2025/10/31
同一ブランドで展開するか?新ブランドを立ち上げるか?成功する選択とは
飲食店を1店舗成功させた後、次の課題として訪れるのが「多店舗展開」。
このとき、多くのオーナーが直面するのが――
「同じブランドで展開するべきか?新しいブランドを立ち上げるべきか?」という問題です。
どちらの選択にもメリット・リスクがあり、経営フェーズや立地、ターゲットによって「正解」は異なります。
本記事では、両者の特徴を比較しながら、どのような基準で判断すべきかを徹底解説します。
1. 多店舗展開におけるブランド戦略の重要性とは?
「2店舗目」を出すことは、単なる店舗数の拡大ではなく、経営のステージを変える決断です。
同一ブランドで店舗を増やす場合は「拡張戦略」、
新ブランドを立ち上げる場合は「多角化戦略」と呼ばれます。
飲食業では、このブランド戦略の選択が今後の事業の成長スピードを大きく左右します。
たとえば、スターバックスのように統一ブランドで世界展開する企業もあれば、
すかいらーくグループのように複数ブランドを展開するケースもあります。
2. 同一ブランドで展開するメリット・デメリットは?

メリット①:ブランド認知を横展開できる
1号店で得たブランドイメージや口コミをそのまま活かせるため、
広告コストを抑えつつ集客を見込めるのが最大の強みです。
メリット②:オペレーションを標準化しやすい
同じメニュー・同じ内装・同じ仕組みで展開できるため、
教育やマニュアル整備が容易で、現場の再現性が高まります。
メリット③:スケールメリットが働く
仕入れや広告宣伝、システム導入などのコストをまとめることで、
1店舗あたりの原価率を下げることが可能になります。

デメリット①:立地特性への対応力が下がる
同一ブランドで全国展開する場合、
地域ごとの客層・食文化に合わせた調整が難しいという課題があります。
デメリット②:飽きられるリスク
店舗数が増えるほど「珍しさ」が薄れ、
ブランドが成熟・衰退フェーズに入るリスクもあります。
デメリット③:失敗時の影響が大きい
もしブランドイメージに傷がついた場合、全店舗にその影響が波及します。
特にSNS時代では、1つのクレームがブランド全体を揺るがすことも。
同一ブランド展開の特徴
| 観点 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 集客 | 認知を活かせる | 飽きられやすい |
| 経営効率 | オペレーションが統一できる | 柔軟性が低い |
| ブランド | 信頼性が高まる | イメージリスクが大きい |
3. 新ブランドを立ち上げるメリット・デメリットとは?

メリット①:市場を分散できる
新ブランドを立ち上げることで、
異なるターゲット層や価格帯を攻めることができます。
たとえば、高価格帯のレストランから派生して、
カジュアルなカフェブランドを展開するなどのパターンです。
メリット②:リスクヘッジができる
ブランドごとに業態や立地を分けることで、
不況やトレンドの変化に対して柔軟に対応できます。
メリット③:チームの成長につながる
新ブランド立ち上げでは、既存スタッフに新しい役割(店長・SVなど)を与えるチャンスになります。
組織力の強化・人材育成の観点でもプラスに働きます。

デメリット①:立ち上げコストがかかる
新しいコンセプト、内装、メニュー、ロゴ――
ゼロから構築するため、初期投資と時間がかかります。
デメリット②:既存ブランドとのカニバリゼーション(競合)
同じ商圏に似たブランドを出すと、
顧客が分散してしまい、両方の店舗の売上が下がるリスクがあります。
デメリット③:マネジメントの難易度が上がる
複数ブランドを同時に運営すると、
統一した理念・文化を保つのが難しいという課題も。
新ブランド展開の特徴
| 観点 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 市場 | ターゲットを拡大できる | カニバリの可能性 |
| 経営 | リスク分散ができる | 管理コストが増える |
| 組織 | 人材育成につながる | 統制が難しくなる |
4. 判断のための4つの基準は?
ブランドを増やすか、維持するか――その判断は「感覚」ではなく、4つの指標を基準に行うと明確になります。
① 業績フェーズ
-
既存店舗の売上・利益が安定しているなら「新ブランド」
-
成長途中でリピートが強いなら「同一ブランド」
➡ 成熟フェーズの企業ほど、新ブランドで次の柱を作るべき。
② 立地・商圏の違い
-
類似商圏 → 同一ブランドでスケール化
-
客層・需要が異なる立地 → 新ブランドで差別化
③ 人材とマネジメント体制
-
マネージャーやSVが育っていれば「新ブランド」展開も可能
-
オーナー依存が強い段階では「同一ブランド」で安定化を優先
④ ビジョン・理念の一貫性
新ブランドを立ち上げても、根底の理念や世界観が一貫していることが大切です。
「何を提供し、どんな価値を届けるか」がぶれると、顧客に混乱を与えます。
5. 成功・失敗の事例分析
成功例①:焼肉ライク(同一ブランド型)
「1人焼肉」というコンセプトを徹底し、同一ブランドで全国展開。
どの店舗でも同じ体験を提供し、オペレーション効率とブランド認知の両立に成功しました。
成功例②:スープストックトーキョー(ブランド多角化型)
本体のブランド力を活かしながら、「食のある風景」をテーマに複数ブランドを展開。
ブランドポートフォリオ戦略によって、複数市場でのシナジーを生み出しています。
失敗例:類似業態の乱立
一方で、既存ブランドと似すぎた新ブランドを乱立させると、
顧客が混乱し、ブランドの希少性が薄れるケースも。
「何が違うのか?」が明確でない新ブランドは、長続きしません。
6. まとめ:店舗数より「ブランドの厚み」を!
多店舗展開において重要なのは、店舗数の多さではなく、ブランドの深さです。
同一ブランドで拡大するのも、新ブランドを立ち上げるのも、目的は共通しています。
それは、「自社が届けたい価値を、より多くの人に広げること」。
どちらを選ぶにしても、判断基準はシンプルです。
“ブランドが顧客に選ばれる理由”を、次の店舗でも再現できるか?
この問いに答えられる状態であれば、あなたのブランドは次のステージへ進む準備ができています。