2025/10/21
労務管理と人事管理の違いをわかりやすく解説!それぞれの業務内容の具体例も紹介
つづいて、人事管理を説明します。飲食店の経営者、採用担当の方、以下のようなお悩みはありませんか?
「労務管理と人事管理の違いが何かいまいちわからない」
「それぞれの具体的な業務内容が何か整理できていない」
「業務の背景知識としてどのような法律を知っておくべき?」
本記事では、労務管理と人事管理の違い、それぞれの具体的な業務内容から、労務管理に関わる法律を詳しく解説しています。
本記事を最後まで読めば、労務管理と人事管理に関わる全体像が見えて、その違いも整理しながら理解できるはずです。
なお弊社G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の特定技能ビザ取得支援、労務管理、人事管理の整備などの企業側の受入支援、在留資格の取得更新支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
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人事労務管理とは?
まずは、人事労務管理、労務管理、人事管理の3つの用語の背景をご説明します。
人事労務管理は、現代の企業経営で欠かせない要素となっていますが、その概念は時代とともに進化してきています。実は戦前までは、従業員の採用・育成などを担う「人事管理」と、労働条件や環境整備を担う「労務管理」は、別々の部門で個別に運営されていました。
しかし、第二次世界大戦後、労働基準法や社会保険法などの労働法規が整備され、企業には従業員に対するより包括的な責任が求められるようになりました。法令遵守はもちろん、従業員の福祉向上や働きやすい環境づくりが、企業の社会的責任として重要視されるようになりました。
そして、このような背景から、「人事管理」と「労務管理」を一体化した「人事労務管理」という考え方が生まれた結果、現在では、従業員の権利を尊重し、働きやすい環境を整備することが、企業の競争力向上に直結するという認識が定着しています。
このように、人事労務管理は、単なる管理業務を超えて、企業の持続的な成長を支える重要な経営戦略の一つとして位置づけられています。
労務管理と人事管理の違いとは?
それでは、両者の違いを見ていきます。「労務管理」と「人事管理」は、一見似ているように見えますが、それぞれ異なる目的と役割を持っています。
はじめに簡潔に述べますと、労務管理は従業員の労働環境や条件の整備に重点を置き、人事管理は人材という経営資源の最適な活用を目指している点で異なっています。
ここでは、それぞれの管理の定義や目的、具体的な業務内容を詳しく解説していきます。
労務管理|従業員の労働環境(安全、衛生、勤怠など)を整備する
労務管理は、従業員が安全かつ健康的に働ける環境を整備し、適正な労働条件を確保するための重要な管理業務です。具体的には、従業員の勤怠管理や給与計算、社会保険関連の手続き、職場の安全衛生管理などが含まれています。
そして、労務管理の主な目的は、従業員が安心して働ける職場環境を作り上げることです。これには法令遵守はもちろんのこと、労働時間の適切な管理や、職場の安全確保、健康管理など、従業員の労働生活全般にわたる環境整備が含まれています。
また、企業にとって適切な労務管理は、労働災害の防止や従業員の離職防止につながるだけでなく、生産性の向上にも直結する重要な要素となっており、特に近年では、働き方改革関連法への対応や、多様な働き方への対応など、労務管理の重要性はますます高まっています。
飲食業界は、短時間勤務、フレックスタイム制、シフト制、副業・兼業容認など働き方が多岐にわたり、特にコロナ禍以降は従業員のニーズや価値観の変化に応じた柔軟な労働環境の整備が急務となっています。
人事管理|従業員という人材資源を管理し、最適な働き方を構築する
つづいて、人事管理を説明します。
人事管理は、企業の経営資源の一つの「人材(ヒト)」を効果的に活用し、組織の成長と目標達成を実現するための管理業務です。
企業経営の基本となる四大経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中でも、「ヒト」は他の経営資源を活用・管理する主体として、特に重要な位置づけにあり、従業員の採用から育成、評価、適切な配置まで、人材に関する包括的なマネジメントを担っています。
人事管理の最終的な目的は、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることにあるため、適材適所の人材配置や、効果的な教育研修の実施、公平な評価制度の構築、従業員のモチベーション管理など、多岐にわたる施策を戦略的に展開することが大切です。
近年では、多様な人材の活用やキャリア開発支援など、より複雑化・高度化する人材マネジメントへの対応が求められています。
労務管理の具体的な業務内容3選
それでは、労務管理の具体的な業務内容を見ていきます。
労務管理にはさまざまな業務が含まれますが、中でも重要となるのが、勤怠管理・給与計算、社会保険や福利厚生の手続き、そして労働環境の安全衛生管理です。
これらの業務は、従業員が安心して働ける職場環境を整備し、企業の持続的な成長を支える基盤となっており、特に飲食業界では、多様な勤務形態や不規則な勤務時間への対応、業務特性に応じた安全管理など、きめ細かな労務管理が求められています。
それでは、各業務の具体的な内容と実践のポイントを見ていきましょう。
勤怠管理・給与計算
勤怠管理・給与計算は、労務管理の根幹を成す重要業務です。特に、適切な労働時間管理と公正な給与支払いは、従業員の権利を守り、モチベーション維持に直結する要素となっています。
勤怠管理では、勤怠管理システムを活用した正確な労働時間の記録が基本となっています。特に飲食業では、シフト制による変則的な勤務形態が一般的なため、残業時間や深夜勤務の適切な管理、有給休暇の取得促進など、きめ細かな労働時間管理が求められることが多いです。
そして、給与計算は、基本給に加え、職務手当や資格手当などのインセンティブ制度、シフト調整手当や深夜割増賃金など、飲食業特有の手当の適切な運用が重要です。
公平で分かりやすい給与体系を構築し、給与明細の明確な提示と丁寧な説明を行うことで、従業員の処遇への理解と納得性を高めることができ、これらをしっかりと取り組むことで、人材の定着率向上と優秀な人材の確保にも大きく貢献できるでしょう。
つづいて、社会保険、福利厚生の業務をご説明します。
社会保険や福利厚生の手続き
社会保険や福利厚生制度の適切な整備と運用は、従業員が安心して働き続けられる職場づくりの基盤となります。特に飲食業界では、正社員やパートタイム従業員など、さまざまな雇用形態の従業員が働いているため、それぞれの状況に応じた丁寧な対応が求められます。
社会保険に関する業務では、労働時間や収入に応じた適切な加入区分の管理が重要となり、パートタイマーは、週20時間以上勤務などの加入要件を適切に管理し、対象者への漏れのない手続きが必要です。
また、保険料の計算・納付や年度更新手続きなど、法令に基づいた正確な事務処理も欠かせず、扶養範囲の確認など、従業員の生活状況の変化に応じたきめ細かな対応も求められています。
そして、福利厚生面では、従業員の多様なニーズに対応した制度設計が重要です。制服貸与や食事補助などの基本的な制度に加え、調理師や衛生管理者などの資格取得支援制度、慶弔見舞金、従業員割引き制度など、従業員の生活全般をサポートする制度の整備が効果的です。
これらの制度を分かりやすく周知し、積極的な利用を促すことで、従業員満足度の向上と人材の定着につながっていきます。
労働環境の安全衛生管理
3つ目は、安全衛生管理をご説明します。
安全衛生管理は、従業員の健康と安全を守り、快適な職場環境を維持するための重要な取り組みです。特に飲食業では、調理場での作業や接客など、さまざまなリスクが存在するため、業務特性に応じた適切な安全対策が不可欠となっています。
労働安全面では、調理場での火傷・切傷の防止、床の水濡れによる転倒事故の予防、重量物の適切な取り扱い方法の指導など、具体的な事故防止策を講じる必要があるでしょう。
適切な空調・換気管理、清潔な更衣室・休憩室の提供、十分な休憩時間の確保など、快適な職場環境の整備も欠かせません。
これらの取り組みは、労働災害の防止と従業員の健康維持に貢献し、結果として生産性の向上と人材の定着にもつながっていくため、おろそかにしてはいけない部分です。
人事管理の具体的な業務内容5選
ここでは、人事管理の具体的な業務内容を見ていきます。
まず、人事管理は、組織の成長と発展を支える重要な基盤となっています。
特に飲食業界では、多様な雇用形態の従業員が働いており、それぞれの立場や役割に応じた適切な人材マネジメントが求められているため、アルバイトから店長まで、すべての従業員が活き活きと働ける環境づくりを目指し、以下の5つの業務を効果的に展開していくことが重要です。
人材採用
ひとつ目の人材採用は、飲食店の持続的な成長を支える重要な経営活動です。店舗の価値向上と安定的な運営に直結する取り組みとして、戦略的な視点が欠かせません。
効果的な採用活動を実現するためには、まず求める人材像を明確にし、それに基づいた採用基準の設定が重要です。
特に飲食業では、接客スキルやチームワーク、向上心などの要素を重視した選考を行うことが求められるでしょう。また、面接官の教育を通じて、応募者の適性や意欲を適切に評価できる体制を整えることで、採用の質を確保することも大切です。
なお、採用計画の策定では、店舗の成長戦略に基づいた中長期的な人材ニーズを見据え、計画的な採用活動を展開することが肝心です。採用活動を単なるコストではなく、店舗の未来への投資としてとらえ、戦略的に取り組むことで、店舗の持続的な成長の実現に着実に近づけるでしょう。
人材育成
2つめの人材育成は、飲食店の品質とサービス水準を維持・向上させるための重要な要素です。特に飲食業では、アルバイトから店長までの一貫した育成体系を整備し、現場でのOJTと定期的な集合研修を効果的に組み合わせることが求められます。
より効果的な人材育成の基盤として、明確なキャリアパスの設計は重要です。具体的には、ホール担当からシフトリーダー、副店長、店長などの昇進モデルの提示や、各段階で求められるスキルと評価基準の明確化が大切です。また、従業員の成長意欲を引き出すため、評価制度と連動した昇格・昇進の仕組みの整備も必要となります。
このような計画的な育成投資は、従業員の成長を通じてお客様満足度の向上と店舗の収益性改善に直結するため、経営戦略の重要な柱として位置づける必要があり、従業員一人ひとりの成長が、店舗全体の価値向上につながっていくことになります。
人事評価
3つめの人事評価は、従業員の成長とモチベーション向上を支える重要な仕組みです。特に飲食業では、アルバイトから正社員まで多様な雇用形態が混在するため、それぞれの立場や役割に応じた評価指標の設定が肝要です。
特に、評価制度の設計では、接客スキル、衛生管理意識、チームワーク、店舗オペレーションなど、具体的で測定可能な評価基準の設定が必要です。これらの評価結果を給与や昇進に適切に反映させる仕組みを整備することで、従業員の成長意欲を高めることができるでしょう。
また、定期的なフィードバック面談を通じて成長課題を共有し、具体的な改善目標を設定するれば、従業員の継続的な成長を支援できます。公平で納得性の高い評価の実施によって、人材の定着と能力向上につながり、店舗全体のサービス品質向上にも寄与するでしょう。
人材配置
4つめの人材配置は、従業員の成長機会の創出と店舗運営の効率化を両立させる重要な施策です。効果的な人材配置を実現するためには、まず従業員一人ひとりの能力・適性を把握し、将来のキャリア希望を確認することが基本となります。
飲食業では、従業員の成長段階に応じた段階的な配置が効果的です。新人、一般スタッフ、リーダー、マネージャーなど、各ポジション(ホール責任者、キッチンリーダー、トレーナーなど)の役割と求められる要件を明確にし、適材適所の配置の実現によって、着実なスキルアップを図ることができます。
そして、計画的な配置転換やポジションの付与は、従業員のモチベーション向上と、将来の店舗運営を担う人材の育成につながります。組織全体の活性化と個人の成長を両立させる戦略的な人材配置が、店舗の持続的な成長を支える重要な要素となっていることを押さえておきましょう。
モチベーション管理
5つめのモチベーション管理は、サービス品質と店舗の業績を左右する重要な要素です。飲食業では、シフト制による不規則な勤務や繁忙期のストレスなど、独自の課題があるため、きめ細かな対応が求められます。
効果的なモチベーション管理としては、まず従業員一人ひとりの価値観や目標を理解し、それに応じた成長機会や評価の仕組みを提供することが重要です。具体的には、明確なキャリアパスの提示、スキルアップを支援する研修制度、達成感を実感できる目標設定など、成長を実感できる環境づくりが必要となるでしょう。
また、公平な評価制度による報酬への反映、定期的なミーティングや表彰制度などによる従業員間のコミュニケーション促進、働きやすい職場環境の整備を通じて、持続的なモチベーション向上を図ることも大切な仕事です。従業員の意欲向上は、顧客満足度の向上と店舗の成長に直結する重要な経営課題として、継続的に取り組んでいく必要があるでしょう。
人事労務管理に関わる重要な法律を3選ご紹介
つづいて、飲食店経営者や人事担当者が特に押さえておくべき3つの重要な法律を実務に即した形でご説明いたします。
これらの法律を正しく理解し、適切に運用することは、従業員が安心して働ける環境づくりと、店舗の持続的な成長の両立につながる重要な要素となっているので、ぜひ最後までお読みください。
それでは、店舗運営で特に重要となる
• 労働基準法
• 労働安全衛生法
• 労働契約法
の3つのそれぞれの概要と実務上のポイントを見ていきましょう。
労働基準法
労働基準法は、飲食店経営で最も基本となる法律で、従業員の労働条件を守り、適切な職場環境を整備するための具体的な基準を定めています。
労働基準法は国籍を問わず日本で労働する人材全てに原則適用されますので、外国人人材にも適用されることに留意しましょう。
人事管理の観点では、アルバイトを含む全従業員の労働条件(給与、勤務時間、休日等)を明確に定め、労働条件通知書として書面・FAX・メール・SNS等で渡すことが義務付けられています。
また、労務管理では、変形労働時間制を活用したシフト管理、深夜勤務の割増賃金(25%以上)の支払い、休憩時間の確実な確保(6時間超で45分、8時間超で60分)など、日々の運営に直結する規定の遵守が求められています。
特に飲食店では、繁忙期の残業管理やアルバイトの勤務時間調整など、現場特有の課題に対して、法令遵守と効率的な店舗運営の両立が重要となります。
そのような労働基準法に基づいた適切な労働環境の整備は、従業員が安心して働ける職場づくりにつながり、結果としてサービス品質の向上にも寄与するでしょう。
労働安全衛生法
次に、労働安全衛生法の理解と遵守は、人事管理と労務管理の両面で重要な意味を持っています。特に飲食店では、調理場での作業や長時間の接客など、特有の安全衛生リスクへの対応が求められています。
人事管理の観点では、定期健康診断の実施や、ストレスチェックの導入など、スタッフの健康管理に関する基準を定めており、一方、労務管理の面では、厨房での火気・刃物の取扱い、床の滑り防止対策、換気設備の管理など、日々の作業の安全確保のルールを規定しています。特に飲食店では、食品衛生法とあわせて理解することで、より効果的な安全衛生管理が実現できるでしょう。
従業員の安全と健康を守ることは、単なる法令遵守にとどまらず、生産性の向上やお客様への良質なサービス提供にもつながる重要な経営課題ですので、適切な安全衛生管理体制の構築は、従業員が安心して働ける環境づくりに大いに貢献するでしょう。
労働契約法
最後に、労働契約法は、店舗で働くスタッフ(正社員、パート、アルバイト等)全員と会社との雇用関係を定めた基本ルールです。2007年の制定以来、2012年と2018年の改正を経て、現場で使いやすい内容に整備されているという背景があります。
具体的には、採用時の労働条件の明示方法、シフトなどの勤務条件の決め方、契約期間の設定など、店舗運営に直結する内容が定められており、特に、無期転換ルールなど、長期的な人材確保に関わる重要な規定もあるため、採用計画を立てる際にも参考にしていただきたい法律です。
この法律を適切に運用することで、スタッフが安心して働ける環境が整い、結果として離職率の低下やサービス品質の向上につながります。飲食業界では多様な雇用形態が存在するため、それぞれの契約形態に応じた適切な運用が求められるでしょう。
労務管理と人事管理の違いや目的を理解した上で業務に臨みましょう
本記事で解説してきたように、労務管理と人事管理は企業経営の重要な両輪として機能しています。
労務管理は従業員が安全で働きやすい環境を整備し、人事管理は人材という経営資源を最大限に活用して組織の成長を促進し、この両者を適切に実践することで、従業員が活き活きと働ける職場づくりが実現できるでしょう。
なお弊社G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の特定技能ビザ取得支援、労務管理、人事管理の整備などの企業側の受入支援、在留資格の取得更新支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
自社の飲食店で、外国人材雇用による人材不足の解消を図りたいと検討している企業様は、以下のページからお気軽にご連絡ください。