始めて海外出店する飲食チェーン店が「国内と同じ感覚」で意思決定する前に確認したい6つのチェック項目【海外出店準備ガイド】
「国内で成功した判断軸をそのまま海外に持ち込んだら、まったく機能しなかった」——初めての海外出店を経験した飲食チェーンから、こうした声が繰り返し聞かれます。
JETROの「外食産業の英国進出課題調査」(2026年2月)では、海外出店の課題として「会社設立・ビザ取得・物件取得・食品衛生規則・食材仕入れ・現地人材の育成」が挙げられており、これらはいずれも国内出店では意識しない領域です。「国内で多店舗展開できているから海外でも同じ進め方で大丈夫」という思い込みが、初めての海外出店で最も多い失敗の入り口になります。
この記事では、国内出店と海外出店で「判断の基準がどこで変わるか」を6つの領域で整理し、出店前に本部が確認すべきチェック項目をまとめます。法規制・税務・人材・仕入れ・パートナー・オペレーションの各領域ごとに、国内との違いと確認事項を明確にします。
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JETROの英国進出調査によると、海外出店の課題は会社設立・ビザ・物件・食品衛生・食材・人材と多岐にわたる
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国内では自明の判断(食材調達・衛生基準・賃貸契約)が、海外ではゼロから確認が必要な項目に変わる
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「国内と同じ感覚の罠」は6領域(法規制・税務・人材・仕入れ・パートナー・オペレーション)で起きやすい
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法規制・税務・契約書まわりは、進出先の専門家(現地弁護士・会計士)なしに判断しないことが鉄則
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本記事の情報はあくまで一般的な内容です。国・地域によって制度は大きく異なるため、最終確認は専門家へ
なぜ「国内と同じ感覚」が海外出店で通用しないのか?
国内での「当たり前」が海外では当たり前でない
国内の飲食店出店では、食材の仕入れルートは既知・衛生基準は一律・賃貸契約は日本語・スタッフの採用は国内求人媒体で完結します。これらは国内では「やり方を調べなくても動ける」領域です。しかし海外では、それぞれがゼロから確認が必要な未知の領域に変わります。
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領域 |
国内での状況 |
海外で変わること |
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法規制・許認可 |
食品衛生法・営業許可の枠組みが一律 |
国・地域ごとに異なる。アルコール販売・深夜営業等は別途ライセンスが必要なケースも |
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税務・会社設立 |
法人税・消費税の枠組みが統一 |
現地での会社設立・税務登録・送金規制等が国によって大きく異なる |
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人材採用 |
国内求人媒体・雇用慣行が共通 |
ビザ取得・現地の雇用法・賃金水準・労働文化が国によって全く異なる |
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食材仕入れ |
信頼できる卸業者が既知 |
現地での調達可否・輸入規制・コスト・品質のばらつきをゼロから確認 |
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賃貸契約 |
日本語・慣行的な条件が共通 |
現地の慣習・保証金水準・原状回復条件が大きく異なる。法的リスクの確認が必須 |
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オペレーション |
マニュアルが日本語・日本式 |
現地スタッフへの言語・文化の壁。日本式の品質基準が伝わらないケースが多い |
この6領域のどれかを「国内と同じ感覚」で処理しようとすることが、初めての海外出店でのつまずきの主な原因です。
チェック項目①:法規制・許認可は「国内と全く違う」前提で確認する
海外での飲食店営業に必要な許認可は、国・地域によって大きく異なります。日本の「食品衛生責任者+営業許可」のような一元的な制度は、多くの国では存在しません。
確認すべき許認可の項目
これらの規制は国・地域・物件の立地(建物の用途地域等)によっても異なります。進出前に現地の法律専門家(弁護士)への確認が必須です。
チェック項目②:税務・会計・送金は現地専門家なしに判断しない
海外での事業展開は、税務・会計・送金の面で国内とは全く異なる制度が適用されます。国内の経理担当者や会計事務所が把握していない領域が多く、現地の会計士・税理士への依頼が前提になります。
確認すべき税務・会計の項目
税務・送金に関する注意事項
・税務・会計の具体的な判断は、進出先の現地公認会計士・税理士への相談が前提です
・国によっては外資規制・送金規制が厳しく、利益を日本に戻すことが難しいケースがあります
※本記事の内容はあくまで一般的な情報であり、具体的な判断は専門家への確認を必ず行ってください
チェック項目③: 人材採用・ビザ・労務は「国内のやり方が通じない」
海外での人材採用は、ビザ取得・現地の雇用法・賃金相場・労働文化という4つの壁が存在します。JETROの英国進出調査でも「人材確保(ビザ取得・現地雇用)」が主要課題のひとつとして挙げられています。
確認すべき人材・労務の項目
チェック項目④ : 食材仕入れは「日本と同じ前提で計画しない」
日本で使っている食材が現地で調達できるか、輸入できるか、コストが合うかは、出店前に必ず確認が必要です。これを確認しないまま収益計画を立てると、開業後に食材コストが想定の2〜3倍になることがあります。
確認すべき食材仕入れの項目
チェック項目⑤ : パートナー選定は「紹介だけでは決めない」
現地パートナーとの合弁・フランチャイズ契約は、初めての海外出店で最も多い「後から大きなトラブルになる」領域です。パートナー選定のミスが、そのまま撤退の直接原因になったケースは少なくありません。
確認すべきパートナー選定の項目
チェック項目⑥:オペレーション適合性は「1店舗目で検証する」
国内で確立したオペレーションが海外でそのまま機能するとは限りません。食材・スタッフ・設備・客層・提供スピードの期待値——これらすべてが国内と異なる環境で、同じオペレーションを維持できるかを1店舗目で検証することが、多店舗展開への前提条件になります。
確認すべきオペレーション適合性の項目
国内出店と海外出店の判断軸の比較
6領域のチェック項目を確認した上で、改めて国内出店と海外出店で何が変わるかを整理します。
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判断項目 |
国内出店 |
海外出店(初めての場合) |
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法規制の確認 |
既知の枠組みで判断できる |
国・地域ごとにゼロから確認が必要 |
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税務処理 |
顧問税理士との継続的な対応 |
現地の会計士・税理士への依頼が前提 |
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人材採用 |
国内求人媒体・慣行が通用する |
ビザ・現地雇用法・労働文化の理解が必要 |
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食材仕入れ |
既存ルートでほぼ完結 |
現地調達・輸入規制・コストをゼロから設計 |
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パートナー |
国内慣行の契約で対応できる |
現地弁護士によるレビューが必須 |
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収益計画 |
過去の出店実績を参照できる |
現地の賃料・人件費・食材コストで独立して設計 |
「国内で通用していた判断の枠組みが、海外ではそのまま使えない」という認識を出発点にすることが、初めての海外出店で最も大切な姿勢です。
よくある失敗パターンと防ぎ方
失敗① 国内の収益計画をそのまま海外に当てはめた
国内の原価率・人件費率・家賃比率の目安をそのまま海外の収益計画に使うと、実態と大きくずれます。現地の賃料水準・人件費・食材コスト・税率をそれぞれ現地ベースで確認した上で、海外専用の収益計画を作ることが必要です。JETROの英国調査でも、ロンドンの賃料は物件によって年間£70,000〜£1,700,000超と幅広く、国内基準での見積もりが通用しないことが示されています「(JETRO『外食産業の英国進出課題調査』2026年2月より)
失敗② 契約書を日本語・日本基準で作成した
現地パートナーとの契約書・雇用契約書・物件賃貸借契約書を日本語や日本の法律基準で作成しても、現地では法的効力を持たない場合があります。すべての契約書は現地法に準拠した形で作成し、現地弁護士によるレビューを受けることが最低限の対応です。
失敗③ ビザ・会社設立の手続き期間を過小評価した
日本人スタッフの就労ビザ・現地法人の設立手続き・銀行口座開設は、国によっては数ヶ月かかります。これを過小評価してオープン日を決めてしまうと、スタッフが揃わないまま開業日を迎えるリスクがあります。手続き期間を逆算した計画設計が必要です。
失敗④ 撤退の判断基準を決めないまま出店した
「1店舗目で赤字が続いたらどう判断するか」「何ヶ月で何の指標を達成できなければ見直すか」という基準を事前に持っていないと、判断が感情に流されます。出店前に「撤退の条件」を決めておくことが、冷静な経営判断の前提条件です。
「どの国に・どのタイミングで・どんな形で出店すべきか」という判断は、海外出店の経験のある専門家と一緒に整理することで、判断の精度と速度が大幅に上がります。
まるっと飲食情報局では、海外出店に関する記事を継続的に発信しています。 海外出店場所の選び方から注意点やリスクまで幅広く解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
よくある質問
国内で5店舗以上展開していれば海外出店の準備は十分ですか?
多店舗展開の経験は強みになりますが、それだけでは不十分です。法規制・税務・現地人材の採用・食材調達は、国内の経験が直接活かせない領域です。国内での「再現性のある運営」はベースとして重要ですが、海外の各領域は現地専門家との連携なしに判断しないことが鉄則です。
現地視察は何回くらいすればいいですか?
最低でも2〜3回の現地視察を推奨します。最初の視察は市場感覚・競合状況・立地の把握、2回目は候補物件の確認・現地パートナーとの面談、3回目は契約前の最終確認という流れが一般的です。デスクリサーチだけで判断すると、現地の実態とのギャップが生まれやすくなります。
法規制の確認はJETROなどの公的機関に相談できますか?
JETROは海外ビジネスに関する情報提供・相談支援を行っており、初めての海外進出を検討している企業にとって有用なリソースです。ただし、個別の法的判断・契約書レビューは現地の弁護士・会計士が担当します。JETROの情報を活用しながら、現地専門家との連携を組み合わせるアプローチが現実的です。
1店舗目はどの国から始めるのが安全ですか?
「安全な国」は一概には言えませんが、初めての海外出店では以下の条件が揃う市場が比較的進めやすいとされています。①日本食への認知・需要がある、②外資規制が緩い、③現地パートナーや支援機関へのアクセスがある、④商習慣が比較的近い。東南アジア(タイ・ベトナム・シンガポール等)は条件を満たしやすい市場として挙げられることが多いですが、競合状況・自社の業態との相性も含めて判断することが重要です。
まとめ |「国内の感覚」を意識的に外してから海外出店を設計する
初めての海外出店で最も大切なのは、「国内で通じていた判断の枠組みを意識的に外すこと」です。法規制・税務・人材・仕入れ・パートナー・オペレーションという6つの領域で、国内とは異なる前提で確認を始めることが、失敗リスクを下げる第一歩です。
この記事のチェック項目を振り返ると、特に見落とされやすいのは以下の3点です。
① 許認可・税務・契約書は現地専門家(弁護士・会計士)なしに判断しない
② 食材調達・人件費・賃料は現地ベースで収益計画を独立して設計する
③ 撤退の判断基準を出店前に決めておく(感情ではなく数字で判断できる状態にする)
なお、本記事はあくまで一般的な情報の整理を目的としています。法規制・税務・契約等の具体的な判断は、進出先の専門家への確認を必ず行ってください。国・地域によって制度は大きく異なります。