味”だけでなく“記憶”にあります。
その場に来ることでしか味わえない「感情」こそ、中食では再現できない最大の魅力です。
まとめ:「中食vs外食」ではなく「中食×外食」の時代へ
私たちが注目すべきなのは、「中食が伸びている=外食が終わる」という構図ではありません。むしろ、中食の成長は消費者の価値観の変化を映す鏡です。そして外食も、その価値観に寄り添うことで進化できる余地があります。
外食が中食の“敵”ではなく、中食で満たせない部分を担う“補完者”として柔軟に変化することが、これからの生き残りの鍵になるのです。
いまこそ、「中食×外食」という新たな視点を持ち、業界全体がより多様なニーズに応えていく時代に入ったと言えるでしょう。中食と外食は二項対立ではなく、ライフスタイルの中で共に進化する存在。今、自店で提供している価値を見直し、「中食ではできないことは何か?」から逆算してみることが、未来への第一歩となるはずです。

