2025/10/21
労働基準法に基づく残業(時間外労働)の上限規制とは?企業が守るべき残業管理のポイントを紹介
2024年の法改正に伴い、時間外労働の上限規制が強化され、企業の労働時間管理がますます重要になっています。
「従業員に過剰な残業をさせずに法令を守るにはどうすればいいのか」
「特別条項を活用する条件や注意点は?」
といった疑問を抱える経営者や人事担当者は少なくありません。また、未払い残業代や労働時間超過トラブルのリスクに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
労働基準法は本人の国籍問わず、日本国内に従事する労働者には全て適用されるものです。
自社の人手不足を解消するために外国人人材の採用を検討される際も労働基準法の知識は必要になります。
本記事では、労働基準法第36条に基づく「36協定」の基本内容、特別条項の運用条件、割増賃金の計算方法について詳しく解説します。さらに、未払い残業代を防ぐための具体的な管理策や従業員の働きやすい環境を作るためのポイント、法令遵守と労務リスクの回避に役立つ情報を解説します。
弊社G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の特定技能ビザ取得支援、法改正に対応した企業側の受入支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
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時間外労働の上限規制とは?
2024年の法改正により、企業が遵守すべき時間外労働の上限規制が一層厳格化されました。労働基準法第36条に基づくこの規制は、従業員の健康を守り、適切な労働環境を維持するための重要な制度です。違反が発覚した場合には罰則や企業名の公表などのリスクも伴い、特に中小企業や飲食業界にとっても無視できない課題となっています。
労働基準法における基本ルール
労働基準法では法定労働時間、休憩、休日について、以下の通り厳格に定められています。
「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。」
「使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。」
「使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。」
(厚生労働省 労働基準法より)
この上限を超える労働を行わせる場合、 労使間で「36協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定の上限となる労働時間
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• 年間の時間外労働は360時間以内であること。
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•1ヶ月の時間外労働は45時間以内であること。
繁忙期や緊急対応などで臨時的で特別な事情があり36協定で定められている上限時間以上の労働を命じたい場合は、36協定の特別条項を締結することで上限を引き伸ばすことが可能となります。
特別条項付き36協定の上限となる労働時間
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• 年間の時間外労働は720時間以内であること。
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• 1ヶ月の時間外労働は100時間未満に収めること。
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• 複数月平均の時間外労働は80時間以内であること。
これらの条件を超える労働は違法となり、罰則の対象になります。例えば、繁忙期であってもこれらを超える勤務を命じることは許されず、注意が必要です。
違反時の罰則とリスク
36協定を締結していても、時間外労働の上限を超えた場合、企業は以下の罰則を受ける可能性があります。
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1. 罰金:労働基準法第119条に基づき、違反企業には30万円以下の罰金が科されます。
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2. 企業名の公表:労働基準監督署から是正勧告を受けた場合でも改善が見られない場合、重大な違反として企業名が公表され、社会的信用を失うリスクがあります。
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3. 訴訟リスク:長時間労働が原因で従業員が健康を害した場合、労災認定や損害賠償請求といった法的措置に発展する可能性もあります。
外国人労働者にも適用される上限規制
特筆すべき点として、労働基準法は国籍を問わず、日本国内で就労するすべての労働者に適用されます。そのため、外国人技能実習生や特定技能で働く外国人労働者に対しても、時間外労働の上限規制を遵守する必要があります。
時間外労働の上限規制は、従業員の健康を守り、企業の持続可能な成長を促進するための重要な制度です。違反した場合のリスクは法的罰則にとどまらず、企業の信用失墜や採用活動への悪影響にまで及びます。特に2024年以降の新しいルールに基づき、企業は一層の法令遵守と適切な労働時間管理を徹底する必要があります。
36協定とは?守るべきポイント
36協定は、労働基準法第36条に基づき、企業が労働者に法定労働時間を超える労働を課す際に必要となる協定です。この協定が締結されていない場合、時間外労働や休日労働を命じることは違法となり、企業は罰則を受ける可能性があります。
36協定の定義と目的
労働基準法第36条は次のように規定しています。
「使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、これを行政官庁に届け出た場合に限り、時間外労働及び休日労働を合法的に実施できる。」(厚生労働省 労働基準法より)
この規定を基にした36協定の締結により、企業は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を合法化できます。
36協定の主な目的には次の3つがあります。
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1. 時間外労働の合法化
企業が繁忙期や緊急業務に対応するため、必要な残業や休日労働を合法化すること。 -
2. 労働者の健康と生活の保護
過剰な労働時間を防ぎ、労働者の健康や生活を守ること。 -
3. 企業活動の柔軟性確保
企業が業務量の変動に対応しやすくなる仕組みを提供すること。
36協定を運用するための守るべきポイント
36協定を正しく運用するには、いくつかの重要なポイントがあります。
1. 時間外労働の上限遵守
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• 原則:
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⚬ 月45時間以内、年360時間以内。
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• 特別条項適用時:
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⚬ 年間の時間外労働は720時間以内であること。
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⚬ 1ヶ月の時間外労働は100時間未満に収めること。
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⚬ 複数月平均の時間外労働は80時間以内であること。
2. 対象労働者の確認
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• 管理監督者は対象外。
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• 18歳未満の労働者には時間外労働が認められません。
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• 妊産婦についても特別な保護措置が設けられています。
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• 外国人労働者についても適用対象となります。
3. 協定の締結と届け出
協定を有効にするためには、従業員の過半数を代表する者と使用者の間で書面による協定を締結し、それを所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。これを怠ると協定は法的効力を持たず、企業は違法行為を行ったと見なされます。
4. 協定内容の明確化
36協定の内容は具体的かつ明確に記載する必要があります。不明瞭な記載では労働基準監督署への届け出が受理されず、法的リスクを伴う可能性があります。
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• 対象業務の明確化:協定が適用される業務や職種を具体的に記載することが必要です。
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• 時間外労働の上限設定:時間外労働の限度を明確に定めます。通常時と特別条項適用時の上限をそれぞれ記載することが重要です。
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• 休日労働の条件:休日労働が必要な場合、その条件や範囲を明記します。
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• 有効期間の設定:36協定の有効期間を記載します。通常、1年間とするのが一般的で、期間終了後は更新が必要です。
36協定が企業に求めるもの
36協定は、単に法的要件を満たすための文書ではなく、企業が従業員に対して責任を果たすための重要な枠組みです。この協定を正しく締結し、労働時間の管理を適切に行うことが、労働者の満足度向上や企業の持続的な成長に寄与します。
特別条項付き36協定の適用条件と運用ポイント
特別条項付き36協定は、通常の36協定に加えて、繁忙期や突発的な業務増加など、特例的な状況に対応するための仕組みです。この条項を活用することで、企業は一定の条件のもとで時間外労働の上限を超える働き方を認めることができます。ただし、適切に運用しなければ法令違反となり、企業に重大なリスクが発生します。
特別条項付き36協定の基本内容
通常の36協定では、時間外労働の上限は「月45時間、年360時間」と定められています。しかし、業務の繁忙期や突発的な事態に対応するため、特別条項を設けることで、これを一時的に超えることが可能です。
1. 適用条件の明確化
特別条項が認められるのは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限られます。これには、繁忙期や予期せぬ業務の増加などが含まれますが、恒常的な長時間労働を正当化するものではありません。
2. 上限規制の適用
特別条項付き36協定を適用しても、以下の規制を超えることはできません。
a. 1か月の時間外労働が100時間未満
b. 複数月平均で80時間以内
c. 年間720時間以内
3. 内容の明記
特別条項には、超過する理由や期間、上限時間、労働者への対応策(健康管理措置)を具体的に明記する必要があります。
特別条項運用のポイント
1. 適用範囲の設定
特別条項を適用する業務や労働者の範囲を明確にする必要があります。すべての業務や従業員に一律に 適用するのではなく、特定の繁忙期業務やプロジェクト単位での運用が求められます。
2. 労働者の同意と周知
特別条項を適用する際は、労働者の同意を得ることが重要です。また、条項の内容を従業員に周知し、 適用条件や上限を理解してもらうことが必要です。
3. 健康管理措置の実施
特別条項を適用する場合、企業は労働者の健康管理を徹底する責任があります。
• 定期的な健康診断の実施
• 過重労働が疑われる従業員への面談指導
• 労働時間の記録と分析による過労防止策
時間外労働の割増賃金のルール
通常の勤務時間を超える労働、いわゆる時間外労働が発生した場合、企業は割増賃金を支払う義務があります。では、時間外労働が発生すると具体的にどのような計算が必要で、どのようなルールが適用されるのでしょうか?
割増賃金率の基本ルール
労働基準法では、時間外労働、休日労働、深夜労働に対して割増賃金を支払うことが義務付けられています。
1. 時間外労働(法定労働時間超過分)
通常の賃金に対し、25%の割増(1.25倍)。
※月60時間を超えた場合は、割増率が50%(1.5倍)。
2. 深夜労働(22時から翌5時までの労働)
通常の賃金に対し、25%の割増(1.25倍)。
3. 休日労働(法定休日における労働)
通常の賃金に対し、35%の割増(1.35倍)。
例えば、時間外労働が深夜に行われた場合、これらの割増率は時間外労働の割り増しと深夜労働の割り増しが重複して適用されます。
割増賃金を支払わない場合のリスク
割増賃金を適切に支払わないと、以下のようなリスクが発生します。
• 未払い残業代請求
労働者からの未払い請求は、過去3年間遡って行われる可能性があります。
• 労働基準法違反の罰則
未払いが認められると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります(労働基準法第119条)。
• 企業イメージの低下
法令違反が公になると、従業員や取引先からの信頼を損ない、採用活動にも悪影響を及ぼします。
割増賃金の適切な管理で法令遵守を
割増賃金の適正な支払いは、企業にとって法的義務であると同時に、従業員の信頼を得る重要なポイントです。企業として法令遵守を徹底し、働きやすい環境づくりを進めることが、持続可能な成長の第一歩です。
未払い残業代を防ぐためのポイント
ではどのように未払い残業代を防げばいいのでしょうか?以下のポイントを意識することで、未払いトラブルのリスクを大幅に軽減し、健全な労務管理を実現できます。
就業規則と労働契約書の見直し
労働基準法や36協定に基づいた正確な規定を就業規則や労働契約書に反映させることが重要です。2024年の法改正で未払い残業代請求の遡及期間が3年間に延長されたため、この変更を見据えたルール整備が求められます。
• 残業に関する規定が法的基準を満たしているか。
• 割増賃金の計算方法が明確に記載されているか。
• 従業員が内容を理解しやすい表現になっているか。
定期的に専門家のアドバイスを受けながら、規定の整備と更新を行うことをおすすめします。
従業員への周知と教育
適切なルールが整備されていても、従業員がそれを理解していなければ意味がありません。労働時間や割増賃金に関するルールを周知し、従業員に教育を行うことが不可欠です。
• 労働時間管理や割増賃金のルールに関する研修の実施。
• 就業規則や労働契約書を定期的に共有する。
• 疑問や相談を気軽に受け付ける窓口の設置。
従業員とのコミュニケーションを活発にすることで、未払い残業代につながる誤解や記録漏れを防ぎましょう。
適切な勤怠管理システムの導入
社内でのルールや書類上の整備、社員とのコミュニケーション環境が整っていても実際の勤務の把握には適切な勤怠管理システムが取り入れられていることが重要です。特に飲食業界のようにシフト制のアルバイトを多く抱える必要がある場合やリモートワークを推奨している企業の場合、勤怠管理、シフト管理、稼働管理には煩雑な作業が発生することから適切な勤怠管理システムの導入が不可欠といえます。
まとめ
労働基準法に基づく時間外労働の上限規制や36協定の適切な運用は、企業が従業員の健康を守りながら持続可能な成長を目指すための基盤です。2024年の法改正によってルールがさらに厳格化され、特に中小企業や飲食業界の経営者、人事担当者には、法令遵守が求められる場面が増えています。
また、日本国内で就労するすべての労働者は、日本人であれ外国人であれ労働基準法の適用を受けます。外国人技能実習生や特定技能で働く従業員に対しても、時間外労働や割増賃金のルールを適切に適用し、法令違反を防ぐことが重要です。
弊社G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の特定技能ビザ取得支援、法改正に対応した企業側の受入支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
自社の飲食店で、外国人材による人材不足の解消を図りたい企業様は、以下のページからお気軽のご連絡ください。